例会速報 2007/12/15 中村理科工業・交流広場
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授業研究:「運動の法則」の授業 右近さんの発表
物理Iにおける「運動の法則」の授業,16時間分について報告があった。以下、右近さんのレポートによる。
全体の流れは以下の通り。
1.慣性の法則(1h)
2.運動の法則(5h)
3.運動の法則の理解(5h)
(発問―予想―グループ討論―実験結果の理解・・・等の流れを重視した展開)
A.SF映画でクリティカル・シンキング(1h)
*毛利衛さんの宇宙実験ビデオの紹介,宇宙で体重を量る方法について予想,討論
*映画「ミッション・トゥー・マーズ」の4人の宇宙飛行士による火星軌道宇宙遊泳シーンのダメ出し
B.ピコハンプロジェクト(2h)
*ピコピコハンマーによる打撃でグラフはどうなる?
C.斜面を遡る台車のグラフを予想する。(2h)
*予想による話し合いとパスコによるグラフ,グラフの演示
*ピコピコハンマーと斜面を遡る台車の関係。(ピコハン連打機の登場)
*扇風機力学台車と投げ上げ運動
4.運動の法則の適用(5h)
1.2.4.は伝統的な授業展開なので,ここでは割愛する。3.の(A)は,毛利さんの宇宙実験ビデオを鑑賞させたあと,宇宙で体重を量るにはどうしたらよいか,と投げかける。一定の速さで壁にぶつかり,そのとき壁から受ける力をばねはかりで測ればよい,とかお互い等しい速さでぶつかればよい,とかいろいろ楽しいアイデアが出る。その後で映画「ミッション・トゥー・マーズ」の火星軌道遊泳シーンのおかしな点のダメだしをやる。
今回発表の主眼は(B)のピコハンプロジェクト。ピコピコハンマーを力学台車に用いる実験は,力と運動の関係を考えさせる,知る人ぞ知る有名な実験である。だいぶ以前に当時都立高校の小野先生,筑波附属の広井先生,そしてやはり都立高校の森先生らが開発されたもので,最近では筑波附属の小澤先生が毎年授業に取り入れられている。私は昨年度から実施している。生徒に,等速度で運動する力学台車に後ろから,あるいは前から「ピコ」と一発ピコハンでたたくとどうなるか予想させる(写真左)。その後,記録タイマーを用いて台車の速度変化を記録させ,自分達グループの予想と比較させる実験実習である。
(C)はいわゆる負の加速度運動する物体が受ける力と運動の関係を理解することを主眼としている。台車が斜面を上がって下がってくる運動が,常に斜面下向きの一定の力を受け続け,その結果常に斜面下向きの加速度を受け続けることによって生じることを,生徒はなかなか理解できない。そこで,先のピコハン実験を踏まえ,今回は「ピコハン連打機」なるものを作ってみた(写真上右、下左)。モーターでピコハンを動かし,これで力学台車を連打し続ける。一定の速度で運動していた台車が連打機により,徐々に減速しで止まり,やがて反対向きに加速していくことがよく理解できる。投げ上げ運動が,一定の重力を下向きに受け続ける結果,生じることも,これによりよく理解できる。生徒への受けは良好である。AVI動画3.8MBはここ。(右はミニ扇風機で推進する台車)
ちょっと大きいラトルバック 益田さんの発表
埼玉のよせなべで石井登志夫さんが紹介していたものの伝達講習。ダイソーの足踏みマッサージ器におもりを付け重心の位置を変えるだけで、ラトルバックになる。おもりの位置を変えることで挙動の変化を観察できるので、探求活動などにも利用できそうだ。何より、このサイズにこの価格が魅力。以前、パズルショップで購入した木製のラトルバックは3000円程した。AVI動画2.6MBはここ。
運動エネルギーと位置エネルギーを測る 徳永さんの発表
力学の実験で運動エネルギーを測るのに、本にはさんだ定規や、粘土に刺した棒を使うことがあるが、定量的には極めて精度が低い。徳永さんは運動エネルギーと位置エネルギーの測定の為にディスポーザブル注射器を用いてみた。摩擦が一様でむらがないため、非常に再現性がよい。ポイントは空気の圧縮抵抗を抑えるため穴を開ける事だ。穴あけにはハンダごてを使ったという。頭部切断でもよさそうだが壁などに押しつけて使う場合を考えると、隙間が多い方がよい。力の大きさに応じて注射器のサイズを使い分ける。
力の分解演示器 徳永さんの発表
