2007年9月1日(土)愛知工業高校での例会の記録です。
8月3日〜5日、中京大学と中京高校を会場にして、科学教育研究協議会の愛知大会が開催されました。 物理サークルのメンバーも、お楽しみ広場での演示、分科会での発表、分科会の司会、実行委員などに多数参加して大会の成功に協力しました。 大会の最中も大変な暑さで苦労しましたが、8月に入ってからずっと猛暑で、外に出ると日差しが突き刺さるという感じでした。16日午後、近くの多治見市では最高気温40.9度を観測、日本の最高気温の記録を更新しました。 気象台の発表する気温というのは、地上1.5mの高さを基準にしており、温度計の下部は照り返しのない草地ですから、市街地での体感温度はさらに数度大きいでしょう。 8月に気温、水温にかかわる大きなニュースが流れました。 (1)海洋研究開発機構などによる衛星観測で、北極海の氷の面積が1978年の観測開始以来、過去最小になっていることが分かったことです。地球温暖化による海水温度の上昇などが原因とみられます。予測より30年以上も速いペースで融けている可能性が大きいようです。 (2)環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターは10日までに、白保など島内の計16海域で白化を確認、というニュースです。 海水温が高くなると起きるサンゴの「白化現象」が沖縄県・石垣島で広がっており、1998年の規模を上回る大量死につながる恐れがあるようです。 テレビの映像で見ると、海の中が白い砂漠のようにも見えます。何よりそこには魚がほとんどいないのが気になります。 地球の温暖化が急に進んでいるように感じられます。でも、本当にそうなのか、あるいは単に地球の気象のゆらぎなのか、冷静な判断と観測が求められています。 適確な判断ができる若者を育てるためにも科学教育の充実を図らなければなりません。 |
2007年のセンター試験の問題について物理サークルのメンバーから疑問が出ていました。音の屈折の問題について研究者の方の意見を聞きたいと考えていましたが、幸いにも愛知教育大学名誉教授の田平先生にお願いすることができました。 せっかくの機会ということで、先生の研究についての講演もお願いすることができました。 大気が非常に低い振動数の振動をすること、それをうまく観測すると、遠隔地の噴火や地震、核実験の発生を検知できることなどがわかりました。 先生の研究成果などは、先生ご自身のホームページに詳しく掲載されています。 http://www.senior.aichi-edu.ac.jp/mtahira/ |
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講演後、参加者との記念写真です。 |
超低周波音研究・未解明の話題について (田平 誠先生) |
大気中を伝搬する音波のうち、人間の耳に音として聞こえない約20Hz以下のものを「インフラサウンド」という。純粋に水平に伝搬する音波であれば理論.ヒは周波数ゼロに近いところまで存在が可能であるが,鉛直方向には大気の密度成層があるために,ある周波数以下の波は音波として伝搬することができない。その限界は音波遮断周波数と呼ばれ,その値は15℃の等温大気で3.2mHz程度である。 インフラサウンドの大きな特徴の一つとして,伝搬に際しての粘性や熱伝導による減衰が可聴音と比べてずっと小さいことが挙げられる。従って数千kmという遠方からの信号が捉えられるケースが少なくない。 磁気嵐、オーロラ、火山大爆発、地震、発達した積乱雲、隕石の落下など自然現象に伴ってインフラサウンドが見つかっている。 1976年ごろから愛知県刈谷市の愛知教育大学でインフラサウンドの研究に着手。以後も刈谷が日本で唯一の常設観測地点でした。3本のマイクを設置し、インフラサウンドの連続観測(1984〜2004)。 日本各地の地震、火山噴火、中国の核実験など様々な現象のインフラサウンドを捉えている。 |
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1991年6月のフィリピンのピナツボ火山の大噴火の際の測定データです。大きな振幅のシグナルが3本のマイクに到来しています。 | ||
このシグナルは、反対側からも(つまり地球を回って反対側から噴火のシグナルが来た)、また1周してからのシグナルも捉えている。 | ||
熱心に聴講する参加者 |
このように、低い振動数の音波は地球を周回するほどであるが、現在の大気の振動のスペクトルを分析すると不思議な現象がみつかった。 世界中で2つの振動数にピークがあるのである。 この2つの振動がなぜ生じたのかを研究しているが、いまだ決定的な理論というものはない。 |
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特定の振動が起こる理論についていくつか説明をしていただきましたが、数式を含め、歯ごたえがありすぎて一度で理解するのは難しかったです。 しかし、常に私たちを取り巻く大気に、非常にゆっくりとした振動があること、そして固有振動のような振動があることなど、知らない世界を教えていただきました。 難しい話の中にも、教育的にも利用可能な話がありました。 大きな飛行機が通過した際の地上での圧力増加の測定です。実際に中部国際空港で測定をされたそうです。 広い範囲で測定ができれば、飛行機の移動につれて圧力増加が移動することを確認できると考えられますね。 |
