例会速報 2018/02/25 東京学芸大学附属高等学校


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授業研究:CTスキャンの原理 市原さんの発表
 市原さんが実践事例として紹介してくれたのは、学芸大学附属高校に以前勤めていた、金城先生・川角先生達が開発した実験である。
 「放射線を使って見えないものを見る」というタイトルで、「物理教育」第52巻第4号(2004)に論文掲載されている。
 はかるくん(写真はMr.Gamma)と教育用放射線源133Ba370kBqを利用して、ブラックボックス内の遮蔽物(単一の乾電池)の個数と配置を当てるゲーム仕立てになっている。縦の列と横の列を、それぞれスキャンして、線量の減衰度合いから、その列に何個電池が入っているかを判断し、配置を推測する。
 授業の狙いとしては、まずはかるくんで放射線源が無い状態での自然放射線量を計測し、どの程度の値になるか(今回では0.053μSv/h程度だった)、放射線源を使ってデータを取って、どの程度になるかを体験してもらうこと。そして、その程度の数値は問題ない値である、という、量的感覚を今後「身につけていかなければならない」ということに気づかせたい。どのくらいの値が平気で、どの程度になると危険なのか、ということも、将来考えられるようになってほしいと、市原さんは考えている。
 

 班対抗のようにして、乾電池の配置も生徒に考えさせているが、一意に決まるように配列するのが意外と難しい。パズル的な要素がある。右下の写真のように配置が一意に決まらない問題を出した班は失格である。
 データのばらつきで、2個なのか3個なのか、判断に困る数値が出ることもある。放射性崩壊は確率過程なのでそういうこともある。もう一度測定し直すか、えいやっ、っと決めてしまうことも時には必要だと教える。現状、最終判断を下すのは人間なのだし、見えているものが全てではない、ということも暗に伝えたい。
 NHK高校講座物理基礎の第40回「放射線と原子力 ~原子核のエネルギー~」の中でも、放射線の透過性の1分30秒頃から、同様の実験が紹介されている。
 

授業研究:簡易霧箱のノウハウ 小沢さんの発表
 ガラス製のスポンジ型(直径18cm)を容器として使う霧箱の紹介。よく知られた実験だが、実験者それぞれのちょっとしたノウハウがあるようで、今回は小沢さんの実践例を紹介してもらった。
 ドライアイス500gをジップロック(フリーザーバッグM、小さなあなを開けておく)の中に入れ、木づち等で細かく砕く。接触面積を大きく、かつ容器を水平に置く「ドライアイスの座布団」を作る。容器の底には黒い画用紙を敷いておく。無水エタノールをティッシュにたっぷりしみこませ、写真のように、側面にかける。しばらく待つと、黒い紙が濡れてくる。このとき、紙と容器を密着させるとよい。
 

 線源のランタンマントルを真ん中に置き、容器をラップで覆う。(ただし、最近販売されているランタンマントルは放射線が出ないとの情報あり。)中の気流が落ち着くと、容器下部と上部の間に温度勾配がつくられエタノールの過飽和層ができる。そこをα線が飛ぶと「飛跡」が観察できる。
 LEDライトを横からあて、上から覗き込むように観察すると見やすい。ラップの上を乾いたティッシュで撫でてやると、ラップに生じた静電気で容器内の雑イオンが除去され、さらによく見えるようになる。条件が良ければ、線源無しで、自然放射線を観察することもできる。
 

中学の教科書より 益田さんの発表
 「放射能」という用語は「物質が放射線を放出する性質・現象」の意味で用いられる場合と、慣用として「放射性物質・放射性核種」の意味で用いられる場合があり、まぎらわしい。さらに「放射能が出る」のように「放射線」の意味で用いる誤用のもとでもある。「放射能もれ」などというと、放射性物質がもれているのか、放射線がもれているのかと混乱を生みやすいので、教科書や授業では「放射能」ということばはなるべく用いないようにしたい。
 左は東京書籍の中学校教科書の記述例である。「残っている」という表現を見ると、ここでの「放射能」は「放射性核種の量」という物質的な意味で用いられているようである。それならばはっきりと「放射性のある原子の個数」と書けばよい。
 「物質が放射線を出す能力」の意味で用いているなら、2文目にもっと適切な表現があるだろう。「放射能」という用語を用いたために曖昧になっている例である。

