2018年12月8日(土)明和高校での例会の記録です。

   

 ガーナの杉本さん訪問 (植田さん)  
 植田さんはJICAのシニアボランティアとしてガーナに派遣されている杉本さんを10月7日〜21日までの2週間訪問してきました。
 杉本さんは、ガーナ第2の都市クマシで、パプアニューギニア赴任時と同様に、女子対象の教員養成校で実験の指導にあたられています。

 西アフリカに位置するガーナは、主要産業として、カカオ、ボーキサイト、金、油田があります。アフリカの中では比較的、治安が良く、政治腐敗もひどくなく、夜中でも女性が1人で外出できるほどだそうです。
 そんな現状に、概ね満足し、変化を望まない国民が多いようだったそうです。
 一方、教育制度は、小・中学校が義務教育で、現政権は高校の義務教育化を目指しています。  
 ガーナでの杉本さんの活動を報告してくれました。  現地では知られていない糸電話の実験を指導する杉本さん。
 杉本さんは水ロケットなど物理サークルや教員生活で使用してきた身近な材料で作れる実験を現地の大学生に教えたり、現地の先生に実験の使い方を教えたりしています。
 4ヶ月が経過した時点で、学生達の反応は良いものの、先生達の反応は今ひとつとのこと。
 ガーナの教育界の現状は、学歴社会で国家試験の成績を求めるため、暗記型、生徒管理型の授業が主流であることが要因ではないかと思われます。
 例えば、理科の授業で、法則を唱えた先生の言葉を復唱するような古典的な?様子があるそうです。その現状に満足し、先生達は寄付されたものと思われるパソコンや実験器具は埃をかぶっている現状があるそうです。

 その一因になっているのが、教員の待遇の問題。給料が低く、ダブルワークをする人も多いとか。
 生徒が休日にタクシーを利用したら、運転手が校長だったという笑えない話しもあるそうです。  
 見学した現地の授業はイオン名を復唱させるのみ。  寄贈物であろうDELLの中古パソコン。使用した形跡はありません。
 植田さんの考えは、需要のないところに実験を持ち込んでも、上手くいかないという悲観的な見立てですが、杉本さんは大臣などに会って教育界を変えるよう戦わないといけないと、職責に燃えているとのこと。

 杉本さんの戦いは続きます。
 改革にはたくさんの課題があるようです。  水ロケットを打ち上げ、満足感に浸る先生たち。ガーナを変わるのか?


  回転の運動方程式(石川さん)  

 コマなどの歳差運動を表す回転の運動方程式は、多くの場合、床との接点を基準にし、表現されています。床との接点を基準にした説明には、重心の円運動も角運動量として考慮に入れる必要がありますが、それが抜け落ちているものが多く見られます。 特に角運動量が落ちて歳差運動が速くなった時に不正確になります。

 原島鮮の「力学」などには、重心を基準とし、運動方程式が立てられており、はやい歳差運動とゆっくりとした歳差運動の2つがあることが解から分かります。

 石川さんは、回転の運動方程式を使うときは重心を基準にするのが最も単純明快ではないかということでした。
 ジャイロ付きコマ。  コマを裏から見た様子。
 石川さん製作のジャイロ付き円錐振り子を用いると、ゆっくりした歳差運動は観察できました。
はやい歳差運動は摩擦力によりすぐに減衰してしまい観察が難しいですが...
 
 モーターの軸受け用にねじに穴が開けてあります。  参加した子供たちも大喜び。


 常磁性と反磁性 (山本さん)  

 前回、奥村さんが行った実験を異なる材料で行ってみました。
 糸のねじれの影響もかなり大きいようです。
  はじめに行ったのは、水の磁性をみるための、野菜を使った実験です。

 まずは、ねぎ!!両手の指を支えに使い、両手の感覚を徐々に狭め、重心を探します。(⇒いきわく1参照!)
 そこに糸を巻き、安定させます。

 ねじれを減らし、4〜5枚重ねたネオジム磁石を静かに近づけます。(勢いよく近づけると、風の影響か分からないので注意!!)すると、ねぎは逃げて行きます。水は反磁性であるためと考えていいでしょう。

 風の影響ではという疑念は、回転しているねぎを磁石で止めることで排除できると思います。

 同様に、備長炭を使い、炭素の磁性も確認できます。    
 水の磁性をチェックするには重心が見つけやすい白ネギで!  備長炭で炭素Cの磁性を確かめることができました。


