2019年9月28日(土)向陽高校での例会の記録です。


 ステレオカメラと本 (深谷さん 
 古いペンタックスのステレオアダプターを使い、ステレオ写真を撮ることができます。ステレオ写真とは、人の2つ目の位置の違いにより、目に入る「絵」は異なるため、目に相当する2つの窓から撮る2つの写真のことをいいます。

 この2枚の写真、つまりステレオ写真を両目で見ると、立体視ができるという訳です。  
 ステレオ写真について。  ソニーのデジタルカメラに装着しています。
 関連して「任意の点」という立体視の本も紹介してくれました。
 任意の点という立体視の本。

 共鳴について (石川さん 
 前回、一端を話し、参加者一同を驚かせた、共鳴に関する石川理論が展開されました。

 まずは、ヘルムホルツ共振(空洞共振)の話。口の形状や空洞の大きさで共鳴音が決まります。オカリナや笛はこれにあたります。
                             
 ヘルムホルツ共振の例。  ペットボトルでの音の周波性スペクトル。倍音がでています。
 直方体の側面が一方のみ開いた箱を例として、共鳴について考えましょう。

   精巧に作られた2つの共鳴箱。1つは、発信器として中にスピーカー、そしてスピーカーのすぐ傍にMICを仕込み、もう1方は閉口端にMICが仕込んであります。開口部からMICまでの距離はともに30pとしてあります。
 2つのMICからは箱の外のMIC端子に配線がつながっており、そこからの信号を、LEDの赤、緑で圧力の大小を視覚化した手作り装置で認識することができます。
 手作りの共鳴箱。こちらは受信用マイクが仕込まれています。  LEDの色で音圧の大きさが分かります。
 2つの共鳴箱の開口部を向かい合わせにし、スピーカーから音を出すと、発信する振動数が280Hz(波長がλ/4)のとき、外に出てくる音が小さくなります。このとき、LEDは一方が赤、もう一方は緑となります。
 この時、音圧のの位相が逆になっており、石川さんがいう、箱の中でエネルギーが閉じ込められている状態になっているといえます。
 振動数を減らしていくと、230Hzで大きな音が外に漏れる状態になりました。このとき、2つの閉口端の圧力は位相が等しくなります。
 この状態は、通常、開口端補正を考え説明しますが、オカリナの音が出る現象と同様のヘルムホルツ共鳴の一種でないのかというのが石川さんの説です。
 音叉の音を共鳴箱に閉じ込める!?  LEDが別の色に。


 現在の教科書等の定義では音の共鳴とは「音源の振動により、他の物体が同じ振動数の振動を始めること」と定義し、実験では、「共鳴体が大きな音を出していると認識できる場合、共鳴した」と判断しています。

 しかし、閉管で、開口端補正のない、発信音の波長の1/4倍の長さ定常波ができること。この状態では音が外に出ず、中に閉じ込められる現象が起こるようです。

 私見では、今の開口端補正をつかった気柱共鳴の定義では、弦の振動等と気柱の振動で共振の定義を分けなくてはならないように感じさせられました。


 共鳴箱つき音叉での謎な共鳴点 (飯田さん  

 2つの音叉を共鳴させ、徐々に遠ざけていくとλ/8とλ/4離れたところで音で音の極大がみられるとメーリングリスト上で報告し、皆を驚かせた飯田さん。
 まずは、その実験の実演してくれました。

 2つの共鳴音叉を準備し、共鳴箱の開口端を向かい合わせにします。
 一方の音叉を音叉用つちでたたき、大きく振動させるとともに、もう一方の音叉を定規に沿わせて動かしていきながら極小極大を調べます。

 飯田さんの実演の様子。  自宅での実験で得た結果、9p、18pと2つのピークが。
 実験結果は、右の画像の通り、明確な極大はλ/4のみで、λ/8では極大は取りませんでした。

 「おかしいな〜」と飯田さん。疑いの目でみる周囲。
 何度も実験を行うも、飯田さんの自宅での実験結果は再現できず。

 机や壁、天井等の反射の影響を疑う声がありました。
 例会の実験では謎の共鳴音は検出されず。

 謎な共鳴音の確認 (井階さん  

 飯田さんのメーリングリストでの発言を聞き、井階さんは共鳴箱つき音叉の共鳴音について詳細に調べてみました。
 机との摩擦、共鳴箱振動が伝わるのを減らすため、発泡スチロールブロックに共鳴箱に置き、低周波発振機のスピーカーから音を出し、音の大きさはdBメーターで調べました

 結果は予想通り。

 謎の共鳴音はなく、何も面白くなかったとのこと。飯田さんの厳密さを欠く実験を見て、さらにがっかりした様子でした。
 予想通りの結果に。  飯田さんの言葉を信じ、実験したもののがっかりしたそう。

