例会速報 2004/12/04 中村理科工業・交流広場


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中村理科の新店舗・サイボックス みんなで見学
 年に一度の東京会場での例会である。会場は今年も中村理科工業株式会社の交流広場をお借りした。例会に先立ち、同社本社ビル1階にオープンしたばかりの新店舗「サイボックス」を見学した。同社の理科実験商品群のうち、一般にも人気の高い商品を陳列して、実際に手にとって確かめて買うことができる。YPCの面々には食指の動くアイテムばかりだ。訪れる客はリピーターが多いという。
 店頭では等身大のスケルトン君が出迎えてくれる。12月とあってサンタ服をまとった姿は何とも異様。入り口ドアをくぐってすぐ右に大型の低温拡散型霧箱が置かれていて、常時天然放射線が飛び交う様子を観察できる。御徒町・秋葉原にも近く、東京にきたらぜひ訪れてみたいスポットだ。
 

スーパー輪投げ イルカさんの代理発表
 【理科の部屋】のイルカさんこと、山口県の手嶋さん提供の紙工作。厚紙を切り抜いて山折りにしたものを3枚貼り合わせて左のような輪を作る。フリスビーと同じ要領で強くスナップを利かせて投げると、滑るように遠くまで飛ぶ。練習すれば軽く10m以上飛ぶようになる。このとき、飛行コースの曲がり具合を見て、輪の山の折り方を微妙に変えることにより、前後の揚力を調節して、ジャイロ効果により曲がる方向をコントロールすることができる。簡単な工作だがコマの力学と通じるものがあり奥が深いのだ。的当てやキャッチボールなど競技化するとさらに楽しめる。
 

 ところでこれは、中村理科の「サイボックス」店舗に陳列されていた商品見本である。FLIGHT RINGなる名称で、畳んだ状態では平らだが、引き延ばすと右のように変形してフリスビー同様に飛ばせるようになる。ちょっと重くて、投げるのに力がいる。

旋回紙飛行機 加藤さんの発表
 加藤さんが都立航空高専の吉田喜一教授からいただいたという紙飛行機。

 強く真上に投げると宙返りして手元にもどる。横方向に投げても力加減で手元に戻るようにできる(練習が必要)。ゆるく投げると普通のグライダーのような飛行をする。過去にたかすぎさんが紹介されたイギリスみやげの紙飛行機にとてもよく似ている。

中性紙チェックペン、pHテスターペンと本保存液 加藤さんの発表
 中性紙チェックペンは中性紙と酸性紙とを簡単に見分けるために開発されたもので、紙にこのペンで線を描くと中性紙なら青い色、酸性紙なら黄色になり、短時間に判定ができる。新聞紙4紙でテストしたところ、2紙(日経新聞とスポーツ報知)は酸性紙であることが判明。

 pHテスターペン(写真なし)はpH計などの器具を用いることなく紙や布などの固体表面のpHを測定することができるペンで、中性紙チェックペンと同様の使い方をする。標準比色表がペンと一体になっている。
 詳しくは日研科学研究所のサイトへ。 http://www.nikken-chemical.co.jp/

 本保存液Bookkeeperは輸入品で、本の寿命を延ばす効果がある。酸化マグネシウムの超微粒子粉末を揮発性溶剤中に分散させたもので、これを酸性紙に吹きかけると中性紙にすることができ、本の寿命を約3倍に長持ちできるそうである。
 上記酸性紙の新聞に吹きかけてテストしたところ、吹きかけた部分は中性紙チェックペンで中性になったことが確認できた(写真下右)。
 詳しくは東京修復保存センターのサイトへ http://www.trcc.jp/

 

インテリジェントプロジェクター・iP55 日本アビオニクスさんの発表
 実物投影器付き液晶プロジェクターの新製品の紹介。高解像度のCCDカメラが内蔵されていて、読み取り窓に載せられた資料をすばやく表示することができる。走査型のスキャナと異なり、被写界深度が深いので、本のとじ目などがあってもきれいに表示できる。小さな演示実験ならこの上で直接行うこともできる。もちろんスキャン画像の出力も可。オプションの液晶ペンタブレットを組み合わせると、資料画像にその場で手書き文字をかぶせて投影することができ、講義用として強力なツールになる。詳しくは下記のリンクを参照のこと。
インテリジェントプロジェクターiP55 http://www.avio.co.jp/products/mp/index.htm
15形カラー液晶ペンタブレット http://www.avio.co.jp/products/mp/option_ip.htm
 

