例会速報 99/08/31 慶應義塾高校


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YPC(横浜物理サークル)ニュース集・第11巻ができました

 YPCでは月に一回「YPCニュース」という会報を発行し、会員に郵送している。さらに、年に一度、一年分のニュースを集めた年鑑、「YPCニュース集」を出版している。その第11巻がこのほど完成した。No.125〜136('98/08〜'99/07)を収録し、全290ページ。定価¥2000で会員以外の方にもお分けしている。YPCの活動記録、最新論文の他、Webには載らない資料も多数収録している。近年のバックナンバーもまだ入手可能。

 お申し込み、お問い合わせは、メールにて代表の鈴木健夫(PXU01410@nifty.ne.jp)まで。

ヨーロッパ日食ツアー報告 市江さん、鈴木亮太郎さんの発表

 この夏、YPCメンバーが続々と渡欧し、皆既日食観測や、博物館めぐりなど多大の成果を挙げて帰国した。市江さんと鈴木さんからVTRやデジカメの画像を交えてその帰朝報告があった。


 イタリア コモのボルタ博物館のボルタの電池(レプリカ)。イタリアの10000リラ札に刷られている。現地ではボルタは神格化されていて、博物館は寺院の雰囲気だとか。

 オランダ ハーレムのテイラー博物館のスターリングエンジン。ご覧のとおり現役バリバリでエンドレスで稼動している。

 オランダ ライデンのブールハーフェ博物館所蔵。ゼーマンがゼーマン効果を発見した装置(上部に写っているのは、ノーベル賞の賞状とメダル)。

 以上、報告のごく一部をご紹介した。いずれ、市江さん、鈴木さん、小沢さんのWebページに詳しい報告が載ることを期待しよう。

塗装養生シートの熱気球 喜多さんの発表

 熱気球の実験用の薄いポリ袋が入手しにくくなっているが、壁面塗装作業などの際、塗料の飛散防止用に使う「養生シート」が十分薄くて大きくて、実験用に有効であるとの報告があった。


 加工はキッチン用のシーラーで熱融着するだけ。比較的簡単に袋が作れる。スタンド二台を利用したランチャーも安全のための一工夫。上がった気球は天井にはりついてしばらくおりてこなかった。デジタル温度計を差し入れて、内部の空気の温度を測定したりした。


ペディオン 山本の発表

 東急ハンズ横浜店で見つけた不思議なビニールシート。テーブルかけのような材質だが、表面の蜂の巣のような模様が立体的に浮き上がって見える。視点を移すと模様の方も移動する。じっと見つめていると酔いそうになる。写真ではその雰囲気がお伝えできないのが残念。

 表面は非常に細かい半球レンズをマトリクスに並べたような構造。その下にパターンが印刷してある。レンズの配列と、印刷パターンのピッチが微妙にずらしてあって、一種のモアレを生じているようだ。

松坂魂 山本および渡辺さんの発表

 物理教材としては古典になった「速球王」が生産中止になり、入手できなくなって久しい。しかし、先日バンダイが新しい球速測定球を発表した。その名も「松坂魂」。西武ライオンズの松坂投手のサイン付きで、¥3980とちょっとお高い。しかし、待望のリバイバルだけに、つい衝動買いしてしまった。

 と・こ・ろ・が・・・・

 「速球王」は時間表示だったのに対し、「松坂魂」は投球距離を18mまたは16mと決めて、計算された平均球速が時速で直接表示されるだけなのだ。したがって、落下実験などの時間測定には使えない。物理教員の皆さんへの忠告・・・「松坂魂」は理科実験器具として買ってはいけない

 しかし、転んでもタダでは起きないのが「YPC魂」である。渡辺さんは、「松坂魂」を早速分解してその構造と原理を調べた。

 「速球王」ではボタンを押しながら投球することでタイマーを起動していたが、「松坂魂」にはスタートボタンがない。縫い目の糸に指をかけて投球すると、指が離れた瞬間にトリガーがかかる仕組みになっている。糸は普通の糸に見えるが、ちょっとべとつく感触もある。電解質がしみ込ませてあるかもしれない。糸の下にはご覧のように銅の電極が埋め込まれている。一対二組の電極間に微弱な電流が流れている間はタイマーが始動しない仕組みのようだ。

