例会速報 2006/08/27 富士河口湖高校


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まずは前夜祭 山中湖畔の保養所にて
 まずはじめにカンパーイ!今回は夏休み最後の日曜日に、富士河口湖高校での例会を設定した。例年だと例会後に宿泊して二次会という流れだが、今回は前泊することにした。参加者は10名と少なめだが、夜っぴて物理を楽しもう。

 フォークとスプーンを組んで、マッチ棒を支点にしたやじろべえを作り、コップの縁にかける。このとき、マッチ棒の薬部がコップの内側になるようにしておく。薬部に火をつけると、軸木が燃えていくが、コップの縁で際どく火が消え、やじろべえは必ず落ちずに残る。夕食で加藤さんが披露した。
 

 夕食後、山中湖畔に繰り出した一行。越さんが、「スペースグラフィックス」で、まとめて購入したときにもらったイベント用オリジナルホロスペックスメガネを持参した。

 数年前から、花火シーズンになるとコンビニでも売られるようになったホロスペックスメガネ、ルイビトンのロゴ「LV」、旭化成の「イヒッ!」、セイコーの「SII」、プロ野球・ホークスのペットマークキャラクターなど、ダイソーの100円LEDイルミネーションを光源に、暗いところで皆で鑑賞会を開いた。 ドラえもん、キティー、アンパンマン、ミッキー、プーさん、などのキャラクター物は、花火・おもちゃメーカーのオンダ(03-3871-8118)へ。 しかし、この集団、どう見てもアヤシイ!

ホロスペックスフィルムの自作については、YPC2000年9月の例会速報に関連記事がある。
スペクトラマジックグラスについては、「天神の研究室」の記事をどうぞ。

 さらに花火で盛り上がろうとしたが、あいにく雨が降り出したため退散した。

 宿舎の部屋で再びカンパーイ!今宵はエンドレス。実験小ネタを酒の肴にとことんやろう。

 益田さんが持ち込んだこの人形たち。独特のポーズだが何をしているのかわかるかな?

 実はこれらはボトルスタンド(ワインホルダー)なのであーる。以前、宮崎さんが例会に持ち込んだことがある。益田さんはこれをネットでまとめ買いして、明日の例会で頒布しようというわけだ。これはその予告編。

 高橋さんが持ち込んだのは、鼻緒のないビーチサンダル。表面に粘着剤が塗布してあり、足裏に直接貼り付けて履く。「どこが物理なの?」とか「砂にまみれたら履けなくなるじゃん。実用性無いよ。」とかさんざんだったが、要するにウケねらいの商品だから、話題になったことで目的は達成されたともいえる。

 越さんが編集したDVDで、この夏の科教協神奈川大会でのYPCナイターを復習する。次から次へと繰り出す実験でYPCのパワーを全国に示した。話は尽きることなく夜は更けていった。


ここからが8月27日の例会本体です。今回は授業研究のかわりに、夏休みの取り組みを各自レポートしてもらいました。

ICPEワークショップにおける発表 水上さんの発表
 水上さんは、ICPEで電子ブザーと塩ビ管を利用した音波関係の実験を紹介した。音波版「二つの円形波による干渉」、クインケ管、閉管の共鳴など、いずれも簡単に作れることからだと思うが,発表終了後,多くの方から"impressive"と声をかけていただいたという。

ICPEワークショップでの発表 市江さんの発表
 この度、横浜物理サークルの仲間やクラブの生徒とともに工夫をした魚釣り浮沈子を国際会議で紹介することになり、魚釣り浮沈子ができた経緯や作り方、原理などに加え、授業への活用の際の注意点について述べた。日本語の概要が物理教育研究会 2006 No.125 p.53〜p.55 に掲載されているので、よろしければご覧いただきたい。

科教協神奈川大会レポート&ICPEワークショップでの発表 鈴木さんの発表
 鈴木さんは科教協神奈川大会で「授業での小実験(簡単な生徒実験)を増やす」というレポートをした。これまで、演示実験を増やす努力を続け、授業を演示実験を中心に組んでいくことに腐心してきた。しかし、最近は、生徒自身の活動を入れるという観点から、簡単な生徒実験を増やす努力をしている。
 なお、レポート本文は、鈴木さんのWebページで公開されている。
http://www.k4.dion.ne.jp/~ypc.suta/siryou2/kkk06rep.pdf

