例会速報 2004/07/17 慶應義塾高校


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授業研究:物理Iにおける電気分野の授業 徳永さんと喜多さんの発表
 慶應高校で本年度行われている新課程の電気分野の授業実践を報告していただいた。以下、徳永さんによる授業メモ。

授業を組み立てる上で考えたこと
(1)来年度物理IIを履修しない生徒も含まれるので、高校の物理として電磁気分野をある程度完結させる。
(2)特に磁気分野については、(慶應義塾の)中学理科と同じレベルにせずにプラスアルファをつける。
(3)高1で履修した化学(全員必修)についても触れる。
(4)定量的な実験を必ず入れ、定性的な実験は出来るだけ体験させる。
(5)日常生活で使われている電気製品などで分解できるものは出来る限り分解してその現物を見せるよう努力する。

授業の組み立て(12時間分)
1 原子構造・電子の発見(放電)、2 電流・オームの法則・電圧降下、3 抵抗の接続、4 キルヒホッフの法則・電力・電力量・ジュールの法則、5 電気パン、6 回路の断線と短絡・電流の三作用、7 演習(回路、抵抗率の計算、キルヒホッフの法則を使った問題)、8 磁極・磁気力と磁界・電流が作る磁界・原子自身が磁石である、9 電流が磁界から受ける力・力がはたらく理由・直流モーター・簡易リニアモーター、10 電磁誘導・レンツの法則、11 発電機・直流と交流、12 交流の実効値と瞬時値・送電・相互誘導・変圧器

 週に1回ずつ放課後に担当者でミーティングを行い、授業内容や演示・生徒実験についての検討を行い、実験道具も協力して作製した。写真(左)は3回目の授業で行った生徒実験(抵抗の接続、回路)を行うために作った抵抗である。普通部出身の生徒は中学でカラーコードの読み方を習ってくるので、実験にはカラーコード付きの抵抗を用いた。上のタイプは、厚紙にダイソーの銅箔テープを貼ったもの、下のタイプはプリント基板を切って作ったもの。また、この実験を行うために、長いリード線だと使いにくいので13cmの短いリード線を200本作った。写真(右)は、「エルステッドの実験」用の導線。8回目の授業(直線電流が作る磁界)で、約50mの導線を教室中に張り、実験を行った。

 下の写真は、磁石の着磁パターンを見る「マグネットビュアー」(二六磁石)で、150mm×150mm(2,250円)を4等分したもの。裏面を保護するために粘着性のあるアルミシート(ダイソーで購入)を貼ってある。8回目の授業の導入で、いろいろな磁石の観察をさせるのに用いた。鉄ヨークのついたマグネットと鉄ヨークなしのマグネットとで着磁パターンが異なるのがわかる。

カチカチボールの説明方法 例会での議論
 例会の自己紹介の話題から発展して、いわゆる「衝突球」の実験を子供にどう説明するかという議論になった。ひとつの鋼球を静止した4つの球の列に衝突させると、反対側のひとつの球だけがほぼ同じ速さで飛び出す。おはじき遊びなどでもおなじみの現象である。高校生相手なら、運動量保存則とはね返り係数の式を同時に満足する反発のしかたはひとつしかないのだという説明のしかたができる。実際、球の接点に粘着テープを貼るなどしてはね返り係数を変化させると、現象は一変する。右の写真のようにハネナイトボール(非弾性ゴムボール)を用いると衝突後は全球が一体となって動き、運動量は均等分配される。もちろん力学的エネルギーは減少する。
 これを、小学生クラスにわかりやすく教えるのは至難の業である。「運動の勢いが伝わる」というような言い方をしたとしても、運動量と運動エネルギーの区別を伝えることができないからだ。実際の現象も衝突は隣接する二球の間で成立するので、一対一の衝突をよく観察させて現象のパターンをおさえた後、連続衝突へと発展させるほかないだろう。

