例会速報 2009/09/23 関東学院高等学校


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授業研究:物理Uの授業をどうするか 小沢さんの発表
 今回は小沢さんの物理Uの取り組みと課題が報告された。以下、小沢さん自身のコメントを紹介する。

 物理Uの授業を、説明や演示実験中心のものから、生徒が実際に手を動かして考えるものに移行していきたいと考えている。たとえば、平行電流間に働く力は、今までは演示で済ませていたが、今年度は班実験として行った。アルミホイルと電源装置(定電流制御付)と固定具があれば簡単にできる。このとき、どういう理由で引力や斥力が働くのかを考えさせ、「電流が磁場をつくること」、「電流が磁場から力を受けること」を確認させた。


 固定用の台は小沢さんの手作りだ。班の数分作らなければならないので、できるだけ加工のいらないシンプルな造りにしたという。右は電流が作る磁界を測定する装置。100円ものさしを支柱に使っているので導線から磁針までの距離が読み取りやすい。

 以下、再び小沢さんのコメント。

 そうやって基礎を身につけた上で、電流がつくる磁場(銅棒と方位磁石)、電流が磁場から受ける力(「電流てんびん」)を定量実験として行った。このあたりの実験は省略して、説明や問題演習で済ませることが多いのではないだろうか。とくに最後の「電流てんびん」はPSSC物理(岩波書店)や物理実験事典(講談社)にも載っている古典的な実験だが、ほとんど行われていないのではないだろうか。しかし、こういう実験をひとつひとつ行うことは、問題演習には代え難い教育効果があると考えて、授業に取り入れることにした。

垂直抗力:生徒の誤解 平野さんの発表
 平野さんは最近、何人かの生徒から同じ内容の質問を受けた。写真上のように考えると、物体にはたらく斜面からの垂直抗力の大きさNが、mg/cosθとなってしまうというものである。正解は一番下の式だが、誤解の原因は、Nを鉛直方向に分解して考えて、鉛直方向の力の成分がつり合っているとしてしまったことである。そもそもこの場合鉛直方向では力はつり合っていないので、一番上の式は成り立たないのだ。
 この問題の場合、斜面に束縛されながら運動する物体にはたらく力の合力が、どの方向に向いているかのイメージをまず持たせることが大切だと感じた。

錯視 水野さんの発表
 水野さんの勤務校の今年の化祭で理化部が「錯視」をテーマに研究発表した。その中からいくつか紹介があった。
 1つめは、立命館大学教授の北岡明佳氏の各種著作で紹介されている「蛇の回転」というタイトルのついた錯視だ。写真右は同氏の著書。見ているだけで絵がぐるぐる動くというもの。水野さんはこれを北岡氏のHPを参考にして図形ソフト「花子」を使って自作した。北岡氏はCorelDRAWを使っているそうだ。 この錯視は周辺視錯視なので、見ている図ではなく、その周りの図が回転しているように見えるものだ。ただし、統計的には20人に1人の割合で見えない人もいるとのこと。


  第2に、片眼錯視の代表例の一つである、写真ののようなタイル模様(?)の錯視。この錯視は、凹んだ三面サイコロ図でも起こる水野さんは無地の三面だけでも起こることを確かめた。凹んだ陰影があれば出っ張って見えるのだ。凹んだ2面の用紙でも見えたという。お面を凹んだ側から見ても出っ張って見る。これは竹内さんがミニエクスプロラトリアムでやっている。

 第3に、錯視ではないが有名なパズル「消える妖精」。この種明かしはおもしろ科学たんけん工房の柴田さんがしている。柴田さんの説明は基本図の棒の数を「消える妖精」と同じ14本にして説明されているが、水野さんはもっと簡単に、基本図の棒の数を5本にして作ってみた。このトリックの要点は、妖精(棒)の位置と切る場所だ。妖精(棒)の総面積は、妖精(棒)の人数(本数)が減っても増えても一定である。

