2007年2月17日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 「発掘!あるある大事典2」という番組で、内容のねつ造が行われていることが発覚しました。
 納豆の食べ方を工夫すればダイエット効果が得られる、みそ汁のダイエット効果、レタスを食べるとよく眠れるなどの内容が、実験データの捏造を含んだ主張だったというものです。
 ダイエット効果がなくても、納豆もみそ汁もレタスも体にいいのですから、だまされた人も怒り心頭というわけでもなさそうです。

 公共放送が「科学的事実」として虚偽の内容を放送したことが大きな問題として扱われているわけですが、他にもバラエティか情報提供番組かまぎらわしい番組も数多くあります。物理関係に限っていえば、「超能力」(透視、念力・・・・)だとか、UFOだとか、霊能力だとか・・。目撃情報を流したり、スタジオで実験もどきをしたりして、その存在を真実として扱うような番組もあります。

 始めからバラエティだと断って放送するならともかく、いいかげんな証拠を基に不確定なことを放送することも大きな問題だと思います。本当に真実を明らかにする目的で番組を作るなら、学会などと協力して確かな証拠を集めたり、実験を工夫したりすべきでしょう。経費がかかりすぎて制作が難しくなるでしょうが・・・・

 視聴率が取れれば、多少いいいかげんなことを放送してもかまわない、という考えは、物事を科学的に考える姿勢に価値を認めていない、ということです。
 私達は、人々が物事を科学的に考えることこそ未来社会に必要なことだ、と考えています。この思いが社会の常識になることを切望しています。

 2007年最初の例会は、日本ガイシ(株)取締役の纐纈 満 (こうけつ みつる)さんの講演を聴きました。纐纈さんは、サイエンスレンジャーとして活躍中であり、 科学雑誌「ニュートン」で実験ぺージを連載されています。
 
 日本ガイシへの入社から現在までの研究や広報活動について、またボランティア講師として子供たちに科学の楽しさを伝える活動についての考えを述べていただきました。
 盛りだくさんの内容を巧みな話術で楽しく聞くことができました。
講演の後の、参加者の記念写真です。

 「キッチンサイエンスとコミュニケーション」 ―企業の科学啓発活動の例― (纐纈 満さん  
 日本ガイシ(株)に入社して最初に与えられた課題は「セラミックスで吸音材料を作れ!」でした。吸音の原理を調べる事からの始まりです。
 たどりついたのが「あわおこし」構造のセラミックス。改良を積み重ねながら、新幹線の線路脇の吸音壁などの開発設置も行いました。

 入社の頃はセラミックといえば数cm以上のオーダーの製品ばかりでしたが、現在はnm(ナノメートル)のオーダーの製品を作り出すようになりました。微細構造の利用で、排ガスの浄化や水の浄化なども可能になりました。

 バイオテクノロジーにも携わり、蜘蛛の糸でつくる服、蛍のように光を出す植物などの研究も行いました。また、光エレクトロニクス製品の開発も担当しました。
 
 その後、会社の広報担当になりました。
 持ち前の研究者魂で、企業の認知度を高めるために何が必要かを調べ、CMでおなじみの忍者(社内では歌舞伎の黒子ということでスタート)のキャラクターを使い始め、CMを通して視聴者の記憶に残るコミュニケーションを心掛けて活動しました。
 そして現在にいたっています。
 
 家庭でできる化学実験「キッチンサイエンス」を通しての活動においても、記憶に残るコミュニケーションを心掛けています。 ニュートンの連載記事の内容でも、細かい数量などわざと書きません。子供達が自分でいろいろ試行錯誤して欲しいからです。
 読者から来る質問にも、何をやってみてどうなったかを聞いて次のアドバイスを与えています。子供達に考えてもらいたいからです。

 工夫している子供は良い顔をしています。

 実験教室などでは「背丈に合った学習」を心掛けています。
 子供達が、自分で考え確かめてみることができるテーマであれば記憶に残り、難しいといわれるような内容でもしっかり学ぶことができます。
 多様な子供達がいます。個々の子供の理解度に合わせてサポートしてやれば、どの子も達成感をもてます。
 このために、少人数での講座と入念な準備を心掛けています。

 キッチンサイエンスの例として、ニュートンでこれまでに扱ったテーマの例や万博でも使いました「水のふしぎ」の実験(シナリオ)の展開例を話します。・・・・・

<簡単にできる水の実験から、水の起源、降雨、地球上での水の循環、現代社会の問題へと話は続きました。豊富な内容が1つのストーリーとして練り上げられています。残念ながらうまくまとめきれません。
 私たちも教える内容にうまくストリー性を持たせて、生徒にわかり易くする工夫が必要だと強く感じました。>
[参考] http://www.ngk.co.jp/site/index.html




