例会速報 2007/11/11 カリタス女子中学・高等学校


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カリタス女子中高の理科展示コーナー 
 今回の会場校のカリタスでは、各教科が教科のコーナーを持っている。新装なったすばらしい校舎の通路に展示スペースが設けられている。理科のコーナーでは、エクスプロラトリアム風の体験型展示が多数用意されていた。女子生徒に生物や化学に負けず、物理にも興味を持ってもらうために、現在は物理系の展示を充実させているところだという。
 

授業研究:ばねの特徴を知ろう 水野さんの発表
 オープンキャンパス(10月27日)で、主に来年受験予定の小学6年生を相手に行った「ばねの特徴を知ろう」という、およそ20分の授業の報告があった。
 まず、ばねを直列に2本つないだとき、2本のばね全体の伸びを求める問題の解説をどうするかが話題となった。「おもりが上のばねも引いている」とか、「おもりの重さが上のばねにもかかっている」というような表現は正しくない。ばねが伸びるのは、その両端が引かれているときだけで、片方だけ引いてもばねは伸びない、という根本的な指摘もあった。
 

 さらに、このとき実験に使われたばねの1つが、おもりをつり下げないとき、巻き線間に隙間がないものだった。このようなばねは、フリーの状態でいわゆる「自然長」まで縮んでおらず、ある閾値を越える力が働くまでは見かけ上伸びない。グラフは右下写真のようになり、単純に「伸びが引く力に比例する」とはいえないので、実験上注意が必要だ。
 そもそもどういう意図で中学入試にばねを出題するのか、特に2本のばねを直列につなぐ問題の出題意図はどこにあるのかという指摘もあり、大いに考えさせられた。 

電気豆腐 黒瀬さんの発表
 「とうふすていしょん」なる製品がある。豆乳を使って家庭でも手軽に豆腐が作れるという商品だが、原理的には「電気パン」と同じようだ。それなら、電気パンのキットでも豆腐が作れるはず、ということで黒瀬さんはチャレンジした。
 その結果、結論から言うと、うまく作るのはなかなか難しいとのこと。豆腐を作るには75℃くらいに保つ必要があるが、放っておくとそのまま沸騰してしまう。きっと製品にはサーモスタットがついているのだろう。しかし、参加者からは、「加熱するなら普通に電熱線を使えばいいのに。」という声も・・・。
 

磁力線は砂鉄で 鈴木さんの発表
 砂鉄(磁鉄鉱)で磁力線を描く実験は、YPCのメンバーにとっては当たり前かもしれないが、生徒はほとんど体験がない。実は鈴木さん自身やったことがなかったので、何事もやってみることに大きな価値があると思ってやってみた。
 生徒に身近に感じさせるため、砂は自校のグランドや砂場のものにする。まず、大型のフェライト磁石をペットボトルの底やビニール袋内に入れ、それに吸い付く砂を選り分ける。この時点では、まだ砂鉄以外の砂もかなり混ざっている。それを紙コップに入れ、写真のようにコップを斜めにしつつ、外からの磁石をあてて選鉱する。これを2,3回おこなうと、かなり砂鉄の純度が高まる。
 

 プラスチック板(CDケースなどを使うと大きさも手頃)の裏側に磁石を貼り付けて磁石を下にして置き、白紙を載せる。この上からガーゼを通して砂鉄をパラパラと振り撒き、紙をトントンとたたくと、見事な磁力線が浮かび上がる。これを生徒各自にやらせると、「おおっ」という声が上がり、携帯で写メールを撮り出す生徒も現れる。鉄粉だと、目に入るのが不安だが、砂鉄なら元々グランドの砂なので、それほど心配しなくてもよい。
 例会では、砂が乾燥していないと砂鉄がきれいに取れないので、砂をあらかじめフライパンなどであぶるとよい、というアドバイスがあった

BSとスペアナ 竹内さんの発表
 BSのアンテナを取り付ける際、見えない放送衛星を探し出すには、客観的な電波強度の指標があると便利だ。一部のBSチューナーでは電波強度を数字とバーグラフで画面表示してくれる。最大値も記録されるので、行きすぎて引き返すときに便利。
 スペアナで見ると(下右)チャンネル毎のバンドがはっきりとわかる。それぞれの山がチャンネルに対応した周波数帯を示していて、きれいに区分けされているのがわかる。

 

SPPでの実験いろいろ 竹内さんの発表
 竹内さんがカリタスで行ったSPPの実験グッズの紹介。写真左は「物理のキホン!」(秀和システム)に紹介されている「傘ラジオ」 。AMを受信し、下記のデジタルオシロスコープで波形を観察した。

 写真下はエレキットシリーズの「FMはこらじ」(株)イーケイジャパン(\1980)。カリタスで実施したSPPで生徒に作らせた。ハンダゴテを使わないので、女の子でも簡単に作ることができた。

 

 写真下左は実験に使用したデジタルオシロ(IWATSUのDS-5102 25MHz)。秋葉原では税込みで10万円を切る。多機能で便利なデジタルオシロスコープだ。参加者からは「間にデジタル処理が入っていると、リアリティがない」という声も聞かれたが、小型化は画期的である。
 下右はファンクションジェネレーター(インステックのSFG-2104)。正確な波形を正確な周波数で出力する。実験ではこれで周波数の違う電波を作り、同調を扱った。
 

