例会速報 2009/08/29 慶応義塾高等学校


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授業研究:センサーを利用した物理 宮崎さんの発表
 宮崎さんはSPPの講座型体験活プランAとしてセンサーを活用した課題解決型の力学の授業を3回計5時間の展開で行った。使用したのはPASCO社のデータロガー「パスポート」と超音波距離センサ(写真右)、力センサ、加速度センサである。目標は誤った素朴概念の払拭と、グラフ理解による現象の定式化である。


 例会で実演されたのは1日目の「歩行実験」。あらかじめ示された折れ線状の距離-時間グラフに合わせて、自分が歩行する実験だ。グラフの意味がわかっていないとその通りに歩けない。試行錯誤するうちに自然とグラフの意味がわかってくる。短時間に何度も試行できるのもIT機器ならではのことだ。例会ではクリッカー(回答集計機)の活用が有効であることも紹介された。

天気検定 安浪さんの発表
 NPO法人天気検定協会が実施する「天気検定」第5回が12月6日(日)に実施される。そのモニター校募集について事務局長の安浪さんから説明があった。1級〜4級および天気図級(ラジオ天気図の聞き取り作図ができる)の5区分がある。2級が高卒程度、1級は気象予報士クラス。詳しくは天気検定協会のWebページへ。

レーザーレベラー 山本の発表
 秋葉原の千石電商のワゴン売りに出ていたジャンク品。三脚もセットで¥750、中国製。水準器がついた5mWのレーザー光源だが、丸い部分を回転させると、射出口のシリンドリカルレンズが切り替わって、普通のポイントビーム、水平線、鉛直線、グランドレベルライン、クロスライン(写真右)の五種の出力が選べる。
 

 物理実験の用途としては、ポイントビームによる通常の利用の他に、グランドレベルラインを机上に投影してスリット光源のような使い道が考えられる。写真は回折格子による輝線方向を演示しているところ。 

CD-R分光計 喜多さんの紹介
 津山工業高等専門学校の佐藤誠氏による CD-R片を回折格子に用いた簡易分光計の紹介。
 佐藤氏は、CD-Rが、記録時のトラッキングのための溝が形成されており、透過型回折格子として適した構造をしていること、また、各社のCD-R片によりそのトラックピッチはほぼ1.485μmであることをつきとめ、CD-R片を用いた簡易分光計を考案した。喜多さんはその報告に基づいて作成した。
 

 下左の写真は、裏が黒い工作用紙で作成したもの。上左側の四角の穴の部分が観察するところで、ここにCD-R片が付けられる。下右の写真は蛍光灯のスペクトルを観察窓からのぞいたところ。連続スペクトルに加えて水銀の輝線スペクトルと4つの穴が写っている。4つの穴は左側から400、500、600、700nmを示している。安価で定量化ができる簡易分光計としてお勧めできる。

ライティングシート 高橋さんの発表
 「コーワ ライティングシート」はビニールシートのようなものを静電気で壁に貼ると、即席ホワイトボードになるという文具。ホワイトボード用マーカーで書いたり消したりできる。面白いのは、静電気のせいでこの上に普通の紙も貼れること。使っているうちに多少劣化する(付きにくくなる)が、貼ったままなら1ヵ月たってもはがれない。班ごとに書いてミニ発表をする時などに便利そうだ。
 サランラップのようにロール状で売られていて、ミシン目で切って使う。60cm×80cm、25枚分で値段は4000円程度。同様のものが東急ハンズにもあるそうだ(宮崎さん情報)。
 

アンペールの法則 田代さんの発表
 電流が直角に曲っている付近での磁界はどうなっているか。その付近に立方体を想定し、6面の個々の面の縁を閉曲線とし、その閉曲線で磁場を周回積分する。6つの周回積分の合計は0であることを満たさなければならない。どの解釈が正しいのだろうか。田代さんの考えはエである。演示実験(写真右)では電流の末端?の延長上の面ならば面を電流が貫いていなくても、弱い磁場が観察される。もっと大型の装置にしたり、磁束計を使うといいなど意見があった。
 

レンズが消える理由 水上さんの発表
 水上さんは相対屈折率の授業で以下のようにこの演示を利用している。

 事前にサラダ油の屈折率n1≒1.46をプラスチックの屈折率n2≒1.49を測定しておく。

 つかみ実験(サラダ油の中にプラスチックを入れると『消える』ように見える)→相対屈折率の公式n12=sin(入射角i)/sin(屈折角r)=n2/n1を学習→屈折率n1=n2なら,(入射角i)=(屈折角r)となり,屈折も反射も起きずに光は直進するだけ。

