例会速報 2004/10/16 県立柏陽高等学校


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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは来月上旬発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムここ

授業研究:光の性質 大谷さんの発表
 大谷さんは、先日中学一年で終えたばかりの「光の性質」の単元の実践報告をしてくれた。高校の先生からは、「中学でこれだけしっかりやっていたら、高校でやることがないなあ。」という声ももれた。校種間の情報交換は非常に有意義である。以下、大谷さん自身によるコメントを掲載する。

 「よく考えると不思議な現象」を探究したり、討論したりする授業を以前からやりたかったのだが、最初のプリントで質問形式にしてできたくらい。
 全授業を、理科室で行い、教科書の実験の写真を、毎回、実験で試す形にした。私としては、やりたかったことなので満足だったが、生徒達は私語がひどかった。実験にもっと、身近なものを取り入れるべきだったと、反省している。実際は、やるはずだったが、時間がなくなりやらなかったので、取り上げる実験などを、変えていきたいと思う。

実物投影もできるマルチプロジェクタ 日本アビオニクスさんのデモ
  写真は日本アビオニクス株式会社マルチプロジェクターMP−700。プロジェクタと書画カメラを一体化したXGAフル対応の液晶プロジェクタである。高輝度4300ANSIルーメンは、教室なら暗幕不要の明るさだ。体育館などの大会場でも薄暗くすれば十分対応できる。
 内蔵の書画カメラは200万画素で、光源が明るく被写界深度が深いので、立体物でもシャープに投影できる。下の写真はトラベルクロックを直接投影しているところ。厚手の本のとじ目の部分なども問題なくピントが合う。ちょっとした演示実験ならこのステージの上でできてしまう(後の鈴木さんのレポート参照)。もちろん、入力はパソコン・ビデオ何でもOK。
 気になるお値段は希望小売価格130万円のところ、実勢価格で77万円程度だそうだ。

 

終端速度 江尻さんの発表
  新潟大学の小林昭三先生らが開発された運動解析ソフト(2003年8月例会で紹介)がリメディアルフィジックスにも収録されている。アルミカップ(弁当のおかず入れ)の落下運動で終端速度を測るなどの実験がお手軽で教育的だ。

太陽スペクトルの測定 江尻さんの発表
  江尻さんが琉球大学に在職中に指導した研究の解説をしてくれた。太陽光を回折格子で分光し、光電測定によりスペクトル強度を決めた。オゾンの吸収や代表的なフラウンホーファー線が確認できた。使用した主な機器は、リツー応用光学のツェルニーターナー型平面回折格子分光器MO−20Nと、浜松フォトニクスの光電子増倍管R750である。
 太陽の日周運動を追尾する代わりに、パソコンに取り込んだデータに対し、日周運動分の入射角度補正を施すことで、装置を簡素化している点が工夫である。

反磁性シャープ芯 鈴木さんの発表
 磁気の学習の際に、反磁性を持つものの例として、銅、水などとともに、炭素(黒鉛)があげられる。その実例として、シャープペンの芯を見せるが、メーカーや銘柄によって、含有している固め剤(粘土鉱物)の影響で引き寄せられたり反発したりしてしまう。そこで、入手可能なシャープ芯を集め、確認してみた。(ただし、財政上の理由から、同じ銘柄の違う固さ(濃さ)のものは用意しなかった。)
 結論としては、プラチナとパイロットの芯は反磁性を示し、ネオジム磁石を近づけると反発して遠ざかっていく。その他のメーカーは引き寄せられてしまう。メーカー品でないものでは、100円ショップ「CanDo」の芯(写真右)が反磁性を示した。値段は、メーカー品は概ね40本200円前後で、CanDoのものは40本105円である。実験用にCanDoのものを買っておくとよいだろう。鈴木さんは授業で一人1本ずつ贈呈し、ネオジム磁石の小型のものを生徒数分用意し、各自の机でやらせた。ネオジム磁石は、黒板用マグネットとしてダイソーで売られているものから2個取れる。つまり1個50円+税。もちろん、磁石は贈呈しない。
 

 写真左は、前掲の日本アビオニクスのマルチプロジェクターの上で実験した投影画像。下から見上げた像になっている。ケースの上にバランスをとって芯を乗せ、ネオジム磁石を近づけると芯が動く。
 例会では、他に反磁性を示すものとして、楊子をやるとよい、という発展がアドバイスされた。楊子は中の水分のために反磁性を示すが、それを見せたあと電子レンジで水分を飛ばしてからネオジム磁石を近づけると、今度は引き寄せられるようになる。
 ネオジム磁石を生徒に使わせるなら、さらにお札のインクの強磁性体を見せるといいというアドバイスも。一万円札の青インクはネオジム磁石に引き寄せられる。新紙幣はどうなっているのだろうか。

 

リアクタンスの導入 小沢さんの発表
  小沢さんは、例会の次週に交流回路の授業で演示する予定の実験を披露してくれた。
 電球とコンデンサとコイルをそれぞれAC100Vにつないだときの電流をデジタルテスターで測定する。すると形式上「電力」は計算できる。しかし、電力量計をつなぐと、コンデンサとコイルのときは、円盤がほとんど回らない。電流が流れても電力は消費しないのだ。この一見矛盾するかと思われる現象から、電球の抵抗と、コンデンサやコイルの「抵抗のようなはたらき」の違いを説明する。つまりレジスタンスとリアクタンスの違いだ。(H3東レ理科教育賞、森雄兒「数式を使わない交流の指導」を参考にしている。今回使った電球、コンデンサー、コイルはそれぞれ、40W、16μF(AC250V用)、1.2H)

