例会速報 2013/06/16 多摩大学附属聖ヶ丘中学・高等学校
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授業研究:力学の授業 鈴木さんの発表
鈴木さんは今年度の高1物理基礎(全員必修・2単位)の力学での力の学習の経過をまとめて報告した。今年度は、同僚の非常勤講師、浦辺悦夫さん(東京物理サークル)と一緒に持つことになったので、授業プランを徹底的に議論して授業を進めている。重さ・質量の学習から入り(「重さ」という用語は使わない、と宣言する)、力の原理、フックの法則、力の合成分解へとつなげる。作用反作用の学習はまだこれからである。例会で、これまでの授業プリントを提示し、流れを紹介した。例会では、この中で、力の分解に関する展開が議論になった(プリント写真右)。
写真に載っている右の課題(2つのバネの角度を帰ると、どちらが大きくなるか)が焦点となった。平行四辺形の法則を、この課題の前に入れるのか、後にするのか。「成分」と「分力」という用語の扱いなど、この1つの課題をめぐって熱い議論が交わされた。
籠の中で鳥が飛んだら重さはどうなる? 佐藤さんの発表
よく知られた問題だが、ネットで調べてみると必ずしも答えが一様ではない。佐藤さんは、手回し発電ヘリコプターとデジタル秤を使って実験をしてみた。写真の通り開放空間での実験だ。
2mm厚の発泡スチロール(一辺45cm)のヘリポートとヘリコプターの合計重量は約42gwで、ヘリだけの重さは約9gwである。およそ20cmの高さでホバリングさせたとき、秤が示す値はどうなるだろうか?結果は、55gw前後になった。13gwも増えている。
なぜ、ホバリングの状態で秤の示す値が増えるのか、例会の場で議論をした。もちろん、ヘリが加速度的に上昇していく過程ではより数値が増えること、十分に高い位置でホバリングさせれば42gwより小さくなることは当然だ。
なお、佐藤さんが別途行った実験では、ヘリポートの上全体をごく薄いプラ板で囲い、閉鎖空間内で離陸させたところ、離陸前と、ホバリング時で、秤の示す値は変化しなかったという。
例会ではヘリポートの板を取り去ったり、周囲の空気の流れを制限したりしてさまざまな条件が試された。数値が増える理由は一応の結論を見ているが、ここにはあえて書かないことにする。皆さんも考えてみてほしい。
3D地形図 越さんの発表
越さんは、2013年4月の例会で紹介したクロマデプス3Dメガネを用いた3D地形図を紹介した。日本地図センターで、「1:25,000デジタル標高地形図」という名称で入手できる。http://www.jmc.or.jp/map/jmc/digital_hyoko.html
右下は「東京都区部」、左下は「仙台」、見る距離によって、立体感が異なる。1部1000円で、他に大阪、名古屋、など全7種類が販売されている。また、同HPからマイクロプリズムによる3Dメガネも1個100円と、比較的安価で入手可能。
MIT白熱教室 越さんのDVD紹介
今年1月Eテレで放送された「MIT白熱教室」http://www.nhk.or.jp/hakunetsu/mit/archive.html がDVD化された。第5回の「完璧な虹を見る方法」や、第8回の「星はどう生まれ どう死ぬのか」は、氏の研究分野でもあり、内容も大変興味深い。DVD5枚組で、特典ディスクではウォルタールーウィン教授のインタビュー(27分)を収録。ガイドブック(24ページ)付。定価11,760円。
「全国センター模試」の圧力の問題に疑義あり! 平野さんの発表
平野さんは某ゼミナールの「第1回全国センター模試」の第3問B問4の問題を紹介した。内容はおよそ次の通り。
「高さh、底面積S、密度ρ0の一様な物体の全体を、密度ρ1(ρ0>ρ1)の液体の入った水槽に沈めたところ、水槽の底に物体の底面が触れた状態で静止した。重力加速度の大きさをgとする。このとき、物体が水槽の底から受ける垂直抗力の大きさNを求めよ。」なお、水槽の底と物体の底面の間に水が存在するとは書かれていない。
公表された正解は、「N=(ρ0-ρ1)Shg」だった。例会では、
①この場面設定では物体は浮力を受けないこと。
②この問題を解くには、物体の上面の水深や大気圧の大きさの情報が必要なこと。
③水平面に置かれた質量mの物体が面から受ける垂直抗力を求めるときに、普段、なぜ大気の圧力を考えないのか。
が議論された。
大人の科学・パタパタ電波時計 佐藤さんの発表
