2004年2月14日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 日本、ヨーロッパが失敗した火星探査をアメリカは2機とも成功させました。見事というほかありません。
火星に水があった証拠を見つけてくれるかもしれません。 この成果は、機材の完成度、飛行プログラム
の完成度、いずれをとってもアイデア豊かで着実で確実な歩みによって成し遂げられたものでしょう。
 いいかげんな証拠を口実に戦争を始めた国と、同じ国の出来事とはとても思えません。
 BSEによる牛肉の安全性に対する考え方も日本と米国ではずいぶん違います。 日本は全頭検査を必要
とし、米国はその考えを非科学的だとしています。
 安全に対しては、どちらの考え方が科学的なのでしょうか。冷静な議論が必要だと、つくづく感じます。
 科学的に考えて行動するというのは難しいことですね。 


2004年最初の例会は、藤田順治先生の「プラズマの不思議」の講演を聴きました。
 藤田先生は名古屋大学、核融合研究所、大同工業大学で長年プラズマの研究に携わってこられました。
 現在は、大同工業大学を退官され、昨年は名古屋市科学館での先進科学塾での講師も勤められています。
 プラズマに関する基礎知識から将来のエネルギー源についての話まで、実験を交え楽しく講演していただきました。

 参加者で記念写真

 講演中の藤田先生

 プラズマの不思議
 (藤田先生) 
宇宙の大部分はプラズマ状態です。地球上でも、オーロラや雷の放電、電離層などにプラズマ状態がみられます。
 地上では、意図的に作り出さなければプラズマ状態は維持できません。放電管やアークなど光源、熱源として利用されてきましたが、最近は半導体の製造など化学反応にも利用されてきています。またプラズマテレビなどでも利用されています。

 右の写真のような、両端に電極をつけたガラス管の電極に高電圧(3KV〜4KV)をかけて、管内の空気を抜いていくと、下の写真のように発光してきます。
 電気を消すと、陽極側と陰極側で色が違うことがわかります。

 
 右のリングは強力磁石です。このような筒に、先の放電中の管を入れると、放電は磁場の影響を受け、放電模様が変わります。(縞模様がみえます)

 ろうそくの炎の中もプラズマ状態です。だから電場の中に置くと、炎が影響を受けます。

 プラズマとは
 1 正と負の荷電粒子群を含んでいる
 2 全体としてほぼ電気的に中性
 3 少なくとも1種の粒子群が熱運動をしている
 4 2つの荷電粒子が力を及ぼしあう平均距離より大きな寸法のかたまり
 といえます。
 



強力な円形磁石

 右はスペクトル管の発光中の写真ですが、真ん中の部分が明るいです。ここはガラス管が細くなっているところです。
 先の放電管では、管の中央がむしろ暗いです。
 この違いは管内の電子の温度の違いであることを説明していただきました。難しい!
 1つの放電管の中でも、場所によってプラズマの状態が様々であることがわかってきました。(これもややこしい!)

 21世紀のエネルギー源としての核融合について
 ・核分裂炉のように熱暴走することは原理的にない
 ・プルトニウムのような核物質拡散の危険はない
 ・放射性廃棄物は核分裂炉より少ない
 ・重水素重水素反応(DD反応)、重水素三重水素(トリチウム)反応(DT反応)によって生じる中性子が誘導放射性物質を作る可能性がある
 ・三重水素(トリチウム)は12.3年の半減期でベータ崩壊する。その際の電子の飛距離は数μmである
 ・核分裂炉の建設コストは核分裂利用の軽水炉より高くなる
 など説明されました。

 未来の利用に向けて幅広い視野からの研究が必要であることを力説されました。
 

 力の入った講演中の藤田先生

熱心に聞く参加者

 講演終了後の質疑(時間がなくて3問のみ)

 質問 常温核融合は起こりますか?
 答   パラジウムなどに吸収された重水素が、局所的に大きな電場の影響で反応することは考えられないことではないが、追試などではうまく
     反応が起こらず、立ち消えになりつつある。

 質問 太陽の中心では水素原子がトンネル効果で核融合している?
 答   そうです。

 質問 核融合の実用化はいつ頃ですか?
 答   早くても今世紀半ば、あるいは後半ぐらいでしょう。


移動磁場による空缶の回転
(川田さん)
 リニアモーター用に作成した鉄芯コイルを空缶の前におき、コイルに交流を流します。
 さて、空缶は回るでしょうか?
 
