2012年2月18日の例会の記録の第2ページです


 糸電話における音の伝わり方 (伊藤さん  

 科学部の生徒たちの研究成果を発表してくれました。

 糸電話の糸を伝わる振動は縦波か横波か。
 糸電話の糸をゴムひもに替えると音が聞こえなくなるのはなぜか。
 
 という疑問に迫った優れた研究です。
 糸電話の糸として水糸(ナイロン製)を使いました。
 ナイロンの伝播速度を計算してみると、
  縦波は、約1000m/s
  横波は、約 50m/s

 糸電話の送信側のスピーカーと受信側のスピーカー(マイクとして利用)
の信号を、コンピュータに取り込み、時間の遅れを測定しました。
 結果は約667m/s。(糸の張力2N、長さ3mで測定)

 この値から、縦波であるという結論になります。

 念のため、張力を変えて測定しましたが、張力による速度変化は見られませんでした。
  


 さらに、糸に印をうち、音の伝播中の糸を顕微鏡で観測しました。
 すると、糸の方向に平行な向きの振動を確認できました。
 これらのことから、糸電話の糸を伝わる波は 縦波 である と結論できます。
 次に、水糸をゴムひもに換えて同様な実験をすると、信号が感知できません。
 空気を伝わったと思われる信号のみで、ゴムひも中には波は伝わっていないようです。


 面白いことに、右のような装置にすると、ちゃんと音が伝わります。


 この場合の信号波形を調べてみると、2種類の波が伝わっていると考えられます。
 1つは、速さ20〜60m/s。 張力によって速さが変わるので横波と思われます。
 もうひとつの波(振幅は小さい)は、300m/s。張力によって速さが変わらないので縦波と思われます。


 さらに、音が端で反射してエコーがかかっていることも確認できます。

 まとめると、垂直に振動を加えると、ゴムひもは主に横波で振動を伝える、といえます。

 なぜ、このような形をとるとゴムひもは波を伝えるのでしょう。
 
 水糸で同じ形にして調べてみました。
 
 不思議なことに、横波の波形は観測できませんでした。縦波のほうは振幅が小さいながら観測にかかります。
 なぜ水糸だと横波が伝わらないのでしょう。

 金属線なら伝わるのではないか、という意見も出ましたがはっきりしません。
 引き続いての研究報告が楽しみですね。
 
 
 詳しく調べることで、新たな不思議が出てきました。
 これこそ物理の面白さといえるでしょう。

 電子レンジで光速度を求める (井階さん  
 
 日経サイエンス2012年2月号に、台所の科学として、電子レンジで光速度を求める話が載っていました。
 電子レンジの使う電磁波の波長を、冷凍ピザの焼ける位置ではかり、レンジの振動数(通常は水の分子が共振する振動数2.45GHz)を掛けて光速度を求めるというものです。


 とろけるチーズを、レンジの庫内に敷き詰め、加熱します。
 チーズが融けるのは、電磁波の定常波の腹の位置と考えられるので、融けた位置間隔=λ/2 として波長λを出します。
 
   とろけるチーズを平面に敷き詰めます。
  レンジに入れて・・・加熱開始。    中はほとんど見えないので何度もあけて確認。
 やってみると、融けた点の間隔は7cm。
 ここから 
   C = 0.14×2.45×109
     =3.4×108m/s

 ちょっと大きめですが、桁はあっています。

 レンジの庫内にできているのは立体の定常波で、融けた点の間隔がλ/2 と考えていいのでしょうか。また、金属容器内の光の速度は、真空中と同じと考えていいのでしょうか。
 疑問は次々湧いてきます。解決案は湧いてこない・・・・。
  
  よく融ける場所が何箇所かできます。間隔は約7cm
  

 楕円コンパス (加藤さん  
 右の写真は何だと思いますか。
 昔(?)加藤さんが購入したもので、ドゥーナッシング というそうです。ハンドル部分を回すだけで何にもならない?おもちゃだそうです。
 
 しかし、ハンドルの動きは楕円の動きになっていることに気づいて、黒板用の楕円コンパスを作成しました。装置の動きはこのおもちゃと同じです。
 離心率を変えられるようになっており、扁平な楕円から、円まで描けます。
 自作楕円コンパスで楕円を描いています。   紐を利用した楕円の作図も説明します。
 原理は以下のとおりです。

 点Pが y軸上を、点Qが x軸上を動くとき、(PQ=一定)
  PR : RQ = a : b (内外分)
を満たす、直線PQ上の点長の軌跡は、一般に楕円になります。

 
 
 楕円コンパスを使って描いた楕円の線に沿って、板をくりぬきました。(結構大変・・・・)
 焦点の位置に、電球とアクリル製のねじをつけてあります。側面は、薄板をはりアルミテープで上張りをしてあります。

 片側の焦点の電球を光らせて、色セロファンをつけたカバー(黒のフィルムケース)をかぶせると・・・・
 側面で反射した光が、アクリルねじに集まり光っています。焦点から出た光が他の焦点に集まることがよくわかります。しかも美しい・・・。
 カバーをはずすと、これまた、趣のある光のオブジェがみられます。これまた美しい・・・・・。

  カバーを回すと色の線がいろいろな形になります。   左が豆電球。右は光が集まって輝くねじ。
 切り抜いた楕円も無駄にしません。
 側面に沿って薄板を貼り付けて、ボールの運動場(?)を作ります。

 片方の焦点から、スパーボールを打ち出してやります。壁で反射して、他の焦点に向かうことが見てわかります。

 加藤さんは数学の教員です。
 数学の時間に、楕円の性質をこういう教材で説明されていれば今頃・・・・・。


 材料を無駄なく使いきっているてんにも感心しますね。
 
  
 ラザフォードの実験 (鈴木さん  
 科教協ニュース1月号に載っていたものです。

 針金の丸い輪に紙を貼って原子モデルとします。ここにおもちゃの銃で、BB弾をこのモデルに撃ち込みます。ラザフォードの実験のモデル化です。

 紙を水でぬらしておくと、紙にうまく穴が開き、中心部に硬いものを置くと(原子核!)、弾(α線)は当たると跳ね返ります。
 
 実験の狙いはよくわかりますね。
 分布がわかるには、相当数の弾を撃つ必要がありますが・・・
 
  

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