坂道における力の分解を説明するために徳永さんが自作した模型。40cmの管2本と、その内側にゆるくはまる針金2本を中央で直角に曲げて組み合わせm斜めに1本40cm位の針金を輪ゴムで付けた。坂道の角度がかわると分力の長さがスライドして自動的に変わる。長さの変わる力の矢印は配線モールを切って作った。
中学生公開講座で行う「音の物理」 北村さんの発表
APEJのHPや物理教育ソフト開発でおなじみの「たまきち」こと北村さん。意外にもYPC例会には初参加だそうだ。その北村さんがお得意の音に関する実験の数々をまとめて披露してくれた。青山高校の中学生向け公開講座・サマーセミナーで演示しているネタの「一部」だという。高校での学習内容を50分の体験授業にまとめたもの。
北村さんが持参した音の実験道具の数々(写真左)。手にしているのはブームワッカー(ドレミパイプ)。管の長さによってたたいたときの音の高さが異なる。キャップをすると閉管となり約1オクターブ音が下がる。右はメロディーパイプ(ハミングトップ、サウンドホース)。振り回すと気柱共鳴音がするおもちゃ。
道具が持ち込めなかった実験はビデオで披露。左は「膜の固有振動」の実験。スネアドラムのそばで発振器につないだスピーカーから純音を出す。膜の固有振動数に一致すると独特のパターンが現れる。弦に比べて自由度が高いので固有振動モードが多い。太鼓の音が特定の音程に聞こえないのは振動数成分がたくさん含まれるからだ。右は北村さん愛用のハモンドオルガン。ドローバーを操作して倍音比を自由に変えられるので音の学習には最適。
クラリネットのマウスピース。両手で「管」を作って吹くとちゃんと鳴る(左)。右はアンデスの葦笛楽器、サンポーニャ(またはシーク)。パンフルートに似ている。尺八型のケーナと並ぶフォルクローレの代表的な楽器だ。
円筒の一端を斜めにカットして丈夫な皮の膜を張り、その中央に硬めのばねをしっぽのように垂らした、一見糸電話風の道具。これも楽器である。振るとゴロゴロと雷鳴のような音が鳴り響く。この大きさなのに意外と低い大きな音がするのがオドロキ。その名も「サンダーパイプ」。同じような構造で「スプリングドラム」という名の商品もある。
スターリングエンジンの原理を説明する 田代さんの発表
ビー玉スターリングエンジンの動作原理を中学生に説明するための実験。試験管の底部をバーナーで温め、手のひらで口をふさぎながら、中のビー玉を転がしてみる。ビー玉が管口に来ると高音部に移動した空気が膨張しようとして圧力が増し、ビー玉が底部に移動すると収縮する様子が手のひらの感覚でわかる。熱した試験管はしばらく熱いので火傷に注意。
ベローズ式のスポイトを使って空気の膨張収縮の様子を視覚的に示す。注射器そのものでもよいわけだが、安価に手軽に班別実験できるところがミソ。
二足歩行コリラックマ 越さんの発表
越さんは、2004年5月例会で2足歩行のCAM 10を紹介したが、今回はUFOキャッチャーでおなじみの「コリラックマ」で2足歩行するものを披露してくれた。不安定なぬいぐるみで2足歩行するものは、今まであまりなかったが、ついに人気の「リラックマ(コリラックマ)」で登場。
CAM 10のように左右に足首の部分を傾ける事による重心移動が行われているのかと思い、中身の機械部分を取り出してみたが、特に重心移動のためのメカニズムはなかった。頭でっかちのコリラックマは重心が高いので、固有振動の周期が比較的長く倒れにくい。右足に重心が載ると体が右に傾き、その間に左足を前に出し、小またでトコトコと進んでいく。本体の固有振動と足を前後させる際の重心移動の周期がほぼ一致しているので、2足歩行できるようだ。
世界初!赤外線リモコン・ブラシカー 越さんの発表
越さんは、足利さんのアイデアを元に、赤外線リモコンカー2台を用いてブラシカーを作った。左は、タカラトミーの赤外線リモコンカー「CAUL」(定価600円)の後輪に消しゴム(偏心おもり)を付けたもの2台を、100円ブラシに取り付けたもの。右は、同じくタカラトミーのQステアシリーズの後輪に、小さく切った消しゴムを取り付けたもの2台を、歯ブラシにと共にプラ容器に固定したもの。箱型の水色の物は、赤外線送信機で、写真では、たまたま、本体の上に載せてある。「ノコノコタイヤユニット」(偏軸タイヤ)付のものを用いても良いが、この場合もおもりをつけたほうが良い振動源になる。
