例会速報 2010/09/23 横浜サイエンスフロンティア高校


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サイエンスフロンティア高校の施設見学
 横浜市が2009年4月に新たに創設した横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校が今回の会場だ。例会に先立って、開校準備からずっと関わり続けてきた佐野さんに、自慢の施設を案内してもらった。教室棟の一画のオープンスペースにパソコンが常設してある。ネットワークに接続していて生徒がいつでも自由に利用することができる(写真左)。屋上には天体観測ドームが設置してあり、タカハシの30cmカセグレン型望遠鏡が据え付けられている。天体の自動導入装置やCCDカメラも装備している。
 

 電顕室には2台の走査型電子顕微鏡がある。校内免許制でしかるべき講習を受けて技術を身につければ生徒も自由に利用できる。課題研究のツールとして利用する生徒も多いそうだ。

 環境生命実験室。大学の研究室顔負けの設備がずらり。もちろん生徒が実験・実習をするためにある。ディスカッションのためのスペースも用意されていて、抜群の研究環境だ。もはや高校の教室というイメージではない。噂には聞いていたがその規模は圧倒的。見学ツアーの参加者からはため息も漏れた。

授業研究:鏡による反射の作図 益田さんの発表
 益田さんが昨年度実施し、科教協全国大会で発表した「鏡を用いた教材」である。背の鏡を用い、鏡に映る像と実物を重ねることで、「像がその場にあるように見えること」と「反射の法則」を確認しようと試みた。
 発表後の討論では鏡をいかに垂直に保つかが1つ目の議論になった。鏡が傾くと像がずれてしまうからだ。垂直に保つことが出来るよう、厚みのある鏡(+鏡面が表面にある鏡)として安価なものはないか、いろいろな意見がでた。また、台紙のマス目を用いて、垂直を調整させては…という意見も出た。何故垂直が必要なのかも含めて生徒に議論させることは十分価値がありそうだ。
 この教材で何をつかませるのかが二つ目の議論だ。鏡によってできる像の位置が、どの向きからみても同じ位置であることをしっかり確認させること、大きさのある物体の各点の像を考えさせることが大切であると意見が出た。普段の授業でも何を習得させるかをしっかり考えることが大事と改めて感じた。


電車の綱引き 山本の発表
 ダイソーのおもちゃ売り場にあったプラレールもどき。もちろん1台105円(電池は別売)。駆動車二台を互いに引き合うように逆向きに連結して走らせると、引き分けでどちらにも動かない。一方の電池を起電力の落ちたものに変える。同じ方向に走らせると明らかにスピードが違うのだが、引き合いをさせるとやはり引き分け。空回りしている車輪の動摩擦力は回転の速さによらないからだ。「引く力が強い方が勝つ」と考えるのは誤りで、連結部分での作用と反作用は常に等しく、摩擦力も等しいならつりあって「あいこ」になる。しかし、どちらかにおもりを載せると形勢は一転する。電池の強さに関係なく、常に重い方が勝つのである。摩擦力が大きくなるからだ。綱引きは体重の勝負なのである。
 例会の本番では教卓の摩擦が大きすぎてうまくいかなかったが、その後、田代さんの提案に従い動輪のゴムを取り外すとうまくスリップして成功率が上がることがわかった。


LEDの点灯 石井さんの発表
 石井さんのミニ実験シリーズ(その2)「LEDをつけよう」から、数点紹介する。高輝度LEDを3個並列にしたものを4組並列にして合計12個のアレイを作る(写真左)。一方、黒いフィルムケースにLEDを仕込みふたの穴から覗いてチェッカーとする(写真右)。前述のアレイに直射日光を当て、チェッカーにつなぐと赤く点灯した。直射日光を当てたときの発電電圧は1個あたり1.62V、アレイ全体で4.8Vだった。さらに、発電側のLEDの数を減らしていくと、1個にしても何とか点灯が確認できるという。LEDは散逸が少ないので「可逆的」なのだ。


 プラスチックのストローに巻いた0.2mmφ1000回巻き(74Ω)のコイルにLEDをつなぐ。ストローの中にネオジム磁石(6個100円)を2個入れて激しく振るとLEDが点灯する。さらに、エナメル線を0.1mmφにして4000回巻き(400Ω)にするともっと明るくLEDが点灯する(写真)。

