2013年12月14日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

   

 フォトリフレクタを使った加速度計 (伊藤 昇さん)  


 名古屋EHCで行われたPICマイコン講座での学習を経て、そこからの応用で、反射型の光センサーを使った加速度計を作りました。

 仕組みは速度測定器としておなじみのビースピと同様に、LEDから出た赤外線が物体の表面で反射したものをフォトトランジスタで感知し、隣り合う3つのセンサーを 通過に要した時間から加速度を計算するというものです。
 赤外線を反射して感知するため、物体がセンサーから1p以内を通過する必要があり、直射日光など明るい光をセンサーが感知してしまうため、感度調整が必要になるなど、 いくつか問題もありますが、5000円程度という比較的安価で製作でき、精度も必要十分です。

 フォトリフレクタが3つ使われています。  各点で計測がされると、LEDが点灯する仕組みです。

   伊藤 昇さんは、この装置を物理基礎の「斜面の運動」で使用しています。授業時に生徒が三角関数を学んでいないことを考慮し、台車の初速度が0で、離す高さを10p、20p、30pとしたとき、加速度が 2倍、3倍となっていくこと各班に計測させ、計算した理論値との比較を行わさせているとのことでした。

 実際の授業では計測のみなら5分ですべての班が終了したとのこと。授業時間を気にせず行え、高さと加速度の関係が理論は別にしていくらか頭に残るように思います。


 センサーに認識させるため、紙を使い、近くを通るようにしています。

 自由落下もできるのではということで、測定を行ってみましたが、センサーの感度を斜面の運動に合わせ調整しているため、それほどいい数値はでませんでした。

 参加者の中からは、加速度計の仕組み理解が難解では?とか、生徒自身が時間をストップウォッチで測り、速度・加速度を計算すべきだとか、 加速度の大小の変化は、実際に目の前で起きた現象から認識できるので記録タイマーを使っての実験の方が頭で整理できるのではという意見も出ました。 ただ、加速度、速度等の一通りの理解が進んだ時点での確認の実験としては、効果があるという点では一致していたように思います。
 自由落下の実験にも対応できそうですが...


 回転板上の磁石による起電力をLEDで (前田さん  


 前回の石川さんの発表を参考に、手動を電動に変え、装置を作ってみました。

 コイルの位置がわかるように回転板に透明なアクリルを用いており、その回転板上には赤青2色のLEDが並列に置かれ、コイルからつながれています。また、磁石は回転板上に上下で挟み位置を自在に変えられる仕組みです。 磁石による起電力が生じた場合はLEDに電流が流れるためLEDが点くと行きたいところですが、起電力が不十分なのでオペアンプで約50倍に増幅してあります。

 下の円形アクリル板にはコイルがあり、基板に固定されています。  上のアクリルにはネオジム磁石が付いており、コイルから赤青のLEDが並列につながれ、電流の向きが分かるようになっています。
 N極がコイルに近づくとき、赤が点灯するようになっています。
 まず、ネオジウム磁石を時計回りに回転させます。すると、赤が点灯した後に青が点灯します。

では、次にN極のすぐ横にS極がある磁石を回転させ、N極、S極の順にコイルを横切る場合、どのようにLEDは点灯するでしょうか?
 N極、S極に分かれている磁石でもやってみましょう。



 赤、青、赤と順に点灯しますね。


結果はこちらです−−>


 すかさず、井階さんがグラフを描いてくれました。これなら、高校生にも十分考えられる問題になりそうですね。
 目の前で起きている現象を理論的に理解する。正に物理の醍醐味!


 重力による位置エネルギーと摩擦力による仕事の関係 (前田さん  

  摩擦力による仕事との関係を調べる装置を教材カタログで見つけましたが、2万円以上もするため、自作してみました。

 工夫した点は、おもりを重く(150g/個)、衝突される側のピストンは12gと軽くし、合体前後の質量比をほぼ1としたこと、注射器に穴を空け内圧の変化がなく、摩擦力をほぼ一定と見なせるようにしたことです。  

 おもりの質量、おもりを自由落下させる高さ、ピストンの変位の関係を導け出せます。なお、質量は、同じおもりをテープでとめることで変化させます。

 おもりは落とす高さを2倍にすると、ピストンの変位は何倍?  注射器が衝突により、おもりと一体となって動き、凹んだ距離で摩擦による仕事が計算可能です。


 おもりを落とし、ピストンに衝突した直後にはピストンと一体となって動いていると見なせそうです。おもりを落とし、ピストンに衝突した直後にはピストンと一体となって動いていると見なせそうです。

 圧力変化を防ぐため、注射器のピストンには穴が開いています。
 

 愛工にも年代物の既製品があるとのことで、井階さんが出してきてくれました。

 年代物の実験装置ですが、衝突させる物体の質量、物体を落とす角度(自由落下から斜面の落下)、また、蝶ネジの締め具合で摩擦係数の大きさを変化させることができるなど、これはこれで面白味のある装置でした。
 既製品には既製品なりの工夫がなされていました。