いずれも、おもりや車体の取り付け位置など調整すれば、前進、右旋回、左旋回ができる赤外線リモコンブラシカーになる。もっとも元の車の状態で走らせた方がよっぽど走行性能が良いのだが
^^; )。
ヘリQ 越さんの発表
ハニービーと同様の赤外線リモコンヘリコプター。軽量高出力で運動性能が高い分、操縦がやや難しい。ワンスティックコントローラーによる片手操作が可能。発売元はタカラトミー、定価3465円(トイザラスなどで2800円程度)。人気商品につき、現在品薄状態。AVI動画3.8MBはここ。
充電式のQステア 越さんの発表
タミヤのA4サイズRCカーをチョロQのサイズ(他のものよりは一回り大きい)にしたもの。ニッカド電池内臓で充電式のQステア。前後輪サスペンション、モーターもハイパワータイプのため、多少の凹凸、障害物は乗り越えられる。
写真左は充電中。定価1890円、トイザラスなどで1700円程度。詳細はタカラトミーのHPで。
必ずできるリングキャッチャーの極意 越さんの発表
成功ための「極意の書」といっしょに格安にて販売。大型1セット400円。これは科学マジックなのでむやみにコツを教えないこと。自分でコツをつかんでできたときがうれしい。
電磁誘導 石井さんの発表
下左の写真は長さ4cmの釘を抱き合わせにし、0.1mmのエナメル線を数百回巻いて、小形のLEDで閉じたものだ。これを凧糸で縛ってブンブンごまにして、磁石の上で回すとLEDが点灯する。2個のLEDを、逆方向並列につなぐとよい。
下左はボビンに巻いたコイルを使ったもので原理は同じ。逆に右のように、磁石のブンブンごまを、 LEDをつけたコイルの近くで回してもLEDがつく。
ブンブンごまにするのは V=−dφ/dt のdtを小さくするためだ。紙コップの中には電磁誘導の電力を蓄えるコンデンサーと電子メロディーがセットしてあり、磁石を回転させると鳴り出す。
1kg巻きの 0.1mm のエナメル線の長さは14300mほどあって、38000回巻いてある。巻きはじめが引き出してあるので、そのままコイルとして使える。これに3段アンプを組み込んで、縦型ブンブンごまにすると、地磁気でLEDが点灯する(下左)。アルミパイプにネオジム磁石を落とすと渦電流でゆっくり落下するが、それを外からコイルで検出することもできる(下右)。落下はゆっくりだから、磁石が通過後にすばやくコイルを下に移動して再び検出することもできる。
写真下左は、ストローにコイルを巻き、LEDで閉じたもの。小型ネオジム磁石をその中に入れて振ると点灯する。このように、電磁誘導の実験では多数巻きのコイルでLEDをつけるのが一般だが、B×v=E をベクトル的に見せることも重要だ。横河のELECTRONIC GALVANOMETER を使うと、1本の導線でも、はっきり針が振れる。
FMCEテスト結果発表 宮崎さんの発表
宮崎さんからは、京都で行われたリアルタイムフィジックス公開講座の見学報告と、FMCE(物理授業改善のための学習効果測定試験)を自校で実施した結果の報告があった。
折り紙パズル・オシロイバナ 加藤俊さんの発表
丸く切り取って、オシロイバナのつぼみを作る折り紙パズル。見た目以上にとても難しいのでご注意を。このパズルは元宇宙科学研究所の名取教授から公開許可をいただいたものだそうだ。
3D-Puzzle Ball 加藤俊さんの発表
パズルおもちゃで有名な平野さんの店の閉店セールで入手したものを頒布。この他に飛騨の知恵の輪「TOWER II」も希望者に頒布された。YPC恒例のジャンケン大会が繰り広げられた。
理科ハウスのお宝 森さんの発表
森さんは祖父に当たる石原純の蔵書や手紙を整理している。今回公開されたのは、4編の論文・講演録。これらの資料は森さんが建設中のリカハウスに保管される。デジタルデータで公開する計画もあるという。
A.Einstein 「Relativitatstheorie」 1922 内容はドイツ語。おそらく1921年5月アメリカのプリンストン大学での講演録ではないかと思われる。
石原純1912年「Beitrage zur Theorie der Lichtquanten」 ドイツ語 この時、石原はドイツに留学していた。
石原純1913年11月「Zur Diskussion der Relativitatstheorie」 ドイツ語 この年の5月から9月までチューリッヒにてアインシュタインに師事していた。
