例会速報 2007/04/15 県立港北高校


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授業研究:授業開き それぞれの発表
 新学期がスタートして、最初の授業。それぞれの思いを込めて、「授業開き」が展開される。教員ならば誰もが「意識する」授業だ。今回は授業開きのネタを紹介し合った。以下、各発表者からいただいた簡単なコメントで総括する。

車田さん:全国でも「数学基礎」をやっている学校は非常に少ない。その「数学基礎」の最初の授業プリント。1.数の位について(一の位から上は無量大数、下は清浄と位の読みから導入し、「パワーズ・オブ・テン」のDVDを見せる。) 2.名前と漢数字(名前という身近なところに潜む数字を題材に、漢数字だけの名字の例をあげ、日本独自の数にまつわる遊び心を紹介する。) こうして、今までの数学と違って面白そうだな・・・と生徒の関心を惹く。
益田さん:以前、YPC例会でも報告されたが、「一円玉の重さは?」「水の密度は?」等の、身の回りの物理量を答える「プリテスト」を実施。その後、「Powers of Ten」を上映していた。プリテストでは、生徒と教員の意識のギャップを見ることができる。
 

高橋さん:本校では高校1年の初めに、放射線・原子力について学習する。授業開きではそれらに関する意識調査を行った。単元が終了した時点で返却して、自分がどのくらい科学的視点を獲得できたかを確認するのが目的である。
水野さん:はじめにシラバスの説明をし、最初に扱う分野「光」では、ものを見るとき「光源」からの光と「反射光」とがあることを「ライトセーバー」を使って、そのON、OFFで光源と反射光の説明をした。
 

 水野さんが「反射」の小道具として使っている置き時計。ハーフミラーを通して、LEDと時計の針の無限鏡像が見える。吸い込まれそうな錯覚にとらわれる。

宮崎さん:みなさんの話の中で、シラバスの話がでたので本校のシラバスをご紹介した。各学年1冊にまとめて、4月に一人一人に渡す。
喜多さん:手にしているのは、マクドナルドのプレートシート。『マクドナルド劇場(その4)おいしさにも科学がいるんだ」の巻。文面の何箇所かをブランクにして、そこに入る言葉を考えさせる。「科学」のスタンスを身近な例で確認させるのが目的。
 

鈴木さん:持ってきたのは、授業最初のプリント。中身の話ではなく、授業のやり方を紹介するつもりで持参した。小テストと追試のシステムがメイン。実際の授業ではこの説明の後もちろん(!)スプーン曲げを行う。
平野さん:力学の授業は,「運動」とは何なのかを,各自ノートに書かせることからはじめている。「物が動くときの力」とか「エネルギー」と書く生徒が多い。「物が動くこと」と書く生徒には,時間の経過のイメージがないことが多い。
 

鈴木さん:0.0000000000000000000000000009という値(電子の質量)を黒板に書くことで始めた。物理をこの後学ばない生徒を意識して組み立てを考え,原子核から宇宙へと話を進める。

放電球 港北高校物理室の展示物
 港北高校物理室には巨大な放電球があり、例会のたびに披露される。電源を入れてしばらくすると稲妻のようなプラズマ放電がコントラストを増してくる。なぜ時間がかかるのかは不明。ガラスに手を触れると、手に吸い寄せられるように稲妻が経路を変える。ガラスをはさんでコンデンサーを形成し、高周波交流回路ができるのだろうか。別の人が向かい側に手を触れると、稲妻がよりはっきりとする。この場合どういう回路になっているのだろう。放電球の真相が知りたいが、情報は意外に乏しい。
 

「おしっこ人形」の発掘 鈴木健夫さんの発表
 かつてYPCから発信され、中村理科でも扱われた「おしっこ人形」。先日「夕焼けストラップ」(下記)を探しに横浜中華街をあさっているとき、偶然見つけた。信じられないような破格。以前の例会(98年11月)で現・島根の花岡さんが台湾から直輸入したものを大量に即売会をしたが、そのときの価格の5分の1である。関帝廟近くの土産物屋で7個セットで売られていた。個売りもするようだ。また中華街に行く機会があったら、大量に買っておきたい。
 

「夕焼けストラップ」の続報 鈴木健夫さんの発表
 前回に引き続き、その後の展開を報告。100円ショップ「セリア」で風水用?の石が売られていて、その中の乳白色の石が夕焼けのモデルに使えることが判明。ただし、前回紹介した香港土産のヒョウタン型のものより、乳白色が薄く、効果はヒョウタンの方が高い。そこで、このヒョウタンが手に入らないか中華街を物色。結局、お店ではなく屋台のような露店で小さいものが1個300円で売られていた。授業で生徒に持たせるには少し値が張る。セリアのもので代用するのがよいか。右はレーザー光を入射させたところ。はっきりとチンダル現象が見られる。
 

はじめての実験 小河原さんの発表
 今回の授業研究では「授業開き」について盛りだくさんの報告があった。関連して、小河原さんは1年の「最初に行う実験」を紹介してくれた。
 それは視覚についての2つの実験である。1つは、おなじみ盲点の実験であるが、ほとんどの生徒は実際に体験したことがないため、教室が騒然となるらしい。2つ目は、色の認識が視界中央近辺のみで可能という実験である。通常、視界は180度以上あるが、真横あたりでは2つの点があることは判別できても、色の違いはわからない。つまり、カラー映像を眺めているのは視界中央だけで、脇のほうは白黒で見ているわけである。
 このように、教えてもらわなければ一生気づかない、知らないことはたくさんあるはずだから、貪欲に学びましょうと語りかけるのが小河原さんの「実験開き」だ。それにしても、脳が周囲の画像から、欠落した盲点部分の画像を外挿補完して作り出すという実験はとても興味深い。なお、板書の書名は、正しくは「進化しすぎた脳」とのこと。
 