先生が測定に使っていた高感度微気圧計(差圧型)です。 |
<質問>象などが低い振動数の音を聞いて地震を知るというような話があるが本当でしょうか。 | インフラサウンドが地震波より早く来ることはない。 |
<質問>測定のマイクはどんな構造でしょうか。 | 基本構造はコンデンサーマイク。低周波を測るための工夫がさ れている。 |
図入りで熱心に質問する川田さん。先生も熱心に答えていただきました。 センター試験の問題についても、専門家としての見解を披露して頂きました。 メンバーの主張は本質的に間違ってはいない、屈折という言葉で表現される内容を、媒質の動きを含めた拡張したものにする必要があるのではないか、というものでした。 |
波の干渉説明器具(前田さん) |
ホームセンターで見つけた、「波板押さえ」を使って干渉説明器を作りました。 波の山と谷を色違いにして、黒板にはったときの視認性を高めています。裏には板磁石をはってあり、黒板に簡単につけられるようになっています。 離れた波源から来た2つの波が重なるとき、場所によって山と山、山と谷、谷と谷になることが色でよくわかります。 波源が谷のものと山のものも作ってあり、波源が同位相の場合も位相が180度ずれる場合もできます。 ただ、波板押さえの波長が一定のため波長を変えることはできません。もしこれができれば完璧な器具ですね。 |
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マダガスカルのお土産(佐野さん) |
この夏マダガスカルへ旅しました。 道端で女の子が売っていた民芸品です。 日本円で30円ぐらい。名前は? 下の部分をキュッキュッと握ると、男の人が鉄棒を回りだします。 仕組みはぶんぶんゴマと同じです。 |
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こちらもマダガスカルで手に入れた楽器です。300円ぐらい。 名前はやはり? 弦を引くとそれなりに演奏できます。 材料は竹です。表面の彫刻がいいですね。 |
猫剣山(佐野さん) |
100円ショップで猫よけの剣山を見つけました。そこでピーン!とひらめき。 1枚(?)で上に載ると足が痛い。でも2枚、3枚と重ねると、載っても痛くありません。 面積があるので足全体を載せられます。 重ねたとき突き出る棒の高さをそろえるために、1本1本切ったそうです。大変ですが、出来上がった教材は長く使えそうですね。 |
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雨粒の形(林さん) |
強力なシロッコファン(遠心力で換気をするタイプの換気扇)を手に入れて、水滴を浮かす装置を開発しました。 ファンの空気流をストローの束で整流し、ふるいを通して吹き上げます。 中心部のストローの長さをやや長くし、吹き出る空気流の速度が中心部がやや遅くなるようにしてあります。水滴が外に逃げ出しにくくなります。 ふるいには撥水剤が塗ってあります。水滴がつぶれにくくするためです。 たくさんの工夫が詰まっている装置です。 |
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中心部に、注射筒で水滴を送り出します。 大きさが適度だと、ふるいのうえで水滴がぴょんぴょんはねます。 しばらくはねると、上に飛び出していきます。 すばやい動きでカメラで撮ることは困難・・・・。 水滴の形は、アンパン型というのが適当でしょうか。正確な形と振動の様子を観察するには、高速度カメラで撮影しなければ難しいかもしれません。 |
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佐野さんが、油が水に落ちるときの映像があるということなので見せてもらいました。インテリアによく使われる材料です。 三重県総合教育センターにある300コマ/秒のハイスピードカメラで撮影したものです。 油滴は大きくなって落下し、球形になりますが振動しているようです。 動きが緩やかなので肉眼でも観察できます。 水滴もこのような映像が撮れるといいのですが・・・。 |
科教協愛知大会でゲットしました (臼井さん) |
広島の土肥さんから学びました。 ストローとフィルムケースで笛を作ります。手押しポンプで空気を送って音を口の中に送り込みます。 口をアイウエオの形にしておくと、そのように聞こえる、という実験です。 口の形を見ていると、アイウエオに聞こえますが、目をつぶって聞くと・・・・・ 人間の口そのものをアイウエオ発生器の容器にするというアイデアが面白いですね。 |
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こちらは、サイキックという会社の風車発電機です。 ペットボトルで作ったモーターとLEDだけです。軽く動かすと、羽根が回り、LEDが光ります。軽く回るだけなのに明るく光ります。これはなかなかの優れもの。 エネルギー教材に使えますね。 |