 ICPEでは、YPCでおなじみの真空ポンプを発表した。英語原稿とパワーポイントを用意したが、ひたすら下を向いて読むだけになってしまい、英語力のなさと必要性を痛感したと語る鈴木さん。それだけでも大きな刺激を受けた機会だった。YPCや科教協やAPEJでやっていることは、十分国際的に通用すると言うことも実感した。発表原稿は、鈴木さんのWebページで公開されている。
http://www.k4.dion.ne.jp/~ypc.suta/siryou2/ICPEpump.pdf

科教協神奈川大会のレポート 小沢さんの発表
 小沢さんは「到達目標・学習課題方式でおこなった理科総合A」を紹介し、分科会での討議の様子をレポートした。
 「電子」を学習単元として取り上げる前に「電流による発熱」を扱っても、電子または電子のようなものを用いたモデルで考えられた生徒もいたことを話題にした。静電気、電場、電位のあとに、やっと電流回路という「伝統的な教授順序」にとらわれなくてもよいのではないかという提案だ。
 なおこのレポートは、「理科教室」(2006年7〜9月号)にも掲載された。


「トンでも吸盤」紹介 高橋信夫さんの発表
 「どこでも吸盤」に続く大気圧体感ツールの新作。原理は「ゴムぴた君」と同じだが、 材質(ウェットスーツの素材と同じ)の柔らかさを生かして改良した。ひもで振り上げるようにして投げると、飛んでいった先の天井や壁にぴたりと貼りつくので「トンでも吸盤」というわけ。投げ縄のような遊び方ができるのが面白い。材質が柔軟なので、平面だけでなく、コップや缶詰めも釣り上げることができるなど、吸盤や大気圧を理解する教材としても使えそう。「トンでも吸盤」は、仮説社で 525円で販売中。
 

 トンでも吸盤を引っぱった時の真空部分のでき方と、空気の流れについても議論になった。右の写真のようにラバーが変形できないようにすると、すぐはがれてしまう。でもなぜ真ん中が持ち上がるとまわりがくっつくのだろう。先に圧力が下がり、大気圧による押しつけが起こり、空気の流入するすき間が狭くなるというプロセスか。奥が深そうなので引き続き研究して報告の予定。 

 高橋さんが持ち込んだ吸盤の数々。実験がいろいろ発展していくのは楽しい。

音反動車 石川さんの発表
 岐阜から遠路参加してくださった石川さんが、持ち込んで披露してくれたのは、音反動車の実験。音反動車は、ドボラックが考案したと言われ、ヘルムホルツ共鳴器4つを、十字の枠の端に固定し、自由に回転できるようにしたものである。石川さんのは2個の小型PETボトルを互い違いに組み合わせた装置だ。400Hz の音を下のスピーカーから流すと、これにボトルが共鳴し、回転し始める。煙草を近づけてみるとボトルの口から流れ出る気流が観測される。その反動で回転するように見える。
 

 そこで、石川さんは、スピーカーを2個互い違いに組み合わせた、写真のような大がかりな装置を作り、二つのスピーカーを同位相で鳴らしてみた。すると、上の音反動車と同様にスピーカーボックスが回転を始めるのである。ただし、口のすぼまった左の写真のようなフードをかぶせないとうまく回らないという。

波の運動量 石川さんの発表
 音反動車の実験に関連して、石川さんは音波のような古典的な波にも伝播方向に向かう「運動量」があるという講義をしてくれた。パルス波が壁に当たって跳ね返ると、壁は押されるように力を受ける。このことは、右の写真のように糸を通したフィルムケースが糸の振動のよって移動するという実験でも示すことができる。壁が力積を受けるのは波が運動量を持つからと考えるのが自然だ。その量を計算してみると、面白いことに、運動量=エネルギー/速さ、という関係が得られる。これはよく知られている光子の運動量とエネルギーの関係と同じ形だ。同様の議論は朝永振一郎の「量子力学I」(みすず書房)にも載っているそうだ。古典論と量子論の接点として非常に興味深い。
 

