例会速報 2004/11/06 県立港北高等学校


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授業研究:テスト問題から 鈴木健夫さん、宮崎さんの発表
 今回の授業研究はテスト問題を持ち寄っての批評会となった。鈴木さんの試験は、概念を問う○×問題や選択問題と、物理的な記述を求める説明問題を必ず入れるようにしているのが特色だ。
 例会の場では、問題の出し方ではなく、「等速円運動をしている物体にかかる向心力と遠心力は常につりあう。」という文章が○か×かついて議論になった。出題者の鈴木さんは、×を正解としているが、「向心力」という用語と「遠心力」という用語の使い方に、参加者それぞれに微妙な差があることがわかった。鈴木さんは授業で、「遠心力」は等速円運動する立場でしか成り立たない力なので、「向心力」を見る立場とは両立しない、と強調しており、「向心力」という力があるのではなく、「弾性力」や「摩擦力」という具体的な力が「向心力の働き」をしているだけだという言い方で貫いている。つまり、等速円運動している立場から見たときにだけ遠心力と弾性力等の具体的な力がつり合う、と考えるという主張だ。
 しかし、そう言い切っていいのかと言う指摘が参加者からあった。こういう部分は、用語に関して個人の思いこみがかなりあると思う。教科書の記述はそう言う意味では慎重であり、正しいのだろう。それを逸脱することは避けるべきなのかもしれない。しかし、鈴木さんは、授業や理解の流れから考えて、自分の授業での言い方を問う問題はあってもいいのではないか、とこだわりを見せる。みなさんはどうだろうか。

 一方、宮崎さんは、採点時に各問いの通過率を記録している。「できの悪い」問題で大事だと思っているものは次の試験にも再度出すこともある。通過率を記録することにより、この生徒は基本的な運動方程式から理解できていない、別の生徒は平面連結2物体はできるが、アトウッドはだめとか文字式になるとだめ・・・というように、より具体的にかつ個別の生徒の理解度がわかるようになる。持ちクラスが多いと大変であるが、採点が終わっていれば、テスト返しの前に10分ぐらいで1クラス記録できる。

新券の磁性 みんなで実験
 今月から出回り始めた新しいお札。野口英世、樋口一葉、福沢諭吉・・・偽造防止の対策がふんだんに施されたハイテク紙幣である。例会に先立ち、誰言うともなく、新券の磁性チェックが始まった。旧紙幣同様、ネオジム磁石を近づけるとインクの濃い部分は吸いついてくる。黒いインク顔料に磁性体の成分が混じっているのだろうか。
 ホログラムやマイクロ文字、視覚障碍者用エンボスなどにも関心が集まった。

ワインスタンド 宮崎さんの発表
 宮崎さんから、力のモーメントの単元の授業展開の紹介があった。重心のところでは、おきあがりこぼしを見せて、重力の作用線と垂直抗力の作用線の一致がないいと安定しないことを示し、マドロスボトルスタンド(写真左)で重心の位置の移動(空身、水入りボトル、空ボトルでの比較)を示し、最後にシンプルボトルスタンド(写真右)を見せるという導入の仕方をしているという。単純なおきあがりこぼしからマドロスの登場で生徒の関心がたかまり、マドロスの片足だちで興味をもち、シンプルスタンドでおどろかせるという展開だ。以前のボール紙の切り抜きに糸をつけてたらし、2、3度回転させて重心の位置を見つける展開よりも反応は格段によくなった。
 

ペン付こま Doodle Top たかすぎさんの発表
 ニューヨーク・グッゲンハイム美術館展(2004.7.17-10.11 Bunkamuraザ・ミュージアム http://www.guggen.jp/)のお土産にもらった、軸が交換式のサインペンになっているこま。税込み1,575円。回すとこんな図形が描ける。傾いた面や球面上ではどうなるのか。学研でも以前に色鉛筆で製品化したことがあるとのこと。耐久性を度外視すれば自作もできそう。

自作エアドーム 宮崎さんの発表

 港北高校天文部はヒゲキタこと北村満さん開発の簡易プラネタリウムにならって、この夏文化祭用にエアドームを製作した。以下、指導にあたった宮崎さんのコメントを紹介する。

