2012年2月18日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 日本海側や北海道が大雪に見舞われています。
 地球が温暖化しているなら、冬は暖かくなりそうに思われますが、そんな単純なものではないようです。

 右のグラフは、気象庁のホームページのデータです。
 日本の冬(12月〜2月)の平均気温の変化を表しています。 平均気温は日本の17地点の月平均気温データから算出しています。
 
  細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差
  太線(青):偏差の5年移動平均、
  直線(赤):長期的な変化傾向。
    基準値は1981〜2010年の30年平均値。

 これを見ると、確かに長期的な変化傾向は温暖化を示していますね。でも平均的な傾向であり、かなりの寒冬の年も結構出現しています。

 気候変動について考えるためには、長い年月の地道なデータの積み重ねが必要ですね。データ収集の重要性を生徒たちに伝えることも大事ですね。

 <参考>気象庁のホームページ(気象統計)
 

 高出力レーザー (前田さん  
 高出力のレーザーを入手しました。
 念のため、目の保護用として実験時にはスキー用のゴーグルを使います。
 
 綿火薬(手品で、手のひらで一瞬火を出すときに使います)を黒くして、レーザー光を当てます。しばらくすると発火します。

 なお、色が白のままだと発火しませんでした・・・・・・。
 

 青紫のレーザー光が当たっています。

  発火した瞬間。
        綿火薬に黒いマークをつけ、そこにレーザー光を当てると・・・・・ボッと発火!

 役立ちフリーソフト (前田さん  
 音楽ファイルの再生速度を変化できるフリーソフトがあります。 WINAMP というソフトに、PaceMakerというプラグインをつけます。再生速度だけでなく、ピッチも、テンポも変えられます。
 
 音楽ファイルの再生速度を変えていくと、別の人が歌っているように聞こえます。このような例で、振動数や音色の意味を楽しく実感させることができます。

 WaveSpectraというソフトもあります。
 これは、音声信号を FFT(高速フーリエ変換)して、リアルタイムにその周波数成分(スペクトラム)を表示するツールです。

 ろうそくの科学_プラズマ (藤田さん  

 ろうそくの炎を、電場の中に置くと、炎が電場の向きに傾きます。(負極側に炎が傾きます)これは60年ほど前から知られていたことですが、今回、新たに、炎の周りの出来事と、炎の内部の電子の温度について調べました。

 炎が傾くのは、正のイオンが負極側に動くためですが、電子はどうなるのでしょうか。
 電子は反対側に動いているはずです。

 これを調べるため、電極を金網にして、間にろうそくを置きました。 金網だと空気流の妨げが小さいからです。
 
 金網に電圧をかけないと、炎は上を向きます。   金網に4KVの電圧をかけると、炎は負極側を向きます。
  別の炎を、負極の金網の外側においてみると、ろうそくと同じ向きに炎が傾きます。

 電場によって作られた炎の中の正イオンの流れが、金網を通過して外側まできていると考えられます。

 正極側はどうでしょう。


 ろうそくの炎の反対側は、何と逆向きの流れがありました。
 しかも、その流れは狭い範囲で起こっています。
 これは、炎の中の電子が電場と逆向きに力を受けて、空気分子に取り付いて空気流を作ったと考えられます。
 下のほうでは炎は影響を受けません。  ろうそくの炎の傾きの反対側は大きな流れがあります。  上方では下方と同様炎は影響を受けません。
 炎の近くに、右のようなプローブ(先に小さな面積の金属板をつけてあります)を出し入れして、流れ込む電子流を電極(アース)との間の電位差としてオシロで測ってみます。
 炎の近くでは、予想通りの電位差が出ますから、確かに電子流がおきています。
 炎から離れると電位差は減っていきます。
 絶縁チューブのカバーの先の電極に数ミリ角の金属板を接着。
 炎の近辺での電極に対する電圧を測ります。   プローブの場所により電圧が上下します。

 次に、炎の中の電子のエネルギー分布を測ります。
 方法は、ラングミュアプローブ法です
 これは、針状または平板状のプローブを炎の中に入れ、炎の中の基準電極に対しての電圧電流特性を取ることによって、プラズマ中の荷電粒子密度・温度,エネルギー分布等の情報を局所的に求める方法です。

 ろうそくの炎は時間とともに炎の位置が動くので測定には不向きです。
 そこで、炎の位置が変化しないオイルランプの炎を調べてみます。この炎なら、基準電極の位置が変化しないので好都合です。

 基準電極を炎の下部に置きます。針状のプローブを炎の中に入れ、適当な交流電圧をかけます。
 プローブに電流が流れると、直列に接続されている抵抗に電流が流れ電圧が発生します。
   炎が安定しているオイルランプを使います。   炎の中のリングが基準電極です。上方にプローブ。

 下側の波形は、プローブにかけている交流電圧。
 上側の波形は、プローブに流れた電流の大きさを表しています。

 炎の中で、一種の整流作用が働いていることを、波形は示しています。
 プローブ先端の電圧が電子を加速する向きなら、大きな電子電流が流れ、逆電圧が大きいと、炎中の電子はプローブから押し返され、小さな正イオン電流のみが流れ込むということを示しています。 (逆電圧が小さければ、電子のエネルギーを使ってプローブまでやってくることが可能。)

 プローブにかける電圧(Vp)とプローブに流れる電流(Ip)は右のグラフのような形になります。
 

 Vpをx軸に、Ipをy軸にとってオシロでリサージュ図形を描かせると写真のようになります。

 減速電界領域での電子電流の増え方(リサージュ図形から求める)から、電子の平均エネルギーの値がわかります。

 平均エネルギーの値を熱運動に換算して、電子の温度を算出します。

 測定の結果は、電子のエネルギーは約0.2eV。
 これは温度に換算すると、約2300Kになります。

 熱電対などで測定した炎の温度は1000K程度ですから、桁としてはあっています。
   VpとIpのリサージュ図形。

 放電管内部のプラズマの温度などの測定例はあるが、ろうそくの炎の電子温度を測った例はないのではと思います。

 オシロと意欲さえあれば、プラズマも恐れるに足らず、ということですね。   

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