例会速報 2017/08/26 八王子セミナーハウス


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八王子セミナーハウスの新しい食堂
 毎年夏の合宿例会でお世話になっている八王子セミナーハウスに、食堂の建物が新築された。例会前に取材すると、斜面を利用して明るく広い素敵な施設だった。ウッディーなあたたかみのある内装、奥にはテラス席もある。例会会場の交友館の隣、宿舎のさくら館の裏と、動線も短縮されて大変快適になった。
 

弾性・非弾性ボール・大、中、小 舩田さんの発表
 舩田さんは弾性ボール・非弾性ボールのセットを、大中小3種類持参して見せてくれた。特に写真の「大」は巨大で、注目を集めた。衝突は2物体間の現象である。非弾性ボールは、固い床に落とすとほとんど跳ねないが、梱包用緩衝材(いわゆる「プチプチ」)など弾力のあるものを間にはさむとよく弾む。ただし、大きな非弾性ボールは50cmを超える高さから落とすとプチプチの弾性限界を超え、気泡が破裂してしまう。
 

本物の定規 高橋さんの発表
 ものさしの目盛りは「太さ」があって、正確にはどこが正しい位置なのかわからない。これはどんなに線を細くしても解決しない。コクヨが限定販売している「本物の定規」は、1 mmずつ白と黒で色分けすることで、「境界」が目盛りを指すように作られている。原理的に「太さがない」から正確だというわけだ。もちろん、これまでの定規で誰も困っていないので、これはこだわり屋の楽しみである。しかも、高橋さんの感想は、「使いにくい」とのこと。
 

MIT 益田さんの発表
 マサチューセッツ工科大学(MIT)の売店で販売している、お土産のチョコレートの包み紙にはなにやら不思議な文字が並んでいる。でもどこかで見たことがあるような・・・。物理をかじった人なら、クスリとほほえみがこぼれる、知的で粋なデザインだ。
 ヒントは、質量・エネルギーの等価関係、虚数単位、理想気体の状態方程式。ほとんど「答え」だね。

ジャンピング・トイ 益田さんの即売会
 かつて、物理教育の現場で流行った玩具のトップテンに入る「ジャンピング・トイ」。この頃見かけなかったが、益田さんは写真の「ドキドキ・ジャンプ」(丸新玩具)という似た商品を発見。まとめ買いして例会で分けてくれた。
 「掘り出し物を見つけたら、買い占めてきて仲間に分ける」のがYPCの掟である。

どきどき・ロケット 天野さんの発表
 益田さんのドキドキ・ジャンプの紹介があったが、合宿の3日前に、天野さんも偶然同じような仕掛けがふと頭にうかんで、ゴム動力のロケット?をつくってみた。KIRINの生茶のキャップとMEIJI LG21のキャップの絶妙のすりあわせが、ゴムの張力といい感じに調和してちょうどよい時限装置になる。安全のために、先頭と底にフロアーマットの切れ端を付けた。
 

温度計なしでほぼ100%成功するカルメ焼き 天野さんの発表
 天野さんは、温度計を使わずに、カルメ焼きの実験の成功率を高める方法を開発した。
【用意するもの】百均の焼き網(2組4枚)・お玉じゃくし・アルコールランプ・燃料・三温糖・卵白・重曹・大スプーン・割り箸2膳・深めのブラコップ・紙コップ3個・濡れ雑巾・乾いた雑巾
 お玉に大さじ2杯程の三温糖を入れ、水をヒタヒタになるくらい入れる。熱源はアルコールランプを使うのがコツ。火力が弱いので時間はかかるが(約5分)、火から下ろすタイミング(かき混ぜるタイミング)がに余裕ができ失敗が減る。
 紙コップに底から1cmほど卵白、もう一つの紙コップに底から1cmほど重曹を入れて準備。割り箸の太い方に、卵白・重曹の順につけ、最後におまじないとして三温糖を少量つけておく。この箸は、後で攪拌に使う。
 次が勘所である。プラコップに水を入れ、もう一膳の新しい割り箸の太い方で加熱中のお玉のカルメラをちょっとすくい、コップの水に落とす。カルメラが水中を降下する姿で、火から下ろすタイミングをはかるのだ。初めのうちは落としたカルメラは溶けながらゆらゆらと落ちる。粘度が増してくると、天使の輪のような形、さらにUFO(円盤)の形で落ちるようになる。
 