回転磁界 石井さんの発表
 千葉の石井さんは、手作りコイルで回転磁界を簡単に作る方法を披露してくれた。太い導線で、直径15cm、巻数20〜30回程度のコイルを作る。屋内配線用ケーブルを利用するとよいそうだ。これを横に立てて、スライダックで数ボルトの交流を流して使う。
 ローターは鉛直に立てた真ちゅう棒に、アルミの鉛筆キャップを被せたもの。これをコイルの中に立てて、鉄棒(ボルトでよい)の先端をローターの左側に添えると、ローターは時計回りに回る(写真右)。反対側だと反時計回りだ。回転数は変えられる。
 

 写真右はプラスチックの小球に、スチールウールを詰めてローターにしたのも。コイルの中の時計皿の上で回す。鉄棒を取り去っても、回転は続いていた。
 

 写真左は0.6mmφの真ちゅう棒に刺したスチールウールの小球をローターにしたもの。フィルムケースに穴をあけて軸受けにし、太めのエナメル線を10回ほど巻いてステイターとしている。交流の2〜3Vで回る小形交流モーターだ。
 写真右は小型の磁石を貼りつけたローター。交流の周波数に同調してコマのように回転する。蛍光灯の点滅をストロボスコープ代わりにして同期を確認した。 

確実に回るクリップモーター 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんは「理科教室」の依頼でクリップモーターの製作記事を書いた(07年4月号の口絵)。以前、YPC例会でも埼玉の浅井さんが紙を台にするモーターの工夫を発表したが、台を工夫してもっと簡単にした。製作工程も激減し、輪ゴムで電池を押さえると、単3電池の電池ボックスとしてちょうどよい。この記事を見て教師相手の工作教室でやった方の話では、好評だったとのこと。詳しくは「理科教室」4月号か、YPCニュースNo.229をご覧いただきたい。
 

ボクシングファイター 越さんの発表
 タミヤのロボクララフトシリーズのボクシングファイター対戦セットは、2チャンネルの有線リモコンにより、左右の手足を操作するボクシングロボット2体がセットになっている。パンチは、腕を支えるリングロッドの切り替えにより、ストレートとアッパーが選べる。2人で何か決め事をするときに、ボクシングファイターを用いると盛り上がる。
 以前、千葉工業大学未来ロボット技術研究センターの古田貴之さんが、高校生向けの講座の中で、センサーとコンピュータを内蔵し自立型ロボットに改造した「最強のボクシングファイター」を見せてくれたことがあり、そのときは生徒たちも大喜びだった。

フリーエアーホッケー 越さんの発表
 パック内にモーターと電池が内蔵されたエアーホッケー。アタッカー付。机や床など、平面であればどこでもエアーホッケーが楽しめる。パックが比較的重く、側面に緩衝用硬質スポンジゴムのような素材が取り付けてあるため、強く打ち返しても速くなり過ぎず、壊れにくい。等速直線運動の演示のほか、2セットあれば、2次元の衝突の実験などにも使える。東急ハンズなどで購入できる。税込み1050円。
 長い廊下で滑らせたところ、30mほどは等速直線運動する。また、ホバークラフトV2(06年7月例会で発表)と運動の様子を比べると、等速運動と、等加速度運動の違いも分かりやすい。
 

百人おどしの演出法 越さんの発表
 TV朝日系列の「堂本剛の正直しんどい」で、米村傳次郎さんがやっていた「100人おどしの裏切り方」の追実験。
 電気コップに電気を蓄え、大勢で手をつなぎ、閉回路を作ると一斉に感電する「100人おどし」の実験で、アルミホイルを細長く丸めた物を途中にはさみ、その両端を二人で持つ。その間の部分を別の一人が、両手で間隔を空けて握る。そうすると、両手でアルミホイルを握っている人だけ感電しない。
 これは、電線にとまっている鳥が感電しない理由と同じで、人の体とアルミホイルが並列につながれていて、アルミホイルの方が圧倒的に電気抵抗が小さいので、人の体にはほとんど電気が流れないためである。

「磁束漏れ」に関する質問 黒瀬さんの問題提起
 前回、前々回と話題になった、センターテストの二重コイルの問題に関連して、鉄の棒の磁束漏れについての誤解は、ほとんどのテキストの図で磁力線は棒端からのみ出ているように描かれていることにも原因があるのでは?、ということで議論された。

波動のパワーポイント教材 水上さんの発表
 もうすっかりおなじみになった、水上さんのパワーポイント教材。今回は,「波の速さ υ=λ/Tの公式を導く」「媒質上の各点の運動方向を示す」「y=Asin(2π/T)χのグラフの描き方説明」の3作品の紹介があった。いずれも波動の入り口で利用しているとのこと。画面は波の基本式を導く画面。もちろんコマ送りでアニメーション効果を使っている。
 

二次会 大倉山「一牛」にて
 12名が集まって、カンパーイ!いつもの「養老の瀧」が満員で、新規開拓したこの店で、焼肉をつつきながら科学を語る。間近に迫った「神奈川の理科教育を考える集い」(4/22神奈川学園)の打合せも行われた。


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