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皆既日食レポート1 市江さんの発表
 前回の皆既日食レポート2のつづき、市江さんは、悪天候の中、蘇州の水郷、同里湖畔での皆既日食のようすをビデオに収めた。皆既に入るとあたりは文字通り暗黒の闇となった。今回の日食は太陽が遠日点に近くかつ、月が比較的地球に近いことなどから、皆既日食としては長めの6分ほど闇に包まれていた。また、ほんの10秒ほどで写真のような明るさに戻り、その素早さは明らかに普段の日の出とは違っていた。「ホントはダイヤモンドリングが見えているはずだったのに・・・・(T-T)」と市江さん・・・・。

皆既日食レポート2 武捨さんの発表
 武捨さんは上海から車で1時間半の嘉興に皆既日食を観にいった。残念ながら雨天で蝕の様子は観察できなかったが、固定したビデオカメラで明るさの変化を記録した。皆既中だけ雨が止んだり、皆既後に虫が一斉に飛び出したり、興味深い現象も起こったという。

簡易ホログラムの作り方 車田さんの発表
 車田さんは8月例会で紹介したホログラムを追試し、その作り方を披露してくれた。
 まず材料は百均の透明硬質塩化ビニル製カードケースを分解すればA3サイズ2枚分が100円で手に入る。デバイダーは百均のはさみを広げて固定すればよい。
 作成方法は、プラスチックプレートの下に並べて作りたい図形を置き、デバイダーやはさみの開きを図形の中心とプラスチックプレートの中心との間隔に固定して、図形の1点を中心にプレートに弧を刻む。軽く傷(溝)をつける程度でいい。図形に沿って弧の中心点を1mmずらし、またプレートに弧を刻む。これを繰り返すとプレートに無数の弧が重なった傷が描かれる。点光源の光を当てると元の図形が浮かび上がる。体育館の水銀燈や直射日光が最適だ。写真は「YPC」の文字を原図にして作成。像が裏返っている。
 前回紹介したURLはここ。今回車田さんが参考にした動画はこちら。半径を変えると立体も描けるらしい。


韓国のRFIDカード解体 車田さんの発表
 車田さんは前回紹介のあったソウル地下鉄の「1回用交通カード」を解体した。スイカのようなプリント基板のコイルではなく(過去例会でのSuica解体)、細ーい4・5回巻コイルがカードの中に埋め込まれている。昨年の韓国光州(グアンジュ)で見た円盤型カードと同様だ。
 Suicaは厚みがあり、中のコイル基板のところにわずかに隙間があって、そこにカッターの刃が届くと簡単にはがせるが、韓国のカードはコイルをカードの材質と一緒に接着剤で固めているので(生コンを流したよう)地道にカッターの刃を入れて解体したという。Suicaよりも薄くやわらかく、テレホンカードのようなしなやかさだ。デポジットは500W。

鉛筆を使った電気分解 飯田さんの発表
 鉛筆の芯をカッターで削り出すと、炭素電極として使える。手回し発電機をつなげ、KI(ヨウ化カリウム)水溶液を電気分解すると、陽極付近にI2(ヨウ素=赤褐色の液体)が生成した。陰極には水素の泡が現れる。この他、CuSO4(硫酸銅)水溶液やAgNO3(硝酸銀)水溶液から、それぞれCu(銅)メッキやAg(銀)メッキができる。お手軽な電気分解法としておすすめしたい。
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続・マッチ棒ロケット 車田さんの発表
 車田さんはマッチ棒ロケットをモデルロケットのように発射ボタンで点火したいと考えて、試作段階のアイデアを披露した。マッチ棒ロケットのエンジン部分(頭薬)をアルミ箔で覆っていることから、ここに電流を流してジュール熱での点火を考えた。例会ではスライダックを使ったが、最終的には電池か圧電素子を使ってボタンで発射したいと考えている。これをクリアーできたら、いよいよ「マッチ棒ロケット競技大会」か?
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3D映画用偏光メガネの不思議 田代さんの発表
 田代さんは3D映画「ボルト」を見た。3Dメガネは持ち帰ることができた。偏光板を使っているだろうという予想は当たっていたが、調べると不思議、不思議。パソコンの液晶画面に偏光板が使われているので、それを光源に利用すると…。
 まず不思議なのは3Dメガネに裏表があったこと。耳にかけるメガネのつるを目側(普通)に向けて液晶画面上で回転させても真っ黒になる角度がなく、ほどほど黒くなるだけ。裏表を反対にすると角度によって真っ黒になる。これは09年1月例会の大和田さんの発表と同じ仕組みのようだ。
 最も不思議だったことは、下の写真のように、なんと左右で偏光軸が平行だったこと。これまでの3D映画だとメガネの右と左で偏光軸が90°違っていて、左右別々の画像を見ることで立体視できると思っていたのだが…。
 例会では謎が残ったが、YPCのMLで竹内さんの解説があり、件のメガネは「円偏光メガネ」であることがわかった。偏光板の表面に旋光能のある1/4波長板フィルムが貼り付けてある。11月の電通大例会で3Dカメラの開発にたずさわったことのある竹内さんが解説してくれるというからお楽しみに。

