例会速報 2017/09/24 筑波大学附属高等学校
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授業研究:電場と電位 小沢さんの発表
会場校の小沢さんの、3年生の物理の授業の報告があった。これまで3年生の授業は講義室で行うことが多かったが、今年から、生徒がもっと考えて話し合うことができるように、実験室で行うことにした。写真左のように、実験室を横に使って生徒は向き合う形になる。黒板や教卓は使わず、横の通路に置いたホワイトボード2面とスクリーンが正面となる。ちょうど例会会場が当該教室なので参加者は生徒になった気分で小沢さんの報告を聞いた。
メンディングテープを2枚重ねたもの(糊のついている面とついていない面をつける)をはがすと、それぞれが帯電する(写真右)。2人組になって、2枚重ねの「上と上」「上と下」「下と下」を近づけたときにどんな力が働くか確認させ、そのことから、何がわかるか考えさせる。
場の考え方は初学者にとってハードルが高い。まずはおおまかなイメージをつかませるために、大きさのわずかに違う箱を2個重ねたものを用意し、見えない側面に磁石を仕込んでおく。生徒に箱の中をのぞかせてたり、手を中に突っ込ませたりして、「この中に場はあるか?」と問う。生徒はきょとんとしている。そこで、磁石を握らせて、手を突っ込ませる。すると「不思議な力」を感じる。「これは、箱の中に磁場があったからだ」と説明する。「試しに磁石や電荷や質量を置いたとき、力を受けるような空間を場という」と説明する。
電場を可視化するPCシミュレーション。電荷を動かしたり大きさを変えたりしたときの電場ベクトルを表示してくれるこのソフトは、実は、15年前に当時の生徒がプログラミングして作ってくれたのだそうだ。小沢さんはその生徒に感謝しつつ、いまだに使っている。
導電紙を利用して、電気力線を描かせる生徒実験。例会では、クリップを導電紙の長辺を挟むことで、極板間の距離をもっと小さくした方が一様な電場に近くなるというコメントや、もっと接触抵抗の小さい大型クリップがあるという情報提供などがあった。
このような実験を行っても、生徒にとって電場と電位は難しい。その現実を踏まえた上で、どのような授業をつくっていけばよいのか、参加者と議論を続けた。
電場・電位のシミュレーション 西村さんの発表
小沢さんの授業研究を受けて、西村さんがその場で電場・電位のシミュレーションを紹介してくれた。PhETというコロラド大学が開発したオンラインのシミュレーションを公開しているサイトである。
電場・電位のシミュレーションでは、電位の高低を色の濃さで、電場の向きを矢印、電場の強さを濃さで表す。試験電荷の受ける力を赤色の矢印の向きや長さで表すなど、非常に直観的・視覚的でわかりやすかった。正負の点電荷を直線状に配置していくとしだいにコンデンサーが作る一様電場に移行する様子がわかる。右の画面では電場の強さの表示は解除して向きのみ示している。
このようなシミュレーションが、物理だけでなく化学・生物・地学・数学などもあるとのことである。授業で教師が提示して説明に使ったり、生徒にPCやタブレットを配布して実際にシミュレーションさせるなど、いろいろな使い方ができそうだ。
関連して・・・ 田代さんの発表
今日の授業研究のお題「電場と電位」に関連して、田代さんからの提案は、「電位」導入時のたとえ話として、重力場の元での「高位」(重力場だから「重位」でもよいか)を仮に定義して、重力との比較で教えるという方法だ。「高位」は位置エネルギーUを質量mで割った量U/mであり、地表の一様重力場ならghに相当する。これを、一様電場のV=Edに見立てるというアナロジーである。
高校物理ではよく用いられるアナロジーだが、「高位」を仮に定義してしまって、物差しを用意するという発想がなかなかよいと思った。
北米皆既日食 鈴木亨さんの発表
皆既日食ハンターの鈴木亨さんは去る8月21日の北米皆既日食の観測報告をしてくれた。旅行者が販売するツアーは数年前から満員御礼で旅行代金も70~100万円と高額である。しかし、鈴木さんは現地に住む教え子の手引きで、格安のプライベートツアーを組んだ。
