例会速報 2004/08/21 富士河口湖高校


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授業研究:「もの」から学ぶ物理IIの授業 小沢さんの発表
 小沢さんのレポートは、夏休み前までの物理IIのうち、力学分野の授業報告。この夏の科教協でも発表した内容だ。サークルや研究会で、物理IIの授業報告はとても少ない。物理IIを単なる受験物理にさせないように、少しずつ事例を出し合っていく必要性を感じる、とは小沢さんの弁。
 小沢さんは、導入や動機づけとして、簡単な実験を豊富に入れるようにしている。たとえば、円錐振り子ならば、半径10cmの円を描いた紙と振り子を渡し、糸の長さを20cm(円の直径に合わせる)と指定して、わざとその固有周期とずらしたリズムのメトロノームに合わせて回すように指示する。「できない」、「なぜ?」という課題意識を体感させてから、説明や計算に入るのだ。「もの」をネタに生徒と話をしながら、サークルのような雰囲気の授業を目指しているという。
 

光ウクレレ 清水さんの発表
 岐阜からはるばる参加してくれた清水さんがまず披露してくれたのは、光ウクレレ。太陽電池をピックアップに使ったエレキウクレレである。光源は赤色発光ダイオード。太陽電池の出力をラジカセのマイク端子に接続するだけで、ギターっぽい音が聞こえてくる。弦の振動によりLEDからの光束が周期的に変化するためだ。この太陽電池¥200は飛ぶように売れた。
 

あいうえおコップ(改良型) 清水さんの発表&即売会
 広島の土肥さんが開発し、清水さんがさらに手を加えて作りやすくした「あいうえおコップ(改良型)」。指をちょっと湿らせて後ろのストローをつまんで引くようにこすると、「ア〜」「イ〜」・・・と聞こえる音が出る。口と舌による発声の原理がよくわかる。
 

コウモリの音翻訳機 清水さんの発表&即売会
 超音波を可聴音に変換して聞く装置である。手に持っているのが受信&検波器、おいてある方がアンプ&スピーカー。超音波センサで拾った信号と40kHz基準信号とのうなりをとり、可聴化している。鼻息や手をこする音など、超音波が至るところから出ていることがわかる。コウモリはこんな音を聞いているのだろうか。

ジャイロ二輪車 鈴木健夫さんの紹介
 鈴木さんは、この夏の科教協北海道大会のお楽しみ広場で仕入れてきたお土産を披露してくれた。これは岐阜物理サークルの「ジャイロ二輪車」。地球ゴマのジャイロ効果で二輪車を安定させるというもの。コマが回っているときは二輪でも安定して直行する。止まってもそのまま立ち続けている。見事!
 地球ゴマは、正規品は高いが、ここで利用しているのは100円ショップ「CanDo」で100円で売られているもの。鈴木さんは前からこれを買いだめしたり例会で売ったりしていたが、こんな効果的な発展があるとは。YPCの「買い占めアイテム」のリストに加わることになりそうだ。
 

全反射コップ 鈴木健夫さんの紹介と発表
 お次は、広島の土肥さんの「全反射コップ」。間に空気層を入れることで空気層の向こう側の字や絵を見えなくするというもの。これまでもカード型のものや、コップを使った同じアイデアのものは発表されているが、土肥さんのこのコップはセンスにあふれて演示効果大。魚が泳いでいるのが見えなくなる。プラコップと紙コップを接着してある。
 

 鈴木さんはさっそく自作の改良版を製作した。プラコップと紙コップを接着させず、プラコップをはずすことで原理を見せて考えさせようと思ったのだ。また、プラコップの外側に裏文字で「消えない?」などと書いておくと、こちらは水を入れても消えずに見えている。ただし、ギザギザの刻みのあるプラコップではその部分がうまく反射してくれないので、本当はギザギザのないプラコップがいい。簡単に準備できるので、光の屈折や全反射の単元で生徒二人に1セットずつくらい配るといいだろう。

フェライト磁石のビーズ 加藤俊さんの発表
 長さ10mmほどの紡錘形のフェライト磁石のビーズ。机の上にころがすと、南北を向いて止まる。そんなの当たり前だと思うと、あれ〜東西を向いて止まるものも・・・。ビジュアルシートで周囲の磁場を観察すると、南北を向くものは長軸方向に、東西を向くものは短軸方向に磁化されていることがわかる。
 

太陽サンサン湯沸かし器 山本の発表
 「科学大好き土よう塾」の依頼をうけて、パラボラ型反射式太陽熱湯沸かし器を設計した。いただいたお題は「10℃、500mlの水を30分以内に沸騰させること」だった。当月の直達日射量を調べ、まじめに熱量計算をして、必要な口径をわりだした。走り梅雨の時期でもあり、実験の日程が1〜2日しかとれないことから、薄曇りでも目的が達成できるよう、10倍程度の安全係数をみて、直径1.4mとやや大型にした。安全のため、焦点位置が開口中心に一致するようにパラボラの曲面を決めた。工作は、美術さんの協力で非常に体裁よくできた。容器は番組スタッフが東急ハンズで調達してくれた鉄瓶だが、これもなかなかよかった。
 