 衝突・摩擦による熱エネルギーと分子モデル (前田さん  

 まずは、弾性衝突と非弾性衝突によって生まれる熱エネルギーを比較する実験です。はねるボール・はねないボールの実践は有名ですが、 前田さんは、テニスボールと鉛ボールの中に鉛の小球を入れを使って行ってみました。

 0.8mの高さから10回落としたところ、反発係数の高いテニスボール内の鉛はほとんど温度変化しませんが、鉛ボール内の鉛は0.2K温度上昇しました。
 実験に使用した鉛ボールの質量は460[g]、鉛小球は90[g]です。鉛の比熱0.129[J/g*K]を用いると、衝突により失われた運動エネルギーがすべて熱エネルギーに変わり、鉛ボールと鉛小球が熱平衡に達していたとすれば、鉛小球は0.73[K]温度上昇するはずであり、 なかなかいいデータが取れたように思います。
 テニスボールの中に比熱の小さい鉛の小球をたくさん入れました。
  計測値を理論値と比較してみましたが...
 机の高さから落としてみました。
 続いて、摩擦による仕事が熱エネルギーになることを確認する実験です。
 温度センサーと一体にした円盤型の金属を滑らせ、前後の温度変化をみることで、摩擦熱の確認ができます。

 個人的には、手で触って温度変化を「熱くなった」と感じることを大切にすべきと思ってしまいますが、お手軽にできる実験なので短時間で済ませるには良さそうです。
 数値ではっきり変化をつかめます。
 最後は衝突による熱エネルギーの発生をモデル化し、理解させる実験です。

 衝突時の振動を伝えるものとして、自動車用の空気入れのモーターを利用し、ピストンが自由に動けるようにしました。  
 ゴム板で不要な振動を軽減しています。
>映像はこちらです。 

 ニュートンビーズ (前田さん  


 横浜物理サークルで紹介されていたニュートンビーズを買ってみました。ニュートンビーズとはお風呂の栓につながれている汎用品のチェーンの特に長いものです。 前田さんは50mで4000円くらいで手に入れました。このチェーンを絡まらないように容器に入れ、片方の先端を落としてやります。
 ここでは、静かに落とすだけです。投げ上げることも必要ありません。


 
 このようにチェーンを静かに落とすと...  予想もしないほど上に跳ね上がります。


 落とし始めてしばらくすると、チェーンの最高点は容器より上に飛び上がります。なんとも不思議な現象です。

 これは、チェーンは隣り合う金属球同志がつながっているため、相互に力を及ぼし合います。ある1粒が落下をしたとすると、次の粒は上昇をしなくては容器から出ることができません。また、チェーンは小球が連結されているため、糸のように進んだ方向から急に180°曲がることはできず、なめらかに曲がることによります。




 サイフォン (杉本さん  
 理科部の生徒がガラス管を引き延ばして毛細管を作ってくれたので、毛細管でサイフォンができるか確かめました。



  菊里高校の生徒が作ってくれた毛細管で実験です。
 ガラス管の出口は水面より下にし、実験開始です。

 間もなく、水が水面から"スー"っと上がり、最上部のコーナーを曲がってそのままガラス管をくだり端から"ポトポト"と垂れてきました。

 杉本さんの実験によると、ガラス管の出口が水面と同じ高さでは水は落ちず、表面張力の分より下に出口がないと水は流れなかったそうです。
 予想通りといえばそうですが、ガラス管を水面に入れると自然に水が上昇して出口まで達して落ちるのが不思議な感じがしますね。  
   毛細管でもサイフォンになりました。
 次は、ティッシュペーパーを使ったペーパーサイフォンで実験です。

 杉本さんの行った実験条件では、サイフォンは約7pの高さの差までしか、水が上がってきません。ただ、あらかじめ高いところまでティッシュを濡らしておくと最高部まで20cm程の高さがあってもサイフォンとして機能しました。

  最後に真空にしてときについてですが、毛細管サイフォンでは、毛細管内の水滴が蒸発し、サイフォンが止まってしまいました。一方、ペーパーサイフォンは、水が蒸発し、ティッシュに凹凸ができてしまいました。  
   ティッシュを用いてみると

 モナドによる宇宙論 (臼井さん  


 力学の体系的なつながりを復習するための授業を行いました。

 準備したインパクトのある力学菩薩の上には、力の定義である運動方程式を書き、まず、右腕には力を時間で積分した運動量や力積、次に左腕には距離で積分したエネルギー、 そして下には速度の3法則を説明します。

 

 「モナドによる宇宙論」とは??
 臼井さん曰く、これらを3つをまとめて、「仏理の3法則」。菩薩の顔とともに生徒の記憶に残ってくれることでしょう。  
   顔となる力学菩薩探しにもかなり力が入ったそうです。

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