学研の大人の科学シリーズの4月発売の新刊。「パタパタ電波時計」3500円(税込)。プラモデルのように組み立てると昔懐かしい「分めくり」のパタパタ時計になる。しかも、標準電波を受信して自動的に時刻あわせをするので、狂わない。
パタパタ表示を早送りすることでパラパラ漫画モードを実現。鉄拳オリジナルのパラパラアニメも付属している。
例会ではキットの企画制作苦労話なども報告されたが、こちらは企業秘密。
豊橋市地下資源館・視聴覚教育センター 竹内さんの発表
豊橋市地下資源館に併設されている視聴覚教育センターには「見る・聞く・そして体験できる展示」が豊富にある。パズルや錯視に類する物から、さわれる標本、簡単な実験器具や科学おもちゃなど、多彩なラインナップだ。
道具はかごやトレーに入れて分類され、簡単な説明カードがついている。子どもたちが自由に取り出して、さわって遊べるようになっている。
こども未来館ニコニコ 竹内さんの発表
豊橋市松葉町の「こども未来館・ニコニコ」の体験・発見プラザ「まち空間」には5つのブースがあり、50種類以上の「体験セット」が用意されている。子どもたちはドリームタウンステーション(写真左)にある多数のライブラリ(写真右)の中から気に入ったセットをかり出し、ブース内で自由に遊ぶことができる。
それぞれのセットには簡単な説明書「あそびかたシート」がついており、親子やこども同士で体験しながら学べる仕組みになっている。こども未来館自体は入場無料だが、「まち空間」のみ小中高100円、大人200円。
神奈川夏の教育研究大会 古谷さんのイベント紹介
神奈川民間教育研究団体協議会(県民教)は自主的に教育実践に取り組んでいる団体や個人の交流の場であり、半世紀に及ぶ歴史を持っている。その第48回教育研究大会が次の予定で開かれる。理科教育のみならず、各科目から生活指導、特別支援教育に至るまで、幅広い分科会が展開される。学生や一般市民の方の参加も歓迎。
日時:8月18日(日) 9:00~16:30
会場:湘南学園小学校(藤沢市鵠沼松が岡4-1-32)
アクセス:江ノ電鵠沼駅または小田急江ノ島線鵠沼海岸駅から共に徒歩7分
参加費:教職員当日1500円、一般・学生500円
いろもの物理学者さんの「よくわかる初等力学」 鈴木さんの書籍紹介
いろもの物理学者こと前野昌弘さん著の「よくわかる初等力学」(東京図書2500円)の紹介。2013年2月発行の、大学生向けの初等力学の本だ。Amazonで入手可。
鈴木さんは、様々な力学の本での、抗力の扱いが気になっていて、大学生向け教科書も含めていろいろな本を調べ始めていて、いつかまとめたいと思っている。その中で、この本に出会った。
この本では、まず前書きで、以下の課題を提示し、正しいかどうか考えさせることからはじめている。(引用は大意)「相撲取りと小学生が押し合っているとき、相撲取りから小学生に及ぼされる力と、小学生から相撲取りに及ぼされる力を比べると、前者の方が大きい。」「人間が壁を殴ると壁は小さくへこみ、弾力で元に戻る。そのときこぶしにあたる。このとき働く力が反作用である。」
もちろん、ともに間違っているのだが、こういう問題意識をきちんと持って書かれている本は、実は珍しい。他にも、力の描き方など、我々が高校の授業で心がけていること(作用点は●で描き、物体の内側に描くべき、など)が明確に書かれており、わかりやすく明快な解説書である。ぜひ手元におきたい良書である。
32ページの量子力学入門 宮崎さんの書籍紹介
シンキロウ著「32ページの量子力学入門」(暗黒通信団)ISBN-10: 4873100356、315円(税込)。
アヤシイ本ではない。量子力学のエッセンスを、わずか32ページに圧縮した、ごくまじめな物理学の本である。量子力学の全体像をすっきりと整理してくれる。Amazonで入手可。
ScanSnap実演 鈴木さんの発表
鈴木さんは、数年前にScanSnap S1500 というドキュメントスキャナを購入した。2013年5月例会で紹介したScanSnap iX500の前身にあたる機種だ。A4サイズ以下であれば、束ねて置いた原稿を連続的に吸い込んで両面同時にスキャンでき、OCRもかけた上でpdf化する。例会ではその様子の実演があった。
