例会速報 2018/01/14 鎌倉学園中・高等学校


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授業研究:光合成色素の吸収スペクトルの観察 市江さんの発表
 市江さんが数年前に科学の甲子園県予選に参加した生徒から聞いた実験である。詳細が不明で光合成色素の抽出が上手くいかなかったが、生物担当者から抽出方法を教わり、それを簡略化し、定性実験にしたものの紹介。
 まず大葉1枚をエタノール10mLを少しずつ加えながら、乳鉢乳棒でよくすり潰し(写真左)、それを濾過する(写真右)。
 

 ろ液に白色光を透過して、分光器で吸収スペクトルを観察する(写真左)。グレーチングシートを用いた自作の簡易分光器でも容易に観察できる(写真右)。ペーパークロマトグラフィーで定量的な実験をするときには、アセトンやメタノールの混合液などを用いるようだが、この程度の観察にはエタノールだけでも十分であることが分かった。
 

 元の連続スペクトルと見比べると、紫や青に加え、赤の一部も吸収されていることが確認できる(写真左)。この結果と生徒の生物資料集にある吸収スペクトルのグラフ(写真右)から、用いた大葉にはクロロフィルaとクロロフィルbが含まれていることが推察できる。生物選択者の生徒たちとコラボして、クロマトグラフィーまで行うのもよい。
 

誘導電流と磁石の向き 市江さんの発表
 2012年9月例会で石井信也先生が披露してくれた電磁誘導の実験。市江さんはこれを「ブンブン発電機」と呼んでいる。赤と緑のLEDを+-逆にしてコイルに並列につなぎ、ダイソーのネオジム磁石6つを強力両面テープで固定して作ったブンブンごまを回して発電する。肉眼では2つのLEDが同時に光っているように見えるが、その様子をハイスピードカメラの映像で確認すると、しっかりと交互に点滅していることがわかり、生徒からも好評だ。また、接触に問題がなくても回転数が小さい時には、赤LEDのみが、回転数が大きくなると赤緑両方がつくことも観察できる。起電力や光の波長とエネルギーの関係に結び付けて考察させるのもよい。
 

 さらに、LEDが一番明るくなる時の、磁石の向きについて考察させる。直感的には左の写真の板書の右図の磁石の向きで明るくなると予想しがちだが、実際は水平になったときに明るくなることがハイスピードカメラの映像で確認できる。起電力が磁束の大きさそのものではなく、磁束の「変化」に関係していることを実感させるよい教材となる。スローモーション動画(movファイル0.77MB)はここ
 例会では「映像がコマ落ちしていて分かりにくい」、「しっかりとオシロスコープ等で確認が必要」と指摘があった。また、磁石がはずれて飛び散ることもあるので、安全メガネは欠かせず、磁石の固定方法にはまだまだ改善の余地が残されている。
 

光通信に挑戦! 山本の発表
 藤沢市科学少年団の10月活動「電気工作」で、小4~中3の団員約100人に作らせた教材の紹介。15年以上前に、川崎市青少年科学館(現・かわさき宙(そら)と緑の科学館)のプロジェクトに協力して、YPCの有志と共に開発・製作した実験器具の簡易版である。
 左は「メロディーガン」。三端子メロディーICで高輝度LEDを駆動して音声信号で変調した光を発射する、ピストル型の光線銃である。銃身はトイレットペーパーの紙芯、銃口のフレネルレンズで集光する。右は「光スピーカー」。光信号をフォトトランジスタで受けて、圧電スピーカを駆動する。紙コップが共振器兼ホーンになっている。電気配線は紙の上に銅箔テープを貼り付け、パーツをハンダ付けする。
 