 写真左はおなじみのリードスイッチを利用した磁石ごま。電磁石に直列に入れたリードスイッチがコマの回転に合わせて開閉するので、誘導起電力が発生してLEDが点滅する。ところが、石井さんはこの実験の最中に、回転する磁石ではなくネオジム磁石を指先でつまんでリードスイッチの近くにかざすだけでもLEDがともることを発見した。LEDに並列にスピーカーをつないでみると「ピー」と高音で鳴る。回路が発振しているのだ。どんな機構で発振しているのかはまだ解明されていない。

コンデンサー直列の容量 田代さんの発表
 1Fのコンデンサーを2個直列にした容量は0.5Fであるが、生徒はなかなか納得できない。そこで、次のように説明してみた。
 1Fのコンデンサーに3Vで充電すると帯電量は3C。これを2つ用意し、直列につなぐ。電圧は6Vになるが、両端の極板の電荷はそのままなので相変わらず帯電量は3C。空の直列のコンデンサーに6Vで充電しても帯電量は3C。これをもって直列の容量は0.5Fとなる。
 ところで、1個のコンデンサーに3Vの電池で充電すると電池は3Cの電荷を送り出す。そのことを2回やっているのに、直列のコンデンサーの帯電量は3C。コンデンサーは電荷を蓄えるだけと思いこむと変だ。直列の(または0.5Fの)コンデンサーに3C帯電している方が1Fのコンデンサーに3C帯電しているものより2倍の物理量は…蓄えたエネルギーだろう。
 手回し発電機をモーターとして回転数を比較する(写真右)。回転の様子が最初は速く後で遅くなっても、回転数ならば仕事率でなく仕事量なのでこれで蓄えたエネルギーを比較する。結果はほぼ直列の方が2倍回転して止まった。モーターが止まったらすぐモーターをはずし電圧を測定すると直列の方は2.2Vで、一個の方は1.3Vであった。結構残っている。それぞれの充電したエネルギーや残ったエネルギーを U=CV^2/2 で計算し、その差に注目すると、ほぼ直列の方が2倍となる。


多角形ドリル 市原さんの紹介
 数学者の秋山仁氏がハンドメイドで製作した「多角形ドリル」。サイエンスフロンティア高校で講演を行った際に実演に使用したものを、そのまま永久貸与(寄贈?)してくださった。定幅図形のn角形を回転させることで、n+1角形が掘ることができる。ドリルとは言っても、固いものに穴をあけることはできないので、オアシス(生け花用吸水材)を加工材料として用いている。ルーローの多角形の動きをそのまま観察できるので教材として有意義である。


 左は交換可能なドリルの刃。n角形の穴を開けるにはn-1角形の定幅図形の刃を使う。

3本足ICを燃した 喜多さんの発表
 三本足というとトランジスタを思い浮かべるが、これはメロディIC。ICにはDIPパッケージ(Dual Inline Package:通称ゲジゲジ)タイプのものもあるが、これはトランジスタでよく使われるTO-92(Transistor Outline)パッケージになっている。購入先は秋葉原の千石電商で一つ120円。
 以前その内部構造をみようとしてトランジスタを燃やした喜多さんは、このICも同様に燃やしてみたところ、砕いた燃えがらの中にキラリと光るものを発見した。よく見ると細かいパターンがはっきりと見える。


 それぞれ右下の写真はデジタル顕微鏡で拡大撮影したものだが、同じ会社のシリーズなのに「エリーゼのために」(写真左)と「イッツア・スモールワールド」(写真上)ではICの大きさ、パターンがかなり違うことが分かる。

自作振動ロボ 越さんの発表
 前回2010年8月の例会でHEX BUG nanoを紹介した越さんは、単5電池ホルダーを胴体とし、小型モーターとプラスチック消しゴムを小さく切ったものを偏心用のおもりとした小型振動ロボを自作した。足は太めのリード線を適当に曲げ、4~6本取り付けた。足やおもりの付け方を調整すると、HEX BUG nanoのように動き回る。ボタン電池、ミニクリップの組み合わせで、さらに小さい物もできる。写真は右下が製品版、左上が自作版。

