2013年7月6日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 今年も暑い日々が続いています。土用の丑の日といえばうなぎというように、庶民の生活に定着した感のあるうなぎですが、近年価格の上昇が甚だしいですね。ニュースで稚魚をマダガスカルやフィリピンから買い取るという事を耳にし、 マダガスカルでの記憶が蘇ってきました。

  機内で知り合ったマダガスカル人と話が弾み、家に食事に招いてもらったときのことです。彼はフランス系ボランティアネットワークを組織する人物でした。和んだ雰囲気の中で会話が弾んでいたとき、「日本人がマダガスカルの森林をたくさん 切っているのを知っているか?」と聞かれドキッとしました。日本は安く紙を作るため、マダガスカルの木材を大量に輸入してきたのです。

 日本は世界のウナギの7割を消費しているそうです。ウナギの稚魚の要因は日本の短期的な狭義の「国益」を追求した結果の、無計画な乱獲によるものなはずです。
  国自体が企業自身が無頓着ならば、消費者各人がお金の使い方をよく考え、消費の選択を賢明に行っていきたいものです。

<参考>  世界自然保護基金ジャパン 森林の保全



 遮熱と断熱 (臼井さん)  

  臼井さんの自宅でこれまで使われてきた瓦ですが、家の修繕で不要となりました。臼井さんは瓦が太陽光で高温に
 なることから、断熱や遮熱をするとどれほど、温度上昇が抑えられるのかを実験してみました。
 断熱材としてダンボールを、遮熱剤としてアルミホイルーを使ってみました。写真の左から、瓦の裏面にアルミホイル、表にダンボール、表にアルミホイルを貼ったもの、そして手前が元々の瓦です。

  臼井さんは、これらを愛工で太陽に当たるように設置し例会中に放射性赤外線温度計で実測するつもりでしたが、気温がぐんぐん上昇した愛工付近は突然のにわか雨。以前に計測したデータを示してくれました。

表面温度(表) 表面温度(裏)
45℃ 45℃
表;アルミホイル 35℃
表;ダンボール 37℃
裏;アルミホイル 45℃
 瓦にダンボール、アルミホイルを貼りました。


  次は家だということでダンボールハウスで実験です。アルミホイルをダンボールの外側に貼ったときは、2℃ダンボール内の温度が下がりましたが、内側に貼っても温度は下がりませんでした。




 ダンボールハウスに貼ってみると…

 打倒?力のモーメント (臼井さん  


 物体が倒れるのが先か滑りだすのが先かという力学の問題を実際に実物で考えてみましょう。

 まずは直方体はどれだけ傾けたら倒れるかという話題です。少しずつ傾けていくと倒れるのですが、これでは倒れる条件に気付くことが困難です。そこで、フックに針をつけます。針は重力の方向、つまり鉛直方向を指すことを利用しようというわけです。


 毎度ながら、さすがのネーミングセンスです。  この針がポイントです。
 そして、再び徐々に物体を傾けていくと、ちょうど針が回転軸となる角を指したとき、倒れるのが確認できます。
 重心の位置が回転軸の真上にあるとき、倒れ始めることが確認できますね。

 
 ちょうど針が回転軸の方向を指したとき・・・
 次に木片が倒れるのに必要な力を検証します。上の角をばねばかりで引っ張ると、少しの力で簡単に倒れます。 ドアノブを回転軸から遠くにつける理由がここにある訳です。
  次に下の方に引っかけると、倒すためにはどれほどの力が必要でしょうか?

 さて実験です。
  上のフックに引っ掛けると
  引っ張ると、倒れるより先に滑り出してしまいます。教科書等にもよくある問題ですね。
 ということで、回転軸を押さえて再度実験です。すると、計算より随分小さな力で倒れてしまいました。なかなか思い通りにはいきませんね。

 原因として考えられるであろう、ばねばかりを水平に使うことによる誤差は測定値のずれを説明できるほどのものではなさそうです。
 定量的な実験とするなら、もう少し工夫が必要ですが、目で見て定性的に現象を理解するだけでも、力学の問題が現実のことと感じられるでしょうね。
 
