例会速報 2000/02/09 慶應義塾高校


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PETボトルの虹? 喜多さんの発表

 喜多さんが、同じ慶應高校の地学教室の坪田さんから教わったという実験。このごろあまり見かけなくなった丸底のPETボトルに水をつめ、平行光線を当てると壁に円形のパターンが投影される。円の縁は外側が赤、内側が青く色づいてまるで虹のようだ。レンズの色収差に相当するものだろうか。

 横から見るとボトルの中央付近で光線が集束しているのが見える。各部の光がどういう経路をたどっているのか興味深い。

 喜多さんは、さらにアクリル半球と円柱の組み合わせで同様の実験を試みた(写真下)。水入りPETボトルの時とは微妙に違ったパターンが現れる。幾何光学的に追求してみるとおもしろいかもしれない。


PCCP 車田さんの発表

 Pseude-Cylindrical Concave Polyhedral shell すなわち「疑似円筒凹多面体シェル」。折り線に沿って紙を折って丸めるだけで、縦横どの方向の力にも強い円筒構造ができあがる。ミウラ折りで有名な三浦教授が出演した「テクノ探偵団」という番組を見て、車田さんが自ら型紙を起こしたのだそうだ。


ダイナビーの力学 山本の発表

 古くからある力学おもちゃorスポーツ用品、「ダイナビー」。このごろ海賊版もよく見かける。ジャイロの原理で回転子に直接触れることなく回転速度をアップさせていく。リストを鍛えるエクササイズにもなる。詳しいしくみとチューンナップ方法は別記事「ダイナビーの力学」を。

水と油の間に浮く氷 山本の発表

 水に氷を浮かべ、サラダオイルを上から注ぐと、氷が二つの液体の間に浮く・・・後藤道夫先生の「子どもにウケる科学手品77」(講談社)に載っている実験だが、このときの氷はほとんどサラダオイル中にあり、水中に没している体積はごくわずかだ。これは氷がサラダオイルにきわめて近い密度であることを意味する。

 しからば、少し気泡の多い氷を使えば・・・・・はたせるかな、冷蔵庫の氷だと、中には浮いてしまうものもあるのである(写真下左)。ほとんど密度が同じだと、写真下右のような光景も見ることができる。つまり、この手品は条件がかなりデリケートなのである。

 詳しい解析はYPCニュースの記事「水と油の間に」を参照のこと。


 サラダオイルに沈んだ氷に、上から水をかけてみる。水の粒がオイルの底にたまりはじめると、氷はそれに押し上げられるように浮き上がってくる。オイルと水の境界面に「乗る」感じだ。そういえばこんな現象を応用したオブジェもあったような・・・。

不思議な電気回路 小河原さんの発表

 作夏中国で開かれた物理教育の国際会議のおり、広西師範大学の羅先生がAPEJからの訪問団に出した物理クイズがあった。

 まず、左の回路を見てほしい。一見何の変哲もない直列つなぎの電球だ。スイッチが二つ直列になっているのが無駄に見える。ちなみに電源は交流100Vである。

 しかし、この回路、どちらかのスイッチを開くと、それに近い側の電球だけが消えるという実に不思議な動作をするのである。さて真相はいかに・・・これが羅先生からわれわれへの挑戦状だった。

なお、この回路盤は演示効果をねらって写真のようなスイッチを使っているが、追試される方はくれぐれも感電に注意!!


 そればかりかこの回路、一方の電球をはずしてしまっても、もう一つの電球はちゃんとついている。いったいどうなっているのだろう。

 羅先生はその場では正解を明かさなかったが、小河原さんはじめYPCメンバーがたどり着いた解答は下のとおり。スイッチとソケットの裏にダイオードが隠してある、というものだ。近々羅先生に解答のメールを送り、挑戦に応えるという。


カラメルババロア 小沢さんの発表

 これは、実話である。小沢さんが入ったとあるレストラン。カラメルババロアなるものを注文すると、ただのプリンのようなものが出てきた。ウエイトレスは小沢さんの目の前でその上におもむろに砂糖を振りかけた。

「これのどこがカラメルなんじゃい」といぶかりながらながめていると、ウエイトレスは最後に「あるもの」を取り出した!

