例会速報 2010/12/05 ナリカ


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ガレージセール 
 12月例会はナリカの本社が会場だった。例会に先立ち恒例のガレージセールが開かれた。写真は掘り出し物の山に群がる参加者たち。

授業研究:電気振動と電磁波 小沢さんの発表
 共振回路、電気振動、電磁波の発生の順に進めていった授業の報告。
 「同じ種類の電球を〔1個-2個並列-1個〕のように直列につないだときに、両脇の電球が暗く、中央2個の電球が明るくなることはあるか?」という発問から始めた。直流回路ではあり得ないが、交流回路では、コイルとコンデンサを使うと可能である。
 中央で並列につながれた2個の電球にそれぞれコイルとコンデンサをつなぐと、電流の位相がおおむねπずれるため、その合成を考えると、両脇の電球に流れる電流は小さくなる。電源は商用電源を用い、コイルはスライダックの2次側を用いて可変コイルとした。うまく調整すると、最初に発問した状態になる(写真下右)。並列共振の状態である。

 

 このとき、コイルとコンデンサーでエネルギーが行き来して、電源からのエネルギーの供給はさほど大きくない。そのイメージを伝えるために、コロを敷いた板の上に、水平ばね振り子を置く。ブランコを漕ぐ要領で、板をばね振り子の固有振動数と合うように振動させると、台車は大きく振動する。(写真左)動画(6.5MB)はここ。このとき、弾性エネルギーと運動エネルギーが行き来しているが、外部から供給されるエネルギーはさほど大きくない。共振をエネルギーから眺めると、電磁気と力学で、なんとなく似ているなあと感じさせる実験である。


 並列共振と直列共振で、周波数を変えていったときに、回路を流れる電流がボトムになるかピークになるかをLEDで定性的に示したり、電気振動の様子をオシロスコープで観察したり(写真左のボードの上部にコイルを取り付けて実験する)、実物を示すことを重視した。準備が間に合わなくて教卓上で回路を組んで示したものもあるが、ボードに組んでおいた方が、はるかに見やすい(写真左)。
 最後にダイナミックにヘルツの実験を見せる。送信側は、銅パイプに銅板をつけたアンテナの中央に、誘導コイルの電気火花を飛ばし(写真右の奥)、受信側は透明プラスチックのL字モールの内側に銅の針金を固定し、中央にネオンランプを挟んで光らせた(写真右の手前)。 

リング磁石・その3 飯島さんの発表
 毎年シリーズでリング磁石の磁場による不思議な浮遊現象などを紹介してくれる飯島さんのシリーズ3回目の発表。まずはおさらいから。机上に据えたリング磁石の軸上にアクリルパイプなどでガイドしながら円盤形のフェライト磁石を浮かせる。共にN極が上になっている。パイプの変わりに押しピンで支えてもOK。
 

 リング磁石の上に小さな鉄の棒を積み上げると磁力線の形が見えてくる。主な磁力線はドーナツ状に外側を回って表から裏へ向かうようだ。

 さらにグリセリンで満たした透明球内に砂鉄を封入した器具でドーナツの穴の近くを観察する。穴の内部を上から下に通過する磁力線もあるようだ。外回りと内回りの磁力線の境目にポテンシャルの鞍部ができるのだろう。


メビウスの輪 鈴木さんによる野呂さんの代理発表
 青森の野呂さんから、YPCニュースに「"メビウスの輪"の謎解きを楽しみましょう」という投稿が寄せられた(次号YPCニュース掲載予定)。せっかくなので例会でも皆さんに体験してもらおうと、鈴木さんが材料を用意してくれた。3列に切ったり、十文字に接着して切ったり、メビウスの輪の発展型で意外な形になるのがとてもおもしろい。なぜそうなるのかを謎解きしながら生徒にもやらせてみたい。ネット上では、野呂さんのホームページの「229メビウスの輪を切り裂くと」に詳しい記事がある。
 

人工テレビ石 海後さんの発表
 ホームセンターのビーズコーナーで見つけた卵型の人工猫目石。1個約600円。猫目石の置物としてのほかに、テレビ石の原理や反射と屈折の説明に利用できる。文字の上に置くと文字がゆがむことなく浮き上がって見える。普通のガラスならレンズ効果で像が大きくゆがむはずだ。猫目石やテレビ石が透明繊維の集合体だからこそこのように見えるのだ。