福島視察 水野さんの発表
 水野さんは、昨年11月15日~16日の1泊2日の日程で、神奈川私学退職者の会が企画した福島原発被災地視察旅行に参加してきた。
 訪れたのは、Jヴィレッジ・楢葉町の宝鏡寺・富岡町夜の森地区・富岡第二中学校・浪江町役場・希望の牧場(浪江町)・浪江町周辺・南相馬市小高区である。現地取材の写真をスライドにして、パワーポイントでレポートしてくれた。
 「実際に現地に行ってみないと実感として分からないことがいくつもあった」と水野さんは語る。。訪れたのはいずれも福島第一原発周辺地域で、いまだに帰還困難区域に指定されているところとその周辺地域だ。11人の参加で、マイクロバスを利用して回ったが、放射線量はバスの中でも、横浜の放射線量に比べて10倍以上あり、外に出ればそのまた数倍あるというところばかりだった。
 

 いたるところに除染で出たものを袋詰めしたフレコンバッグの山があり(写真右)、使われなくなった田畑には太陽光発電パネルが敷き詰められていた。最初に訪れたJヴィレッジは、今はもう原発作業員をはじめ、だれも使っておらず、サッカー場には、2011年3月11日の地震のあった時刻で止まったままの時計があった。時が止まったままと感じる場所はあちこちにあったが、その中でも富岡第二中学校の体育館を見学したときは言葉がなかったという。ちょうどその日、富岡第二中学校は卒業式で、体育館は卒業式の飾り付けのままの姿で6年以上放置されているのだ。この学校は閉校されたままである。
 

 お話を伺った方々が言っておられたのは、帰還が許されても実際に帰って来たのは数%から多くて20%ほどで、その大半がお年寄りだとのこと。6年以上も経過すれば、移転先での生活があり、インフラ整備も整っていない所に帰る踏ん切りがつかない方が多くいるということだ。「希望の牧場」の吉沢さんは、売ることもかなわない、殺処分するのは忍びない300頭の牛の世話をしておられる(写真右)。復興のかけ声の中、いまだ普通の生活ができない方々が大勢おられることを、決して忘れないでいようと思わされた旅行だった。
 

モーターと発電機の模型 武捨さんの発表
 科教協やAPEJで見た自作模型に刺激を受けた武捨さんは、モーター・発電機モデルを自分でも作ってみた。
 ひとつの装置でモーター(整流子あり・なし)と発電機の両方を演示できること、教科書に載っている図を再現することを目標に、できるだけシンプルに作るように心掛けた。コイルは0.35mmエナメル導線を100回巻き、軸は外径0.8mm内径0.6mmアクリルパイプ、界磁はケニスの100mm角型フェライト磁石。工夫した点は、スムーズに回転するようにベアリングを用いたこと、配線を軸(アクリルパイプ)の中に通したこと、ブラシとの接触部(整流子)に粘着面も導電性のある「導電性銅箔テープ」を用いたこと、ブラシの支持にストロー(適度な弾性)を用いたこと、接触不良を防ぐためにブラシとコイルの端子に「接点復活剤」を塗布したこと、界磁用の板磁石の支持に100円ショップのディスプレイ台(コの字)を用いたこと、回路の切り替えにトグルスイッチを用いたこと。
 

 整流子ありの端子(写真左)に1.5V単1乾電池(1個または2個)をつなぐと、コイルがスムーズに回転をはじめる。動画(movファイル4.3MB)はここ。一方、整流子なしの端子につなぐと回転しないが、トグルスイッチで「逆転スイッチ」をつくり、電池の正負の接続を半回転ごとにタイミングよく切り替えると、回転させ続けることができる。「手動交流」によるモーターというわけだ。動画(movファイル2.0MB)はここ
 

 電池のかわりにオシロスコープをつなぎ、手でコイルを回転させると、コイルに誘導起電力が生じることを観察できる。例会では失敗したが、うまくできると写真右のようになる。武捨さんは、この出力波形をつかって、全波整流や平滑も演示できないかと目論んでいる。
 

コイルだけのモーター +α 天野さんの発表
 20年くらい前に、秋山仁さんの関係するコンテストに発表してボツになったという天野さんのオリジナル作品。磁石なしで動くクリップモーターである。φ(直径)0.5mmを約3m、単三電池に40~50回巻いてコイルをつくる。回転子の巻き数は5回ほど。電源は単三電池2本。