 電力量計の読みは、小型カメラ「スワネック」で、テスターの電流の読みは、パソコンでロギングして付属のソフトでメーター表示し、ともにスクリーンに拡大投影して演示する。

 

電通大の学生向け物理展示 竹内さんの発表
  大学の物理実験は多くは測定データ取りだけの実験が多いが、電気通信大学はユニークな取り組みをしている。大学1年生のために教員がアイデアを出し合って開発した30点近くの実験装置を、別教室でエクスプロラトリアムのように、入室時間自由でハンズオンの科学館のように展示している。
 写真はマル型の天井照明ランプのカバーを巧みに使った、大型の「ムーアのモーター」。静電気でボールが回る。逆風力自動車、スターリングエンジン、電磁調理器、ブラウン管の偏向、水滴放物線のストロボ軌跡・・・等々。鉱石ラジオも、学生自身がバリコンから製作できるようになっている。

足踏み水中翼艇とソーラーボート 竹内さんの紹介
  夏に浜名湖の競艇場でソーラーボートレース大会があった。竹内さんがビデオでそのようすを報告してくれた。

 船体いっぱいに500ワット分の太陽電池を貼った水中翼船は水の上から船体を浮上させて走り続ける。普通のソーラーボートと比べると格段のスピードの差。
 もっと興味深いのは、二人乗りの自転車を双胴船に載せた構造の人力水中翼船。頑張って漕ぐと、二人をのせた船が水面から離れて浮かび上がり、すべる様なスピードで疾走する。もちろん1時間とは走れないが立派である。
 船体はカーボンファイバー製で、重量は二人乗り自転車を含めて40キロ台。工夫した船体は出場前の整備で見ることができるという。まるでミズスマシ人間コンテストだ。

欧米の科学絵本 竹内さんの発表
 竹内さんはたびたび欧米の科学絵本コレクションを紹介してくれる。
 特にイギリスの科学実験絵本は素敵だ。キッチンサイエンスというか家庭の台所用品でできる実験だ。同じ本がフランスではフランス語で販売されている。騙し絵は144枚のイラストで3000円。壁に貼ればどこでも騙し絵ミュージアムになる。
 アメリカは実験キットが豊かだそうだ。大きな本屋さんでも科学館でも扱っているという。フランス、ドイツは幼児向けの工作や手芸が楽しい絵本が多い。雨の日に手作りを楽しむ本だ。
 竹内さんは、国立の国際こども図書館の設立発起人にもなっている。海外に行ったとき半日は本屋さんで探して、数冊ずつ買い集めたものだという。

ステラナビゲータVer.7 山本のソフト紹介
  天文シミュレーションソフトの最高峰、アストロアーツステラナビゲータVer.7が発売になった。今回のバージョンは以前にも増してよい出来で、操作性が向上しており、画面も美しく、おすすめである。CD4枚組で\15750、同時発売の公式ガイドブック\4200とのセット購入をおすすめする。

 詳細な機能・仕様はアストロアーツのサイトをご覧いただくこととして、いくつかのハイライトをご紹介しよう。星像の表現はスタンダードなリアル表現に加えて、天体写真のようなにじみ星モードやまたたきもシミュレートできる。写真左はオリオン座の三つ星付近のシミュレーション像だが、小三つ星のところをズームインしていくと、右のようにM42のイメージがシームレスに拡大されてくる。主なメシエ天体に関してはイメージが貼り付けてあるのだ。

 

 ネットサーフィン感覚で「天文現象ブラウジング」もできる。「お気に入り」に登録されているメニューから選ぶだけで、著名な天文トピックをシミュレートできる。左は2009年の奄美大島皆既日食の皆既シーン。プラネタリウムやBGVの番組もさらに充実した。「太陽系フライトモード」も新しい機能だ。キーボードまたはジョイスティックの操作で、太陽系内をゲーム感覚で自由に飛び回りながら天体訪問を楽しめる。右は探査機カッシーニさながらに土星のそばを手動操縦でフライバイしているシーン。好きなところに近づいたり、時間を進めたり戻したり、自在に操れる。

 
 

定力装置と加速度センサ 山本の発表
 ヤガミの定力装置はゼンマイ仕掛けで一定の力でなめらかに台車を引くことができる。力の強さは50gw(約0.5N)と100gw(約1N)だが、二つあわせれば150gwで引くこともできる。台車にデーターロガー「エクスプローラ」の加速度センサをとりつけて、この定力装置で引いたときの加速度を測ってみた。
 

 左は100gwで引いたときの加速度記録で、平均値は0.6m/s2を示している。引かずに空走させたときの加速度-0.2m/s2の補正を加えると、0.8m/s2となる。100gw=0.98Nを台車+センサの質量1.26kgで割ると、0.78m/s2だから、まあよい一致を示していると言えるだろう。
 台車では加速度の手軽な測定は難しい。どうしても振動のノイズが入ってしまうからだ。

二次会 大船駅前「甘太郎」にて
 18人が集まってカンパーイ!二次会参加者は常連ばかりではない。例会参加の日が浅い人でも、気軽に参加できるアットホームさがYPCの良さだと思う。飲みながら、食いながら、今宵も科学談義に花が咲く。


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