鈴木さんのそもそもの最初の目的は、YPCニュース集をすべてpdf化することだった。しかし、購入してみて、ありとあらゆる文献や書籍を、電子化できるということに気づき、時間を見つけては実行してすでに1000冊以上の書籍や冊子を電子化している。世間ではこれを「自炊」(自分で吸い出すという意味)と呼んでいる。最初にやったのは、10数冊以上になっていた「青少年のための科学の祭典」の冊子。これだけでも、検索可能な実験のデータベースとして貴重なものになる。ただし、電子化したデータは、個人で使う以外の利用をすると、著作権法違反になる。他人に譲渡したりすることはできない。
113番元素 車田さんの発表
2012年2月の例会で鈴木健夫さんはBB弾の原子核模型を発表した。さらに喜多さんが改良を重ね、チカバルーンを使ってウラン原子核模型の非常に作りやすいを作り方を考案した(2012年8月例会)。
車田さんは、理化学研究所が113番元素の3回目の合成に成功し、いよいよ今年日本から新元素が命名されるというニュースをしり、元素113の原子核をBB弾で作ってみた。元素113(右の写真の左端)は質量数が278とウラン238(同左から2番目)より40多い分一回り大きく見える。
最近の新元素名は発見した研究機関の名前がつけられている。また、科学者の名前や国名、地域名も有力だ。「リケニウム」「ニシナニウム」「ジャポニウム」「ニッポニウム」「ワコニウム」など、どのような命名がされるか楽しみだ。
kibo360° 車田さんのアプリ紹介
iphone、ipadのARアプリ。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船内がリアルにシミュレートされる。仮想現実空間なので、タブレットを上や下、左右に向けると、その方向の画面に変わる。画面だけ見るとまるで「きぼう」の中にいるようだ。
ipadを少し押すようにすると無重量空間にいるような仮想現実感で、慣性でその方向に移動するようにプログラムされている。残念ながら「きぼう」と保管庫の中しか移動できず、デスティニーやズベズダ、キューポラなどISSの他の施設には行けない。
赤く丸印がついているターゲットに近づくと、実験装置や設備の説明がポップアップする。非常によくできた無料アプリだ。ダウンロードは下記。
https://itunes.apple.com/jp/app/kibo360/id640504494?mt=8
ISS予報アプリ 車田さんのアプリ紹介
iphoneやipad用のISS予報アプリ。下記からダウンロードできる。
https://itunes.apple.com/jp/app/iss-spotter/id523486350?l=en&mt=8
観測者の位置情報をもとに、ISSの見える日時を知らせてくれる。ほぼ正確で、途中で地球の影に入って見えなくなるところもしっかりシミュレートされる。データはNASAから取得するようで、データ取得時間や見える時の角度の条件などをあらかじめ指定できる。
Refrector 市原さんのアプリ紹介
Reflectorは、PCにインストールすることで、iPad,iPod,iPhoneをミラーリングすることのできるソフト。金額は13ドル。同じWifiに接続していればミラーリングが可能で、複数台映すこともできる。 AirPlayを利用しており、4月例会で武捨さんが紹介したAppleTVと同じ事ができる。Macにインストールすると、相性がいいのかレスポンスが良い。Windowsでも動くが、Macに比べるとややレスポンスが落ちる。
授業への使い方は、期間巡視の際に生徒の書いたグラフをiPadで写真を撮り、それをプロジェクターで映すことができる。無線で手元から画面を操作できるメリットは大きい。色々な使い道が考えられるので、アイディア募集中。
Adobe ideas 無料化 市原さんのアプリ紹介
Adobe ideasは、iPad、iPhone、iPod Touchなどで使えるアプリ。もとは有料だったが現在は無料化されている。レイヤーが使える点は便利。ラフに描いた画像をAdobe
Illustratorで編集も出来る。物理としては、手軽にかけるお絵描きソフトというイメージかもしれない。Windows版やAndroid版もほしいところだ。
二次会 永山駅前「瞬彩 永山店」にて
14人が参加してカンパーイ!今回は永山駅ビル2階の新たなお店を開拓した。落ち着いた店内は大人のムード。聖ヶ丘が会場の時は参加者が少ないと心配されたが、二次会にはしっかり集まっている。今回の例会は、書籍やスマホアプリの紹介が多かったが、こうした情報交換も大変有益だ。そこから新たな授業実践が生まれることもある。
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