 さらに、回転子をコイルではなく、磁石にしたものもつくってみた。簡単にできる。回転子は左の写真のように、軸をS字型にして、ネオジム磁石ではさむだけ。回転子がある角度になった時だけ、界磁のコイルに電流が流れるしくみだ。動画(movファイル3.2MB)はここ


モーター説明盤 山本による紹介
 モーターネタが続いたのでついでに紹介。「おもしろ科学たんけん工房」というNPO団体が横浜市を拠点に活動している。子どもたちにものづくりを通して科学を学んでもらおうという「おもしろ科学体験塾」を各地で開催している。そのメニューのうち「モーターと発電機」の教室で、直流3極モーターを分解してその動作原理を学習するプログラムがあり、そこで使われている島田さん作の説明盤が秀逸だったので例会で紹介した。
 写真のようなA5サイズのスチレンボードに界磁とブラシを描き、回転子を印刷したOHPシートを押しピンでとりつける。ブラシの+極からたどって、コイルに「右手親指の関係」を適用し、ぞれぞれのコイルの極性を判定して、NまたはSの付箋を貼る。界磁の極性と見比べると回転方向が一意に決まることがわかる。下図の場合は時計回りとなる。60度ずつ回転させながら、コイルの極性が切り替わる様子を各自で調べて、回転が持続することを納得する。ブラシの極性を入れ替えて、逆回りになることも確かめられる。
 体験塾ではこの説明盤を参加者全員に配り、一人ひとりに作業を通じて納得させている。中学高校の教材としても使えそうだ。
 

Wスリット間隔連続可変ヤングの実験 山本の発表
 Wスリットによる光の干渉実験、いわゆる「ヤングの実験」で、二つのスリットの間隔dを連続的に変化させてみたいと思ったことはないだろうか。これが意外と簡単にできるのである。方法はこうだ。
 まず、スライドグラスに墨汁を塗ってよく乾かす。次に、その上に定規を当てて、カッターナイフの先で墨汁膜に傷をつける。これがスリットになる。さらにもう1本、先に引いた線とクロスするように傷をつける。これで連続可変Wスリットのできあがり。スリット間隔は両端の一番離れたところで1mm以内。交点では当然0になる。(写真左)
 こうして作ったクロススリットをダイソーのミニバイスではさんでレーザー光源のすぐ前に立て、ラボラトリージャッキなどを使って、なめらかに昇降できるようにする。(写真右)
 

 部屋は薄暗くして、スクリーンまでの距離を5m程度とる(写真左)。レーザービームが墨汁膜の傷の所に当たるようにすると、スクリーン上に干渉縞が現れる(写真右)。二つのスリット(傷)の間隔dが広いところから始めると、間隔Δxの狭い干渉縞が観察される。
 

 ジャッキを操作して、ビームが当たる点を交点に向かってゆっくり移動していくと、dが小さくなるにつれ、Δxはしだいに大きくなり干渉縞が広がっていく(写真左)。交点を迎えると単スリットの干渉となり、中央の光点が幅広くなる(写真右)。さらに動かしていくと、二つの傷の交点を過ぎてdが再び大きくなるので、干渉縞は逆に細かくなっていく。干渉縞の連続的な変化の動画(movファイル7.6MB)はここ
 

ゆびさき風車 山本による紹介
 昨年の「たのしい授業」誌(仮説社)で流行した「ゆびさき風車」のやり方を、理科ハウスの山浦さんから教わったので、例会で伝達講習した。薄くて比較的しっかりした長方形の紙を写真のようにトレイ形に折り、トレイの底の裏側中央に当たる部分に人差し指の先をあてて進めると、紙が自然にプロペラのように回り出す。動画(movファイル1.4MB)はここ。材料は薬包紙を半分に切ったもの、セロファン紙、脂取り紙などでもできるそうだが、山浦さんから分けてもらったのは、写真の「手巻きタバコ用の巻紙」である。50枚入り1パック100円程度だそうだ。
 まっすぐ進むのをマスターしたら、次は自分の体軸を中心にその場で旋回(目が回る!)、究極の技は「その場で連続8の字飛行」だそうだ。YPCではまだ8の字に成功した人はいない。なぜ回転するのかの説明も含めて、ぜひ挑戦してみよう。
 

