例会速報 2007/01/20 県立厚木高校


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授業研究:交流の演示 水上さんの発表
 交流の単元は、時間的にせっぱ詰まったりして、つい実験を省略しがちだが、教科書や問題集に登場する現象は全て理論通りに演示できるので、交流こそ実験を見せることが効果的である。交流の公式は三角関数の微分と積分や合成ができれば高校生にも導くことができる。 その公式通りに現象が起きることを示せば、数学と物理の関係が直感できて少なからず感動するにちがいない。水上さんは演示中心で授業を進める。

 演示実験は黒板貼り付け式で,板書した回路図の上に素子やテスターを貼り付けて実験する。交流の電源としてはコンセント+スライダックの他に発振器ソフト+オーディオアンプを利用している。(周波数可変で,豆電球を点灯できるため,ωL,1/ωC,インピーダンスZ,T=2π√LCの演示が可能。同時にスピーカーから音を出して周波数変化を実感しやすくしている。)実験データのグラフははその場でエクセルを使ってリアルタイムで提示している。
 

写真の説明

写真上左:並列に接続したコイルとコンデンサーの各々には電流が流れるが両者の位相差がπなので合成電流は0になる。一番右の電球が光っていないところに注目。

写真上右:P=IVの演示(100W電球に100Vを加えると約1Aの電流が流れる)

写真下:電流と電圧の位相差を示すオシロスコープ画面はビデオカメラ+29インチテレビで拡大して見せている。サインカーブがきれいに90°位相がずれた状態で表示されている。教科書の図の通りだ。

ハニービー 山本の発表
 株式会社シーシーピーから発売されている、超小型の電動リモコンへり、HoneyBee。店頭価格は\3480(税込)だった。機体長18cm、機体重量はわずか10gだ。落下してもこわれない。コントローラーは赤外線発振器で、充電器を兼ねる。本体にはリチウムイオンポリマー電池が内蔵され、30分間の充電で5分間の飛行が可能だ。動力はエアロソアラなどと同じく超小型のネオジムモーター2個で、それぞれローターとテイルプロペラを駆動する。スロットルを操作してローターの回転数を徐々に上げると気体が浮上し、ホバリングする。旋回レバーを操作して機体の回転を止めると、室内を漂うように飛行する。制御距離は室内で5mまで。
 

斜面上の鋼球2つ 右近さんの発表
 緩い斜面上に二つの鋼球を接しておき、手を離せば、鋼球は仲良く並んで斜面を下る。さて、この斜面の下に右の写真のようにフェライト磁石を置いたらどんな動きをするだろう。引き寄せられる?はじき返される?実は意外にもこんなふうになる。
 雑誌”The Physics Teacher -- January 2007”(Volume 45, Issue 1)に 掲載されていたWojciech Dindorfの論文 ”Danuta's Demo - A Magnetic Brake ”の紹介とのこと。斜面が急すぎるとうまくいかない。また、何回か同じ鋼球を使って実験を繰り返すと、鋼球が磁化してしまい、実験に適した緩斜面では2球の摩擦により転がりにくくなってしまう。常に新しい鋼球で実験するとよい。
 

乾電池クイズ 小河原さんの発表
 乾電池に関するクイズが、小河原さんから出題された。豆電球を、写真左のように接続した場合、点灯するだろうか。
(1)豆球の片側をプラス極の突起の脇、反対側をマイナス極に接続する。
(2)豆球の片側をプラス極、反対側を胴体(プラスとマイナスの間)に接続する。
(3)豆球の片側を電池の胴体、反対側をマイナス極に接続する。
 (1)は当然ながら点灯するわけだが、生徒は結構間違うらしい。このとき小河原さんは、落下加速度測定の際、床に衝突して壊れた米国製アルカリ乾電池(写真右)を見せている。
 (2)は当然、点灯しないが、包装を取ったらどうか。やってみると、これも点灯しなかった。ということは…、(3)は点灯する。アルカリ電池の場合、包装をはがすと胴体はプラス極ということだ。(マンガン電池では違うのではないかという意見があり、後日試したところ、胴体はマイナス極だった。ちなみに、オキシライドはアルカリと同じとのこと。)
 

超かんたん浮沈子 小河原さんの発表
 何の変哲もない、ケチャップの小袋。これをペットボトルの水に入れるだけで、なんと浮沈子になってしまう。ある程度の重さがあって、それを若干上回る浮力が生じる量だけ気体が入っているという、まさに浮沈子として使うために製造されたのではないかと思われるほど、絶妙なバランスだ。米国では、マクドナルドやバーガーキング、ホットドッグのチェーン店など、どこでも山積みになって置いてあるそうだ。参加者にはお土産として、この米国製ケチャップ小袋が配られた。日本に戻ってきてから、小河原さんはこれの代わりになるものを探して、いろいろなもので試しているが、いまだに見つからないとのこと。どなたか、見つけたら小河原さんに教えてあげよう。
 

新型ペッ琴 土肥さんの発表
 たくさんの実験道具を携えて、広島からはるばる土肥さんが来てくれた。理研のイベントに出演するため上京したそうだ。

 まず取り出したのはペッ琴。ペットボトルの内圧を調整して音程を変える打楽器。以前は口で吹いていたが、ご覧のように500mlのボトルと結合することで握力で操作できるようになった。演奏には多少の熟練が必要。

テンションギター 土肥さんの発表
 アイヌの楽器ムックリのように糸の張力を替えることで演奏する一弦琴。左はプラコップにテグスを張った簡易版。右はてこにより張力を操作する。
 