 さらに加熱を続けると、水に落としたカルメラがオタマジャクシような形状で降下するようになる。この時がベストタイミングだ。慌てずゆっくりとお玉を火から下ろしアルコールランプの火を消す。
 お玉の泡が無くなる迄(5秒ほど)待ち、軽く絞った濡れ雑巾の上に置き、ジュッといったらすかさず乾いた雑巾の上に移動し、少し(2秒ほど)待つ。ここで先ほど用意しておいた撹拌用の割り箸で、卵白・重曹がカルメラに均等に混ざるように力強く攪拌する。7秒くらいで早回しをやめ、カルメラを整え(ゆっくり回し)箸を上げれば、5秒ほどで膨らんできてカルメ焼きが完成する。最後の2秒程は空中で、熱を逃すように撹拌するとなおよい。
 以下は天野さん提供のミニ知識:カルメ焼きはいつからあるのか?
 「終戦後 日本が食料危機の時、世界各国から食料援助を受けたそうです。その中、キューバから砂糖が届いた。精製されていないこともあり、これを食べる方法として東京の人が考えたと、昔聞いことがあります。」
 

手作りマグデブルグ半球 天野さんの販売コーナー
 以前の例会で好評だったプラスチックのお茶碗で作ったマグデブルグ半球の販売コーナー。改造空気ポンプで空気を抜くとかなり強く引いても離れない。
 

牛乳パックを用いた「電気ブランコ」の製作 平野さんの工作会
 今年の合宿例会の工作会では、牛乳パックを用いた「電気ブランコ」の製作を行った。中学校ではフレミングの左手の法則を「電流が磁界から受ける力」の節で学習するが、各社の教科書の記述では、生徒のみならず教師でさえ、『電流の向きと磁界の向きのはさむ角が直角でなければ電流は力を受けない』と誤解してしまうことが多い。また、電流が磁界から受ける力のようすを演示する市販の実験器は高価であるのに、電流と磁界の向きの関係が直角に固定されているばかりでなく、磁界の向きを逆転させるときにも手間がかかる。しかも、すぐに導通状態が悪くなり、次年度には調整が必要になることが多くある。今回製作した実験器は、これらの短所をすべて解消できていて、しかも小学校低学年でもできる製作方法となっている。
 

 材料は、ダイソーの超強力マグネット(2個108円のネオジム磁石)、アルミホイル、ゼムクリップ、牛乳パック、電池周辺の配線器具である。写真の通り構造は簡単。子どもでもすぐに作れそうだ。アルミホイルを磁石になるべく接近して緩く張り渡すのがポイントだ。
 

 電池の代わりにゼネコンを使うと、ハンドルの回転方向を逆転するたびに、アルミホイルがはためく。電流の逆転、磁場の逆転による力の向きの変化が簡単に確かめられる。
 

LANケーブルを用いた「パスカル電線」 阿部さんの発表
 かつて、「京都パスカル」の杉原和男さんが開発した「パスカル電線」S-cable(super cable)なる物理教具があり、一世を風靡した。2013年11月の例会でも市原さんが紹介している。写真は千葉おもしろ物理研究班で製作した、LANケーブルの両端をコネクタに差し込むだけで「パスカル電線」と同じ仕組みができあがるアダプター。LANケーブルは8本の細い線を束ねてあるが、それらをひとつずつずらして接続することで全部の線が直列につながって、一気に8回巻きの大きなコイルができあがる。これを仮に10回とぐろを巻かせれば、80回巻のコイルと同じはたらきをする。電流が作る磁界、電流が磁界から受ける力、電磁誘導などの実験に幅広く活用できる。例会では千葉おもしろ物理研究班の残りものを分けていただいた。参加者は思わぬお土産に大喜び。
 