新学習指導要領の小学校3年音の単元実験紹介 門倉さんの発表
 門倉さんは、2月に相模原市の小学校の理科教育研究会で行った講演の資料を紹介してくれた。パワーポイントスライドはこちら
 平成32年度より実施される小学校学習指導要領の最も大きな変更は、約20年ぶりに音の単元が復活することだ。しかし、現在の小学校教員の多くは、小学校で音の単元を扱っていない。そこで、過去の教科書に掲載されていた内容や小学校で扱える教材を集めた。
<100円ショップのオモチャ>
 以前、100円ショップで購入した、音が出る電話とマイクのオモチャ。電話のオモチャは、ボタンを押すとそれぞれ異なった音が鳴り、それに合わせてスピーカーの上のスチロール玉が飛び跳ねる。動画(movファイル2.9MB)はここ。マイクも同じ原理で、音が振動であることを確認することができる。動画(movファイル4.1MB)はここ
 

<以前の小学校教科書>
 以前の小学校理科の教科書には、日常にある物をたたいたり振ったりして音を出す実験やその音から物を当てるゲームが紹介されていた(写真左)。輪ゴムをはじくこと、瓶を吹くこと、グラスハープ、楽器を鳴らす、ストロー笛、音叉、ステレオのスピーカーの音、そしてトライアングルに糸電話の糸をつなげて音を聞くことを通して、音が振動であることを理解するようになっていた。
<簡易ストリンググラフィー>
 紙コップやプラコップに糸やテグスを付けて、それを指でこする(糸の場合は、指に松ヤニを付けてこする)と振動が起きて音が出る。ただ、それを固定するのが小学生には難しいので、100円ショップの「パチッとロック」を使うと、画鋲で穴を空けて、それに通すだけでストリングフラフィーが完成する(写真右)。また、長いビニタイを使うと、ストッパーの凹凸をこするとカエルのような声が出る。
 

<ホースにロートを付けて音を聞く>
 細いビニールホースの両端にロートを付けて、「伝声管」を作る。10mの細いホースにつなげても、声が良く聞こえることから子供たちはとても驚く。できるだけ長いホースを使うと効果的だ。
<糸電話>
 音が振動であり、物体を伝わっていくことを確認する最も効果的な実験である。コップに穴を空けなくても、木綿糸(滑りにくいのでテープでつきやすい)とテープを使えば、簡単に糸電話ができる。声を出しながら、糸に触れると振動がわる。指で挟んで振動を止めると、音が伝わらなくなる。いくつかの糸電話の糸を交差すると、全てに音が伝わるようになる。このごろは幼時に糸電話遊びを経験していない人が増えてきたそうだ。
<エコー針金電話>
 糸電話の糸をバネに変えると、エコーがかかったように聞こえることは、既に紹介されている。ただ、バネは高価なため、針金をボールペンの軸などを使いバネ状に丸めてコップに付けると、バネと同じ効果が得られる。更に、コイルの伸ばし方等を変えると、また違った音になる。
 

<音の振動をみる>
 傘袋に小さいスチロール玉や黒ごまを入れてふくらませる。それを口に当てて大きな声を出すと、中のスチロール玉や黒ごまが飛び上がる。静電気の関係で、黒ごまが良いという意見があったが、やはりスチロール玉の方が見やすいようだ。
<声の蛇使い>
 紙コップの横に、画用紙で作った筒を差し込む。コップの口を下にして、画用紙の反響板を付けて、モールをヘビのように丸めたものを底の上に置く(写真左)。筒を使って反響板に大きな声を当てると、振動でモールが回転して、ヘビ使いのようになる。動画(movファイル2.5MB)はここ。モールが回転する原理は、かつてはやった「振動タワシ」「振動ゲジ虫」と同じである(写真右)。
 

アルミ棒楽器 古谷さんの発表
 古谷さんは、以前にアルミパイプを使った楽器(8音階+1音階)を作成し、鉄琴型の音階楽器として利用していた。この度、ひとつの曲に合わせて演奏できるように改良を加えた。また、演奏後のパイプを容易に回収できるように工夫も加えた。動画(movファイル8.3MB)はここ
 

 材料はハンズ等で販売している高価なアルミパイプではなく、アナログ時代の廃品TVアンテナを利用したことで材料費を軽減した。ただ、作成時に丁寧さを欠いたために、アルミパイプの形状が同じでも振動数に違いがあることを確かめなかったため、部分的に音がはずれてしまったことが今後の課題だという。
 