磁石回転子縦軸モーター 淺井さんの発表
 サイエンスボランティアの淺井さんは、科学の祭典などのイベントを通じて、精力的に科学工作普及活動を行っている。簡単モーターは数々あるが、淺井さんのモーターはパワーが強く、発泡スチロールの船に乗せてプロペラ動力として実用になる。滝川さんの縦軸モーターをヒントに改良を重ね、誰でも簡単・確実に作れてパワーのあるモーター工作に仕上げた。例会参加者にはモーターキットが1セットずつ配布された。
 

シャボン膜が作る立体 江尻さんの発表
 針金で作った立体を石鹸液に浸してつり上げると、思いがけぬ造形が楽しめる。表面積を最小にしようとする結果、各立体の体心を含むような面が生じやすい。泡が入るとまた面白い立体ができる。科学館などでも見かける展示だが、自作も比較的簡単。真鍮や銅の線を使えばはんだ付けで体裁よく作れる。参加者からは吊り糸を二本にすると引き上げるときの姿勢を制御できてよいというアドバイスもあった。
 

錬金術? 高橋さんの発表
 赤銅色の銅板が、液体につけると銀色になり、さらに火であぶると黄金色になるという科学マジック的なメッキ実験。

 まず銅板をクレンザーなどでよく磨き、表面の酸化膜を落とす。次に、水酸化ナトリウムに亜鉛末を混ぜたメッキ液を加熱して、銅板を煮る。引き上げた銅板は溶液中のテトラヒドロキソ亜鉛(U)酸イオン[Zn(OH)]2−が還元されて生じた金属亜鉛でメッキされて、銀白色になっている。これを水洗いしてよく乾かし、弱火にしたバーナーやアルコールランプの炎で加熱すると、見る見る金色に変わっていく。表面の亜鉛と銅が合金となり黄銅(真鍮)になったためだ。あまり強く加熱しないこと、変色し始めたらすぐ火から出すことがコツだ。

 なお、この実験では水酸化ナトリウム溶液を加熱するので危険である。防護メガネを着用するなどの配慮がほしい。また、国内で通用する通貨(10円玉など)を実験に使用することは「変造」にあたり、刑法に抵触するのでやってはいけない。下の写真では国内では通用しないEUの2ユーロ貨を使用している。

 

ゼ−ベッカ− 渡辺さんの発表
 中村理科の昨年4月の新製品「ゼーベッカーキット」16,800円。ペルチェ素子を銅製容器の間にはさみこむことによって、水の温度差を効率良く利用できるようにしたセット。お湯と氷水を入れると車が走る。風車のモーターで演示も。熱エネルギーを電気エネルギーに変換するゼーベック効果やその逆のペルチェ効果を実験することができる。
 

 左は電池をつないで、電流による熱輸送をさせているところ。ペルチエ素子本来の使い方だ。はじめは同じ温度の水を入れておくが、時間がたつと、一方は冷え、他方は暖まる。数分で指先で感じるほどの温度差になる。

 参考記事:ペルチエ熱電池の製作

LED小物あれこれ 渡辺さんの発表
 渡辺さんは東急ハンズや秋葉原でこんなものが売っていたよという報告をしてくれた。
 ・写真左:LEDソケット (秋葉原千石) LEDの差し替えが簡単
 ・写真右:豆球タイプのLED (新宿東急ハンズ 400円くらい) 電球ソケットが豆球のソケットが使える
 ・写真なし:平らな白色LED (秋葉原) 拡散光で照明用として使える
 LEDの付属品もいろいろなものがでているので、探してみると楽しいという紹介だった。
 

水筒が破裂した! 渡辺さんの発表
 胴部分が裂けてしまった水筒。 丈夫そうに見える水筒がどうしてこんなことになったのだろう。実は、お茶を入れて冷凍庫で凍らせてしまった結果である。
 下から凍ったら口の部分から壊れそうだが、見事胴部分から壊れてしまったことにちょっと驚いた。圧延加工のため胴体側面の強度が弱いのだろう。水の力をあらためて実感した。
 もちろん、製品の注意書きには、凍らせないようにと書いてる。だめと書いてあることはやはりやってはいけないのだ。

中村理科のカレンダー 中村さんの紹介
 昨年から蝶々シリーズになった中村理科工業株式会社のカレンダー。今年の内容を社長自身が紹介してくださった。1/2月のシーンはウスバシロチョウ。その名の通り翅が薄くて向こうが透けて見えるほどだ。「ウスバシロチョウ」の文字の上に本物のウスバシロチョウの標本を置いて撮影したという画像は、まるで絵に描いたみたいだ。

ミクロの世界 中村さんの書籍紹介
 ビジュアルガイド「ミクロの世界」は、顕微鏡下の美しい画像を集めた写真集だ。電子顕微鏡像や微分干渉顕微鏡像がふんだんに載っていて、解説が添えられている。自然の造形の美しさや人工結晶の宝石のような輝きが見る者を惹きつける。下記URLからの直販のほか、中村理科経由でも入手可。
http://www.cmctd.co.jp/commodity/micro_world/micro_world.html