 昨年の文化祭では、昔からあるつり下げドームの組み立てに一苦労し、さらに自作のプラネタリウムがうまく動かず苦労しました。今年はドームを新たに作り、プラネは借りてくることにしました。うちの天文部は女子3名のみ、うちの2名が中心になり、この暑かった夏休み中に作成を開始、16枚のパーツを切り出し、両面テープで貼り合わせて半球の1/4の部品を作りました。
 外皮は農業用の遮光シートで、1枚で光を遮ることができます。内側に白い布を貼って完成。扇風機1台の風で直径4mのドームが自立し、送風が換気にもなります。文化祭には内部でプラネタリウムと越さんに貸していただいた3Dパーツで3Dの実演で彼女らも満足していました。
 

 直径4mの内部は20人が楽に入れるほど広い。下左は扇風機の送風口。これだけの装置で巨大ドームがふくらむ。例会当日は越さんが赤青電球と赤青メガネによる立体映像を実演してくれた。投光器は豆電球にセロファンをかぶせた簡単なものである。

 

水中電球 山本の紹介
 11/29放送の「笑っていいとも」で、米村傳次郎さんが演示していた実験。ビニルコードを30回ほど巻いたコイルの両端を、40W電球に接続する。電磁調理器(IH)にのせればこれだけで電磁誘導によって点灯するが、全体をそっくり水没させて水中で光らせるというデモである。水中で光るという意外性ばかりでなく、外部のどこからも電源を得ていないという確認と、水を通しても磁場の影響が及ぶことを印象づけることができるインパクトのある実験だ。さっそく授業にかけてみたが、好評だった。
 喜多さんの情報提供によれば、大日本図書の「デモンストレイション物理」('86/9)p.135の記事が出典ではないかと思われる。
 

水中電球・Part2 その場での発展
 例会で上の実験を演示中に、誰かが気がついた。シリカ電球は内側がすりガラスになっているが、水中ではこの白い部分が小さく見える。ガラスの透明部分がぐんと肉厚になって見えるのだ。横に沈めると、角度によって中にピンポン玉が二つあるみたいに見える(右)。ガラスと水の屈折率が近いことによる、光のいたずらだが、詳しいしくみはその場の議論では決着せず、宿題となった。
 

 透明電球でも基本的には同じことが起こっているはずだが、向こう側が透けて見えるので、像の境界がはっきりしない。向こう側に豆電球でも置いて、光路を詳しく追跡するとよいだろう。ちょっと面白い課題研究になりそうだ。

形状記憶合金のエンジン 佐藤さんの発表
 学研の佐藤さんが持ってきて見せてくれた4年の科学の付録。その名も「氷エンジンハイテクボート」。形状記憶合金のワイヤーを輪にしたものが二つのプーリーに渡してあるだけの簡単な構造。お湯に浮かべると自然に回転して赤い水車を回して前進する。氷は低熱源なので「氷エンジン」は変だが、熱機関(エンジン)であることはまちがいない。
 さて、このエンジンがなぜ動くかが議論になった。赤い水車のところのプーリーにはたらく張力に上下で差を生じるから水車が回転するわけだが、その原理をどう説明したらよいのだろう。例会では解決を見なかったが、記憶された形状により、温めると縮み、冷やすと伸びるという性質があるものと考えると説明ができそうだ。
 

ゴムピタ君・その後 喜多さんの発表
 今年2004年、物理教育研究会夏期大会の工作教室のお土産は、石井登志夫先生開発の「ゴムピタ君」の簡易版だった。小沢さんが材料の入手に奔走してくれた。厚さ3mm、30cm四方のゴム板と、取替え用のお鍋の取っ手である。
 喜多さんは、どこまで小さくできるか試してみた。先ずは15cm四方、10cm四方・・最終的に7.5cm四方まで小さくしてみた。この最小の大きさでも生徒用の机(大体7.5kg)を持ち上げることが出来る。左図は、これを逆さにして天井に付けても落ちないことを示している。大気圧が四方八方に働いていることを示すことができる。右図は新規開発中のもので、もっと大きな重さに耐えられるようなゴムピタ君をめざしている。50kgくらいの人がぶら下がることができたら・・・というのが喜多さんの目標だそうだ。
 