ミニ・エクスプロラトリアムから 竹内さんの発表
 自作の実験器具や、自腹で買い集めたサイエンスグッズを、ワゴン車に満載して、精力的に「ミニ・エクスプロラトリアム」を出前している竹内さんが、展示用コレクションのごく一部を披露してくれた。
 写真は、無電源手作りラジオ用のアンテナ。十字に組んだイレクターパイプにビニルコードを張り渡したもの、ビニル傘に導線を張りめぐらせたものなど、デザイン性も高く評価できる作品だ。
 

 ラジオのチューニングに使うバリコンは、半割にしたCDを二枚重ねて作る。CDにはもともとピット面にアルミメッキが施されているから、これを片側の極板として使うことができる。重なった部分の面積に比例した容量が得られるわけだ。CDケースを使えば、簡単に回転軸も得られ、体裁良く作ることができる。

 オルガニートは著名な紙カード式手回しオルゴールである。紙はケント紙程度の適当な厚紙で自作できる。ループにすればエンドレスで演奏ができる。

 百円ショップで売っている組み立て式のおもちゃ。パチンコ玉を転がすコースを自由にレイアウトできる。複数セット買って大きなコースを組み立てるのも面白い。1/rポテンシャルのじょうご型ユニットもある。

 これも百円ショップで売っている望遠鏡自作キット。プラスチックレンズと紙筒がセットになっている。工作教室などのイベントに最適の素材だ。小中学校の授業にいかが?

連結体の張力 水上さんの発表
 2物体をつないだ糸の張力Tは,糸の質量を無視できる場合には両側で等しい。「これをどのように生徒に説明するか?」と話し合うためのたたき台を提供した。

 糸の張力が両端で等しいのは、作用反作用ではない。厳密には糸を一物体と考えたときの運動方程式から決まってくるのである。これを生徒にどうわかりやすく伝えるかが議論された。

ワインホルダー 益田さんの発表と即売
 昨晩、事前披露があったワインホルダーが再登場。即売会が行われた。ワインを持っているとき、持っていないときで重心の位置が右足⇔左足と移動するようすを写真のように実験で確かめた。入手は「プロの道具屋さん」へ。ワインホルダーは全4種類あるが、写真の「立っているマドロス」が安定が良く教材に向いている。お値段は1,071円、10,000円以上で送料無料。
 

テレビジョンストラップ 平松さんの発表(加藤さんによる代理発表)
 テレビモニタ型のテレビ石の携帯ストラップを、通りすがりの中華街のお店で発見。ダビデの星型の「テレビストーンストラップ」もあったという。ジャンケン大会の結果、あっという間に売り切れた。

トランジスタ回路設計 市江さんの発表
 市江さんは2006年8月23日〜24日に東京理科大学で行われた「理数教員のためのリフレッシュセミナー」の報告をしてくれた。以下、市江さん自身のレポート。
 いくつかの実習のうち、私にとっては最も有意義だったのは、暁星高校の宇田川茂雄氏による最も単純な手作りアンプを用いたトランジスタ回路の実習であった。バイアス抵抗の値を変え、実際の音を聞きながらその役割を確認し、丁寧な図解と詳しい計算で理解を深めた。抵抗が大きすぎると、音声出力の下側がクリップし、小さすぎると上側がクリップして音がひずんでしまう。基盤端子の先にはバネが固定されており、抵抗を容易に交換できるよう工夫がされていた。また、コンデンサーの役割や固定バイアス回路と電流帰還バイアス回路の違いについても明瞭な解説がなされた。つづいてバネ端子を用いた半田付けが一切不要の超簡単ラジオも製作した。バネ端子はいろいろ応用できそうだ。ラジオのアンテナコードは、建物の屋根や壁から2メートルほど離すのがコツ。悪条件でも30〜40mコードを張ればまず大丈夫とのこと。この実習は普段、理科大の物理学科の学部生対象に行われているそうだ。
 


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