計算尺など 佐々木さんの発表
 E6-B航法計算盤という、単独飛行のパイロットが操縦桿を握ったまま片手で操作出来る円形の計算尺がある。これをベースに目的を絞り込んだものをイベントで発見!名付けて「割勘計算盤」(写真左)。外側の金額と内側の人数を合わせると、割り勘の金額が表示される仕組みだ。残念ながら8人までの設計なので、YPC二次会では活用できなかった。他にも燃費計算や各通貨の為替換算用がある。
 一方、右の写真は「素数ものさし」。京都大学の不便益システム研究所による共同企画品である。17以下の素数cmはそのまま計れるが、4cmは7-3、16cmは11+5、23cmは13+7+3など、いちいち不便だ。
 

骨伝導ヘッドホン 佐々木さんの発表
 佐々木さんが耳につけているのは「earsopen」という骨伝導イヤホン。鼓膜を使わず骨を通じて聴覚神経に振動を伝えるため、耳を塞がずに周りの音もそのまま聞こえるというもの。耳に引っ掛けてクリップで耳たぶを挟むように装着し、耳の軟骨→頭蓋骨→耳小骨と振動を伝えるらしい。独自開発により骨伝導では世界初となるハイレゾ級の音質を実現!と、クラウドファンディングで1億円を集める人気だったが、正直それほどでは・・・という佐々木さんの感想。とりあえず、周りの音が聞こえるので歩行中や作業中も安心、という感じだそうだ。音量が小さいと感じていたところ、追加でアンプも発売された。
 

放射線解説HP 佐々木さんによる情報提供
 人気本「すごい実験」(写真)などの著者で、派手なルックスとマニアックな趣味で目立ちまくりの先生、高エネルギー加速器研究機構の多田将さんが公開している放射線についての情報サイトの紹介。誤解されやすい先生だが、研究者として正しい知識を伝えたいとのご意向を伺っている。まだ完結していないが、教材としても使えるレベルだ。
 「放射線について考えよう」http://radiation.shotada.com/
 

冬季五輪ビデオ解析 小河原さんの発表
 小河原さんは、平昌オリンピックのビデオ解析結果について報告してくれた。
 スノーボードハーフパイプの最高到達点が「地面から13m程度」とNHKの番組で紹介されていたのが事の発端。ビデオ画面のコマ送り(1コマは1/30秒)で時間を測定すれば確かめることができると考えた。大雑把な計測ではあるが、平野選手が決勝3本目の最初のエアで空中にいる時間は66コマであり、エッジからの高さは5.9mほどであるとみられる。最下部からエッジまで(ハーフパイプの深さ)は、大会によって異なるようだが、5mから6mほどのようで、13mはかなりジャンプの得意な選手ということになる。
 また、フィギュアの羽生選手は、フリーの4回転ジャンプで22コマ程度の滞空時間であり、最高到達点66cmほどと計算できる。最後の4回転では着地が多少乱れたが、それでも22コマ程度の滞空時間であり、最高到達点が明らかに低くなったわけではなさそうだ。教室でバスケ部やバレー部の男子部員に垂直飛びをさせても、なかなか66cmは難しい。これは助走がないためで、助走があると最高到達点が高くなることは、力学的エネルギー保存の分野でも教材になるかもしれない。スケートのジャンプのポイントが助走が難しい順に高いことも、物理的に理にかなっている。
 NHKスペシャルでは、スピードスケートの女子パシュート日本チームの技術力が紹介されていた。先頭が最後尾に回る際、明らかに外側にふくらみ、遠回りとも思えるコースを滑っている。これはなぜか?
(番組をご覧になっていない方は、ぜひ予想してみてください。)
 答えは、「なるべく一定の速度で滑走するため」ということだ(リンクの動画では19:00あたりから説明されている)。減速して後退した後、再び追いつくために再加速するのは不経済で、体力的に不利になってしまうというわけである。
 以上、物理基礎で説明できる現象なので、4月からの授業で題材にしてみたいということである。
 

二次会学芸大学駅前「タパス&タパス」にて
 16名が参加して「カンパーイ!」。例会本体には33名が参加しているから、約半数が二次会にも出席している。今日の例会はものすごく中身が濃かった。時間が足りなくて次回送りになった発表もある。二次会の席でも情報交換、意見交換が活発に行われ、話題は尽きることがない。


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