 特に海後さんが注目したのは、繊維結晶の側面に光を当てた状態で90度回転させると、繊維結晶に反射した光の方向が180度変化するところ(写真下)。左の写真では繊維の中を通過した光が反対側に出てくるが、鉛直軸の周りに90°回した右の写真では光は繊維の側面に当たって反射し、反対側に透過しない。動画(9.8MB)はここ。参考URL http://www.istone.org/chatoyancy.html

 

科学の祭典ひたちなか大会 海後さんの発表
 海後さんは普段は製造業の会社員だが、講師としてはじめて地元の科学の祭典に参加した。2日間の工作材料を200人分用意したが、それが足りなくなるぐらい来場者がとても多く盛況だった。大変疲れたが、楽しかったとのこと。

逆立ちごま 海後さんの発表
 海後さんは6月例会で発表した逆立ちごまを今回の科学の祭典の工作体験用に工夫した。75mmの大きいガチャカプセルの半分に、油粘土を付けて反転するバランスを探すという工作で、低価格ながらバランスを自由に工夫できる工作だ。回転体の重心の位置の変化や、質量分布と遠心力の関係を感覚的に感じてもらいたかったという。海後さんの感想は「こどもたちの反応は予想以上で、反転するまで一所懸命いろいろ工夫して頑張ってくれて嬉しかった」とのこと。

日本最古の地層の岩石 海後さんの発表
 海後さんは、家から車で5分ほどの近所(茨城県常陸太田市長谷町)で5億1100万年前のカンブリア紀の地層が発見されたというニュースを知り、化石を見つけられるかもしれないと思い、現地へ行って岩石をいくつか拾ってきた。変成作用でなかなか判別が難しいが、削った岩石のひとつにわずかに節足動物の節のような模様を見つけ、例会で披露してくれた。
 近いうちに本物のカンブリア紀の動物化石発見のニュースが発表されることを期待しよう。
参考URL http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100818/acd1008181222004-n1.htm

ヘビの皮のラミネート加工 海後さんの発表
 海後さんの家の庭で見つけたシマヘビの抜け殻を4cmほどに切ってラミネート加工したもの。例会で希望者に配布された。財布に入れておくとお金が貯まるという縁起ものだ。理科的には、ラミネートすると皮の色や質感・ウロコの構造などが観察しやすい。ラミネート加工で観察用に保存きるものは他にもいろいろ考えられると思う。
 なお、どの程度の厚さまでラミネート出来るかは機械によって違うので、十分確認の上自己責任で行うこと。

4Dサプライズ 山本の紹介
 株式会社テンヨーの2011年新製品。一見透明で何もないように見える箱の中から観客の目前で自由の女神が現れるイリュージョンマジック。動画(4.4MB)はここ。詳しい情報はYu-tubeの動画テンヨーのWebページへ。

 

犬の散歩 田代さんの発表
 滑車の付いた柱が台車に乗っているこの装置は、田代さんが勤務していた理科室に十数台あった。どのように使うのか会場にいた方々に聞いても誰もわからない。ご存知の方がいたらお知らせいただきたい。ちなみに「NITTOU KAGAKU」とロゴが入っている。
 さて、この装置に電池やギアボックス(発電機)、糸巻きなどを装着し、紐の先端は、図のように蓋同士を両面テープで接合したキムチの容器に巻いておく。モーターの回転で紐をたぐり寄せていくとどうなるだろうか?
 容器が前にころがりある距離離れると、今度は台車が容器に近づいていく。すると再び容器が前にころがって台車からある距離離れて……。容器に巻いた紐が許す限りこれをくりかえす。以前2008年12月例会でも扱ったが、回転の中心は容器の軸ではなく、床と容器の接点である。紐が引く向きで、接点を中心に偶力のモーメントの符号が変わり、容器が前にころがるか、容器が紐を巻き付けながら近づいてくるかが決まる。その中間でどちらにもころがらない紐の向きがあり、この時台車は容器に近づく。動画(33MB)はここ
 

ドップラー効果 水野さんの発表
 今年の科教協全国大会(in兵庫)で、名古屋EHCがお楽しみ広場で売っていた超音波発信器(40kHz可変)と超音波受信機のどちらか一方を動かすだけでドップラー効果の実験機になる。
 

飛び出すアナグリフと3Dカメラ 小林さんの発表
 3D画像はついにメガネなしで3Dに見える時代が来た。しかし、それらのハードは高価であり、まだ教室で授業に使うことはできない。アナグリフは色の再現性に問題があるが、入場料を徴収しない授業での使用では全く問題にならない。アナグリフメガネはアクリル製で100円程度で入手できる。例会で小林さんが貸してくれたものはSG005Aを50枚セットで購入したものだそうだ。携帯のカメラやデジカメで左右にずらして撮影した画像でもアナグリフメーカーなどでアナグリフに簡単に変換できる。