CGS単位系の話 田代さんの発表、宮崎さんの資料提供
 前回例会の続きの議論(勉強会)を合宿例会の機会にじっくりやることになった。
 議論の論点はいろいろあるが、例えば田代さんは、高校物理で電気に関するクーロンの法則のところでk=9×109Nm2/C2という比例定数がなぜ突然登場するのか、なんとも気持ちが悪い。初学の高校生も同様の疑問を持つ。しかもここでは単位C(クーロン)は未定義のまま使われる。
 掘り下げればkの中に光速度cが隠れ潜んでいることがわかってくる。cが隠れ潜んでいようと顕在していようと、誰かが精密な測定をしたはずである。それが1856年のウェーバーとコールラウシュによるCGSの静電単位系の電荷と電磁単位系の電荷の比の測定だった。それは数量的だけでなく次元を含めても光の速度であった。
 現在の教科書は中学も高校もSI単位系で統一されているのでやむを得ないが、高校物理の電磁気は入口のところで釈然としないもやもや感を残したまま授業が進んでいく。しかも、時間の関係でその種明かしと感動的な背景には深く触れることなく授業が終わってしまうのである。
 田代さんの発表資料に加えて、今回の例会には参加できなかった宮崎さんからの討議資料が配付され、市江さんから紹介があった。詳しくはYPCニュースを。
 時間をかけて詳しく読み解くうち、「田代さんの言いたいことがやっとわかった。」といった反応も参加者からあった。

夕食 
 夕食と入浴で18時から20時までは休憩。新装なった木の香り漂う食堂で食事をとる。周りはやはり若い学生が多い。この一角だけ平均年齢が高い気が・・・。

第2部兼二次会に突入
 20時から24時は合宿例会第2部。セミナー室につまみと飲み物を持ち込んで、二次会を兼ねながらワイワイやる。これが合宿例会の楽しみである。時間を気にせずじっくり討論できる。酒が入ると言いたいことも歯に衣着せずに言える。
 

ファイアーダンス 阿部さんの発表
 辺りが暗くなるのを待って、合宿例会ならではのアトラクションが披露された。阿部さんのパフォーマンスはファイアーダンス。スチールウールを仕込んだ泡立て器にひもをつけ、火をつけて振り回す。スチールウールの火の粉が飛び散って、まるで火の輪の中に人がいるようだ。長時間(1秒程度)露光した写真(益田さん撮影)を見ると、火の粉はきれいに接線方向に飛び出し、風に流されながらもそれぞれ放物線を描こうとしていることがわかる。観衆からは思わず歓声が上がった。動画(movファイル5.7MB)はここ。高橋さん撮影のハイスピードムービーはこちら
 

ハイパームチ 越さんの紹介
 越さんは、今年の科教協広島大会で、広島の土肥さんに教えて頂いたハイパームチを紹介してくれた。幅1㎝、長さ約1.2mの荷造り用の布ベルトの先端付近に穴を開け、長さ15㎝程度のスズランテープを結び付けたもの。スズランテープが広がらないように、途中数か所に結び目を付けておく。布ベルトの他端は、丸棒(長さ50㎝程度)にビニールテープでしっかり留めておく。このスズランテープ付けるだけで、より鋭い破裂音(衝撃波によるものか?)が出る。ベルトの先端部や穴に合成ゴム系の接着剤を付けて固めておくと、ほつれなくて良い。ムチの衝撃波については2010年2月例会でも紹介されている。音声付き動画(movファイル2.0MB)はここ
 