 実験シーンの撮影は5月15日10時からNHK屋上ヘリポートで行われた。幸いこの日の朝は、多少雲が去来するものの透明度はよく、鉄瓶の水はわずか5分余りであっけなく煮立ってしまった。焦点位置に新聞紙をかざすと、あっというまにメラメラと燃え上がり、太陽熱のパワーをあらためて実感した(写真左)。
 この日は昼過ぎから雲が広がって一面の曇り空となった。晴れ間をぬうようなスケジュールだった。実験が成功したことはまことに幸運だったといえる。

科学の祭典松本大会の報告 竹内さんの発表
 竹内幸一さんは、7月31日〜8月1日に信州大学で行われた「科学の祭典・松本大会」に、ミニ・エクスプロラトリアムを出展した。28日から泊まりこみで、キャラバンカーに満載した60点の展示実験をセットアップしたという。実験器具調達はもとより、交通費もすべて自費というから頭が下がる。

γ線コーラ 車田さんの発表
 8月初旬に高崎の原子力研究所で行われた「原子力体験セミナー」に参加した車田さんがお土産を見せてくれた。一見、普通のコーラ瓶に見えるが、右はコーラの空き瓶(透明)にコバルト60のγ線を3時間位照射したものである。コバルト60照射施設見学の記念品だそうだ。普通のガラスは自然光のすべての色(虹の7色)を均等に透過させるので無色透明だが、γ線を照射するとガラスを構成している一部の元素で、原子内の電子状態が変化し光の一部を吸収するようになるのだという。これを利用して、水晶や真珠などに着色することもできる。紫水晶(アメシスト)も人工着色品がかなり出回っているそうだ。ナトリウムを含むガラスは茶色、コバルトを含むガラスは紫色になる。ただし、熱を加えると電子状態が元に戻って、色が消えてしまう。

リヒテンベルグ図形 車田さんの発表
 これも「原子力体験セミナー」での製作実験のお土産。無色透明のアクリル版(10×10×1.5cm)に電子線照射3MeVで数秒(ビーム電流約1mA)照射する。照射後、アース線のついた千枚通しを当て金槌で軽く叩く。写真左は中央、右は側面からそれぞれ叩いたものだ。このとき千枚通しの先端付近からアクリル版の中で雷が発生したような状態が観察できる。アクリル版の中には放電が生じたところが絶縁破壊痕となり、木の枝のような美しい放射状の図形「リヒテンベルグ図形」ができる。右の写真は車田さんが撮った放電の瞬間のベストショット。
 

不安神宮 加藤竜一さんの発表
 StudyRoomで見つけたという、反転遠近法による立体視である。価格は3360円(税込み)。モデルは、平安神宮のようだがが、箱には『不安神宮』のタイトル(でも、英語名称はThe Heian Jingu Temples from Kyoto)。この他にももうひとつThe Medieval German town of Goslarという絵がある。
 反転遠近法はルネサンス期のイタリアでの『凹仮面の錯視』や『沈み彫り』があるが、この作品のように芸術作品として作ったのはロンドンに住む画家PatrickHughes (パトリック・ヒューズ)が1960年に作ったのが最初だそうだ。
 詳しくはhttp://www.hcn.zaq.ne.jp/cadds902/index.htmlを参照のこと。


心を清めるメガネ 加藤竜一さんの発表
 黒板に貼り付けた3つの図形。先生は任意の生徒に、その中から任意の一枚を無作為に選ばせる。他の生徒もこれを記憶するが、このとき被験者として指名された別の一人の生徒だけは後ろを向いている。その後先生は、三つの図形をでたらめに動かして位置を変える。何も知らされていない被験者の生徒は、振り向いてどの図形か当てるように言われるが、全くわからない。
 このとき先生曰く「心が清らかならば、みんなが思っているカードがどれかは自然にわかる。それではこの心を清めるメガネを貸してあげよう。」
 被験者の生徒は、メガネをかけるとたちどころに、正解を言い当てる。今度は一同が大いに不思議がる。メガネをかけた生徒には右下の写真のようにカードが見えるのである。
 タネはおわかりだろうか。もちろんメガネにもカードにも偏光板が使われている。先生はカードを動かすとき、でたらめに動かしながら、さりげなく正解の一枚だけを90度回転させたのだ。加藤さんの見事な演出に、一同感服した。

 

ウサギとカメ 加藤竜一さんの発表
 加藤さんが山梨県立科学館の工作教室で子供達に作らせているおもちゃである。塩ビのパイプに吸いついたウサギとカメが、下から上へユーモラスに追いかけっこをしながらのぼっていく。ゆっくりとした不思議な動き方である。実は塩ビパイプの中は水で満たされていて、円柱形の「浮き」が二つ仕込んである。浮きには磁石がとりつけてあり、ウサギとカメの磁石を引きつける。パイプを立てると浮きが水をかき分けながら管内を上昇し、ウサギとカメを引き上げるのである。水の流れ方で、両者の間隔が不規則に変化するので面白い。ブラックボックスにしておいて、中のしくみを想像させると良い教材になる。
 