石原純「量子論」東京物理学校雑誌別刷 大正6年(1917年)11月東京数学物理学会に於ける特別講談。
テトラフレクサゴン 森さんの発表
クリスマスデザインのテトラフレクサゴンの紹介。岡田晃次さんの作品である。
詳しくは下記のWebページへ。
http://www.geocities.jp/riseforzarobo/flextxmas2.pdf
http://www.geocities.jp/riseforzarobo/flext6-1.pdf
磁石教材 江川さんの発表
知り合いの業者から格安で仕入れたという、種々のフェライト磁石の破格での頒布があった。リング磁石をCDのバルクケースに入れた磁力反発浮遊の実験装置はよいアイデアだ。右はフェライトの焼結前の酸化鉄の粉体。磁石で磁化するとご覧のように鉄片を吸い付けるが、容器を強く振るとくっつかなくなる。外部磁場による磁化の説明に使えそうだ。
スライム時計 加藤竜一さんの発表
500mLのペットボトル2つをコネクタで連結し、柔らかめのスライムを入れた砂時計様のもの。スライムがゆっくりと落ち、泡がゆったりと上がって行く様子は、まさに癒し系。山梨県立科学館では、工作のメニューとして登場するそうだ。
加藤さんは例会当日の午前中、山梨県立科学館で土曜科学クラブ『クリスマスイルミネーションを作ろう』という実験工作教室をしたてきた。これはその工作教室とは無関係だが、余禄として科学館で手に入れたもの。ちなみに、加藤さんの工作教室の様子はここに掲載されている。
ゼネコンツリー 渡辺さんの発表
この季節にぴったりのレプリカグレーティングシートの利用法をご紹介しよう。手回し発電器(ゼネコン)につないだ豆電球に、コーン型にしたグレーティングシートをかぶせて、手回し発電器をまわす。豆電球の明かりが、グレーティングシートを通して、虹色に見える。そればかりではない、コーン内部で反射して、思いのほか複雑な見え方をして、とてもきれいに観察できる。イルミネーションにぴったりだ。右の写真で一番下の明るい光点が本物の豆電球で上の方に見えるのはすべて「像」である。AVI動画2.8MBはここ。
液晶ディスプレイの再利用 渡辺さんの発表
液晶ディスプレイは、偏光板を利用して、映像を映している。そのため、ディスプレイの表面には偏光板があるが、これを取り外してみた。偏光板がない部分は、ただ白く光っているだけだ。ここに実験などで利用する偏光板をあてるとその部分だけ映像が見えるようになる。また、偏光方向が斜めになっているのも面白い。廃棄する液晶ディスプレイでまだ映るものがあったら、ぜひお試しを。
小学校親子レク 越さんの発表
地元の小学校で行った5年生の親子レクの紹介。内容は百人おどしなどの静電気の実験、エアーホッケーなどのゲームコーナー、エコーマイク、バックスピンのワリバシ鉄砲などの工作コーナー、3D写真、無限の小部屋などの展示コーナー、メロディーパイプ、バネ電話、リングキャッチャーなどのハンズオンコーナー。
学年140人ほどの子どもたちと、保護者60名(内、PTA役員とお手伝いが約20人)、学年の先生方みんなで、楽しく科学と触れ合った2時間となった。千葉県では、出前授業という制度があり、高校の先生が、小中学校へ授業に行く。理科が多いが、意外と物理の先生は少ないのが現状。
事後アンケートの中で子どもたちに「日頃、理科や自然現象、身のまわりのことでふしぎに思っていることは?」と質問したら、様々な質問があった。
なぜ、静電気はおこるの?、ヘリウムガスでなぜ声が変わるか?、二酸化炭素が増えるとなぜ温暖化するか?、チョークやえんぴつなどは、のりがついていないのに、どうして紙や黒板にかけるのか?なんで生き物は、じゅみょうで死んでしまうのか?などなど、様々な疑問に、果たしてどこまで答えてあげられるものか、越さんは嬉しい悲鳴をあげている。
二次会 御徒町駅前「おかってや」にて
22名が集まってカンパーイ!2007年の年忘れの会は盛会となった。やはり、ときどきは東京に出開帳をするのがよい。いつもは会えない珍しい顔ぶれで交流ができる。裾野やカバーエリアが広いのがYPCの強みだと思う。若いメンバーも揃ってきて将来も期待ができるサークルだ。
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