例会速報 2023/02/23 関東学院中学・高等学校・Zoomハイブリッド


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授業研究:Google Workspaceを利用した授業報告益田さんの発表 
 益田さんが勤務する関東学院中高では、コロナ禍におけるリモート対応としてGoogle Workspace for Educationを選択し授業等を行ってきた。授業クラスの生徒と課題の配信、回収を行うアプリが「Classroom」である。配信や回収するファイルはGoogle Driveに収納されるが、Classroomは登録される生徒と教師間のファイル共有の設定を行ってくれる他、課題の回収の状況や採点の記録など残すことができる。
 Classroom自身に「質問」の機能がある。選択式や記述式で課題を配信することができる。選択式の「質問」は、以前の例会で報告があったクリッカーとしての機能を果たすことができる。また、記述式の「質問」は生徒の意見の交換にも利用できる。
 

 小テストをアンケート機能の「Forms」で作成し、Classroomで配信することも可能である。「質問」では一つの問題のみ作成可能であるが、「Forms」では複数の問題を作成できる。生徒の回答は瞬時に集計されるため便利である。予め解答を設定しておくことで生徒は正解不正解をすぐに知ることもできる。「Forms」で作成した小テストを複数の教員で共有しておくことで、同時展開の授業でも簡単に実施することができる。


 授業では、実験のまとめや単元のまとめに「Google スライド」を使用した。益田さんは、文章だけでなく図を使って表現させることを普段の授業でも大切にしている。初めは、教員側で図を作成し、その図の中で移動できるものを作成。図の一部を移動しながら、化学反応をイメージする。この作業をモチーフにし、ゼロからスライドを作る課題を中学入試の期間(一週間ほどの自宅学習期間になる)に課した。


 ファイルの共有形態もいろいろ選べる。教員が提示したファイルを生徒が見るだけでなく、共有したファイルに共同で書き込んだり、教員が配布したファイルに生徒が個別に手を加えたりもできる。教員も生徒のファイルを変更できるので、手助けが可能である。Google Workspaceのアプリで作成したファイルはクラウド(GoogleDrive)上に自動保存されるので、作業履歴が残り、ファイルを失うこともない。ブラウザベースでアクセスできるサービスのため、Windows、Mac等のPCのほか、iPadやAndroidタブレット、Chromebook、スマートホンでも利用できる。


 アンケート機能の利用に関しては、以前YPCでもクリッカーの報告など活発な意見交換がされている。ClassRoomでもアンケートは構成できるが、匿名アンケートならMentimeter(左図)も便利だそうだ。
 オフィスアプリの利用は、発表学習やレポート作業で活用が第一歩となるだろう。授業での活用法をいろいろと工夫して共有していきたい。
 例会では端末の用意の仕方としてBYOD(Bring Your OwnDevice)についての質問、端末の種類に関しての質問、通信インフラ関係の質問などがあって参加者の関心が高かった。

電流電圧パネルメータ 山本の発表 
 2015年に発表した「黒板演示用回路」は、今でもキットが好評をいただいている。その基本セットには含まれないオプショナルパーツとして「超小型デジタル電圧計」や「黒板演示用電流電圧計」(左写真)などを試作・発表してきた。後者は電流計と電圧計が一体となったデジタルパネルメータで、電流と電圧が同時にコンパクトに表示できるので便利である。左写真のミノムシクリップは電圧測定用、もう一方のプローブ(透明絶縁シートの両面に銅箔テープを貼って赤黒平行線をはんだ付けしたもの)は電流測定用である。電流プローブは右の写真のように、演示用回路の接続部分に挟むようにしてその点を通過する電流を測定する。この「黒板演示用電流電圧計」は秋月電子の「LEDデジタルパネルメータ」を使用していたが、単価が1000円と比較的高めで、加工も面倒なため試作にとどまっていた。


 ところがその後、同様の電流・電圧同時表示型のLEDデジタルパネルメータが、サードパーティから次々と売り出されて、単価が300円程度とだいぶ安く供給されるようになってきた。 同等品が何社かから販売されている。たとえばこちらの通販では送料込み3個999円である。中国のAliExpressで大量にまとめ買いすればさらに安く入手することも可能だと思われる。
 中国製なので説明書などなく、ポリ袋の簡易パッケージで届くが、配線は難しくない。赤と黒の太い線が電流測定用(Max10A)、黄色の細い線が電圧測定用(Max100V)で、赤黒の細い線はパネルメータ自身の回路を動作させるための電源線(4.5~30V)である。黒の太線と、黒の細線は内部でつながっていてコモンアースとなっている。電圧はこれを基準として表示される。電流計側は近似的に内部抵抗ほぼ0、電圧計側は内部抵抗無限大とみなしてよい。
 もともと、バッテリーの充電モニターや電源監視用のパーツと思われる。最低限の配線で、電流と電圧が同時に測定できるのは便利である。測定対象の負荷の+側に黄色い線をつなぎ、-側から赤太線、黒太線経由で電流を下流に流すように配線すればよい。