 できあがったメロディーガンで、光スピーカーのフォトトランジスタを狙って光線を送ると、スピーカーからクリスマスソングが聞こえてくる。鏡を使って光の道筋を曲げる実験も。的に当たるときは、鏡の向こうに標的が見えていて、そこにむかってまっすぐに光が進んでいるように見える。光スピーカーは電気器具の赤外線リモコンの信号も、音として受信できる。
 右は工作に必要なパーツ一覧。材料費は1セット500円ほど。電子パーツは秋月電子、銅箔テープはモノタロウ、フレネルレンズは東急ハンズで、いずれも通販で入手できる。
 少年団員用の製作マニュアル・実験解説書「光通信に挑戦!」はこちら
 

ハンドスピナーの応用 古谷さんの発表
 ハンドスピナーに瞬間接着剤を使って「平ワッシャー」を接続した。ワッシャーは、径の大小による2種類。なにも取り付けないものも含め、3種類のハンドスピナーのセンターの穴にゴルフのティーを差し込み、それぞれを回転させた。結果、おおよそ、慣性モーメントの大きいものが回転している時間が長い傾向があったが、使用したハンドスピナーが同質のものではないという、致命的な問題があり、明確な結果を示せなかった。
 古谷さんはまた、「一つの軸を逆にして独楽のように回転させる」実験にもトライしている。
 

海後さんの電動メロディーパイプ 古谷さんの紹介
 かつて、YPC会員の海後さんが作成して分けてくれたものを見つけ出し、回転数の制御可能なドリルを使用して「回転数の違いによる音階の変化=さくらさくら、の演奏」に挑んだ。例会では、バッテリーがなかったため、スライダックを使って回転数制御に挑戦。その結果は・・・。動画(movファイル7.1MB)はここ
 

108円のネオジム磁石に合うアルミパイプ 喜多さんの発表
 ネオジム磁石がアルミパイプの中を落下する様子は、喜多さんにとって「おじゃるまるのまったり感」を感じるもの、だそうだ。今まで、ネオジム磁石が高価だったので、自己所有するのにためらいがあった。しかし、百均でネオジム磁石が入手できるようになったので、それに合うアルミパイプを探したとのこと。
①D社の直径約6mmと、C社の直径約6.35mmの磁石について、アルミパイプは外径が9mm、肉厚1mm、長さ1mのものを購入。三等分して、長さ33cmとした。落下時間は、D社 2.0秒、C社 3.9秒となった。
②D社の直径約13mmと、C社の12.7mmの磁石について、アルミパイプは外径15mm、肉厚1mm、長さ1mのものを3等分33cmとした。落下時間は、D社 2.9秒、C社 2.0秒だった。
 以上の実験の結果、現時点での喜多さんお勧めの磁石・アルミパイプの組み合わせは、
C社の直径約6.35mmの磁石と、外径9mm、肉厚1mmのアルミパイプ、そしてD社の直径約13mmの磁石と、外径15mm、肉厚1mmのアルミパイプである。動画(movファイル2.7MB)はここ
 

三原色LEDライト 天野さんの発表
 ダイソーの「3LEDライト」を使った光の3原色の実験は、KRSの門倉さんのアイデアである。天野さんはフィルターをゼラチンからダイソーのカラーセロハンに変えても、同じような結果が得られることを確認した。R・G・BのLEDだとそれぞれ光の強さが異なるので、カラー調整が大変だが、光量のそろった白色LEDとカラーセロハンを使うことで、こんなに簡単に実験ができるのは驚きだ。
 

 さらに天野さんは、同じくダイソーの「LEDズームライト」(LEDは白色1個)に、120°ごとにRGBのカラーセロハンを配置したフィルターを自作してレンズの内側にはさみ、試してみた。これも結構いい感じだ。
 

 この三原色ズームライトの上に卓球ボールを置くと、置く位置によって卓球ボールの色が変化する(写真右)。これは2015年 10月例会で車田里奈さんが紹介してくれた「霜田式三原色混合器」という実験の応用だ。
 