 AIうえおトロンボーン (土肥さん)  
 これまでアイウエオコップとよばれるフィルムケースで作った教材を世に広めてきた土肥さん。
 その仕組みはフィルムケースにアイウエオと発生する際の口の形のように穴の大きさを空け、中に入れたビー玉を壁にあて固有振動を起こすことでアイウエオに聞こえるように調整したもの。

 土肥さんは、アイウエオの声は口内の容積変化も関係するのではと考え、容積が変化するようなストロー笛方式のアイウエオコップを製作を試みました。
 新アイウエオコップ。
 容器はペットボトルが入るようにプラスチックシートを丸めて円筒状にし、弁は125mlのペットボトルの底を切り取り、ボトルの蓋にストローをつけました。
 ストロー付きペットボトルを前後に動かすことで、容器の体積が変化し、音の高さが変化し、試みは大成功!!アイウエオの容積は小さい順にイ、ア、エ、ウ、オの順となっています。

 「アイウエオの位置をどうやって決めているか?」という質問には、「最もそう聞こえるところに印をつける」とのこと、やはりそこは職人技です!
 ペットボトルを前後に動かすことで音程を変化させます。  プラスチックシートを丸め、円筒状に。


 安定缶 (土肥さん)  
 非常に簡単にできる実験です。
 力のモーメントの教材にワインスタンドやなど、既製品を用いる実践は、これまでにも様々な研究会で報告があります。
 土肥さんは、同様の実験として、空き缶に砂を入れ、物理室に置いているそうです。

 ここまでは、実践している方もいるかもしれませんが、坂道に置くというさらにもう1つの演出を加え、あいちトリエンナーレの芸術作品の1つにでもできそうな出来栄えです。
 意外性があり、面白いです。


 アルミ缶ヘロンタービンで進む鳥 (土肥さん)  

 空き缶でヘロンの蒸気機関を作りました。作り方は簡単。
 蓋つきの空き缶の側面上方に画びょうなどで穴を空け、少し凹ませます。
 次に、蓋の表と裏にネオジウム磁石をつけ、台座に固定された釘との接点とします。摩擦が小さく簡単で使えるアイデアです。
 空き缶の底を切り取って作った燃料台に脱脂綿を置き、燃料となるエタノールをしみこませれば完成。

 あとは、点火するのみです。
 ヘロンの蒸気機関。 
 これだけで十分に楽しめますが、土肥さんはひと手間加え、アルミ缶の高速回転時の偏心の振動を利用し、鳥をモデルとした歯ブラシ振動カーへと進化させています。
 鳥のしっぽは、タコ糸を湿らせたもので、デザイン性を高めるだけでなく、摩擦で直進性を高めるという機能性も高める役割も。

 回転が、前進運動に変わる仕組みの紹介にもなり、真似して作ってみようかとなる、とても楽しい教材でした。
 一工夫加え、蒸気機関車に!


 必ず戻ってくるスーパーボール (土肥さん  
 テレビで見て、作ってみたら面白かったという装置。単純な合板で作った机です。

 ここにスーパーボールをぶつけると、なぜか戻ってきます。
 理由は机との摩擦で回転が反対になるからとか。
 つるつるで、卓球のピン球や摩擦の少ないスーパーボールは不適切だそうです。

 理論的にはむつかしそうですが、面白いです。  
 見た目は簡易の小机ですが。

 起立着席ロボ「エリーちゃん」 (土肥さん  
 起立、着席の運動を理解するための教材「エリーちゃん」。
 @膝・腰をを曲げ、
 A膝・腰を伸ばす 動きをロボットで再現しました。
 注射器で動かします。

 ソレノイド式呼鈴 (土肥さん  
 かつて、自宅の呼鈴が壊れた時、分解した経験があるという土肥さん。

 そのとき、呼鈴はソレノイドコイルに鉄心が吸い込まれるという仕組みで作られていることを知り、これは面白いと思い、作ってみました。
 ボルトをコイルが吸い込みボルトがパイプをたたく仕組み。ピンポーンといい音がします。
 釘が吸い込まれる基本原理の実験装置。  呼鈴モデル。吸い込んで上たたき、落ちる際に下をたたきます。
  授業で、問題に正解したときに鳴らしていたそうですが、何回か使うと飽きてきてしまったので、別の活用法を探ることに。

 釘をぶつけて、レスラーが持つ風船を割る装置に!コイルで吸い込んだ釘で風船を割るという生徒受け抜群の教材へと変身しました。
 風船を割る装置。レスラーは土肥さんのこだわり。  割れた後の様子。

     [次ページヘ]