 実用的な応用回路の試作例をひとつ。下の写真は乾電池用の万能バッテリーチェッカーである。ボリウム(100Ω+抵抗51Ω並列)のつまみを回して一定の電流値(たとえば0.1A)に合わせ、その時の電池の端子間電圧を0.1V単位で測定できる。電池の内部抵抗も簡単に計算できる。右の写真の内部の006P電池はパネルメータ用の電源である。
 この回路はなかなか便利で重宝している。使いかけの電池の電圧を電流一定の条件で測定し、0.1Vごとに分類しておく。同じ電圧の電池を組み合わせて使えば、電池の性能を無駄なく最大限に発揮させることができる。
 なお、モーターを動かす機器や懐中電灯は比較的電流を食うので、電圧の高い電池を用いるとよい。リモコン類や時計の類いは大きな電流を必要としないので、0.1Aで1.2V程度の電圧でも十分動作する。電池を捨てる前に、このチェッカーで分類して、最後まで使い切る用途を考えるとエコである。


100円玉21個 喜多さんの発表 
 昨年12月の例会で、車田さんが「マンガンの単一電池がない」と言っていた。確かに、日吉のダイソーの売り場からはマンガン電池が消えている。喜多さんはそのことが気になって、時々買い物をするお店で注意してみていたら、スーパーOK妙蓮寺店でレジ近くでマンガン電池を見つけた。質量を測るために購入、東芝製(KING POWER CREEK)で、単一電池二つで161円、質量は 97.6g, 98.6g。また、横浜駅近くの東急ストアでも見つけた。パナソニック製(Panasonic NEO)で二つで327円、質量は 98.9g, 100.1g。
 2月の例会後、ダイソーも大きいところなら扱っているのではないかと思い、武蔵小杉のダイソー(売り場面積が大きい)に行ってみたら、ダイソーオリジナルブランドでないものは扱っていた。パナソニック製(マンガン単一乾電池)で二つで110円、質量は 94.5g, 95.5g。以上、マンガン乾電池を三種質量を知りたいがために 598円を出費してしまった。大手のコンビニでは、知る限りマンガン乾電池には出会えない。


 なぜマンガン単一にこだわるかというと、重さがちょうど1Nになるからで、力の大きさを実感する見本として手頃だからだ。アルカリ電池では重すぎるのである。
 そこで喜多さんは、マンガン単一に代わる「身近な100g」を硬貨で考えてみた。100円硬貨だと、21枚で 100.8g である。袋に入れることも考えると、
  100円硬貨 4.8g/枚×19枚=91.2g
    50円硬貨 4.0g/枚× 2枚= 8.0g
  ポリエチレンの小袋     = 0.8g  で合計 100.0g となる。10円玉1枚4.5gなので、22枚で99gで袋を含めて100gだ。


続「音の学習」考 古谷さんの発表 
 古谷さんは、前回例会に続き小学校からの「音」の学習について考察を進めた。
 かつて「音」の学習は、小学校から扱われていたが、やがてその内容が中学校に移行された。そして現在は小学校に復活し、小学校から高校まで扱われている。高校での扱いを最後に社会人となる方々もいる。つまり、学校での「音」の学習の機会は高校が最後となる(高校までが準義務教育と考える)ということだ。そうであるなら、「音」の指導について、考える余地はないのであろうか?これが古谷さんの問いかけである。
 古谷さん自身は小学生時のある体験以降、音に興味を持ち、今日に至っている。そして、「音」はあくまでも趣味という領域ととらえていたが、今、改めて理科教育の中で「音」をどのようにとらえ、また、扱うべきかをテーマにしてみようと思った。
 まず、その第一歩として、理科教育とは少し違った角度から書かれている書物に目を通した。その結果、「音」そのものについての興味はさらに拡大することとなった。 しかし、音を扱う教科である「物理」が、言ってみれば取っつきにくく人気が無い教科のひとつであるようにも感じることから、指導経験の豊富なYPCの皆さんからの意見を参考にさせていただきたいと思って課題を投げかけているのだという。この後、二次会でも討論が続くことになる。
 古谷さんの配付資料(PDFファイル:213KB)はここ


3L丸底フラスコの実験動画 車田さんの発表 
 車田さんは化学の研修会で3Lの丸底フラスコを入手した。化学としての利用では、体積が大きいと試薬も多くなり、加熱するのにもエネルギーがよりかかり、さらに廃液が多くなることからほとんどの学校現場ではせいぜい100mL~500mLのものが利用されている。化学の教員からすると魅力はないが物理教員の視点ではお宝の一品だ。水を入れると直径200mmの大きな凸レンズになる。3Lなので質量は3kgを超えるとなる。両手で持つことをお勧めする。
 例会当日は天気も良かったので、車田さんは例会前に会場校の庭先でさっそく実験してみた。球形なので焦点距離が短い。新聞紙は焦点を合わせるとすぐに煙が出た。新聞紙を太陽光に垂直に向けて実験をすると瞬く間に燃え上がった。もちろんフラスコの水ですぐに消火した。窓辺に置いた金魚鉢や水入りペットボトルは収斂火災の危険性があることがよく分かる。
 車田さん提供の動画(MP4ファイル:22MB)はこちら


