2008年9月27日(土)愛知工業高校での例会の記録です。
 
 9月10日、スイスで世界最大の素粒子加速実験装置「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」が運転を開始しました。円周27キロのトンネル内で、光速近くまで加速した陽子同士を衝突させ、素粒子の標準理論を検証する予定です。
 素粒子に質量をもたらすとされている「ヒッグス粒子」の発見や、宇宙の約2割を占める“暗黒物質”の有力候補「超対称性粒子」など宇宙誕生直後に生まれたとされる素粒子の発見を目指すようです。ミニブラックホールができるかもしれないともいわれています。

 この宇宙がどんな歴史を経て現在に至っているのかという研究は、今すぐ役に立つ知識を得られるわけではありませんが、私たちのものの見方考え方に大きな影響を与えてくれるようになるかもしれません。
 実験の成果が、一般の人々にも理解できる形で公表され、最新の研究の成果が教育現場でも話されるような雰囲気にしていきたいものですね。

 固有振動数はなぜ下がる? (石川さん  

 気柱共鳴が起こるとき、定常波の腹が開口端より外にあるといわれています。でもこれは本当なのでしょうか。
 これを確認するための装置を作りました。
 水流で管内の様子を見てみると、開口部に渦ができており、幅が狭くなっているようにも見えます。
 スピーカーの口にアクリルパイプの閉管(スピーカー側が開いている)を置き、開口端近くにろうそくを置きその炎の動きを調べてみました。炎が吸い込まれていく様にみえます。

 炎がゆれるのは、定常波の腹ができているからではなくスピーカーのせいではないかとの声あり。

 管を離してみると炎がゆれました。スピーカーのせいでした・・・・・。

 管をヘルムホルツの共鳴器と考えれば、管内の固有振動数は開口部の面積の平方根に比例するから、渦の効果で開口部の面積が小さくなれば振動数は下がる・・・・。波長が長くなる効果になります。
 ひょっとすると、管内の音速が変化しているのかもしれません。

 わかっていると思っていることも、確認してみようとすると簡単ではないことが多いですね。


 水流で管内の流れの様子をモデル化してみました。
 管内に水の出入りが起こるようにすると、開口部に渦ができ
 管の口の面積が変化しているようにも見えます。

    クントの実験もできる装置です。


 回転エネルギーを実感する (石川さん  
 右の写真のように木製の円盤を2種類用意しました。右側の円盤は、中心に車輪をつけ、それが回転できるようにしてあります。左側は中心部分を円盤に固定してあります。
 この
2つの円盤を斜面でころがすと、どちらが速く落ちていきますか、という問題です。

 位置エネルギーが、円盤部の回転運動のエネルギーと併進運動のエネルギーに変わって行きますから、円盤部が回転しない方が併進運動のエネルギーが大きくなりますね。つまり速く落ちる。

 転がしてみると、明らかに回転しながら落ちる方が並進運動は遅いです。納得。

 物体を回転させることで、ゆっくり落下させることができるのですね。
 

 円盤部が回転するのでゆっくり落ちます。

 円盤部は回転しないので、ほぼ斜面での質点の落下になります。

 重心を観る (石川さん  

右の物体は、中央にLEDをつけてあります。これを回転させながら投げ上げると、棒は回転しますが、LEDの光点は放物運動(斜方投射)をします。
 LEDはこの物体の重心にあるのですね。

 重心の意味を、静止状態だけでなく運動状態でも実感できますね。









 物体が対称形でなくても、全体は回転しても重心は放物運動をすることを確認できます。重心位置とその他の点で色違いのLEDを使ってあります。
 今度は剛体振り子です。中央の棒が振動します。 錘として棒を使っていますが、錘の形(振動軸に垂直か並行か)で周期が異なります。

 重心は同じ位置なのですが、振動中心に対する慣性モーメントが異なるのですね。

 簡単な装置で様々な量の意味を理解できます。面白いですね。

 水素が水を吸う? (林 正さん  
 素焼きの壷に水素を入れて栓をすばやくすると、内部が大気より負圧になります。
 壷につながった管を通して水を吸い上げることで確認できます。(水は着色してあります)。