試験管で気柱共鳴 土肥さんの発表
 試験管を吹いてならす。次に試験管にライターのブタンガスを満たしてならす。ガスの分子量により音速が変わるので、同じ管でも音程が変わる。
 

エレキギターの発展型あれこれ 土肥さんの発表
 エレキギターは、コイルと永久磁石が一体化したピックアップのそばでスチール弦を振動させることで、電磁誘導により電気信号を得る。それをエフェクターやアンプに通してあの独特の音を電気的に作り出す。この原理を端的に示したのがこのネックレスギター。ギターのネックの部分がなく両手で引っ張るようにして演奏するから「ネックレス」というわけ。ピックアップ部分は右の写真のように手巻きコイルにネオジム磁石をはりつけただけのもの。
 

 こちらは胴体のない2弦のエレキギター。ちゃんとフレットがついていて、簡単な曲の演奏ができる。

 振動する部分は弦である必要はなく、鉄なら何でもよいという発想の転換をすると、左のエレキオルゴールにたどり着く。オルゴールのドラムをはずし、楊枝のようなものでリードをつま弾く。右は針金をスライドさせながら演奏するオルゴールのモノコード版。

エレキ釘琴 土肥さんの発表
 鉄釘を生徒机の天板の廃品に打ち付けた「釘琴」。綿棒の軸のようなものをピックにして弾いて演奏する。順に弾くと曲になるようにあらかじめ長さを調節して音程を決めながら一列に打つ。ピックに接して右の写真のようにピックアップコイルをとりつけて弾くと、ギターアンプからはエレキサウンドが聞こえてくる。なるほど釘も鉄だった。
 

土肥さんの空気砲 土肥さんの発表
 次々に繰り出す土肥さんの作品。これは新型の空気砲。バケツをくりぬいて作ってあるがグリップと照準をつけて、射的ができるようにした。かなり正確に的がねらえる。壁にはったポリエチレンシートの的をねらったり机の上の小箱を打ち倒したりして遊ぶ。

CDころがし器 土肥さんの発表
 スターターつきコマをCDにとりつけ、スターターで回転させて、床の上を転がして遊ぶ。一輪車のようにCDが走っていく。左右のバランスを取るように製作するのがコツ。
 

厚木市子ども科学館 竹内さんの発表
 本日の会場は厚木高校である。最寄り駅の本厚木の近く、厚木シティプラザ7Fに、厚木市子ども科学館がある。竹内さんは来がけに取材してきてビデオで紹介してくれた。ビルの1フロアだけのこぢんまりした科学館だが、繁華街のまっただ中にあり、気軽に立ち寄れるロケーションだ。予算が少ないと見えて手作りの展示物が多いが、工作は得意らしくなかなかの出来。この手作り感がかえって好感を呼んでいる。右は空気砲のコーナー。
 

無重力ビデオ 山本の発表
 1973年5月14日に打ち上げられたアメリカの宇宙ステーション「スカイラブ」では、約1年の運用期間の間にさまざまな宇宙実験が行われた。もともとアポロ計画に使用されるはずだった巨大な月ロケット「サターンV型」の第3段を改造した軌道作業モジュールは、宇宙ステーションとしては「ムダとも思えるぐらい」広く、写真のように中を走り回ることさえできた。この環境は現在のISSはもとより、今後も望むことができない。したがって、ここで行われた実験のいくつかは、もう二度とできない貴重なものである。特に力学の教材として有効だ。
 
 パイオニア社のレーザーディスク、スペースディスクVol.6「エンカウンター ハレー彗星・天王星」(SS098-6017)の裏面に収録されているが、残念なことに今は絶版である。

バシリスク 山本の発表
 NHKの「ダーウィンが来た・第36回」1月7日放送で「水の上を走る謎のバシリスク」が紹介された。中米コスタリカに棲息するトカゲの一種で、後足2本で立ったまま、水面を目にもとまらぬ速さで沈まずに走る。
 例会ではハイビジョン・ウルトラハイスピードカメラの映像を詳しく見ながら、沈まずに走れる理由の番組内での解説の妥当性を討論した。
 解説では3種類の力に言及している。第一印象ではややあやしいと感じたが、一般視聴者にわかりやすいように言葉の表現を改めたと好意的に解釈すれば、力学的解釈はあながち誤りではないとの結論になった。3つの力のうちどれが量的に主要なはたらきをしているかについてはなお議論が残る。

導線の表面帯電と電流 右近さんの発表
 導線を電流が流れるのは、導線内に電場ができるから。それでは、その電場は何によって生じているのだろうか。それは導線の表面に帯電した電荷によるものだ。実はこれは古くから知られていた事なのだが、ほとんどの電磁気学の教科書では扱われていない。しかし10年ほど前からR.Chabay,B.Sherwoodらにより、回路導線に帯電する表面電荷を定性的に扱うことで、初等電磁気学における電気回路の理解がいっそう深まることが主張されている。例会では彼らの教科書

Matter & Interactions Vol.II Electric and Magnetic Interactions

の一部を紹介すると共に、関連する話題が提供された。詳しくは次号YPCニュースを。


 

二次会 本厚木駅前「魚民」にて
 17名が集まって、カンパーイ!はるばる広島から参加の土肥さんを囲んで皆で盛り上がる。土肥さんは「毎月こうして物理だけを話題に酒が飲めるなんてすばらしい。」と言ってくださったが、確かに特異な集団かもしれない。例会参加者の半数以上がこの場に集まっているという動員率もYPCならではだろう。

三次会 本厚木駅前「はなの舞」にて
 土肥さんは今晩は本厚木駅前に宿をとっているので何時まででもOKということで、時間の許す人たちはさらに残って3次会へ。有朋自遠方來不亦樂乎?
 


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