ビジュアルガイド「ミクロの世界」、岩永浩、元島栖二著、シーエムシー技術開発株式会社発行
■構成:第1章「ミクロの世界」へのお誘い、第2章生物体の表面、第3章結晶のなりたち、第4章ミクロのおもしろい形、第5章ミクロのきれいな模様、第6章未来を拓く『ミクロ』と『ナノ』
■体裁:B5判変形104ページ、写真:250点
■価格:2,940円(消費税込み)

スネークボール 中村さんの発表
 中村さんがポケットから取り出した真鍮の球体。急坂で転がすとふつうに転がり落ちるが、緩い傾斜の斜面ではほとんど静止したようになり、 ゆっくりゆっくり降りてくる。この球体の仕組みを破壊することなく解明せよというのが中村さんが出した課題だ。
 解明実験は二次会の酒席にまで持ち込まれたが、結局、スライムのような粘性の大きな液体が内部を満たしていて、小さな金属球がおもりとして入れてあるのだろうという結論に至った。

スーパーボールドアストッパーの原理 山本の発表
 だいぶ前に、フジテレビ「伊東家の食卓」で紹介された裏技の一つに、スーパーボールで簡単にドアを固定する、というものがあった。YPCの2000年5月例会でも話題になり、原理は解明されていたが、この際きちんとした文献に残すべきと考え、記事をまとめた。http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/labo/doorstopper.pdf
 原理がわかればこんな応用も可能である。この現象では重力は主要な働きをしていないので、配置を90度回転して、写真のように板を宙に固定するヒンジとして使うことができる。摩擦係数が1より大きいという条件さえ満たせば、スーパーボールである必要はない。その場で渡辺泰樹さんがアイデアを出し、滑り止めシートを巻いたアクリル円筒でもご覧の通り実験成功。
 

展示会報告 大谷さんの紹介
 大谷さんは12/1-3に、いくつかの展示会を見学し、印象に残った展示を紹介してくれた。それぞれ、最新の製品などを展示していて、その解説などを受けることができた。
(1)「立体映像産業展」「先端光テクノロジー展」「国際画像機器展」(パシフィコ横浜)
(2)「全科展(旧:全日本科学機器展)」(東京ビッグサイト)
 
 写真は、立体映像産業展でのめがね式の携帯立体ディスプレイ。この厚みのある眼鏡をかけると、中に立体映像が見える。電車の中や飛行機の中での利用を考えているとのこと。

 大谷さんは「理科がどのように役立つか」を、授業に取り入れていきたいと思って積極的にこうした展示会を回って取材している。中学1年生に、最先端の技術に結びつけて、話すのは苦慮しているそうだが。

雪のパラボラ 竹内さんの紹介
 スキー場のゲレンデ脇に作られた雪の小山に、すり鉢状のくぼみを作り、表面にメッシュをはってパラボラアンテナを作った。写真は上半分だけで調整を試みているところ。棒の途中にあるのが受信部の共鳴空洞だ。ロシアの放送衛星の電波が見事受信できたという。

バイオリンスピーカー 竹内さんの紹介
 とあるバイオリン工房で開かれた演奏会から。スピーカーの駆動コイルの動きをアームで直接バイオリンのブリッジに伝えている。バイオリンの響板が共振して音を出すわけである。弦楽器、特にバイオリンの音色を再生するにはこれ以上ないという音響特性を示すことになる。

メビウスの卵展から 竹内さんの紹介
 昨年パルテノン多摩で行われた「メビウスの卵展」の展示品のいくつかを、ビデオで紹介。写真は「音のカーテン」という作品。陶器のピースをすだれ状に吊ってあり、揺らすと澄んだ心地よい音が聞こえる。

キュリー夫人の理科教室 加藤さんの書籍紹介
 昨年フランスで出版された本の日本語翻訳である。原著者はマリー・キュリーから理科の実験授業を受けた生徒の一人で、彼女のノートメモが物置から見つかり授業内容が奇跡的に明らかになった。YPCでも好評で、まとめ買いで共同購入したお薦めの一冊だ。
「キュリー夫人の理科教室」吉祥瑞枝監修、丸善株式会社、¥1500+税
ISBN4-621-07501-2 C0040

二次会 居酒屋「瓢箪」上野店にて
 御徒町駅に近い居酒屋「瓢箪」にて。久しぶりに20名を超える人数が参加して「大忘年会」となった。今年も最後まで楽しんだ。来年も大いに科学を楽しもう。きたるべき「世界物理年2005」にカンパーイ!


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