 小林さんが例会で披露してくれた飛び出すアナグリフは下記のURLで紹介されている。
http://www.stereomaker.net/sample/popupgallery/galleryj.htm
 例会で紹介されたなわとびミッキーの画像はステレオフォトメーカーを使って小林さんが自作したものである。平らな机の上に置いて、斜め前方45°から赤青メガネでみると、本当にその物が机上にあるように見える。作り方はここ

 小林さんはアナグリフのスライドショー形式で、静止画や動画を提示して見せてくれたが、これはステレオスライドショーを使用している。このソフトは、あらかじめ3D合成しておかなくてもサイドバイサイドの状態から勝手にアナグリフに合成してくれる優れものソフトだ。その他の3D形式にも対応できる。

 一方、体育祭など動きがあるものを撮影するときには、一台のデジカメでは不可能である。動きのある被写体にはFinePix Real3D W3がお勧めである。ハイビジョン動画も3Dで残せる。3DのテレビやモニターにHDMIケーブルで接続するだけで立体画像を見ることもできる。
 

 小林さん撮影の作品例。左は浮かぶ地球儀の上で逆立ちして回転する人形とカチカチボール。右は前回例会の二次会の模様。

モンキー計算機 加藤さんの発表
 加藤さんは、Monkey multiplierというかなり昔からあるおもちゃをペーパークラフトで試作してみた。サルの両足のかかとの先を二つの数字に合わせると頭上にある両手の指で作った輪の中に二つの数を掛け算した答があらわれる。厚紙とハトメ4個で作ったリンク機構で表示している。オリジナルは12までの掛け算だったが、加藤さんは20までの掛け算ができるようにした。
 なお、オリジナルは米国アマゾン社より現在も入手できるようである。

JIGAZOパズル 加藤さんの発表
 テンヨーから発売されているJIGAZO Puzzle。グラデーションがかかったモノトーンの300個のジグソーピースを使って世界中の誰の肖像でも作ることができるそうだ。モナリザやオバマ大統領の作品例が添付されている。
 

 しかけはこうだ。ピースは全て同じ形で自由に組むことができる。各ピースの表面には遠くから見ると目立たないように透明塗料でマークが印刷されている。解答図に合わせて同じマークのピースを探して並べていくと指定の濃淡で肖像が描かれる。

 画面いっぱいの自画像写真を携帯メールでメーカーサイトに送ると最適パターンマッチされたジグソーの組み合わせの解答が送られてくる。

慣性の法則 越さんの発表
 「子どもにウケる科学手品77」(講談社 後藤道夫著)などでも紹介されている「ペン落とし」だが、越さんは配線カバーで輪を作り、ペンはポスカの中字でやってみた。越さん自身の投稿によるYou Tubeのスローモーション映像はこちら。スローモーションで見ると、慣性の法則が より理解しやすくなる。
 ペン落としが静的な慣性の法則(力が働かなければ、止っている物はその場に止り続ける)の例であるとすると、動的な慣性の法則(力が働かなければ、動いている物は同じ運動を続ける)の例として、ダイススタッキングがある(07年10月例会で紹介)。透明なカップを用い、これもスローモーションで見ると、ダイスが慣性の法則にしたがい当たり前の事が起こっているのがわかる。You Tubeのスローモーション映像はこちら

ダジックアース 渡辺さんの発表
 ダジックアースは学校や科学館などで地球や惑星を立体的に表示して活用するプロジェクトである。現在、京都大学大学院理学研究科の地球科学輻合部可視化グループ(リーダー:齊藤昭則先生)が中心になって進めている。
 地球科学データのデータ見本集(Dagik(ダジック))を白い半球状の立体スクリーンに投影して立体地球儀を作り出す。ダジックデータには、オーロラ、雲、大陸移動データなどがある。また、投影した地球は、さまざまな方向に動かして見ることが可能であったり、データによっては1年間の地球の雲の動きなどがあるため、授業でのいろいろな展開の可能性がある。詳しくはダジック・アースのホームページへ。
 