授業研究:運動の第二法則の実験とその周辺 長舩さんの発表
 長舩さんは、高二物理基礎(理系)を対象に、以前の教科書にある台車に糸をつけておもりで引く実験の報告をしてくれた。以下、長舩さん自身のレポートから。
 実験A「おもりで張力を変える測定」と実験B「台車を4台まで重ねて質量を変える測定」をする。実験Aではおもりは25g/1個を2個ずつ増やし、①50g、②100g、③150g、④200gという要領で班ごとに実験。加速度とおもりの数でグラフを描く。実験Bではおもりを8個に固定して、台車を1台ずつ重ねていく。これは1つ代表の班を決め、そこに各班の台車を持ち寄ってクラスで1つのデータを得て共有した。
 実際この実験ではaとFが比例しないが、ma=Fを学ぶ前にやる流れでこの実験を実施し、加速度aと力Fのおおよそ比例関係、加速度aと質量mのおおよそ反比例の関係に気づくことを目的とした。運動方程式を一通り学び、例題も解いたあとで再度この実験に戻り、aとmが比例していないことを確認し、台車におもりをのせてやれば理論通りにいくことを再学習した。
 例会では、この方法では比例していない事実をしっかり考察させる、検証実験として実施して台車にもおもりをのせて比例するようにする、ゴムの本数を変えて引く実験でも十分ではないだろうか、関係性を見出すには最低5プロットは必要ではないか、質量変化では班ごとに分担してデータを共有してプロットを増やしていくとよい、など反省点が多岐に渡った。本当に皆さんに見ていただいてよかった。しっかり改善して次に臨みたい。
 

 さらに、運動方程式を計算しなくても感覚的に加速度の大小関係を身につける課題方式の問題についても議論をお願いし、ここでも貴重な意見をいただいた。わざわざ誤概念を誘導、誘発するようなことはせず、生徒どうしが議論する中でゴールできるように課題設定をし、途中で気づけるステップをしっかり用意する仕組みを考える大切さを再認識した。
また、ご意見伺いとして力センサーで摩擦力の測定をする演示実験で、垂直抗力Nを変化させて摩擦力の大きさが変化することを示す実験方法はないか意見をお願いした。案として、①手で上から押す、②おもりにヘリウムガスの風船をつける、③バネばかりで上に引く、が挙げられた。測定もおもりを直接引かなくても敷いた板を引いてもよいなど案が出された。いずれも挑戦して結果を報告したい。

授業研究:中3運動と力学の授業 鈴木さんの発表
 鈴木さんは、今年の6月例会で報告した中3の力学の授業を、その後の展開を踏まえて、科教協広島大会に報告したものを、例会でも報告した。以下、鈴木さん自身のコメント。

 前半はほとんど高校物理基礎と同じ展開で、その内容は、主には東京物理サークルの「たのしくわかる物理100時間」(新生出版・新装版が日本評論社から出ている)のプランや、数十年かけて高校で実践してきたプリントを使っている。
 それと違うのは最後の、力を受けないときに物体がどう運動するかを滑車を使って縦に見せる実験をもとにした課題である。大月書店の「学び合い高めう中学理科の授業」にある課題だ。これは実際の実験を、今年春に行われた「神奈川の理科教育を考える集い」で、埼玉の小野洋さんが実際にやるのを見て、非常に効果的だと感じて取り入れた。
 文書でいくら重要性や有効性を強調されても、実際に見ないとその意義がわからない。私自身、これまでも聞いたことのある課題だったが、実際に見て感銘を受けて取り入れることにした。今回の例会でも、ぜひ皆さんに見てもらうべきだと思い、車での参加なので装置を持参した。

 レポートの主題は、中学の理科では何を到達目標とすべきか、ということだった。「学び合い高め合う中学理科の授業」では、「運動している物体が受けている力の合力が0の時、その物体は等速直線運動を続ける。」と設定している。私もそこに目標を置くべきだと考え、授業を展開した。しかし、実際にはそれが実現できたとは言い切れない。中学でも高校でも、伏線的にこの目標に迫っていくべきだ、と再確認した。もちろん、高校ではさらに運動の法則につなげたり、v-tグラフの傾きや面積などに深めていくことが必要だ。
 