<質問>
 生徒の心をつかむ方法について教えて欲しい。
 実験教室での講師と生徒の関係は非日常的なもので、先生方の日常的な教師生徒関係とは異なるものだから、参考になるかどうかわからないが、生徒の前で裸の自分になれるかどうかだと思う。
<質問>
 コミュニケーションを主体にするコマーシャルの目的についてお聞きしたい。
まじめな人の語る評判はよく伝わる。企業活動には社会からのグッドウィルが必要。また、リクルート対策上も認知度の高い会社には、良い人材が集まる。

 教室で相互誘導 (前田さん  
 相互誘導を教室でダイナミックに見せるためには、大きなコイルが必要ですが、平行ケーブル等を使うと経費がかかります。(単線で巻くのも大変)
 LANケーブルを使えば、比較的簡単に巻き数の多い大きなコイルができます。

 片方のコネクタの配線順を一路ずらして圧着します。
 ケーブル一巻きで8巻き分を稼げます。
 
 このコイルに信号を流し、中に入力を短絡したスピーカーを入れるとよく聞こえます。

 スピーカーのコイルを取って、ホーン紙と磁石だけでも聞こえます。

 

 中心に磁石を貼り付けています。

 音は小さいが聞こえます。

 弾性衝突・非弾性衝突 (前田さん  
 錘を載せた台車(下面に車輪があります)にばね(ペットボトルを円柱状に切ったものを使っています)をつけて壁にぶつけます。
 錘が動けないようにしておくとほぼ弾性衝突をして戻ってきます。
 錘が動けるようにすると、壁で跳ね返った直後に止まります。滑った錘と台車が衝突をして止まるのです。
 錘とレールを箱などで隠して実験し、衝突の結果が違ってくる理由を考えさせるという使い方をします。

 錘とレールの間に摩擦がなかったらどうなるでしょう?
 錘と台車との衝突の反発係数によりますが
   台車とおもりは止まる。
   台車とおもりは振動する。
   その他

 入試にありそうな問題ですね。     

  錘が動けるようにして壁に衝突させます。

  衝突後錘と台車が衝突して止まります。 

 普段は仕組みを隠して・・・・・

  摩擦を少なくして壁に衝突させたら・・・・・

 質問です (山田さん  
 滝高校の山田さんが参加してくれました。専門は科学ですが、化学の中でも電気陰性度などの概念は物理的なもので、生徒の理解を進めるためには物理分野の研究もかかせないということです。

 今日の質問は「マイナスの電荷をもつ電子は電位の高い所に流れていく」ことをうまく説明する方法についてです。

 電位の概念は重力場と対比させて教えることが多いですね。プラスの電荷は、重力場での物体と同様、電位の高い所から低い所へ力を受けて移動するという風に説明します。上から下にと類似の説明ができますが、マイナスの電荷は逆に下から上に”自然に”上がっていきます。
 上向きの力を受けるから当然だといえますが、感覚的には確かにしっくりこないかも・・・・。
 マイナスの電荷にとっては、電位の山は穴だ、という説明の仕方で納得してくれるでしょうか。皆さんはどう理解していますか。

 

 物理クイズ「力まかせ」 (臼井さん  
 前回の例会の「クイズデンキショック」の力学版をつくりました。
 名付けて「クイズ力まかせ」。
 ばねばかりを使ったQ1、Q2、Q5、台ばかりを使ったQ3,Q4です。内容は写真の通り。

 Q1,Q3はすぐ答えられそうですが、Q2,Q4になると頭が少々混乱させられます。
 生徒に出題すると、一生懸命考えてくれたそうです。
 
 つりあいと作用反作用の法則等について正しく理解するために、こういう形での頭脳トレーニングもいいですね。
 その他という解答があるというのが絶妙・・・・・・
 
 どう解答しますか?

 台ばかりがひっくり返っています!


 宇宙線を見る霧箱2 (林さん  
 2004年10月16日の例会での「宇宙線を見る霧箱の続編です。
 大型ビーカーで宇宙線の飛跡の観察が容易になっています。
 冷却を細かく砕いたドライアイスにしたり、光源の反射を減らして見やすくするために中に液体を入れておく等の改良がなされています。

 放射線源がなくてもよいというのがいいですね。
 

 装置全景です。

 LED懐中電灯を斜め上方からあてます。
 残念ながら、ミューオンあるいは電子の飛跡は写真にでていませんが、肉眼で見るとよく見えます。
 
 デモ用ではなく、個人個人に観察させるなら、百円ショップのガラス製1リットルマスカップがよいそうです。

中を見るとこんなふう。うっすらと1本飛跡が見えます。

 個々人用には小型で安価なものが使えます。
<参考>http://www2.hamajima.co.jp/ikiikiwakuwaku/record/r_2004_10_16/newpage.htm

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