中国のベストセラー 山本の発表 
 2020年12月に、左巻健男さんを編著者として「始まりから知ると面白い物理学の授業」を山と溪谷社から出版した。執筆者は左巻健男さんを筆頭に大西光代さん、田中岳彦さん、夏目雄平さんと山本の5名である。歴代の科学者への仮想インタビューから始まる50の原理・法則の紹介記事で、ちょっと面白い仕立てになっていて、執筆していて楽しかった。
 ところでこの本が、中国語に翻訳されて右の写真のような表紙になり、昨年から中国でも販売が開始された。

 この中国語版が、中国国内に360以上の直営店をもつ書店チェーン「西西弗(SISYPHE)」で、なんと2022年のベストセラーとなり、堂々第9位にランクインした。他に日本人著者の作品は、下村敦史『同姓同名』(幻冬舎)、東野圭吾『透明な螺旋』(文藝春秋)、藤本タツキ『ルックバック』(講談社)が並んでいる。いずれも人気作家の小説である。その中でなぜ本書のような科学啓発本が売れたのかはよく分からない。中国は科学ブームなのだろうか。ゼロコロナ政策下の巣ごもり需要なのだろうか。
 最近、同書の韓国語版(写真右)も出版された。韓国での反応はどうだろうか。ちょっと楽しみである。

ChatGPT 山本の発表 
 「ChatGPT」は米ベンチャーOpenAI社が2022年11月に公開した人工知能チャットボットである。日本国内でも2月に公開された。東京都市大の右近修治さんから面白そうだとの情報をいただき、さっそく試してみた。
 インターネット上の解説サイトの指示に従いサインインし、無料のアカウントを取得すると、左下の図のようなごくシンプルなトップ画面が示される。この画面の一番下の記入欄に、テキストで質問やこちらの意見を記入しエンターキーを叩く。すると、AIが同様に文字で回答を返してくる。その名の通りチャットの要領で、文字で対話するわけである。音声や図・写真は使えない。すでに各国語に対応していて、日本語でも理解してくれる。
 試しに「私は理科の教師です。中学生や高校生の理科の授業を行うに当たって、素朴概念を払拭して正しい科学概念に生徒を導くための効果的な指導法を示してください。」と問いかけてみると、1.現象の観察と実験を通じた学び、2.論理的思考力を養う授業の展開、3.模型や図解を用いた教材の活用、4.教師自身の科学的思考力の向上、の4項目に分けて、極めて妥当な回答が返ってきた(右下)。
 学生・生徒はこうした有用情報への反応は早いので、当然学習にも利用してくると考えるべきである。米国の大学ではレポート作成に利用することを禁じる動きもあるようだ。もちろんカンニングや丸写しなどの不正利用は「悪用」として指導するのは当然だが、一律禁止ではなく教育にうまく利用する方法を考えるのがよいと思う。そのために、教員は生徒・学生に先駆けて、AIに習熟しておく必要がある。教育利用についてうまいアイデアがあったらぜひ情報交換を!
 ちなみに、「机の上に置いた物体にはたらく重力の反作用は何?」という問いを投げかけると、案の定、作用反作用と力のつりあいを混同した誤った回答が返ってきた。巷の人間が書いた文字情報にそうした素朴概念があふれているので、それを読んで学習しているAIも素朴概念に感染してしまうのである。人間の認識におけるのと同様、この素朴概念は強力でなかなか手強い。AIが正しいことを言うとは限らないので、利用者側で価値判断をする力を養わなければならない。
 AIとのやりとりの詳細(PDFファイル:213KB)はここ


簡単クロスワード作成 市原さんの発表 
 市原さんは、Webで見つけたクロスワードを手軽に作れるページ「クロスワード作成ツール・Z4ツール」を紹介してくれた。
 写真のようなものなら、3分程度で作れる。使用したいワードとそのヒントを入力するだけ。縦横の組み立てはアプリが自動でやってくれる。「用語」が一定数登場する分野では面白く使えるが、物理はそもそも暗記するような用語が少ないので活用しにくいかもしれないが、生徒は喜ぶだろう。

二次会 Zoomによるオンライン二次会 
 例会参加者は対面14名、遠隔11名、計25名だった。慎重を期して二次会は帰宅後の20時からZoomのオンラインで行われ、10名の参加があった。ドリンク持参で気軽に話し合いが行われる。
 古谷さんの音の授業の発表内容についても意見交換が行われた。ガーナに派遣中の伊藤さんの生徒さんたちがZoom画面に乱入してくる楽しい一幕もあった。
 例会では実演できなかったChatGPTとのやりとりの実演も行われた。試しに「YPC」について尋ねてみると、初めは何も知らない様子だったが、「ここに情報があるよ」とYPCのWebページのURLを示してヒントを出すと、たちどころに学習して、結構適確な返事を返してくるようになった(左図)。右は2/19の「雨水(うすい)」の日の前夜の対話である。雨水をただのあまみずと解釈していて、全く俳句にならなかった。とはいえ、AIとの対話はなかなか楽しいし、教え方の練習にもなる。音声で対話できるようになるのもそう遠くないことだろう。今後の成長に期待しよう。



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