富士山オフ (99/08/28-29 須走口登山道〜富士山測候所)
FKYOIKUS【理科の部屋】、FSCI共催の「富士山オフ」に参加しましたのでレポートします。当初は一週間前に計画されていましたが、悪天候が予想されたためこの日に延期されました。慎重な天候判断のおかげで好天に恵まれ、多大の成果を挙げて無事帰着しました。
参加者は、西園寺さん親子、FSCIのメイさん、それに山頂で合流した武田さんと私の計5名でした。
8/28(土)須走口五合〜本七合見晴館
12:00 待ち合わせ場所の須走口五合駐車場(1950m)を出発しました。周囲は濃霧に包まれています。後ろ姿は左から、西園寺さん、息子の陽平君(4年生)、メイさん。
簡単な観測器材をいくつか持参しました。
(1)ポケナビGPS−PIONEER(MAGELLAN社):位置・高度精度確認
(2)調理用サーミスタ温度計:気温・沸点測定用
(3)エコログ(データロガー):気温・湿度・気圧記録用
(4)腕時計G−SHOCK ALTI−BARD(カシオ):高度・気圧測定用
ちなみに、出発時は807hPa、気温22.7℃でした。
須走口登山道は、はじめ気持ちのよい樹林の中を登ります。ほどなく霧が晴れて、木漏れ陽がのぞくようになりました。
樹林が切れると富士山がその雄大な姿を現します。六合目以上は上々の天気です。
ヤマトリカブトの花がたくさん咲いていました。ヤマホタルブクロ、ムラサキモメンヅルもよく見かけます。
七合目を過ぎ、3000m付近を登る西園寺親子。高山病に苦しみながらもがんばる陽平君。
溶岩流がそのまま露出しています。粘性の低い玄武岩質溶岩が相当の速さで流れ下ったようです。噴火当時はさぞ壮観だったでしょう。
17:05 本日の目的地で宿泊先の山小屋、本七合見晴館に到着。4人で記念撮影。陽平君よくがんばったね。
夕暮れが近づき、雲海に「影富士」が現れます。太平洋岸は一面の雲に覆われています。
測定高度は3060m、気圧702hPa、気温12.8℃。写真の注射器は下界で穴を封じて持参したもの。一番左の目盛りが下界でのピストンの位置です。だいぶ膨らんでいるのがわかります。
GPSによる測定は、水平位置の精度は十分ですが、高度の測定には不向きであることがわかりました。高度は200m以上の誤差が出て実用になりません。気圧計付き腕時計の方が正確です。
8/29(日)本七合見晴館〜富士山頂剣が峰〜下山
2:30起床、3:00行動開始。5:10 八合五勺を過ぎたあたりで御来光を迎えます。日の出前の朝焼けと金星がきれいでした。雲海の上に昇る太陽のすがすがしい輝きです。
武田康男さんの「富士山の光景」へ
上を見ると、御来光に照らされた山頂が赤く染まっています。いわゆる「赤富士」の状態です。
雲海に落ちる雲自身のシルエットも、太陽高度が低いうちだけの景観です。
九合目付近から。頂上の小屋が目の前に見えてきました。吉田口からの登山客が合流し、頂上直下は「渋滞」していて、思いのほか時間がかかります。
6:30 ようやく頂上に到着。鳥居と狛犬が出迎えてくれます。
浅間大社奥宮前で登頂を喜び合う西園寺親子。陽平君の高山病も回復して、無事に目標を達成できました。おめでとう!
山頂の気圧は656hPa、気温8.6℃。腕時計による測定高度は3595m。若干少な目に見積もられているようです。注射器のピストンもだいぶ押し出されました。
【参考】富士山で大気圧の実験
朝食のラーメンを作るために沸かしたお湯の温度を測定。風が強かったためか、完全沸騰にいたらず、温度は82℃にとどまっています。この気圧での水の沸点は88℃ぐらいになるはずです。
オレオビスケットの袋がパンパンに膨らんでいます。
武田康男さん(右端)も山頂で無事合流し、7:37 これよりお鉢巡りに出発します。目的は向こうに見えている富士山測候所の見学です。
富士宮口からの頂上にある小屋と、浅間神社。小屋も、郵便局やNTTの出張所もすでにシーズンオフで店じまいしていました。
剣が峰直下。最後の急坂を登り詰めると測候所です。白いレーダードームが青空に映えています。
測候所前で記念撮影。西園寺さんが隠れてしまいました。ごめんなさい。気圧652hPa、気温10.1℃。
この後、西園寺さんの紹介で、測候所内を見学することができました。その報告は下記の記事をご覧ください。
富士山測候所見学記
ここが日本の最高点、剣が峰の二等三角点「富士山」です。石碑に刻まれた正確な位置と標高は北緯35度21分26.540秒、東経138度43分49.772秒、標高3775.63mでした。ポケナビの示した緯度経度ははそれぞれ35度21.45分、138度43.83分でしたから、GPSによる水平位置測定はかなりの精度で信頼に足ります。しかし標高は200mほどずれていました。
測候所からすぐ下に見える、小さな白いドームは、東大理学部が'98年7月に設置した「富士山頂サブミリ波望遠鏡システム」。口径1.2mのパラボラでサブミリ波をとらえ、宇宙に漂う中性炭素原子や星間分子の観測を行います。大気中の水蒸気の吸収を避けるため富士山頂が選ばれました。
サブミリ波望遠鏡と、測候所のドームをバックに、空になったPETボトルの記念撮影。このボトルはこの場で密栓をして持ち帰り、実験室の展示物としました。結果をご覧になりたい方は、左の写真をクリック!
山頂から見下ろした大沢崩れ。えぐり取られたような大きな傷跡になっています。太陽エネルギーと火山のエネルギーの戦いの現場です。
お鉢をぐるりと一周して、10:50に下山を開始しました。荷揚げ用のブルドーザーの前で記念撮影。
八合目の分岐点。右におりれば須走口(静岡県)へ、左に下れば吉田口(山梨県)へ。
11:35 昨晩泊まった本七合見晴館。山じまいの閉館準備がすすめられていました。朝、三時間半かけて登ったところを45分で降りてきてしまいました。
砂走り。砂煙を上げて、雲に向かって豪快に駆け降ります。12:30 砂払五合、13:22 須走五合到着。思い出深い富士山の旅が終わりました。お疲れさま。