ファンタジーユニバース ゼウス 越さんの発表
 2008年1月のYPC例会でも話題になった浮く地球儀だが、テンヨーから新たに「ファンタジーユニバース ゼウス」と「ファンタジー ユニバースデュオ」が発売された。写真は前者で、電磁誘導で非接触で電力供給され、地球儀内のLEDが光る。定価8400円、実売価格6900円程度。後者は地球儀は光らず、台に取り付けられたLEDでライトアップされる。また、地球儀内部の台を取り出し、その上に150g以下の物を載せられる。定価7560円、実売価格6400円程度。浮遊状態の動画(32MB)はここ

3D用のLED光源 越さんの発表
 久しぶりに文化祭で3D・プラネタリウムを発表した越さんは、今回3D影絵の光源として、高輝度の赤、青のLEDを用いた。十分な輝度が得られ、点光源に近いので、影の輪郭がはっきりとしてよい。ただし照射角度が60°程度なので、ドームスクリーン一杯の3D映像とはならない。左の写真が光源で、単三電池2本用ホルダーに赤青のLEDと可変抵抗をつないである。3D映像を見やすくするため、可変抵抗で赤の明るさを調整するとよい。
 右の写真は、写真中央下が光源を持っている手。壁に映る赤青の影を赤青3Dメガネで見ると迫力の3Dとなる。夏のキャンプのテント内で投影すると、子供たちに大ウケであろう。


プラコップでスピーカーを作ってみよう 徳永さんの紹介
 「青少年のための科学の祭典」2010全国大会でスピーカー工作のブースを出していた株式会社テクニカフクイ様より、その時用いていたコイルと磁石を大変安く販売して頂ける事になった。 YPCの例会に参加していると何故か欲しい実験器具を見ると値段を聞いてしまう習性(!?)がついてしまうが、こちらの会社にも多数の先生方より問い合わせがあり販売を決めたとのこと。
 非常に音質が良く、しかもシンプルな作りなので生徒に説明しやすい。ただ一つのハードルはコイルのホルマル線と接続コードのハンダ付けを行わなければならない事だ。何か良いアイデアがあればノウハウを交換したい。

●問い合わせ先
〒915-0003 福井県越前市戸谷町87-1 株式会社テクニカフクイ
管理部品質保証 市橋政信様
ichihashi@audio-technica.co.jp(←アットマークを半角に変えること)
コイル2個 70円、磁石2個 80円。



i-Phoneのアプリケーション 益田さんの発表
 学校にあった理科教材会社のパンフレットに載っていたアプリケーション。パスコ製のデーターロガーをリモート操作+データー保存ができる。またセンサーがなくとも、iPhoneの加速度センサーを用い加速度の時間変化を記録することもでる。とりあえず糸をつけて振ったところ単振子の周期は分かりそうだ(写真右)。iPhoneをお持ちの方、教育用の使い道を考えてみてはいかが。
 

DNA折り紙 車田さんの紹介
 車田さんが理科総合Bで利用しているDNA折り紙である。最初に入手したのは理研横浜研究所の一般公開で、両面印刷だったので裏表を合わせるのが大変そうだった。今回は、家庭科の先生に頂いたもので、静岡県の食品関連の研究施設で入手したそうだ。裏表印刷をしなくとも、縦に二つに折ることで裏表になる。今までは、A・T・C・Gをパーツごとに作って組んで作っていたので、時間が掛かり2単位の授業では余裕がなかったが、これは手軽で良い。作り方を動画で紹介しているサイトがある。型紙はここ


韓国ScienceFestaより 車田さんの紹介
 車田さんは韓国で仕入れてきた実験ネタを紹介してくれた。
【ムシロボ】電池ホルダーの両サイドにモーターを斜めに固定してモーター軸にゴムをかぶせただけの単純な駆動系。センサーはマイクロスイッチに取り付けられた針金。この触角が障害物に接触するとマイクロスイッチの接続が逆転し、モーターが逆回転して障害物を避けるように進行方向が変わる。針金が障害物から離れるとスイッチが戻る。針金は接続部分から前に交差するように伸びており、壁に当たった反対側のモーターが逆回転し軌道修正する。スイッチをタッチセンサー代わりにしたアイデア工作だ。接着はホットボンドだった。
【電波通信装置(簡易コヒーラ検波器)】送信機:定規のように長いボール紙にアルミテープを張った2枚の板を並べ、中心に針をつける。両側に圧電素子を接続し、針に放電させるとアルミテープのアンテナから電波が発信される。
受信機:アルミテープを張った板を2枚並べ、中心にフィルムケースを配置、その内側までアルミテープで電流を導く。フィルムケースの中には、アルミ箔をはさみで刻んだものを多数、雑然と互いに軽く接触し合うような感じにいれておく。電波を受信すると接触点の酸化皮膜が放電で破れ、通電するのでLEDが点灯する。残念ながら例会では動作しなかったが、うまく作ると10mの距離でも点灯するという。