イギリス研修で学んできた実験 車田さん夫妻の発表
 車田さん夫妻はリバプール大学で行われた「ASE Annual Conference」に参加してきた。その内容の一部が映像付きで紹介された。
 ひとつめは「エッグチョコレース」(写真右)。予め決められた材料(厚紙、セロテープ、アルミホイル)を作って舟を作る。そしてその船に卵形のチョコレートを載せて専用の水路に浮かべて走らせるレースである。コースの端の滑車にかけた紐の先にはゼムクリップがついている。そのゼムクリップを船に付け、重りに引かせて船を走らせる仕組みだ。簡単そうに思えるが船の強度、船底の形などをよく考えなければ成功しない。イギリスのエッグチョコは中までチョコが詰まっていて重く、船を浮かせるだけでも大変だそうだ。使用する厚紙の面積を少なくしたり、たくさんのチョコエッグ(最大6個)を載せて走らすことができればボーナスポイントが貰える。エッグドロップと同じように与えられた材料と知識、想像力を駆使してグループで協力しながら行うところが良いと思った。
 

 お次は「ゴム手袋バグパイプ」。硬い紙筒の口に薄手のゴム手袋を被せてセロテープでしっかり固定する。次に、ゴム手袋の小指の先をほんの少し切り落とした穴にストローをセロテープで固定する。ゴム手袋の中指の部分をしっかり引っ張って折り返すと紙筒の口にゴムの膜ができる。ゴム手袋の幕が先端にできる。ストローから息を吹き込むとゴム手袋が膨らみ、筒の先端のゴム手袋の幕が振動して音が出る(写真左)。講師の作品で太くて長い塩ビパイプで作られた物を見せてもらったが、船の汽笛のような重厚な音が出ていたとのこと。筒の太さや長さを変えて色々試してみたら面白そうだ。
 右の写真は「風船ギター」。ペンシルバルーンの先端に固結び2~3回でこぶを作り、そのこぶを普通の風船の先端まで入れる。外側から、中のペンシルバルーンと外側の風船を一緒に引っ張って、固結びをする(できなければ、タコ糸で縛って固定)。最後に外側の風船を空気口から裏返して引っ張り出すと、ペンシルバルーンとつながった風船できる。この風船を膨らまし、脇に抱えてペンシルバルーンを引きのばしてはじくと演奏ができる。
 

 最後にiPhone を風船の中に入れる「風船マジック」。風船を大きく膨らませ、iPhoneのモニター部分を風船に押し付け、風船にめり込ませながら空気を徐々に抜く(写真左)。動画(movファイル7.5MB)はここ。風船の中に入ってしまったように見えるが種明かしは右の写真のとおり。
 

阪大の物理入試問題をめぐって みんなで討論
 新年早々ニュースを賑わした、阪大の物理の入試問題の出題・採点ミスについては、YPCメンバーも関心が高く、有志がそれぞれ資料を持ち寄って討論会となった。参照した資料は 「平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて」の「公表資料」と「理科問題(物理) 〔3〕Aの解説(1月12日追記)」など。下の問4、問5が問題の箇所だ。
 

 記者は内容を評価できないらしく、新聞報道は阪大の記者発表文(左)をそのまま引きうつしただけだったが、例会での討論は、当初阪大が正答としたものは明らかに誤りで、後から追加した二つの正答のみが正しいという点で意見の一致をみた。
 阪大はなぜ不自然な音叉の「同位相振動モード」まで持ち出して、黒を白と言いくるめるように当初の「正答」を守ろうとするのか。それは、逆転ゾーンをこれ以上拡大したくない、という守勢の表れであろう。阪大は組織防衛のために科学を捨てたとも言えるだろう。

二次会大船駅前「あじたろう」にて
 14人が参加して、カンパーイ!新年初の例会は、参加者がやや少なめだったが、そのぶんゆっくりと実験や討論ができた。今日はセンターテストの当日でもあった。関東は穏やかな好天に恵まれたが、大雪に見舞われている日本海側や北海道の受験生は大変だっただろう。YPCメンバーとしては、物理の出題内容も気になるところ。「明日の授業で解説しないと」と、帰り電車の中でも教材研究に余念がない。みんなまじめだなあ。


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