GPSデータロガー比べ 山本の発表
 本年4月例会で、CanMore社のUSB接続超小型GPSロガーGT-730FL-Sの紹介をした。その後、この記事に興味を持ってくださった、暁星の宮田さんが上位機種GT-740FL(Sport Logbook)を購入されたので、拝借して両者の性能比較を試みた。
 左の写真、740(左)は730(右)の姉妹機で、価格は650円高い4450円(秋月電子調べ)である。本体とキャップは防水仕様になっていて、右の写真のように腕などにつけられるベルト式のソフトケースが付属している。ストラップ取り付け穴はない。
 

 両者ともGPSセンサとデータ処理系は共通のチップ(SiRFstarIV)を使っている。付属処理ソフトも共通である。両者の大きな違いは、730がリチウムイオン電池で満充電時約12時間駆動なのに対し、740はリチウムポリマー充電池で最大50時間駆動をうたっている点である。
 730では最後まで追跡できなかった「郵便屋さんの収集・配達経路」は740では投函から配達までもれなく追跡できた。左は自宅近くの配達員の動き。
 チップが同じなのにこれほどの持続時間の差が出るのはなぜだろうか。

 両者を共に動作させながら、神戸の甲南大で行われた物理教育学会評議員会に携行した。GoogleEarthにそのログを落としたものを比較して示す。左が730、右が740である。阪急の岡本駅で下車して迷いながら甲南大にたどりつく経路が記録されている。両者の測定データは精度も含めてほとんど同じであるが、大きな違いは、730が建物に入って十分な衛星電波が受信できなくなっても計測を繰り返していて、精度の落ちた乱れた位置データを記録し続けているのに対し、740は会議中測定をやめていることである。右のマップには帰路のデータがない。途中停止して、帰路は別ファイルとしているからである。
 秋月の製品情報によると、740は加速度センサも内蔵していて、5分間静止する、あるいは衛星を見失うとロギングを停止してバッテリーを温存する仕様らしい。この辺を承知した上で使いこなすとよいと思う。なお、両機とも、バッテリー持続時間は測定頻度に依存する。今回はデフォルトの5秒間隔の測定モードで比較している。
 

おだんごパズル 高橋さんの紹介
 北海道の前崎彰宏さんが考案したパズルで、20個の球をピラミッド型に積み上げた形が最終形。球は4つずつくっついていて、簡単にはピラミッドにならない。最大の特徴は、4つのピースが全く同じ形をしていること。前崎さんが調べた限りほかで同じものはなかった。同じもの4つということから「フォーセイム」と名付けたとのこと。同じ球が20個あれば、発泡スチロールでも木でも金属でも簡単に作れる。『たのしい授業」(仮説社)2017年5月号に詳しい解説がある。
 

骨伝導ヘッドホン 高橋さんの発表
 頭につけて、耳には差し込まなくても聞こえる骨伝導方式のヘッドホン。Bluetoothでワイヤレス接続できる。通常の音量だと単体では全く聞こえないのに頭につけるとよく聞こえる。耳の近くにつけたほうがよく聞こえるようだ。
 余談:製品名がBATBANDということから、高橋さんはこれをコウモリ(bat)の声(超音波)を聞く装置だと思い込んでクラウドファンディングで購入。一年以上たって届いたのは普通のヘッドホンだったというオチ。
 

坂上り滑り台 市江さんの発表
 鎌倉学園科学部では、2年ほど前から錯覚をテーマに、学園祭でも体験型エイムズの部屋の製作などに取り組んできた。科学の祭典でも手軽に作れる錯覚ネタを出展すべく、明治大学杉原厚吉先生の作品「なんでも吸引4方向すべり台」を参考に鎌倉学園の科学部の生徒が工夫したものだ。今年の科学の祭典全国大会に出展している。詳しくはYPCニュース352号の記事を参照されたい。
 

 下左は上の写真の装置を作るための型紙。科学の祭典用に簡素化に工夫が凝らされている。右は元祖「4方向すべり台」の再現モデル。
 

私の考える放射線リテラシー 市江さんの発表
 原発事故以来、放射線・放射能についての話題を見聞きすることが多くなり、それに合わせた放射線・放射能の授業が求められている。安価で手軽に入手できる線量率計も増えているが、一般の人々が計測したその値がどの程度のものかを判断するのは、敷居が高いのが現状だ。政府もいろいろなガイドラインを公表しているが、なかなか浸透していない。市販されている線量率計の単位はμSv/hであるのに対し、モニタリングポストの数値はnGy/hで表記されている。せめて手元の測定器の数値とネットで公開されている各地のモニタリングポストの数値を比較できる程度の知識は、リテラシーとして必要ではないだろうか?
 