 分子量の小さい水素は
平均速度が大きくて拡散の速さも大きいため、素焼きの壷の壁を通過する時間は、外部の空気が素焼き内部に進入する時間より短いために、内部の圧力が下がります。
 壷の内部に二酸化炭素を入れると、分子量が大きいので逆に内部の圧力が大きくなります。

 壷に空気を入れ、写真のように外側に二酸化炭素を入れるとやはり分子量の差から内部は負圧になります。

 気体の分子量の差を目で見ることができますね。期待通りの結果でした。

<発表者から>
 どんな素焼きの壷でもうまくいくわけではありません。いい結果を出すには、壷の選別が必要です。
 この実験は、杉山 正明さんから教わりました。


 壷に水素を入れると、20秒ぐらいで水がどんどん上昇していきます。

 壷に空気、外側を二酸化炭素にしても内部が負圧になります。

 空中浮遊の重さ (林 煕さん  
 はかりに載せた鳥籠の中で鳥が飛んだらはかりの目盛りはどうなる?
 「いきいき物わくわく実験1」にも載っている問題です。

 これまで物理サークルのメンバーが、色々な装置でこの問いを確認してきましたが、これまでで一番シンプルな装置を作りました。
 模型飛行機用の強力な直流モーターを使い、スライダックの出力を整流して電源にしています。 スライダックを回すとプロペラが回り、モーターの付いた棒が持ち上がり、はかりの目盛りが動きます。

 下に敷いた発泡スチロールの板に壁をつけると目盛りの動きが異なってきます。
 
 このはかりの動きを正しく予想できれば、あなたは立派な物理の理解者です。 

  右はホバリングするおもちゃでロボッP(ロボッピー)といいます。約3000円程度で市販されています。赤外線利用のリモコンで空中浮遊させることができます。熟練(?)すると静止状態からの離陸もできるようになります。

 これを利用すると、上の「籠の鳥」問題を実験できます。
 はかりの変化が小さいので読み取りに苦労するかもしれませんが、立派に実験できます。
 
 真理のためにはおもちゃでも何でも使う・・・。 ちょっと大げさですね。

 回転台の改良 (林 煕さん  

おなじみTVの回転台です。中をあけてベアリングにシリコンスプレーをかけるとよく回転するようになります。そして回転台の下部にはボール紙、上部は厚いベニヤ板を乗せると荷重が分散されよく回ります。
 回転の実験をするために1つ用意しておくとよいですね。

 TV
が液晶やプラズマのように平面型になってきているので、回転台が販売されるのも限りがあるかもしれません。
 ない人はおはやめに。


 テスラコイルは共振器です (林 煕さん  

 簡単に持ち運びができるテスラコイルを作ろう、ということで作成しました。が、結構大きくなってしまいました。
 回路図は下の写真の通り。1次コイルの巻き数は19回、2
次コイルの巻き数は1500回です。
 
 
 テスラコイルは普通のトランスとは違い、1次、2次コイルはそれぞれ
LC回路を形成しており、1次、2次の共振周波数が一致すると放電エネルギーがうまく伝達されるのですが、今回、1次回路の共振周波数と2次回路の共振周波数を計測してみたところ一致していませんでした。しかし、それなりに高圧になりバチバチと放電していました。

 それぞれの回路の共振周波数が、動作状態での振動数と異なっている可能性がありますが、一致していなくても高圧が出るとすると、こんなに疎の結合なのになぜなのかな?という疑問が残っています。


 動作中の発振周波数を測定する必要がありますね。

 バラエティ電気振り子 (永田さん  

                           


 先進科学塾で製作した高電圧装置を利用して、楽しい電気振り子を作ってくれました。+と−(内部に極板があります)に高電圧をかけ、間に色々なものを糸で吊り下げます。

 アルミ球、ゴム風船、毛糸球、葉っぱ、チョコレート、チーズ、あめ、ろうそく・・・
 金属なら動きが予想できますが、その他の物質はどうなるんでしょう。試してみたくなりますね。理科くささがとれ、やってて楽しくなります。

 センスがあると、ただの電気振り子がここまで変身します。物理サークルももう少し美的センスが必要?
かもしれませんね。

     [次ページヘ]