  下に引っ掛けた場合は支えないと滑ってしまいます。

 葉緑素と光吸収2 (井階さん  
 意欲的に科学と人間生活の授業に取り組まれている井階さん。昨年に続き、植物が吸収する光を調べる実験の授業報告です。
 実験方法は植物の葉をすりつぶして作ったサンプルを作ります。それサンプルに含まれる色素をペーパークロマトグラフィに よって分離します。一方、サンプルを試験管に入れ、光源からの光を照射し、透過したものをプリズムで分散させ、観察される連続 スペクトルから吸収スペクトルを調べます。
 すると、クロマトグラフィーにより分離された色とプリズムを通し見えるスペクトルが補色関係であることが分かります。
 装置の全景です。
 今回の実験では、以下の4点について改善を試みました。 
@ サンプルとして使用する前に半日ほど干して乾燥させる
A 試験管にサンプルを入れたまま、吸収スペクトルを調べる
B あらかじめ濾紙に目盛りを打ち、1分ごとに変化を記録する
C 展開後の濾紙を班ごとに並べて比較する
 濾紙に目盛を打つなど工夫を加えました。
 それぞれの効果についてですが、
 @により水分が多いときに比べ、はっきりと吸収スペクトルが見えるようになりました。
 Aでは、昨年度までの直方体のセルにサンプルを入れたときと比べ、試験管に入れたときの方が赤の吸収スペクトルがはっきり確認できました。光の反射や屈折の影響の関係でしょうか。
 直方体のセルより試験管のままの方が吸収がはっきりわかりました。
 BCでは、右の写真のようにペーパークロマトグラフィーによる植物の葉の色素のを分離した時の植物による違いがはっきり分かります。 また、同じ植物の葉の色素を分離した場合の班による違いもはっきりします。
 濾紙を並べて比較すると植物による違いがはっきりします。
 肉眼だと赤の吸収スペクトルが確認できるのですが、デジカメカメラで撮ると写りません。アナログのカメラでも同様でした。これが、今後の課題となりそうです。
 肉眼で見えるものがカメラには写りません。

 鉄琴 (石川さん  
 音さをたたくつちですが、表面はゴムでできています。なぜなのでしょうか?仮に、硬いもので叩くとどうなるのでしょうか。 硬いものでたたいたときは波形が複雑になりますが、軟らかいもので叩いてみると、純音に近い波形になります。これは軟らか いものはたたくときに両物体の接触時間が長いため、接触中に振動数の大きい音が吸収されるためです。
 硬いつちでたたくと、複雑な波形になります。


 鉄の棒の固有振動を円形、半円形、8の字と様々な形のコイルでピックアップしてみました。すると、半円形コイルは鉄の棒の振動の向きにより、 音の大きさが変化します。これは磁束の変化の大きさが異なるためです。コイルの中で抜群の音色を響かせたのは8の字コイルです。音も大きくノイズもありません。

  <参考>  鉄の響きは8の字コイルで聞こう(清水さん)


 
 巻き数は等しいコイルですが形の違いで音に違いは生じるでしょうか?  鉄の棒の振動で誘導電流をアンプで増幅します。

 続いて、石川さん自作のエレキ鉄琴の登場です。

 製作方法は、次の通りです。まず、音階に合わせてあらかじめ鉄の棒の長さを決め、 切って並べるます。
  次に、コイルと磁石を鉄の棒に少し離して固定します。この鉄の棒の固有振動をコイルが電磁誘導でひ ろい、それを増幅します。このとき使用するコイルは勿論、8の字形です。これによってノイズが消えてきれいな音になり ます。また、鉄の棒は節の位置(端から全体の長さの22%)を柔らかく固定します。以上で鉄琴ができあがります。

 8の字コイルが澄んだ音を生み出します。
 会場はこの日のうだるような暑さも忘れ、高価な楽器さながらの澄んだ音色に魅了されました。
 演奏の腕前も生徒の感動を増幅させることでしょう。

 厚膜による干渉2 (杉本さん  
 杉本さんが前回、提案された厚膜による干渉。2ヵ月の時を経て、各自が持論を持ち寄りました。石川さんと川田さんが杉本さんのアイデアである虚像からの干渉と見なしても、 通常の薄膜の干渉の式を用いても薄膜への入射角が小さい場合は、干渉縞の縞の間隔を求める式は一致することを示してくれました。
 杉本さんは授業に生かせなさそうだと、モチベーションが下がったそうですが
 また、川田さんはMITのWESTON SEARS「COLLEGE PHYSICS」の中で薄膜干渉を、薄膜の表面と裏面で反射する光を背後の2点の虚像からの光の干渉とする論法を見つけました。
 これは杉本さんのアイデアと同じものです。

  WESTON SEARS氏は、実験も行っており、薄膜として雲母片(厚さ0.002インチ=0.05mm)を、光源は水銀アーク灯を使用しています。
 WESTON SEARS"College Physics"から

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