当日は、曇り空の宿泊地から、教え子の運転する車で晴れ間を求めて車を走らせた。写真左のマリオン湖畔のサンティーという街で観測態勢に入った。現地では地元メディアの取材も受けたという。日本ならさしずめ大渋滞で観測地は過密状態というところだが、さすがアメリカは広い。ご覧のようにのんびり広々とした情景。右の写真のように皆既の瞬間はバッチリ。プロミネンスの輝きと淡いコロナの広がりのダイナミックさは写真では表現できないという。鈴木さん曰く「世界には2種類の人間しかいない。皆既日食を見たことがある人間と、見たことのない人間だ。」
新型の真空ポンプ 天野さんの発表
天野さん考案の新型真空ポンプの紹介。ダイソーの風船用空気入れの空気取り入れ口の方に、プリン容器(写真左)の底を切ってはめ込み接着する。直径がぴったり合っておあつらえ。フタの部分にパッキングを貼り付けるなどしてアダプターにする。
使い方は写真の通り。これもお手製のマグデブルグ半球(左)や真空容器の弁付き排気口に押しつけるようにして力一杯ピストンを上下させる。元の空気入れは、押し引き共に排気される仕組みだが、アダプターを取り付けた後端からの吸気のみを真空ポンプとして使う。即売会も好評で、用意した5個はジャンケン争奪戦であっという間に完売した。
スマホ兼用12倍単眼鏡 古谷さんの発表
古谷さんはスマホに取り付けられる小型ズームレンズが欲しい、と検索し、倍率が20倍を超えるものは①手ぶれ大②価格は1万円に近い③スマホへの取り付けが面倒 等々が判明。12倍程度のものが全ての面でリーズナブルと判断し、以下のものを購入した。
12×ズームHDスマホ望遠レンズ クリップ式望遠鏡 高性能単眼鏡 広い視角16° 撮影距離3~800メートル
Iphone &Android 多機種対応 コンパクトサイズ 販売:KNGUVTH直営店 ¥1799(送料込み)
今のところズームとして使えていないが、固定の12倍として十分使用でき、特に価格の面で優れている。室内で使用したところ、5m程離れた本の背表紙が読み取れた。
物理教育研究大会での発表から 西村さんの発表
西村さんは、現在行っている研究について報告してくれた。単元や学期の途中で、クリッカーで答える概念問題を小テストとして出題し、生徒個別にその解答結果を集計・分析・フィードバックすることで、形成的評価を行うという取り組みとのことである。この取り組みによって、これまでよりもより詳しく、定量的に生徒の物理概念の獲得状況がわかるようになったり、生徒の自学自習を動機づけられるようになる示唆が得られたとのことだった。
目下の課題は、この形成的評価の概念獲得についての効果を測定をすることで、動機づけに関するアンケートや、概念調査等のスコアと、形成的評価の活用状況とを結びつけていくつもりとのこと。なかなか教育実践に対する効果測定は難しい課題なので、ぜひアドバイスをもらえれば、と話していた。
1:3:3の衝突球・中間報告 越さんの発表
越さんは、YPC8月例会で紹介した質量m、3m、3mのABCの衝突球研究のその後の報告をした。1回目の衝突後はAが-1/2v、Bは静止、Cは1/2vで運動する。2回目の衝突は、ABの衝突とBCの衝突のどちらが先かによって、結果が異なる。1000fpsのスローモーションで、その時間差を何とか確認することができた。ABが衝突後、BCが衝突し、更にBがAに衝突する3連続の衝突のパターンがあることも分かった。9回目の衝突までについてABCの各速度のグラフ(写真右の右上)を描いてみたが、これといった規則性は見つけられなかった。例会では、6回目の値が特徴的でそれを境にして対称性があるのでは?との指摘があり、更に追及したところ、7回目以降は1~5回目のパターンとほぼ同じで、全部で6パターンある事が分かった。また、10数回ごとに初めのパターンが現れることも分かった。これは、衝突のパターンごとにAB、BCのどちらの衝突が先に起こり易いかの傾向がある事に
関係があるのかもしれない。
二次会 護国寺駅前「インドレストラン シルザナ」にて
9名が参加してカンパーイ。二次会の出席者は少なかったが、一テーブルにまとまると話が近くてよい。初めて利用したレストランだったが、わずか3000円のコースで、ドリンク・アルコールは飲み放題、ナンは食べ放題。インド料理をたらふくいただいて、みんな大いに満足。しかも美味とあって、「ここで例会がやれないかなあ。」「こんど家族を連れてまた来よう。」の声も。
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