玉振発電器 石井さんの発表
 塩ビやポリプロピレンなど絶縁体のパイプと適当な金属電極を組み合わせて写真のような器具を作る。パイプの中央内部に金属棒があり、金属棒の両端付近のパイプを包むように銅箔テープの誘導子を巻く。左右のパイプ内には金属球などの送電子(キャリア)を入れ、パイプの両端は適当な金属(集電子)でふさぐ。左の集電子と右の誘導子、右の集電子と左の誘導子を互いに導線で結べ発電器のできあがり。右の写真は、金属棒の代わりにUボルトを用いたU型発電器。いずれも激しく振ると静電誘導で高圧の静電気が発生する。中の玉を振って発電するので「玉振発電器」というわけ。

 2個の目玉クリップを導線でつなぎ誘導子と集電子にすると、キャリアを交換できるものも作れる(写真下左)。キャリアは金属球である必要はなく、アラザン、仁丹、白米、大豆、ゼムクリップ、鉛筆など何でもOK。発生した静電気で電気振り子を動かすことができる(写真下右)。

 石井さんはいつもの三段アンプで各電極の電荷の正負を判別しながら動作を解説してくれた。
この発電器の出典は、A.D.ムーア著/高野文彦訳「静電気の話 : 基礎的実験から応用まで」河出書房新社(1972.6)。2003年6月例会で右近さんが「起電ポンプ」として紹介したことがある。

ソガメ折り 高杉さんの発表
 先月の喜多さんが代理発表してくれた話題の本人による続報。型紙とテキストだけの説明ではわかりにくく、「実際に作ってみよう!−と思い立つ人も少ないのでは?」と作製の実演をしてくれた。丁寧に作ると一つ20〜30分かかる。



 押しつぶすとぺったんこのリング状になるが、両端を引くとばねのように伸びて円筒になる(写真左)。

 もとの新聞記事の写真は上の写真のような8稜のものだったが、たかすぎさんは下の写真のように稜の数の少ないものや、中心の空間の大きいもの・小さいもの・横方向に谷折りのないものなど多彩なバリエーションを作った。

 写真下右は6稜タイプで、たたんだときに中心の穴がいちばん小さくなるものと、いちばん大きくなるもの。みかけはずいぶん大きさが異なるようだが、使った紙の面積は等しく、展開した円筒は同じ大きさになる。



マンガでのヘリウムガスの危ない描写 武捨さんの発表
 武捨さんは某週間少年誌に掲載されたマンガの一場面で、ヘリウムガスをボンベから直接吸入して声変わりをする、という描写を見つけた。ご存知の通り、声変わり用には酸素が含まれた専用のものを使わなくてはならないが、このマンガでは風船用のものを使っているような描写だった。
 出版社へ問い合わせや抗議があったらしく、発売数日後にホームページに公式の謝罪コメントが出された。また、翌々週の誌面でも同様のコメントが掲載された。一昨年の高校生の事故もまだ記憶に新しい。授業で扱う際には、安全面も伝えなければならない。