 それがこれだ!!彼女は持参したバーナーを取り出し、小沢さんの目前でいきなりババロアの上の砂糖を直火であぶりはじめたのだ。とけて泡立ちながらべっこう色になっていく砂糖。かくしてカラメルババロアは見事に調理された。

 この過激なデザートの実物を召し上がりたい方は、横浜駅東口、ルミネ横浜7FのAGIOへどうぞ。

静電気検知電話 小沢さんの発表

 安く出回っている携帯電話のおもちゃ。キーボードを押すと音が出る単純な構造だが、キーボードに通じている端子からリード線を引き出して導通チェッカーとして使っていたところ、これが静電気にも反応することを発見。静電誘導の微小電流を検出しているものか、放電による電磁波を拾っているものか詳細は不明。


静電誘導の実験 小沢さんの授業報告

 上の静電気検知電話の応用例でもある。絶縁したアルミ板と空き缶をアルミ箔のブリッジで結んでおき、アルミ板に帯電体を近づける。すると静電誘導により帯電体と同符号の電荷が空き缶に移動し、アルミ板は異符号に帯電する。ここでブリッジをはずしてしまう。

 ここで、アルミ板を絶縁したまま取り上げ、検知電話やネオン管で帯電を確かめる(下左)。同様に、空き缶の電荷も確認する(下右)。ミニプリントを順に配りながら、その場で生徒に考えさせる授業構成だ。


ワインスタンドもどき 鈴木健夫さんの発表&即売会

 鈴木さんが、100円ショップで仕入れてきたワインスタンド。2本立てだが、下の台板がやたらに長い。力学的にはこれで十分、と鈴木さんは台板を半分以下に切りつめた。課題実験として生徒にやらせるのもおもしろいかもしれない。

自己点滅LED 山本の発表

 藤沢市科学少年団の2月活動「電気工作・電子フラッシャーを作ろう」で子供達に工作させた、太陽電池充電機能つき電子フラッシャー。考案&製作指導は藤沢市教育センターの菊池先生である。Ni-Cd電池に充電して発光ダイオードを光らせる。自転車の夜間走行用安全標識として設計されている。

 YPCとしてはこのダイオードに注目したい。ただ電源につなぐだけで0.5秒ほどの周期で自動的に点滅をくり返すLEDなのだ。どういうしくみになっているのだろう。クリスマスイルミネーションのようなサーモスタットの応用ではなさそうだ。

 大型のLEDのてっぺんからのぞき込むと、容器のプラスチックがレンズになって半導体のチップが拡大されて見える。どうやら、LEDチップの他にICチップが埋め込まれているらしい。

 顕微鏡(20倍)で拡大してみると金線でワイヤーボンディングされた二つのチップがよく見える(下左)。左に見える黒い大きなチップ(長さ2mmぐらい)が、タイミングICらしい。たぶんフリップフロップを内蔵しているのだろう。

 右側の小さな黒い正方形のチップがLEDである。下右の写真では赤く発光しているのが見える。


 面白いのは、この自己点滅が、強い光を当てると止まってしまうことだ。太陽光はもとより、OHPの光程度でも機能しなくなる。光ったまま止まってしまうこともあるところを見ると、明るいときは電流を抑制するなどという高級な回路ではなく、むき出しになっているICチップの回路パターンに熱か光が作用して誤動作を起こしているのではないかと思われる。どんなしくみなのか興味深い。

ミニ真空放電 山本の発表

 昨年、YPCで共同購入した高圧DC−DCコンバータ、約3000Vの高電圧を発生する。ポリエチレンの注射器に電極を取り付け、この高電圧を印加する。スパークギャップを6〜7ミリにしておくと、1気圧では放電が持続しないが、口を封じてピストンを引くと、内部が減圧されるにつれ、周囲が真っ暗ならかすかに陽光柱が見えてくる。約1/30気圧まで下げられるので、ガイスラー管の一歩手前までの観察が可能。生徒用には感電防止のため端子を接着剤などで保護するとよい。


クロコダイル実験室 宮崎さんの紹介

 アスキー社がこの春発売を予定している、本格的物理実験シミュレーションソフト、Crocodile Physicsの日本語版。オリジナルは英国で開発され、世界各国で好評を得ている物理教育ソフトだ。力学、電気、光学など物理各分野のシミュレーションが用意されているが、優れているのは、例えば画面上に回路部品をドラッグアンドドロップして任意の回路を作図し、その動作をシミュレートできるなど、自由度が非常に高い点だ。日本語版は予価¥19800。11本組スクールパックも予定されている。おおいに期待して発売を待とう。


二次会 日吉駅前「龍竹酒家」にて

 二次会にも14名が参加。安くて旨い中華料理に舌鼓を打った。飲みながらも実験を続けるYPCはお店の人たちに奇異の目を注がれていた。


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