 内部の回路はこれだけ。表示器と一体になった基板に、マイクロチップやトランジスタが実装してある。

 タイマーをストップする信号はこの圧電スピーカで発生するらしい。衝撃が加わったとき、圧電素子に電圧が発生するのをピックアップしているようだ。なかなか考えられている。

簡易版・CD虹観察器 喜多さんの発表

 北海道の佐々木先生、京都の水巻先生の装置を参考にした、CDによる虹の観察器。’98年秋に山本が製作し、「科学の祭典・神奈川大会」で展示した装置の簡易版を喜多さんが開発した。

 構造を簡単にして、短時間で製作できるようにした点と、レールを用いて視点、光源を自由に移動できるようにした点が工夫されている。

 この夏の物理教育研究会(APEJ)の製作会で、参加者全員に作っていただくと共に、中国桂林で行われた物理教育国際会議でも発表された。

 CDが作る虹についての詳しい考察はここ


偏光板とミラー 渡辺さんの発表

 アクリルミラーに偏光板をはりつけたもの(左)に、別の偏光板(右)を直角にあてがい、ミラーに映った像を見ると黒く見える。実物が透明なのに、像が黒いので意外な感じがする。落ち着いてよく考えると、像の光は二枚の偏光板を通るので当然なのである。でもちょっと面白い。おもちゃが作れるかも・・・

 もう一つ、偏光板をはりつけたアクリルミラーにもう一枚の偏光板を重ねると、写真のように色づいて見える。しかも、見る角度を変えるとその色が変わって見えるのだ。その場の議論では、アクリルに旋光能があって位相板の役割をしているのだろうということになったが、詳細は不明。


倒れないコマ・Part2 山本の発表

 超精密電子回路内蔵自立コマ?・・・実は中古VTRデッキの回転ヘッドとシャフトをはずしてコマにしただけのもの。ちょっとカッコいいでしょ(^^)v。

 軸先にちょっとしたしかけがある。ナベ頭のビスを接着してある。左は以前に発表した小型のコマ。

 これらのコマは回転が止まっても倒れない。必ず立ったまま静止する。ただし、デスクマットのような摩擦の大きい面上で回転させるのが条件。滑りがあるとうまくいかない。

 紙ヤスリの上で回転させてみた。やはり自立して止まる。剛体の回転力学のよい練習問題になりそうだ。

アルソミトラのタネ 宮崎さんの発表

 おなじみになったアルソミトラだが、本物のタネはなかなか手に入らない。宮崎さんが、いくつかを分けてくれた。早速飛ばしてみる。


 紙や発泡スチロールでアルソミトラのタネを模倣する工作実験はよく見かけるが、鎌倉学園の生徒が考案したものは最もシンプル。ダストレスチョークの仕切りの波形発泡スチロールにゼムクリップをつけるだけ。これがクリップの位置と羽根のそりを調節すると、驚くほどよく飛ぶ。材料費も手間もいらない。


アメリカの光学実験キット 徳永さんの発表

 Optics Society of Americaの光学実験キットを通販で入手した。各種レンズ、鏡、色セロハン、光ファイバー、回折格子などの実験材料と実験レシピがパッケージされている。こういうものを生徒めいめいに持たせて授業をやると効果的だろうと思う。


アメリカ土産のおもちゃ 大谷さんの発表

 アメリカの玩具屋で見かけた安いおもちゃを手当たり次第に仕入れてきた大谷さん。やはり台湾製が多いようだ。

二次会 日吉駅前「とらや」にて

 16名が出席しての恒例の二次会。ビールで暑さを吹っ飛ばそう!!例会には出席できなかった人も加わって、電撃ハエたたきなどの話題で盛り上がった。


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