2007年12月9日(日)愛知工業高校での例会の記録です。 

 11月末に、経済協力開発機構(OECD)が昨年実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果が公表されました。世界の57の国・地域中、日本は、科学的応用力は前回の2位から6位に、数学的応用力が6位から10位に。14位だった読解力も、15位になったようです。科学的応用力の結果を見ると、日本の子どもたちは、現象を科学的に説明したり、問題を科学的に検証したりする力に弱点があるようです。

 こういう結果が出ると、「日本の学生が真剣に取り組まなかったから」で実際にはもっと力があるとか、「子供が考える時間を」「授業方法の改善を」とか、正反対の考えが出てきます。
 本当の現状はどうなのでしょう。 どんな問題を出題したのか、正解率がどんな分布だったのか、そういうデータを分析してからの意見が必要だと思います。あわてて判断するのは、それこそ「問題を科学的に検証したりする力に弱点がある」ということになります。

 現場にいる私達の感覚では、確かに科学に興味を持ちじっくり考えて理解しようとする生徒や実際に手や体を動かして科学する生徒が少なくなっているといえます。しかし、これはマーク試験に代表される正解を出すことのみが大事という日本の教育そのものが作り出しているのかもしれません。

 日本の未来をつくっていく生徒たちに、どんな内容をどれだけ時間をかけてどういう風に伝えていくのかを、結果に過剰に反応するのではなく、じっくり真剣に考えていく必要があります。安価な安普請では知識の土台は築けません。

 私たちも更なる研究を進めたいと考えています。


 UFO風船・バック転人形・サンタクルス (永田さん)  
 名古屋市科学館のサイエンスボランティアで、ものづくり工房を担当して子供たちに工作を指導しています。講座で作成している
「10円以内でできる工作物」をいくつか持ってきてくれました。

 1つ目はUFO風船。
 ゴム風船とストローでつくります。 風船をふくらまして、ストローの口が地面に対してやや斜めになるように空気を出させるとUFOのようにクルクル回りながら浮かんでいます。

  作り方を説明中

  空気を入れる前のUFO風船

  角度がいいと滞空します。

  ときには天井まで・・・
 2つ目はバック転人形。
 発泡スチロールの頭を軽く押さえつけてやると、全体がバック転して空中で1回転します。
 うまく着地できれば拍手!。 

 選手の顔は各自で楽しく。

  頭を押さえると、ちょっとたってからバック転開始。

 台紙と板ばね(ペットボトルを切ったもの)と発泡スチロール

 頭をつけるところにワンタッチのりをつけておくのがミソ。
 ちょっとたってからバック転します。
 3つ目はサンタクルス。
 紙とストローで静電気を利用したおもちゃを作ります。
 ストローをティッシュで摩擦して帯電させます。サンタの足(同じストローの一部)も同様に摩擦して帯電させます。ストローをサンタに近づけると、サンタは反発してクルクル回ります。・・・・・それでサンタクル(クル)ス・・・・・・・
  
 サンタの足を取ってストローを近づけると今度はサンタがストローに近づいてきます。静電誘導ですね。
 1つで2つの動きが見られます。

 小学生には楽しい動きをするおもちゃ。高校生には静電気のはたらきを理解する材料として使えますね。

 ストローと足が反発してサンタは回ります。

 足をはずしてストローを近づけるとサンタは引かれます。

 鏡の世界 (前田さん  
 鏡と半透明鏡(ハーフミラー)を向かい合わせた箱で、向きを含めてどんな世界が見えるか生徒に考えさせてみました。

 赤電球(奥)と青電球(手前)を鏡の前に置きます。奥の鏡で見える世界はおなじみのものですね。
 手前に半透明鏡を置くと、電球はどんな順に並んで見えるでしょう。

 次は、左右の壁も鏡にして、回転するおもちゃを置きます。
 おもちゃは、三角錐がLEDで光って自転しながら台上で回るというものです。

 半透明鏡なしで見た場合の見え方、想像できますか?
 手前に半透明鏡を置くとどう見えるでしょう。
 
 頭の中で考えるとなぜか混乱してきます・・・・。

 見え方はともかく、部屋を暗くしておもちゃのスイッチを入れるときれいな世界が見えます。しばし鑑賞。

 3つの三角錐が台上を自転しながら回ります。
 奥、左右の壁が鏡です。半透明鏡を手前に置くと?