 いきいき物理マンガで冒険 (奥村さん  
 
 「いきいき物理マンガで実験」に続き、「いきいき物理マンガで冒険」を出版した奥村さん。
 新刊「いきいき物理 マンガで冒険」は科学としての正確さとマンガとしての面白さを両立させることに腐心した力作です。
 この本を出版するにあたり、手に入れられる限りで科学者の原著を読みました。すると、これまで日本で一般的に知られている科学史の逸話が誤っている例にもたくさん出会いました。
 例えば、ガリレオのピサの斜塔での落下の実験は、実際は行っていない作り話だの真実だの双方の話しがありますが、原著を読んでみると「ピサの斜塔より少し高いところから鉛と木の球を同時に落としたら、少し鉛の方が早く落ちた。」との記述がありました。
 左手に持つのが新刊「いきいき物理マンガで冒険」


 マンガを書くにあたり、各テーマに関わりの深い科学者を登場させることにしました。エントロピーはボルツマン、相対性理論ならアインシュタインと簡単に決まったものもありましたが、エネルギーの項は、ケルビン、ジュール、ヘルムホルツ、誰を登場させるか非常に悩みました。 結局、ウィリアム・トムソンを選びました。

 また、科学に興味がある小学生や中学生でも読めるように、小学校の常用漢字以外にはすべてルビを付けました。その結果、無意識に文章も平易なものになっていったそうです。

 中身的には、高校の物理を超える部分もありますので、大人でも十分楽しめます。是非、手にとってみてください。


 磁場中を横切る荷電粒子による起電力 (前田さん  

 前田さんは、金魚用のポンプを分解した際、コイルの中心が長方形型のものを、見つけました。
 また、レビントン・ゼロから角型の大型フェライト磁石が取りだせたことから、双方を利用し、一様な磁場中を電荷が横切るときの起電力Vの式V=vBLを理解するための定性的な実験を開発しました。

 大型フェライト磁石を3個くっつけ、磁場真上の磁場を強めるとともに、磁場を一様に近づけています。
 そして、磁石をプラスチック板に接着します。プラスチック板の上にはもう1枚のプラ板がコイルを動かすためのガイドとして接着され、2重になっています。
 コイルの両端はLEDと接続し、ガイドに沿って、磁石上を動かすと、LEDが点灯します。
 コイルの上に接着された黒いプラスチックダンボールはビースピの間を通し、大まかな速さvを測るためのもの。
 LED2個を異なる向きを順方向にして並列につなぐことで、赤・緑の色で誘導起電力の向きを判別できます。
 装置の全体図。コイルの上の黒いものはビースピ用のプラダン。  レビントロン・ゼロから取りだした磁石。かなり大型で強力です。
 コイルを動かす速さvを大きくすると、LEDが光ります。
 コイルの長辺を横切らせるのか、短辺を横切らせるので、LEDを光らせるのに必要な速さvが異なることが、実験で実感することも可能。

   磁束密度B=μHを実感できる鉄心も準備され、V=μHBLも確認できます。

 大型磁石、長方形型コイル、コイルの内径に合う鉄板と、入手容易でないものが必要な実験ですが、教育的価値は大きく、なぜこれまで行われなかったのかというような実験です。

 なんとか生徒実験させたいですね!
 ガイドに沿って、コイルを動かします。  偶然、あったという鉄心も準備。痒いところまで手の届いた実験です。

 磁石をおもりとしたばねとコイルを使った実験 (前田さん  
 ばねにおもりをつけ、振動させると減衰振動が見られます。
 この振動するおもりに円柱形の磁石をつけます。コイルを通るように振動させ、検流計で電流の向きを確認できます。
 前田さんは、コイルとばねの振動を組み合わせ、一連の実験を考え、それを紹介してくれました。

 
 ベルヌーイ家の逸話を語る川田さん。
 続いて、前田さんが見つけたという不思議な現象の話。

 ばねにおもりに吊るし、おもりに磁石をつけたものを2セット準備します。2つのばね、おもり、磁石はほぼ同じものです。
 右のように2つを少し離して設置します。
 ここで、一方のおもりを下に引っ張り、ばねを少し伸ばした後、静かに離します。

 すると、ばねの振動が始まりますが、振動は徐々に減衰し、それにしたがって、もう一方のばねが振動し始め、その振動がどんどん大きくなっていきます。そして、振動が最大になると、初めに振動させたばねは振動が極小化します。
 以後、エネルギーをやりとりするように、2つのばねが振動します。

 前田さんは、この不思議な原因を机がエネルギーを伝えていると発言!
 検流計と並列につないだ導線を除くと...
 「そんなはずはないだろう!」との声が挙がり、おもりが机の上にない状況で実験をすることに!

 いざ実験をしてみると、同じように振動は伝わりました。

 「磁力が怪しい」という声があり、2つのスタンドをはなして実験を行う事に!

 一方のばねを振動させ、様子を見ましたが、振動は伝わらず、もう一方のばねは微動だにせず、動かしたばねの振動が減衰し止まっていくだけでした。
 机がエネルギーを伝える!?

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