→下の写真の演示(左は空気中,右はサラダ油に浸したとき)→n1≒1.46とn2≒1.49を再確認→厳密にはn1≠n2なので,入射角が大きくなると屈折を無視できなくなる。→ビーカー左隅と右隅をよく見よう。レンズの境界線を認識できる。
 

 下の写真下段2枚は,プランツボールが水中で『消える』ことの説明である。写真左:プランツボール+透明ビー玉1個に左側面から光を当てる。写真右:これに水を注ぐと水とプランツボールの境界面で光が直進するようになる。プランツボールと水の屈折率がほぼ等しいからである。
 なお、器具が小さいので水上さんはビデオカメラ+プロジェクターで大きく投影して生徒に見せている。

十亀折り 喜多さんによる高杉さんの代理発表
 高杉さんは、6/16付の新聞で十亀(ソガメ)折りを知り、それに魅せられて、似せたものを作った。写真左のように、星型のリング状に小さくたたまれたリングの端を引くと、大きく膨らんだ筒状の構造物になる。右図は高杉さんが作成したA4版の型紙で、図の上と下がつながり、45度の部分を谷折り、22.5度の部分を山折りする。折り線をあらかじめボールペンなどでなぞって溝を付けておくときれいにたたむことができる。
 喜多さんも早速チャレンジしたが、図の左側と右側がつながると勘違いして、そのときは途方に暮れたという。これから作成に挑む方は型紙の上と下をつなげることに留意されたい。
 

Q・BA・MAZE 中村さんの発表
 カラフルなブロックを積み上げて、上から鉄球を入れると、迷うように左右に揺れながら、気まぐれに落ちていく。癒し系のブロックパズルだ。ひとつのブロックは馬の鞍型の底面をもっていて、鉄球の迷うようなしぐさを生じる。左右どちらかに落ちるのにかなり迷うことがあるが、ひっっかって止まってしまうことはない。オリジナルサイトはここ
 

V2マッチ棒ロケット 越さんの発表
 5月の例会で話題になったマッチ棒ロケットで1本のマッチ棒の頭薬(マッチの軸の頭の部分)に接するようにもう一つ投薬の部分を折り取り、アルミホイルでくるむと飛距離が伸びる。安定して3〜5m飛ぶようになるが、アルミホイルを2重にするなど、発火によりアルミホイルに穴があかないようにする必要がある。また、後方にも燃えカスなどが飛び散ることがあるので十分に注意を要する。実験のムービーはここ
 発射の様子をEX−F1で撮影すると、打ち上げを失敗した時の原因をある程度、究明することができる。また発火時の炎の様子など、スローモーションで見ると迫力がある。

ピタミン 越さんの発表
 机の上にたたきつけると平たくつぶれ、しばらくすると元に戻る、新手の癒し系グッズ「ピタミン」。 TPR(サーモ・プラスティック・ラバー)(燃やしてもダイオキシン等が発生しない素材で、やわらかい製氷皿などに用いられている。)でできていて、中にはミネラルウォーターが入っている。表面にホワイトオイル(粘着性・耐久性を高めるオイルで食品製造機器等に使われる安全性の高いもの)が塗られている。315円(税込)。 テリー伊藤の「テリピタ」という物もある。ムービーはここ

インフィニティーワンド 越さんの発表
 奥の鏡に取り付けたれた5つのLEDが回転に同期しながら点滅する。手前にハーフミラーが取り付けられているので、光のトンネルが奥の方に無限に続いているように見える。トイザらスで699円。ムービーはここ
 

IRCバイク 越さんの発表
 IRCバイクは、ジャイロ効果により安定した2輪走行をする全長11cmの赤外線リモコンバイク。2本指で下側から本体中央下部を持ち左右に回転させると、ジャイロ効果により指が力を受ける。ムービーはここ

力の分解装置バージョンアップ版・力の矢印 徳永さんの発表
 今年の夏に行われた私学の研修会で参加者に工作してもらった装置。昨年「理科教育を考える集いで」作って頂いた装置のバージョンアップ版だ。「理科教育を考える集い」ではセロハンテープを用いて接続したが、バージョンアップ版では全てネジや接続金具で結合してある。旧版も少し加工をし、部品をそろえればバージョンアップすることが可能。部品リストが欲しい方は下記連絡先まで。

 右側は「力の矢印」。ダイソーの指示棒を用いて伸び縮みの出来る矢印を作った。力の合成や分解を説明するときに使える。こちらも材料購入情報は下記まで。

徳永さんの連絡先:mtoku626@mbn.nifty.com (←アットマークを半角に直してご利用ください)