動滑車 小沢さんの発表
 小沢さんは、仕事の原理の授業で扱う動滑車の実験を紹介してくれた。
 動滑車は理科の問題ではよく出てくる器具だが、実際に使った経験のある生徒は少ないだ。小沢さんは、「力で得して距離で損する」場合とその逆の場合について試し、仕事の原理を体感させることを目指しました。とくに、動滑車で「重くする」ケースは、我々もあまり体験したことがないのでは?
 普通教室の授業の中で短時間でできるように工夫されている。ひもの先端にはフックを付けて、生徒用机の荷物掛けに固定できる。力を加える部分は紐の色を変えて(緑色で)示し、「緑色の部分の一方におもりを吊るし、他方は手で持ってごらん。次に、その逆をやってごらん。」と指示すれば両方の実験ができるようになっている。ゆきとどいた気配りだ。
 材料はすべてダイソーでそろう。滑車として2個1パックになっている戸車(直径36mm)を用いてコストダウンを図り、2,3人に1セット行き渡るように準備したという。
 

RC回路の実験 山田さんの発表
 ファンクションジェネレータとオシロスコープの組み合わせで見せる、RC回路による発振の見事な波形。コイルに鉄心をさしこんでいくと、Lがしだいに大きくなって周期が延びていくのがよくわかる。
 

 上記の回路の減衰振動を力学的に関連づけて見せる。ばね振り子に空気抵抗を与えるため、大きなアルミ皿をとりつけたもの(左)と、振り子のおもりに強力な磁石をとりつけておき、コイルの中で運動させて、電磁誘導でブレーキをかける方法(右)、いずれもあざやかな演示である。コイルの両端が開放状態だと減衰は起こらず、ショートしたとたんに減衰が始まるので、誘導電流による損失がよくわかる。コイルの部分を肉厚の銅パイプに変えると、過減衰になるようすも観察できる。

 

天使と悪魔 加藤竜一さんの書籍紹介
 加藤さんの勤務校の読書の教材で使われた小説の紹介である。
 初めのほうはCERNが舞台になり、いろいろな物理のお話も出てきて、結構楽しく読める。ちょっと無理があるところもあるが、かなり正しい記述をしている。後半は、反物質を『対消滅すると危ない爆発物』として扱っているだけなので、あまり物理とは関係がなくなってしまうのが残念。
 最近話題の『ダヴィンチコード』の前作にあたり、同じ作者・同じ登場人物の作品なので、『ダヴィンチコード』を読もうと思っている方はこの『天使と悪魔』を先に読むと良いかもしれない、とのコメントだった。

東京原発 越さんの発表
 今年公開された映画、「東京原発」がDVDになった。社会派でありながらドタバタ! 原発問題の基本知識を学びながらも結構笑え、エンターテイメントとしても一級! 社会科や理科の授業でも教材化できそうな内容。
 「東京に原発を誘致する!」突然飛び出した都知事の爆弾発言に、招集されたメンバーは議論沸騰! 冷静に反対する副知事、日和見のお調子者財務局長、とぼけた発言でひんしゅく者の都市計画局長、常識派の環境局長、反対派の大学教授...それぞれのキャラクターが繰り広げる真面目だけど笑える会議、そして、秘密裏に進む都内核輸送と核ジャック!...

 社会派パニックコメディー「東京原発」ホームページは、http://www.genpatsu.bsr.jp/main.htm 小説版も竹書房文庫から出版されている。関連図書「東京に原発を!」広瀬 隆 著集英社文庫。

二次会 大倉山駅前「養老乃瀧」にて
 16人が集まってカンパーイ!大倉山駅前界隈のチェーン店系居酒屋は、サービスが悪いと不評なので、港北例会では毎回河岸を変えて、お店探しをしている。養老乃瀧はやや駅から離れていてこぢんまりした店だが、比較的落ち着いていて、アットホームなのがよい。どうやらYPCはここに根をおろしそうである。


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