宇宙科学研究所の「はやぶさ」


 2010年7月17日相模原の宇宙研に「はやぶさ」を訪ねた。宇宙研は年中無休で見学できるが、実機の一般公開前であり、土日は展示室しか見られないので見学者は少ない。見張りの守衛さんがいるだけである。写真は小惑星探査機「はやぶさ」の実物大モデル。熱・構造試験に使われたエンジニアリングモデルである。人間よりは大きいが米ロの探査機に比べると超小型である。打上げ時質量は燃料を含めて510kg。よくまあこんな小さな機体で7年間、何億kmもの旅をしてきたものだと思う。

 下から見上げた機体。地球、太陽、はやぶさ、イトカワの順に並ぶ位置関係で探査が行われるので、イトカワを探査する機器はすべて底面に、地球との通信系はすべて上面に配置されている。太陽電池パネルも上向きである。はやぶさは太陽を背にしながら、イトカワの日向側に向かって降下した。

 左側面。四隅に化学スラスタのノズルが見える。全部で12基ある。イトカワへのタッチダウン後、化学スラスタは燃料漏れを起こし、すべて使えなくなった。

 右側面。両側面とも放熱器以外、目立った測定器はない。

 後面。4つのイオンエンジンがついている。実物ではないので色はディスプレイ用である。必要に応じて単独または複数を組み合わせて運用する。上面のパラボラアンテナにはジンバル機構がない。軽量化のために省略されているのだ。機体全体の姿勢を制御して地球にアンテナを向けるしかない。

 それぞれのイオンエンジンの外側に、エンジンから放出したイオンの電荷を中和し、機体を帯電から守るための電子放出装置(中和器)がついている(小さな黒丸)。このノズルが斜めに取り付けてあったことがはからずもはやぶさを救った。化学スラスタとリアクションホイールの故障でできなくなった姿勢制御を、ここからのキセノン生ガス放出でしのいだのだ。

 目標天体イトカワの模型。これは向かいの相模原市立博物館に展示されていた。写真では判別できないが、マッチの先ほどの大きさのはやぶさが表面にいる。

 底面。球形のターゲットマーカー3個が見える。88万人の署名を刻んだポリイミド箔を内蔵した2個目が首尾よくイトカワに着地し、はやぶさ降下のさいの目標となった。底面はイトカワに面するのでレーザーレンジファインダー(高度計)やファンビームセンサなどの測定器・観測機が集中している。

 サンプラーホーン。イトカワ表面にタッチした瞬間、内部からプロジェクタイル(弾丸)を発射して表面物質を粉砕してはねあげ、機体内のコンテナに格納する。真空かつ微小重力だから可能なサンプリング方法だ。灰色のものは望遠カメラ。その左に探査ローバー「ミネルバ」がとりつけられている。残念ながらミネルバはイトカワに着地できなかった。

 再突入カプセルの耐熱シールド。帰還直前に本体から分離され、秒速12kmでの大気圏再突入時の熱からサンプルコンテナを守る。2010年6月13日にこの部分だけが地球大気圏をくぐり抜けて地表に帰還した。カプセルの後を追って大気に突入したはやぶさ本体は大気との摩擦で華々しく燃え尽きた。

 オーストラリアのウーメラ砂漠で回収された再突入カプセルの構造図と取り出されたサンプルコンテナの写真。展示パネルから。

 サンプルコンテナには砂や微粒子が入っていた。地球起源のものとより分けて、イトカワから持ち帰った試料を判別する作業が引き続き慎重に行われている。

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