鍋にうつる像 竹内さんの発表
 何の変哲もないステンレス鍋だが側面や鍋底に映った撮影者の像を見てほしい。撮影者の右手が左側に、左手が右側に映っている。つまり「鏡像になっていない」のである。2009年1月例会の「ふしぎな鏡」と同じ現象だ。
 

カライドサイクル 車田さんの紹介
 今年2009年科学の祭典全国大会後半に出展された佐賀市立城西中学の渡部泰道さんの作品の紹介である。07年8月例会(富士河口湖高校)でも紹介されている。03年11月例会(慶應高校)で同じく車田さんが紹介したヘキサフレックスと原理は同じである。ヘキサフレックスは正六角形が現れるが、今回紹介されたものは、正五角形が現れるバージョンなのでのでさしずめ「ペンタフレックス」だろうか?
 

簡易ホログラム 車田さんの紹介
 YPCメンバーも参加した、この夏の韓国の科学の祭典で見つけたもの。車田さんも作ってみて感激したという。作成方法は以下の通り。
 まず塩ビプレートの下に作りたい図形を置く。そして、デバイダーの開きを図形の中心とプラスチックプレートの中心との間隔に開きを固定する。そして、図形の1点を中心にプレートに弧を刻む。軽く傷(溝)をつける程度でよい。弧の中心点を図形に沿って1mmずらし、またプレートに弧を刻む。これを繰り返していくとプレートに無数の弧が重なった傷が描かれる。点光源の光を当てるとトレースした図形が浮かび上がる。左の写真は星形が描かれている。
 デバイダーがなくとも、鋏を目一杯広げれば代用できる。塩ビプレートは百円ショップの下敷きで十分。塩ビプレートと原図を必ずテープなどで固定してずれないようにするのがコツ。
 韓国の祭典の出展者のオリジナルかと思ったが、加藤俊さんがHand Drawn Hologramと呼ぶのだと教えてくれた。すでに10年以上前に発案者がいたようだ。詳しい情報は下記URLを参照のこと。動画もある。→ http://www.eskimo.com/~billb/amateur/holo1.html
 

LED電球 渡辺さんの発表
 7月に発売された東芝の最新のLED電球E-CORE(イーコア)。渡辺さんは中身が気になり、早速分解した結果を紹介してくれた。
 

 内部は、7つの樹脂レンズなしのLEDが基盤に実装されている。非常に熱が発生するようで、放熱のために白い拡散用のカバーから下は、アルミ合金のヒートシンクになっている。
 白熱電球と同等以上の明るさでも消費電力は1/8、寿命は4万時間と長寿命。価格は60Wで3,880円(ヨドバシカメラ)と、まだちょっと高い。

HAYABUSA 加藤竜一さんの発表
 全天周映像HAYABUSA 〜BACK TO THE EARTH〜を見た加藤さんからのレポート。

 全編CGの映像がものすごく美しい。冒頭の打ち上げシーンなどは,『地球からロケットが飛び上がる映像』というだけでも,十分見応えがあるのだが,この映画では頭上の地球から下向きにロケットが打ち上げられる。もう,最初から映像に引き込まれ目が離せなくなってしまう。イトカワへの着陸あたりからは,探査機に感情移入してしまって,最後には涙が出る。本当に圧巻の43分間だ。
 ちなみに,加藤は日本科学未来館での試写会を見に行って圧倒され,プラネタリウムに3回も見に行ってしまった。例会で紹介した時には,「9月6日まで府中郷土の森プラネタリウムで」という事だったが,府中郷土の森では12月6日まで上映延長が決定。まだ見ていない方は是非どうぞ。
 また、大阪市立科学館では2010年3月31日まで。相模原市立博物館でも冬に上映予定。他にも,時間を短縮したバージョンをいくつかのプラネタリウムで上映しているようだが、できればフルバージョンでご覧になる事をお奨めする。

米国の物理教科書など 加藤智子さんの書籍紹介
 左は米国Holt McDougal社の物理教科書。日本の教科書と違い、図版も本文もたっぷりととった大型本である。生徒が自分で読み進み、学べるように懇切丁寧に書いてある。少年写真新聞社で委託販売している。
 右はタカラトミーの実験本「体験王〜鑑識捜査編」\2499。血液鑑定、pH測定、顕微鏡観察、指紋検出が体験できる。
 