はね返り係数の真実 平野さんの発表
 例会ではその場のフリーな議論から、発表テーマからそれた方向に話が発展していくことがよくある。はね返り係数の話が出たついでに、平野さんが紹介してくれた実験は、鋼球とスーパーボールを同じ高さから落下させると、下が固い机の時はスーパーボールが大きくはね返るが、本などを敷くと、スーパーボールは弾まなくなって、むしろ鋼球の方が高くはねるというもの。はね返り係数が、球の材質だけでは定まらず、衝突相手の物体との組み合わせで決まることを端的に示した、好実験である。
 

邦訳版・アドバンシング物理AS 徳永さんの紹介
 英国物理学会の高校カリキュラムの教科書『Advancing Physics AS』の待望の日本語版が出版された。

 『アドバンシング物理 新しい物理入門』 J.オグボーン、M.ホワイトハウス著、笠耐、西川恭治、覧具博義監訳( シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社発行) 3500円+税、 ISBN  4−431−71103−1

 各章の内容 
1. イメージング、2. センサー、3. 信号を送る、4. 材料をテストする、5. 物質の内部を探る、6. 波の振る舞い、7. 量子的振る舞い、8. 空間と時間、9. 次の運動を計算する

 YPCでは、2年前から毎月「アドバンシング物理」の勉強会を行っている。早速、50冊!を共同購入した。

 このカリキュラムは英国物理学会が物理教育改革のために議論して作り上げたもので、物理の基本概念から最新の興味ある話題まで幅広く含む形で展開されている。また、 日本語版は、英語版と違ったオリジナルの写真も含まれている。

詳しくはシュプリンガーのホームページへ。http://www.springer-tokyo.co.jp/default.shtml

百円ショップの実験キット 鈴木健夫さんの発表
 ついに100円ショップに理科実験キットが登場! 理科の実験を家庭でやろうというコンセプトも、これだけメジャーになったということ。うれしい商品だ。ダイソーではなく「セリア」という業界2番手の店に並んでいる。「夏休みの自由研究に」という感じで並べられているので、季節商品という扱いのようだ。早く買わないと入手できなくなりそう。

 種類は全部で10種。ポンポン蒸気船、サルの木登り、紙コップスピーカー、電気の導通実験セット、クリップモーター、ベンハムのコマ、巨大シャボン玉、双眼鏡、万華鏡、カラム飛行機(飛行リング)。100円は高い、と思わせるものも一部あるが、おおむねリーズナブルな値段か、お買い得。例会時に特に評判だったのは、ポンポン蒸気船と紙コップスピーカー。

蒸気船は、板の加工やアルミ管の加工を考えると、100円は信じられない。例会の場でさっそく作って実験してみた。組み立て時間10秒。ロウソクに火をともしてしばらくすると、ちゃんと走り出した。


 写真下左は、クリップモーター。右はスピーカーのキットである。よくある実験工作のテーマだが、これらの材料を個々に調達しようとすると、100個程度のまとめ買いでは百円以下におさえることは難しい。大量発注・大量仕入れの百円ショップだから実現できるお値段だ。実験教室などのために買いだめしておくのがよいかもしれない。また、実験工作を主にした授業をやる場合などにも、材料調達として重宝しそうだ。ただし、安定供給されないというのが100円ショップの最大の弱点。店頭にあるものを買っておくしかなさそうだ。

カラーミキサー 右近さんの発表
 右近さんが自作して持ってきたのは、赤,青,緑の3色の発光ダイオードの色を,きれいに合成することのできる「カラーミキサー」。例えば赤と青の発光ダイオード2つを同時に暗室で点灯させ,白い紙を照らしても,通常うまく色は合成できない。それぞれのダイオードの明るさが異なることと,ダイオードの先端にレンズがついているため,これによって光が集光してしまい,均一な明るさが得られないからだ。
 そこで,先端のレンズ部分をカットした3色のダイオードをピンポン玉の中に入れ,それぞれのダイオードの明るさが調整できるような装置を作った。これによってダイオードは点光源となるので,ピンポン玉は均一に発光する。また,3色それぞれの強度を調整できるので,バランスよく光の合成ができる。

