2011年12月3日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 今年のノーベル物理学賞は、宇宙の加速膨張を発見したことにより、米ローレンス・バークリー国立研究所のソール・パールマター博士、オーストラリア国立大のブライアン・シュミット博士、米ジョンズホプキンス大のアダム・リース博士の3氏に贈られました。
 宇宙の膨張が加速度的に速くなっていることは、物理サークルでの名古屋大学の杉山直先生の講義で聞いてはいましたが、ノーベル賞級の発見だったのですね。
 
 さて、宇宙の加速膨張などのような最新の宇宙像を生徒に伝えようとするとき、どういう流れで説明していけばいいのでしょう。
 単に結論だけを話しても、SF物語と同じになってしまいます。さりとて、超新星爆発の話、ハッブルの法則等々、結論への理論を全て話すのも多くの時間が必要です。(筆者が内容を理解していないことが一番の問題ですが・・・・)。
 証拠を示せるものは証拠を示し、実験で確かめられることは実験で確認し、話のみですますのはどこまでか、その選択こそが、内容を正しくく伝えるための創意工夫といえるでしょう。
 よくよく考えれば、この努力は、日々教育現場で私たちが行っていることですね。

 小学校の先生から最先端の研究者まで、内容は異なりますが、伝えることについての創意工夫が求められているのですね。 


 スパークチェンバー (近澤さん  

 退職された近澤さんが、使わなくなった実験道具を持ってきてくれました。
 ひとつはスパークチェンバー。 
 小型高電圧発生装置で、銅線と床金属面の間に高電圧をかけます。
 ここに放射線が飛び込むと、放電が起こり、飛跡が見えるというものです。
 右は、昔の煙探知機を分解したものです。
 中央部に放射性物質が使われています。ここから出る放射線が、煙により遮られることを利用して煙の有無を判定していたのです。
 (最新の煙探知機は別の原理が使われているかもしれません。)

 セロファンテープ1枚で放射線の強さが大きく変わることから、主にα線が出ているものと思われます。
 

 
  中央部にテープを貼った状態で0.19μSv/h 。   テープをはがした状態で1.25μSv/h 。
  この放射性物質をスパークチェンバーに近づけると、放電が起こります。確かに放射線が出ています。

 (残念ながら写真には放電がうまく写りませんでした。)
 

 光速測定器具 (近澤さん  
 アナログテレビのゴースト像を利用して、光の速度を測るために購入したアンテナと同軸ケーブルです。

 テレビのデジタル化でゴーストが調べられなくなりました。

 残念ながらお役ごめんということで、何かうまい利用法を考えて下さいと、アンテナと同軸ケーブルを持ってきてくれました。

 時代の変化とともに、実験装置なども変化していくのですね。 常に新しい工夫が求められています。

 <参考> いきいき物理わくわく実験2
        「ゴーストの正体はあのビルだ!」
 
 

 大科学実験 (前田さん  

 NHKの大科学実験でやっていた、パラボラ面でのスーパーボールの跳ね返りの再現実験です。
 跳ね返り係数(反発係数)が1に近ければ、パラボラ面で跳ね返ったスパーボールは焦点を通ることになります。
 
 低いところから落とすと、跳ね返って焦点に向かいますが、到達するまでに重力によって落下するので、焦点に置いた鈴に当たりません。
 
 十分な速度を持たせるために、高いところからスーパーボールを落とします。

 4つのボールを同時に落下させるために、板で支えておいてから落下させます。

 
 下の写真は秒間300コマで高速度撮影したものです。

 4つのボールが見事に焦点に集まりました。
4 5 6
 

 振動回転変換器 (前田さん  
 
 ピアノ線の片端を板に固定し、他端をコイルの中に通し、先端に回転できるようにしたプロペラをつけます。
 さらに、写真のように、先端が磁石の間に入るようにセットします。先端部が下向きの磁場に入るようにしているわけです。
 ここでコイルに交流電流を流します。
 先端部がコイルで磁化され、磁場から力を受け振動します。   奥の電源でコイルに交流電流を流します。
 

 コイルによって磁化されたピアノ線が、磁場から力を受けて上下振動をします。その振動によってプロペラが回転します。これはガリガリトンボ(ガリガリプロペラ)の応用ですね。
 面白いことに、交流の振動数を変えると、プロペラが激しく回転したり全然動かなかったりします。
 
   プロペラも激しく回転。  交流を流しているのにぷろぺらは回らず。
 
 これは、交流の振動数がピアノ線の横振動の固有振動数に一致すると、ピアノ線が大きな振動をするということ、一致していないときは小さな振動になるということに起因していると考えられます。
 バイブレーターに鉄棒を固定し、手で支えながら振動させると、中間にあるナットが回りだします。
 先の実験と同じで、振動が回転に変わる現象ですね。

 さらに面白いことに、手の支え方でナットの回転方向が変わります。なぜでしょうね。

 <参考> ガリガリトンボ (田中さん)
 

 クーロンメーター (伊藤 昇さん  
 物理教育研究会のAPEJ2011夏期研究大会の工作教室で製作したクーロンメーターです。

 デジタル電圧計(秋月電子通商のデジタルパネルメーターPM129A〔\1000〕)と1μFのコンデンサとスイッチだけで作る、安価で簡単な構造です。

 装置の開発者は青木光男さん(埼玉県立上尾橘高校)です。




  デジタル電圧計とコンデンサ、スイッチのみでできる、簡単な構造です。

 指の先の青いものが1μFのコンデンサです。

 アンテナ部分に帯電体を近づけると、正負20.0μCまでの電荷量を測ることができます。
 摩擦した塩ビ板を近づけると負の値が、アクリル板を近づけると正の値がでます。
 なお、赤色のボタンはリセットスイッチです。
 

 点接触型ダイオード (伊藤 昇さん  
 シリコンや黄鉄鉱などの鉱石に針の先端を触れるようにすると半導体ダイオードの働きをします。昔のラジオなどで検波器として使われました。
 つまり整流作用を持つわけです。この作用を確かめました。

 電子オルゴールは直流の1.2〜3.6Vで鳴らすことができます。
 まず、電池(単三×2本)に接続して音が出ることを確認したあと、交流電源では鳴らないことを確かめます。

 下図のようにつないでから、針の先端を鉱物のいろいろな場所に立てて、電子オルゴールからうまく音の出る場所を探します。
 針が、ダイオードの働きができる場所に来るとオルゴールが鳴り出します。

 金属と鉱物の接触でどうして整流作用が可能なのかという疑問が出されました。金属の酸化皮膜と鉱物物質との作用らしいのですがはっきりしたことはわかりません。

 <参考> 原始ダイオード研究室




 写真の鉱物は黄鉄鉱。
  針でうまく動作する点を探します。
 

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