マジックペット 加藤智子さんの発表
 バンダイが7月に発売したおもちゃ「マジックペット」シリーズ。水を満たしたペットボトルに入れ、ボトルを押すと足を広げて沈み、放すとスピンしながら浮き上がってくる。回る浮沈子の製品化と見られる。クラゲ(青)、タコ(赤)、イカ(白)の三種があり、各683円税込。
 

お台場ガンダム 越さんの発表
 ガンダム30周年を記念して、お台場の潮風公園に実物大ガンダムが現れた。高さ18m、頭部が上下左右に動く。ファンならずとも、プロが真剣に作ったガンダムに多くの来場者が魅せられた。写真はいずれも越さん撮影。右は、夜、ライトアップされたガンダムを、ホロスペックスフィルム(ハート) をカメラのレンズの前に付け撮影したもの。越さんの遊び心が光る。
 また、会場で販売されていた公式ガイドブックの中に、ガンダム世代の京都大学助教授亀井敬史氏と原作者の富野由悠季監督の対談が掲載されていた。その中でガンダムの時代では、「トリウム」は貴重な資源として登場することが話題にされていた。トリウム原発の実験炉はアメリカで1960年代に4年間、安定して稼働した。にもかかわらず、放射性廃棄物の問題が少ないトリウム熱溶融炉に対して、放射性廃棄物として原爆の原料となるプルトニウムを産出するウラン原発が選択されたのは、少なからず冷戦という時代背景があったからだという。以下、参考関連記事。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0 
http://homepage2.nifty.com/w-hydroplus/info4z4.html 
 

皆既日食レポート1 伊藤さんの発表
 2009年7月22日に日本では46年ぶりとなる皆既日食があった。伊藤さんは屋久島でその時を待ちかまえた。観測機材の準備も万全だったが残念ながら当日は雨。しかし、太陽は見えなかったものの、皆既時刻には空が夜のように暗くなった(写真右)。
 

皆既日食レポート2 市江さんの発表
 市江さんはYPCの車田さんと益田さんとともに上海の郊外(蘇州)で観測ができる中国日食ツアーに参加した。宿泊ホテルの湖畔庭園で観測できるという申し分のない好条件だったが、日食当日はあいにくの嵐、コロナやダイヤモンドリングはもとより、雲越しの部分食すら観測することができなかった。写真はうちひしがれてホテルの部屋で見ていた現地のテレビ中継のようす、四川省広安市(左)と安徽省黄山イ県(右)の日食のようすを同時中継していた。?県は広安市から真東に1000kmほど離れている。広大な国土を持つ中国ならではの日食中継だ。皆既開始の時刻もイ県では広安市より20分ほど遅れていた。そこからさらに東へ300kmほど離れた地点で観測していた市江さんは、気を取り直して、湖畔が暗くなっていくようすをビデオに収めた。そのようすは次回例会でも披露する予定。

Korea Science Festival 竹内さんの発表
 11カ国、日本からもYPC、onsen、ガリレオ工房などが参加、6日間にわたって行われ、一日あたり2〜3万人の入場者があった。
 

ソウル地下鉄の交通カード 加藤俊さんの発表
 2009年5月、ソウル地下鉄に「1回用交通カード」が登場した。資源節約のため、再利用可能な電子カードへの切り替えが進んでいる。この「1回用交通カード」は、自販機で駅名ボタンを押して必要な金額をカードに入れる形で料金を支払う。カード購入時には保証金(500W)がかかるが、使用後にカードを返却すれば払い戻しされる。なお、大半の市民は日本のスイカ・パスモに相当するT-moneyカードを利用している。

輪ゴム銃(韓国製) 加藤俊さんの発表
 これも韓国土産の「連発式輪ゴム銃」。引金を引くと、親指のところにある雁木車が一歯ずつ回転して、それぞれにかけてある輪ゴムが発射される。

KEKの一般公開 山本の紹介
 山本は夏休み中に生徒を引率してつくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)を見学した。小林・益川両氏のノーベル賞受賞直後で広報予算が付いたこと、8/7の天皇・皇后両陛下の訪問直後だったこともあり、パンフ類は豊富で(写真)、展示物や説明パネルも充実していた。その意味では見学は今がチャンスだ。夏は大型加速器の整備期間なので、Belle検出器やフォトンファクトリーも間近で見学できる。KEKでは9/6に一般公開を行うほか、平日の見学も随時受け付けている。

二次会 日吉駅前「とりのすけ」にて
 22人が参加してカンパーイ!。新規開拓の串焼屋さんで尽きぬ科学談義を楽しむ。初参加の人でも気軽にうちとけられる雰囲気がYPCの魅力だと思う。


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