2003年7月13日(日)惟信高校での例会の記録です。

 大量破壊兵器の存在を理由に起こしたイラク戦争ですが、未だその兵器類が見つかっていません。
これから先、絶対見つからない、ということはいえませんが、差し迫った脅威であったなら、もう兵器の
一部でも見つかりそうなものだと思えてなりません。
 アメリカは、悪く言えば、証拠なしに相手の非を攻め立てた、といえるでしょう。
 自然科学の世界では、実験証拠なしでの論議は重要視されることはありません。そういう意味でも、
自然科学の素養は、これからの社会で重要視されるべきだと思います。思い込みだけで社会を動か
していくのは大変危険だと思います。
 私たちも、本当に意味のある教育素材を、その効果を確かめながら開発していきたいと思います。


弾性エネルギーで運動エネルギーを測る
(伊藤 昇さん)
 高校の新しい教科、理科総合Aでは、力からエネルギーへという内容になっています。運動の理解(速度や加速度、運動方程式)なしに、運動エネルギーの大きさを理解させるにはどのようにすればよいでしょう。 このための工夫です。
 仕事の概念を教えて、ばねの弾性エネルギーを求められるようにします。
 ニュートンばかりを使って、力の平均値×移動距離 で弾性エネルギーの量を計算できるようにして、実際に求めさせます。
 次に、このニュートンばかりで台車を引かせ、どれだけの速度になるか、ビースピー(速度をはかる装置)をつかって測ります。

 弾性エネルギーが運動エネルギーになった、という考えで、運動エネルギーの値が1/2・mv2 になることを理解させようというわけです。
 
 横軸に運動エネルギー、縦軸に弾性エネルギーをとり、実測すると、右下のグラフのようになります。理想的なら45度の直線に測定値がのるわけですが、実測値はやや傾きが小さくなりました。(摩擦等があるから当然・・・・)
 次の実験は、台車に加速度センサーを積み、ゴムひもで引いてやります。台車は1kg。1ニュートンで引くと1m/s2になります。ゴムひもは長いので、短い距離ではほぼ1ニュートンを保ちます。
 加速度の値を、検流計でみられるように表示装置も作りました。

 本当に1m/s2がでるかどうかをビースピーで測ってみました。摩擦を考えれば、まあ妥当な値になります。

音速を測る
(林さん)
 固体中を伝わる音速を、棒の両端につけた磁石の動きをみることで測ろうという実験です。
  棒の先にネオジム磁石をテープでしっかり固定します。コイルの中心に磁石があるように配置し、木槌で叩きます。
 下の写真のように、両端での変化が(下側が手前のコイルの電圧、上側が反対側のもの)はっきり出ます。
 時間差をオシロの目盛りからはかり、磁石間の距離とで速さを測ります。
 
 金属棒の場合はいい値が出ましたが、木の場合は、棒を支える支えの位置により値が変化するというおかしな現象もありました。
 
 いずれにせよ、メモリー機能付きの2現象オシロがなければできない測定です。
 これを手に入れるほうが測定より難しい・・・・・・                                                                

モルタロウ
(奥谷さん)
 カーボンナノチューブやフラーレンなどの分子模型が手軽にできる製品です。DNAのモデルができる製品もあるそうです。(高いが・・・)
 写真ではよくわからないですが、二重結合と単結合はよく見るとちがう色と形になっています。
 残念ながら、この製品ではダイヤモンド構造は作れないとのこと。ダイヤモンド構造はそれ用の製品を購入する必要があります。
 
 
グラファイトの模型もできます・・・・

二重ブラックウォール
(奥谷さん)
 御存知の通り抜けられる壁ですが、二重になりました。
 1枚は写真のように引き抜くことができます。引き抜いた後、ボールなどを落とすと、ボールは壁を通り抜けてしまいます。

 2枚目を引き抜く?
 これはできませんね。通り抜けられる壁なのですから・・・・・。

くまどりモーター
(川田さん)
 右の写真のように、U字型鉄心の電磁石のコイルに交流を流し、片方の極に小さなコイル(くまどりコイル)を置くと、アルミ缶で作った回転子が回りだします。

 さてどちら向きに回るでしょうか、という問題。

 くまどりコイルにより、磁束の変化の位相が左右でずれるため、あたかも磁石が回転子の周りを回っているような効果を生み出す。そのため、表面に発生する渦電流により回転子が回る、という説明でした。

 もっと定性的に回転方向を理解する説明はないだろうか、という意見が出されましたが、これは難しいかな・・・・。

銅で反磁性磁気浮揚?
(川田さん)
 前回の例会で林さんが行った磁気浮揚を、石墨ではなく銅を使ってできないかと試みました。
 残念ながら、完全に浮揚しているといえませんが、ネオジム磁石の動きが非常にゆっくりになります。うず電流のせいだろうと推測されますが、この現象だけでも見る価値あり、との声が強くありました。

石鹸水で散乱光
(山本さん)
 ぬれた傘を入れるビニール袋に、石鹸水を入れ、片側から懐中電灯の光を当てると、空での散乱の様子が示せます。
 何より簡単!
 しかも効果十分。

 散乱光が偏光していることも、偏光板を置くことで確認できます。
 懐中電灯の光はもともと赤いので、白色LEDを光源にしたところ、青い光の散乱もばっちり。

 石鹸水でうまくできるんですね。

 蛇足ですが、ビニール袋は1枚では破れやすいので、2枚使っています。

電気の科学館からのお知らせ
(藤井さん)
 中電興業の藤井さんが来られ、電気の科学館での実験教室について説明をされました。
 入場無料の電気の科学館では、来場する低学年の子供たちの興味をひきつけるのに大変苦労している、というような話も聞かせていただきました。
 
 授業料を取っている、中学や高校でも、生徒の興味をひきつけるには苦労をしています・・・・・。
 楽なところはありませんね。
 

高周波放電
(臼井さん)
 インテリアに使われる高周波放電です。中心部から枝のような放電がでています。
 ここで問題。
  ドライヤーで管を暖めたら、放電はどうなる?

  答えのヒントは、暖められて内部の対流が激しくなる、です。

 こんな実験をしていたとき、近くに蛍光灯を持っていくと発光することに気がつきました。
 管の周りには、約26kHzの電場ができています。(アンテナとオシロで確認)この電場による発光だと推測できますが、いったいどのくらいの電界強度なのだろうかという疑問がでてきました。

 管にアルミ箔をかぶせて外部で放電させたり、CD盤をもって管に近づいたり(電気ショックを受けます。注意!)いろいろな現象を見ることができます。
 
   インテリアも意外に危険!?

 衝撃波のおはなし
 (井階さん)
  鞭のパシッという音は、衝撃波かあるいは鞭の先端が自分自身にあたって出る音か、ということが
 話題になっていましたが、高山和喜著「衝撃波のおはなし」に鞭の先端を高速度撮影した写真が
 出ており、これによると、鞭の先端は、瞬間的に加速されることで超音速になり衝撃波を駆動する、
 ということです。
  あっさり決着がついてしまいました。手持ちの道具で検証できるとさらに面白いと思いますが、難しいかな?


 小中高における印象に残った理科授業と先生について
 (井階さん)
  愛教大の学生にアンケートを取ってまとめた報告書の紹介です。
  印象に残った理科授業の簡単なコメントがたくさん載っています。サークルの先生かな、
 と思える記述もあり、参考になります。

  ただ、愛教大に卒業生を送り出していない人は出てくるわけないですね。
  何、卒業生がいても名前はでないって。そうかもしれない・・・・・。


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