大科学実験No.22「みんなここに集まってくる」 水野さんの番組紹介
 2010年3月から始まったNHK教育の「大科学実験」もテーマが22種類になった。例会ではその最新版を紹介した。放物面の焦点にベルを設置し、スーパーボールを鉛直落下させることによって、すべてのスーパーボールが焦点を通ることを視聴者に見せて、実感させる実験。番組は水曜夜7時40分~50分の10分間の放送だから、授業の中でも簡単に紹介できる番組だと思う。
 海後さん情報によると日経サイエンスのブログに大科学実験のカテゴリーがあって、スタッフが実験の裏話を書いていて、とても面白く興味深い。この放物面の実験で跳ね返ったスーパーボールがなかなか焦点に集まらず、直前に放物面を叩いて振動させたらうまくいったという裏話がある。これはスーパーボールの摩擦係数が非常に大きいため衝突時に回転が加わって反射の法則を満たさなくなるためだろう。放物面が小刻みに振動することで「滑る」状態が作り出されたのではないだろうか。
 

メトロノームとビデオで運動を教える 水上さんの発表
 水上さんはお得意の黒板実験シリーズで運動の授業を組み立てた。メトロノームの音や動画のコマ送りをタイマーとしてわかりやすく半定量的演示を行う。

【原理1】等加速度直線運動は初速度0の場合,出発点からの移動距離xは時刻tの2乗に比例する。つまり時刻t=0,T,2T,3T,・・・に位置x=0,d,4d,9d,…を通過する。
【原理2】Casioのデジタルカメラの動画はQuicktimeファイルで記録される。Quicktime映像は「→」キーを押すことでコマ送り再生ができる。したがって,撮影した運動を解析する「1/30秒刻みの記録タイマー」として使える。

演示1:0,1,4,9,…番目を太く描いた目盛りを添え,メトロノームのリズムを運動に合わせて調節すればカチ,カチ…の刻みとともに運動物体は太い目盛り上を通過していく(実演)。写真左は斜面上を転がる鉄球,写真右はアトウッドの器械である。授業ではこの事実からυ―t図を描かせ,原点を通る直線になることを確認させている。
演示2:撮影した運動をコマ送りで確認し,正確さをアピールできる。ちなみに斜面上の鉄球は19.5コマごとに太い目盛りを通過する。
 

演示3:(写真左)弁当おかず盛り付け用アルミカップを仕切る薄い紙を落下させると,すぐに終端速度に達する。この場合,2番目以降の目盛り間を正確に8/30秒(8コマ)ごとに通過することを確認できた。


生徒の論文 舩田さんの発表
 舩田さんが勤務する船橋法典高校は平成22年度千葉県教育功労者(学校教育の部・団体)表彰を受賞した。また、「平成22年度千葉県児童生徒・教職員科学作品展」の科学論文の部で2年生女子生徒が奨励賞を受賞した。舩田さんが手にしているのが対象作品「いろんな楽器の出す音の比較」。課題研究や探究活動は生徒の力を大きく伸ばす効果がある。

都立高校入試問題の「問題」 北村さんの発表
 北村さんは近年の都立高入試で出題された理科の問題のうち「問題」があると思われるものの分析をAPEJなどで報告している。そのうちのひとつを紹介する。

 2010年2月23日実施の理科の大問3、高気圧や低気圧の移動に伴う気圧の変化をペットボトルで作った簡易気圧計で観察したという想定で作問されている。装置は「ペットボトルの口まで室温と同じ温度の水を入れ、ペットボトルの口にガラス管を通したゴム栓をした」ものである。ガラス管の液面に油性ペンで印をつけて観察したところ、低気圧が通過した「平成21年3月13日」には水面が徐々に下降し、通過後の3月14日には徐々に上昇したという設定だ。ちなみに都教委の説明ではガラス管の上端は開いているとのことだったそうだ。
 北村さんは同じ装置を作って真空盤に入れ、減圧して再現実験を試みた。しかし、気圧を下げても液面の低下は見られず、写真のようにむしろ上昇した。問題の設定とは逆の結果だ。減圧すると溶存気体が気泡になって出てくるからだ。
 作問者はガラス管の液面にも大気圧が加わっていることを見落とした可能性がある。作問に当たって検証実験は行われたのだろうか。

 

二次会 御徒町駅前「食楽酒房めっけもん」にて
 15人が参加してカンパーイ!本年もお疲れ様。来年もがんばろう。毎年12月の例会はナリカで開催しているので東京方面の仲間と会えるのが楽しみだ。ナリカの会長さんの他、左巻さん、北村さん、吉澤さんも加わっていつも以上に盛り上がった忘年会だった。


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