 回る姿は映りませんが幻想的な雰囲気が醸し出されます。

 どんな世界が見えるか想像できましたか?回る方向まできちんと判断できましたか?

<参考>
 回り続ける円錐(臼井さん)
 http://www2.hamajima.co.jp/ikiikiwakuwaku/record/
                  r_2006_07_08/newpage2.htm 

 LEDを高輝度のものに変えました。 回る三角錐はコイルとLEDとダイオード、コンデンサのみの簡単な構造をしています。

 円柱の鏡 (前田さん  

  ポリカーボネイトミラーをつかって円柱を作ります。中心にチョークを置いて、斜めから見ます。  
 ある点でチョークの実像が見えます。何か奇妙な感じをうけますが確かに実像です。
 
  ゆがみのない円柱鏡ができたら、もっとはっきりきれいに見えるかもしれません。
  
 
 鏡面は、上下方向では平面鏡と同じですが、水平方向には凹面鏡と同じです。 このためチョークの像は、鏡の手前でも左右が逆転している(はず)です。

 黒い色の物体を使うと像があまり映えないようです。白いチョークが一番よかったそうです。
 ひょっとすると、もっと映える色の物体が見つかるかもしれません。いろいろ試してみると面白いですね。





←見えているのは中心のチョークの実像。

 怪力の筒 (佐野さん  
 力比べをすれば必ず勝てる怪力の筒。構造は図のとおりです。
 摩擦を無視すれば、左の紐を引く人は、右の紐を引く人の1/4の力でつりあわせることができます。

 

 筒を持つ人が第三者の場合は原理どおりですが、写真のように左右の人が筒を持って引き合いをしたときはどうなるのでしょう。
 なかなか悩ましい・・・・。

 試してみたら、紐が外れてしまいました。頑丈に作る必要がありますね。

 磁石で分子模型 (佐野さん  

 今年は化学も教えています。
 化学結合の話で、単結合と2重結合の違いを説明するために大き目の発泡スチロール球で分子模型を作りました。が、結合を表す棒が簡単に外れて模型がうまく組めません。

 そこで安価なネオジム磁石を発泡スチロールに埋め込むことにしました。鉄棒が磁石でくっついているため安定した模型を組めるようになりました。

 単結合では原子は回転可能ですが、2重結合になると回転できなくなることを定性的に見せられます。
 

 モータは発電機 (林さん  
 2006年2月18日(土)の例会で発表した回り続けるコマを改良しました。外コマが回転せず安定して立っています。内コマから受けるトルクと軸の摩擦によるトルクがうまくつりあっています。すごいですね。

 電池との接続を切り、モーターの両極に豆電球をつけると豆電球が光ります。モーターはまさに発電機です。 

 外コマが静止しています。もちろん内コマは回転中!

 うっすらですが豆電球が点灯しています。
 残念ながら上のコマでは中のモーターが見にくいので、教材として別のモーターを用意しました。 この小型モーターでは豆電球を点灯させるほど電流を取り出せませんので、電流計で変化を見ます。

 回り始めは電流が多く、回転速度が上がるにつれ(モーターによる発電が電池と逆向きに起こるために)電流がへっていくことがわかります。

 回り始めです。

 ストロボのせいで回転していないように見えますがモーター回転中です。電流が減っているのがわかります。

 手作り圧気発火器 (林さん  
 手作り圧気発火器です。
 部品は写真のとおり。

 アクリルパイプに、シリコンゴム栓(0号)を2個入れます。底はウェルナットというねじで固定します。
(ねじを回すと膨れて管に密着します。)

 ティッシュを入れて鉄棒で一気に押すと見事に発火。

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