青と緑を同じ強度で発光させると,ピンポン玉はシアンに輝く。赤と青ではマゼンタ,緑と赤では黄色という具合。もちろん赤,青,緑の3色では白となる。ピンポン玉の中に棒を挿入して影をつくると,棒が遮る色により,影が色づいて見える。なお、このアイデアは"The PhysicsTeacher",Vol.42,No.3,2004年掲載の記事によるものだそうだ。

ライトトーク Mさんの発表
 LEDのアレイが光って、動くと空間に文字が描かれる仕掛けはしばしば見かけるが、写真の「ライトトーク」は任意の文字や絵がスキャンにより取り込めるというちょっと変わった機能を持っている。試みにYPCニュースの表紙から「YPC」のロゴを読み込ませて、左右に振ってみると、ごらんのように空中にその文字が現れた。

 回転台に載せて回して観察する。逆方向に回すと文字が裏返る(下左)。動き始めの加速度を圧電素子で検知してトリガーをかけているらしい。鈴木さんがブンブンゴマの要領でひもをよじって回転させると観察しやすいことを発見した(下右)

振動と音 越さんの発表
 街中でハンマーダルシマ(チェンバロ、ピアノや琴の元になった中東の楽器)という打弦楽器を見かけた越さんは、ギターの弦も、木の棒やゴム栓を取り付けた割り箸でたたいてみると、独特の音がすることに気がついた。(写真左)
 また、越さんは、物理の「弦の振動」のところで、教室にギターを持ち込み、マルチストロボで、弦の振動の様子をスローモーションで生徒に見せているという。ギターのチューニングでは、「うなり」を利用していること、ハーモニクス奏法は定常波の節の位置を指で決めていることなどを話題としている。また、音さ(標準音さの一番低いものを使用、C、261.6[Hz])にマルチストロボの光をあて、実際の振動の様子を観察させている。(写真右)
 また例会中、鈴木さんより、ギターの弦の振動は、共通の倍音を含む音同志はきれいな和音になるとの指摘があった。

200円の魚洗 越さんの発表
 越さんは100円ショップのステンレスサラダボウルとホームセンターのスポンジゴム(100円程度)を組み合わせ、魚洗を作った(写真左)。右は慶應高校にある本物の魚洗。同時に披露された同校の特大ボウルと共に迫力満点!

 なお、越さんは、「モノはこすることによっても振動する」ことを示すために、授業では、ワイングラス、タンバリン、魚洗をいっしょに見せている。

学研キットボックス「夢中になれる!! 音」 越さんの紹介
 授業で使える小ネタがいっぱいの実験セット。細長いビニール袋に発泡スチロールの粒を入れ、息で膨らませ袋の真ん中あたりに口をつけ大きな声で叫ぶと、粒が舞い上がり、中の空気がふるえていることが観察できる。声を出している本人は目の前の袋の中のようすがよく分からないので、袋の端に口をつけ叫ぶと自分でも振動の様子がよく見える。連続的に声の高さを変えると、節の位置が変化することもわかる。
 これを地元の科学教室で子供たちにやらせてみたところ、異常に盛り上がった。その他、バネでんわ、スライド笛、UFOチューブなどの実験ができる。千葉の大山先生監修で1764円。このシリーズ、他にもヒコーキ、こまなどのテーマがあり、どれも面白い。詳しくは、学研のWebページへ。http://kids.gakken.co.jp/kit/kitbox/

立体写真用?カメラ 竹内さんの発表
 竹内さんが恵比寿の写真ミュージアムで購入したという、多球式立体カメラ。本当は四コマの連続写真を撮るカメラだが、各コマの視点がずれるのを利用して立体視ができる。36mmフィルムの1コマに4コマ分が同時に写し込めるので手軽で経済的だ。ロシア製とのこと。右のビュアーはケンコー製の別製品。

二次会 日吉駅前浜銀通り「龍行酒家」にて
 いつものお店で14名が参加してカンパーイ。酒の席でも夏の科教協全国大会のナイター計画などが話し合われる。次回例会は常連の加藤さんの勤務校・富士河口湖高校と決まった。東京都以外では初の出開帳となる。楽しみである。


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