 市江さんは、そのための放射線リテラシーとして以下の4つを提言している。
1.放射線には種類があり、身近な測定器は、γ線を測定するものが多いこと。
2.γ線を測る測定器間では1Gy≒1Svとしてよいこと。
3.測定しているのは、1時間あたりの値であり、国の基準は、1年間の積算値であること。
4.γ線を測るタイプで測定しているのは、放射線の一部で、自然放射線にはその他にラドンの吸入や食物の摂取による内部被ばくなども含まれていること。
 詳しくは次号YPCニュースの記事を参照されたい。
 

8/21アメリカ横断皆既日食 越さんの発表
 越さんは、8/21のアメリカ横断皆既日食の観測結果について報告してくれた。
 アメリカ北西部、オレゴン州セイラムの西、ステイトンという皆既帯の中心に位置する小さな街のマックの駐車場で観測、撮影。午前9時5分に欠け初め、10時17分から約2分間の皆既、11時30分頃、欠け終わり。連続写真は同行の唐杉氏が300㎜望遠で、皆既前後はNDフィルターで8000分の1程度に減光し、5分毎に撮影したもの。
 

 写真左は、三日月形の木漏れ日、写真右 は、厚紙に直径1㎝程度の丸穴を「YPC」の文字に沿って開け、投影した日食像。YPCへの何よりのお土産だ。iPhoneによる動画1は、皆既前は日食メガネをフィルターとして使用。動画2で皆既中の太陽の左下に見えるのは木星だと思われる。皆既中は夕暮れ後の青みがかった夜空、地平線近くは夕暮れ時の赤みがかった空。急に暗くなると、鳥が飛び立ったり、街灯が点灯したり。皆既前後のダイヤモンドリングに、大きな歓声が沸いたという。
 

 下は、同行した唐杉さん提供の食の経過のまとめ写真。次回例会でプリントアウトが配布されるそうだ。楽しみ!
 

オーロラ 舩田さんの発表
 舩田さんがオーロラに関心を持ったのは茨城県の里美村で撮影された低緯度オーロラの写真を見せてもらってからだ。関東でも見られるのだと驚いた。「物理実験室でつくってみませんか?」と生徒に投げかけ応募、「物理実験室で高校生初のオーロラ観測」と新聞に載った。
 その舩田さんが今回、実物を見たいと思いイエローナイフに遠征した。例会ではベストコレクションDVD(写真左)を皆で視聴した。右の写真は舩田さんの奥様が現地で撮影した実写のオーロラの画像。
 

授業でのモデルの有効性と限界 鈴木さんの発表
 『理科教室』の来年2月号の特集「授業でのモデルの有効性と限界」の趣旨を、例会で検討した。鈴木さんがこの特集を組むことを編集部で提案して実現し、すずきさん自身が担当になっている。本来は編集会議で行う検討だが(もちろん、数回の編集会議で検討しているが)、こういう相談ができるのも、サークルの良いところ。「モデル」の是非について、議論がいろいろあるところ。それを記事にしたい。YPC関係者も執筆陣に名前を連ねる予定。詳しくは『理科教室』2月号の誌面を!


朝食  24時に宿舎の部屋に引き上げてからも尽きることなく科学談義は続いたと思うが、実のところレポーター酩酊のためその後の記憶がない。
 二日酔い気味の方もいたのではないかと思うが、全員元気で朝食には顔をそろえた。朝食は以前より若干値上がりしたが、内容は大変充実していて満足のいく食事だった。
 朝食後は流れ解散。あ~楽しかった!また来年もやろうねー。


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