 もちろん1つでは回りません。同じコイルを2つ、3つ、4つと並べていきます。2番目のコイルは1番目と電流の位相がずれるようにコンデンサを通して交流を流します。3番目は1番目と逆向きに流れるように配置します。・・・・
 このようにコイルを並べていくと、2つより3つ、3つより4つ、と空き缶が勢いよく回っていきます。
 
 複数のコイルに流れる電流の位相が順にずれているため、あたかも磁石が管の周りを回っているような移動磁場ができます。この磁場によって、缶にうず電流が流れ、磁石に引くずられるように回るというものです。
     
 さきほどは1つのコイルでは回らないということでしたが、右の写真のように、銅板でコイルの半分を覆ってやると、空缶は回りだします。(左回転します)
 銅板にうず電流が生じ、磁場の大きさの変化が、被われていない部分より遅くなるため、磁石が左回転しているのと同じ効果を引きおこします。
 銅板だけでなく、アルミ板でも同じ事が起こります。
 くまどりモーターと同じ原理ですね。

 では積層鉄板(コイルの芯に使っている薄い鉄板を重ねた鉄板)を横に置いたらどうでしょう。(これは藤田先生からの問題です)

 参加者に聞いてみたところ、回らないという答えとやはり左回転という答えと半々。
 
 実験です。
 何と、空缶は右回転。なぜ???
 全員不思議な表情。

 写真右下のように銅板を横においても右回転が起こりました。
 次回までに理由を考えてくるという宿題が残りました。皆さんも考えてください。

メカニカルドッグ
(清水さん)
 2001年9月22日の例会で発表した「歩く犬」、中国長春師範大学の韓長明先生の作品をモデルに作りましたが、何と同じ動きをする模型が、田宮からメカニカルドッグという名で販売されました。980円だそうです。

発電できるヘロンの蒸気タービン
(清水さん)
 空き缶に、管内に入る部分に穴をいくつかあけてある銅管を突き刺し、両端を反対方向に曲げておくとヘロンの蒸気機関の出来上がり。
 今回はこれをモーターに繋ぎ、発電させてみました。
 管内の水が沸騰してくると、管は勢いよく回ります。
 モーターの線を別のソーラーモータにつなぐと回りだします。ちゃんと発電されている事がわかります。
 しかも、発電電力消費中は回り方が遅くなります、つまり仕事をしているということが見ていてわかります。
 熱機関の一例としてつかえますね。

 何とかメロディICを鳴らそうとしましたがうまくなりませんでした。
 ダイオードを点灯させられたら、さらに面白いですね。

 

力学的エネルギー測定器
(林さん)
 レール板と鉄球とビースピー(速度測定器)で位置エネルギーと速度(運動エネルギー)の関係を調べる実験器具です。もちろん林さん手造りです。
 落下点の高さを、1:2:4と変えていくと、鉄球の速度が、1:√2:2と変わっていくことが確かめられます。
 
 この装置、数があるので利用希望の人に使ってもらいたいとのことです。希望者は惟信高校林さんまで連絡ください。


アルミ皿と金属容器の電気盆
(林さん)
 写真のようにアルミ皿と金属容器をおいて電池の両極をそれぞれにつなぎます。
1.5Vでも3VでもOK。
 次にコップの部分をもってアルミ皿を持ち上げると、アルミには高電圧の電荷がたまるという実験道具です。
 コンデンサに電荷を貯めておいて、極板を引き離すとどうなりますか、という問いの実例です。金属容器の塗料が誘電体の役目を果たしているのですね。
 やはり林さん手造り。
 
 これも数があるので希望者にお分けしますとのこと。気前がいいですね。
 

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