Dropper Popperの自作 小河原さんの発表
 大学時代の恩師から、「理科実験は学校の装置を使う特別なもので、帰宅したら真似できないという印象を生徒に与えてはいけない」と教えられた小河原さんは、できるだけ身近にあるもので授業中の実験を再現できないか試すように心がけている。今回は、米国で買ってきたDropper Popper(2006年4月例会参照)の自作に挑戦した。
 硬式テニス部から廃棄するテニスボールを大量に分けてもらい、いろいろなサイズで試してみたところ、直径が58~59 mm程度にニッパーなどでカットすると、変形させて机に落とした時に跳ね上がりやすいとのこと。跳ね上がる高さは製品には及ばないが、輸入の手間がなく、作る楽しみなども考えれば、上出来だろう。動画(2.3MB)はここ
 なお、ダイソーで直径2.5 cmほどの小型版7個セットが売られているものの、変形させて机に置くとしばらくして飛び上がると書かれていて、衝突させた際に跳ね上がるという実験には使いにくいそうである。

世界一空が美しい大陸・南極の図鑑 越さんの図書紹介
 オーロラ、銀河、夕焼け、蜃気楼、雪の結晶・・・行くべき人が行き、素晴らしい写真を撮ってきてくれた。南極越冬隊員として千葉の高校地学教諭武田康男さんが観測の合間を縫って撮影した写真に、専門家ならではの分かりやすい解説付を付けた写真集。南極越冬の経験者がこの本に寄せたレビューはここ

草思社 ISBN-10: 4794217706  ISBN-13: 978-4794217707  1680円

超音波による波動現象 宮崎さんの紹介
 8月に関西大学を会場に行われた物理教育研究大会からの報告。関西大学の山本健准教授の研究室で行っている「波動の教材開発を目指した超音波の光学的可視化」の研究紹介である。
 1MHz程度までは写真のようなフレネル回折法がスタンダードで、それ以上の周波数ではシュリーレン法が効果的だという。ここでは前者の写真を数点紹介する。左は波の屈折のようす。境界線より下側では波の速さが5倍ぐらい速い。右は二つの波源からの平面波の干渉。


 左は開口部の広いスリットによる回折。直進する波が強く出ている。右は狭いスリットによる回折。円形波のようになるが、スリット幅による干渉で明瞭な節線が生じていることがわかる。

韓国報告 竹内さんの発表
 今年も韓国の科学の祭典に出展してきた竹内さんは会場の模様や、夜の交流会の様子をビデオでレポートしてくれた。写真はメビウスコースター。ネオジム磁石をびっしりと敷き詰めたメビウスの輪のようなコースを超伝導体が浮遊・懸垂しながらなめらかに走り回る。

パスト連写 佐々木さんの発表
 アルファ企画の佐々木さんはカシオのデジカメの広報を担当している。YPCでも大人気のハイスピードデジカメのパスト連写機能(シャッターボタンを押しきった瞬間の数秒前から連写したコマを保存する)を用いた見事な自作の写真集を披露してくれた。パラパラアニメのようにめくると、飛んでいる蜂がシオカラトンボを攻撃するシーンがスローモーションのように再現される。

二次会 鶴見駅前居酒屋「一会」にて
 14人が参加してカンパーイ!二次会も含め初めての人も気軽に参加できるフランクなムードがYPCの人気を支えている。

 ホストの市原さんは二次会ネタとして本格麦焼酎「さくら咲く」を持ち込んだ。カルミン酸色素を含んでいて弱酸性の原液ではオレンジがかった色を呈するが、ミネラルウォーターで割ると弱アルカリ性になるため桜色に変化する。下右の写真で左が原液、右が水割りの色である。飲み口はさらりとしてのどごし良好。お祝いの席などにもってこいのオシャレな焼酎である。




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