鳥型羽ばたき飛行機 竹内さんの発表
 筑波のエキスポセンターで購入したという鳥型の羽ばたき飛行機のおもちゃ。おしりのクランクでゴムを巻き、手を離すとパタパタと羽ばたきながらユーモラスに飛ぶ。設計はフランスだがMade in China。商品名は「パタパタバード」で国内小売価格は\700ぐらい。輸入代理店は株式会社エイジーAG(東京都中央区日本橋本町3ー10ー9、Tel.03ー3664ー7001)。
 

プラネタリウムを作りました 越さんの紹介
 越さんは夏休みの自由研究として、子供といっしょに紙製円筒型プラネタリウムを作った。元はメガスターで有名な大平貴之さんのホームページ「卓上プラネ製作教室」より型紙をダウンロードしたもの。「子供といっしょに作っていて、予想以上に子供が真剣に丁寧に、ものづくりに集中した。3時間ほどで完成。部屋を暗くして初めて投影したときには家族そろって歓声をあげた。」と、越さんは語る。4等星くらいまで投影でき、教材としても使えそう。穴を小さめにし、強力サーチライト用の豆電球を使用すれば、さらにはっきりした星像が得られるだろう。
 大平さんの「プラネタリウムを作りました。」という本(写真右)にも同様のプラネタリウムが付いている。親切なことに、主な恒星については穴が開いけてある。この本は、大平さんの自伝で、子供の頃初めて作った蛍光塗料のプラネタリウムからメガスターUまでの話。特に高校時代に熱中したという本格的ロケット作りの話は、「ロケットボーイズ」を思い出させる。詳しくは以下を参照されたい。http://www.megastar-net.com/news/news030512.html
 

郭公団子 山本の発表
 岩手県一関市に近い観光地「厳美渓」に、郭公団子(かっこうだんご)という名物の団子屋がある。厳美渓の岩棚にある東屋から、対岸の店に向かって一本のワイヤーが張られていて、写真のようなザルのゴンドラが行き来する。客が東屋のところでこのザルの中に代金を入れ、そばにある板を木槌でたたいて合図すると、対岸の店の二階にいる店員がひもをたぐってゴンドラを引き上げる。折り返しゴンドラは団子をのせ、谷渡りでワイヤーを滑り降りてくる。観光客は面白がって列をなして団子を求める。「空飛ぶ団子」と銘打つユニークな販売方法で、店はけっこう繁盛しているようだ。
 ところで、下りのゴンドラには商品の団子と共に、サービスで紙コップのお茶が一緒にのせられている。ゴンドラはかなりの勢いで下ってきて、最後は思い切り急ブレーキをかけるのだが、お茶は全くこぼれない。客は大いに驚き、歓声をあげる。その歓声が次の客を呼ぶのである。客は「プロのワザだ」と感心するが、実はここに物理がある。
 

 ごらんのようにゴンドラのザルは減速時水平から30度ほど傾き、大きく揺れるが、ひもが滑車とゴンドラをつなぐ金具にとりつけられているところに注目しよう。ゴンドラにのった座標系では慣性力を感じ、見かけの重力の方向が変化することになる。ゴンドラは振り子のようにすなおにこの見かけの重力の方向を向き、コップの中のお茶の水面も同じように見かけの重力に対し垂直な平面を作るので、お茶はこぼれない。実はかなり乱暴に操作してもこの仕掛けならこぼれないのである。これは、かつて右近さんがYPCニュースNo.67(93/10)で紹介し、03年4月の例会で再現してくれた、あの「イスタンブールのお盆」や、出前バイクのおかもちと同じ原理なのだ。店主の知恵に脱帽。ちなみに団子は、あん、ごま、みたらしの三本一箱¥300(税込)で、ごく普通においしい。
 

二次会 山中湖畔の保養所にて
 YPCとしては東京以外で初めての例会。100回記念津久井荘例会(96/7)、10周年記念の「くげぬま荘例会」(98/1)に次ぐ三度目の宿泊例会だ。加藤さんが紹介してくれた山中湖畔の保養所で14名が合宿した。温泉で汗を流したあとの一杯は爽快だ。

 部屋に帰って二度目のカンパーイ!酒好きのYPCがこのあと深夜まで科学談義で盛り上がったことは言うまでもない。
 
 一夜明けて、一行は近くにある富士吉田市立「富士山レーダードーム館」をたずねた。この4月にオープンしたばかりで、地元の加藤さんもまだ見たことがないという。バックのレドームは、内部に格納されたレーダーアンテナと共に、1964年から1999年まで富士山頂で気象監視を続けた実物。業務終了に伴い、ここに移設され、保存されることになった。2000年にIEEEのマイルストーン認定(八木アンテナに続き2例目)を受けている。
 山頂レーダー建設のドキュメントは新田次郎の「富士山頂」に描かれている。本館には気象関係の各種展示のほか、新田次郎の作品や原稿も公開されている。
 山頂レーダーが現役だった頃のレポートここ。富士山測候所は2004年9月いっぱいで有人の観測業務を終了し、ロボット化される。



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