光るエクステ 武捨さんの発表
 百円ショップで見つけたアクセサリー。髪留めのピンの部分にLEDが仕込んであり、そこからテグス?が エクステよろしく伸ばしてあるというもの。 LEDを点灯させると、テグスの先端が光る。 全反射の教材として使えるのではないだろうか。

モデルロケット搭載カメラ 車田さんの発表
 7月の例会で紹介した小型カメラをモデルロケットに搭載した。カメラはわずか20gだが、20gをロケット噴射のノズル付近に付けただけで、バランスが崩れ真っ直ぐ飛ばない。空気抵抗もあり実際には10mも飛ばなかった。フィンにも負担がかかったようで、1枚剥離し宙返りしてしまった。カメラの位置が思い通りにならず改造が必要だ。例会では、イグニッション後約1秒分の映像が紹介された。この1秒にモデルロケットエンジン6発が費やされた。写真は発射直後の一コマで三本足の発射台とロケットの白煙が写っている。

光の回廊 山本の発表
 箱根のガラスの森美術館に昨年4月、「陽光と風に輝く光の回廊」という野外展示がお目見えした。エントランス手前の橋に設置された、16万粒のクリスタルガラスがちりばめられた高さ9m、長さ10mのアーチである(写真左)。木にクリスタルガラスをつるした「フラッシュツリー」もそこかしこにある。昼は直射日光、夜はスポットライトの光が、それぞれのクリスタルガラスで屈折して、プリズムのように分散し(写真右)、無数の虹ビームが周囲の空間を埋め尽くしているのだ。偶然そのビームが瞳に入射するとき、われわれの目は鮮やかな原色の輝きを見ることになる。もっともっと規模を大きくしたら、ハロや幻日、環天頂アークに相当する光学現象が見られるのだろうか。きらめく「光の回廊」の動画はここ


EX-FH20によるスローモーション映像 越さんの発表
 YPCでベストセラーのハイスピードカメラEX-F1の姉妹機EX-FH20の紹介。EX-F1に比べて小型軽量だがほぼ同等の機能があり、使い勝手が良い。210fps、420fps、1000fpsのハイスピード撮影、40fpsの高速連写、9.1Mの静止画。面白いところでは、動きのある物の連写で、動いている物の5つの映像を1枚の写真に合成できるという「マルチモーション機能」がある。単3乾電池4本使用。

マッチ棒ロケット発射のスローモーション 越さんの発表
 越さんはマッチ棒ロケットをEX-F1でハイスピード撮影して運動を解析した。

 発射直後、2個目の薬頭に点火し、アルミホイルがちぎれて後方に飛ばされた様子。1段目のロケットが切り離され、ロケット本体が加速されるようにも見える。画面では右側が上方。1000fps(frames per second)、約33分の1の速さ。越さんのYou tube映像へのリンクはここ

 薬頭2個の場合、2つ目の薬頭が発火するまでにタイムラグがある事がある。映像はそのために、発射した後、画面右端(実際には上方)付近で最加速した。煙もリアルである。420fps(frames per second)、約14分の1の速さ。越さんのYou tube映像へのリンクはここ

線香花火 越さんの発表
 同じくEX-F1で撮影した線香花火の燃焼。線香花火では、樹形図のような火花が四方に散るように見えるのが不思議だが、スローモーションで見ると、火花が散った先で次の火花が散るということが分かった。そのようなことが次々と起こっているので、残像効果により、樹形図のような火花が見られるということだ。例会では1/7の速さ(210fps)の映像であったのでやや分かりにくかったが、1/14〜1/20程度の速さだと分かり良さそうである。越さんのYou tube映像へのリンクはここ

二次会 黄金町駅前「養老乃瀧」にて
 14人が参加してカンパーイ!。YPCには教員のみならず、学生、社会人など幅広い分野の人たちが集う。例会のあとの二次会でも、実に多様な情報が飛び交い、話が尽きない。


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