振動カー・ブラシロボ 越さんの発表
 越さんは、2005年11月例会でタミヤのプルプルテントウを紹介した。今回は、100円ショップで揃えた材料で作った振動カーなどを紹介してくれた。写真はペットボトルで作ったゾウさん。ミニ扇風機のプロペラをはずし、ケシゴムをさして震動源としている。越さんが出演したNHKの「科学大好き土よう塾」にも登場したものだ。
 

 ブラシやタワシなどと偏心モーターを組み合わせた振動カー(ブラシロボ)は、以前からあるが、動く仕組みについての詳しい説明はあまり見かけない。越さんはその原理についても考察した。基本は上下動と弾力のある毛や足などの傾きと考えられる。
 まず、沈み込むときは足が床に強く押し付けられるので、最大摩擦力が大きくなり、足は滑らず、胴体が前のめりになる。次に、最下点を過ぎると胴体が浮き上がる間、足が床に弱く押し付けられ、最大摩擦力が小さくなり、足が前方に滑る。または、足が宙に浮いて、前方に戻る(足の弾力による)。この間、慣性により胴体は水平方向にはあまり動かない。以上のような繰り返しで、全体が進んでいく。
 また、足先の形状で、片方の向きに摩擦が小さい場合には、振動の際の水平方向の摩擦の少ない向きの変位を拾い、その向きにだけ進むタイプのものもある。

 写真上左は電動歯ブラシ、上右はタワシとミニ扇風機を組み合わせたもの。
 その他、トトロやネコバスなど、ゼンマイタイプの振動ぬいぐるみコレクションの紹介もあった。運動の原理は基本的には振動カー・ブラシロボと同じだと考えられるが、キャラクター化すると非常にユーモラスに見える。

サウンドマグネット 鈴木さんの発表
 鈴木さんは例会参加直前に、JR南武線中野島駅前の100円ショップ「キャンドゥ」に立ち寄った。そこでたまたま目に入ったのがこの商品。「投げると音のする磁石」という宣伝文句で売られている。以前、加藤俊さんが海外で入手し、例会で紹介してくれたものと同じだ。科教協大会時のK説社のブースで1個○百円で2個購入した球形の磁石と似たものだ。
 下の写真のように強力に磁化された黒光りするフェライトの楕円体である。2個を少し離した状態から上に投げると、空中で衝突しながら落ちてくる。その際の衝突音が面白いので商品名になっている。

 サウンドマグネットの音(AVIファイル:397KB)

 この音がどのような機構で出ているのかが議論になった。いろいろ試してみると、はね返ってまた磁力で衝突し、またはね返る、ということのくり返しのようである。放り投げるときだけでなく、平らな面上で距離を置いてからゆっくりと近づくように転がしても、同様の現象が起こる。
 キャンドゥで見かけたら買い占めるべきだが、この中野島の店以外では見かけないという。1個しか買わなかったことを後悔した。

 

日時計と均時差 田代さんの発表
 田代さんは中学校で理科を教えている。選択の授業で日時計をとりあげ、近似差の解説まで試みた。下左は田代さんオリジナルの教具。地球上のある地点で太陽や星からの光がどのように届くか、それが地球の自転や年周運動に伴ってどのように変化して見えるかを示すための道具だ。十字の竹ひごは観測地点の東西南北を、左手で引いている糸は星や太陽の光を表す。右手で地軸を操作して自転などを演示する。右の写真は生徒に作らせた日時計の型紙。均時差補正のチャートがついている。
 

 近似差は地球軌道が楕円であることと、黄道面が赤道面から傾いていることによって起こる。前者は1年を周期とした変化、後者はおおむね半年を周期とする変化をもたらし、その合成が上の写真にある近似差のグラフとなる。写真下は傾いた黄道面上の真太陽を赤道面上に射影したとき、その位置が平均太陽とずれることを示す教具だ。緻密な解説プリントと共に、よく工夫された教材で、高校生にも難解なテーマを中学生に理解させていることに感嘆の声が上がった。 

波動のテスト 黒瀬さんの発表
 黒瀬さんからは10月末に行われた定期試験の問題とその結果について紹介があった。ちょうど試験範囲は前回の例会で行われた授業報告の内容である。
 リップルタンクを使った波の屈折の演示実験の様子を図に書かせる問題を出題したところ、思いの外できていなかったとのこと。「試験範囲でないと思っていた生徒もいたようだが、時間を割き説明も丁寧にしたのだから、もっとできていて欲しかった。授業中に生徒の頭にあまり入っていなかったことがわかる結果だった。」というのが出題者の弁。
 その他、参加者からは、「試験問題の難易度、量とも平均的である。」「この試験で平均が75点を超えるというのは、よく出来る生徒たちだ。」などというコメントが出た。

二次会 登戸駅前「笑笑」にて
 6人が参加してカンパーイ。今回はなぜか参加者が少なかった。二次会もこぢんまりと常連さんだけの会になった。でも、山梨からわざわざこの二次会だけに参加しにきた人もいる(^^)。
 その加藤さんが持ち込んだバンダイの虫型ロボット・HEX BUGなどを肴に大いに楽しむ。バイトの店員にもウケていた。

 


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