例会速報 2013/11/17 東洋英和女学院中学部高等部
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授業研究:自分らしい授業 目黒さんの発表
目黒さんは高校理科教員として勤めるにあたり、自分らしい授業をしたいと考えた。目黒さんの考える理想の授業は、
(1)物理の根本的な理解につながる
(2)いろいろな生徒(発表する・解く・理解することなどが楽しいと思う生徒)が興味を持つ授業展開
(3)進学校では受験対策もしっかりと行える
の3つだ。現実的にはすべての実現は難しいが、それぞれの「時間のかけ具合」のバランスと「時間の確保」により改善できると考えた。
目黒さんは、生徒の理解度が異なるため一概には言えないが、以下により興味関心を引き付け、時間短縮ができると結論した。
・教科書に載っていることはわざわざホワイトボードに書かない。(時間短縮のため)
・黒板に書く図はシンプルにする。(時間短縮のため)
・実験プリントを回収し、丸をつけ、必ず添削をする。
・実験ネタはたくさん持っていると良い。(生徒の興味関心を引き付けることができるため)
・1つの単元でストーリーを作る。
(1)では、根本的な理解を進めるために、授業の方法として板書・プリント・教科書のどれを主体で進めていくかを考えた。板書は大切なところ・重視したいことを書く、プリントは実験のため・授業補助のため、教科書は辞書のかわりなどがあげられた。
(2)では、教師が一方的に話をするのではなく、生徒が授業を作り上げていく授業を目指すために、授業の冒頭プレゼンテーション形式により一人一問一分で発表する前回の復習を考えた。生徒主体の授業展開で「この先生のこの授業は楽しいから受けたい」という思いを持ってほしい。
(3)では、プレゼンの復習内容として、学校で扱う問題集を用いる。授業の定着とあわせ、受験対策としての学習習慣を身につけるためである。もちろん物理の根本的な理解の確認のためでもある。
授業研究2:テストを見てほしい 成見さんの発表
成見さんは、定期試験に出題した問題を例会で発表し、助言をあおいだ。出題範囲は力学の最初の部分。例会参加者からは以下のようなコメントがあった。
・力の矢印の表記は作用点の場所を明確にする。矢印の始点をどこにとるかで、はたらき先の物体を意識させる。
・つりあいと作用反作用の違いの気付きに導くように出題をするとよい。
・物理量を名称として記載していないときはイタリック体がよい。
・単位のかっこは正確には〔 〕を使う。
力の表現「はたらく」「受ける」「引く」「押す」などに関しても、参加者それぞれの意見があり、勉強になった。例会の授業研究は、このようにテスト問題を見ながら意見を交わすのも有意義だ。テストは一人で作ってはいけない。複数で意見を交わしながら作問すると、よい問題になる。
成見さんは次の機会には、普段の授業ノート資料と合わせてテスト問題の研究をお願いしたいといっている。
スターリングエンジンとスチームエンジン 田代さんの発表
学研の「大人の科学」はなかなか興味を掻き立てる付録がある。残念なことに写真左のスターリングエンジンは今は販売されていない。カップに熱湯を入れ、その上に乗せて作動させる仕様だが、アルコールランプの炎で直接加熱してももちろん動く。筒はプラスチックだが、底はアルミ板でできているので直接加熱しても大丈夫。写真右は止まりかけたスターリングエンジンの上に氷を置いたところ。温度差で動くので止まりかけていたものが再び勢いよく動き出す。
下左のキットは現在でも「大人の科学マガジン Vツイン蒸気エンジン」として購入できる。首振りエンジンを2つつなぎV型にしたり水平対向型にして回転の様子を見ることができる。やっと水蒸気になったばかりの気体は大量の水滴をボタボタとたらしながら回転する。熱エネルギーを運動エネルギーに変えるので温度が下がるまたは状態変化したと見られる。
右はガラスの鍋蓋をフライホイールにし、その回転中に発電機につないでおいたモーターとの間のスイッチをオンにする(回路を閉じると)モーターが回りだし途端にフライホイールの回転の勢いが弱くなり止まる。運動エネルギーが減りその分が電気エネルギーに変わっていることが視覚で確かめられる。田代さんの主張は、外部で電気エネルギーを使うと手回し発電機を回す手応えが重くなる現象を「電気が仕事をする分だけ手はより多くの仕事をするということを生徒に体験させるだけで十分だと思う」というもの。MLでいろいろ議論する中でこの実験を思いついたという。
ELECTRIC PAINT 加藤さんの発表
加藤さんがたまたま、通販で見つけた商品。導電性のインクが入っているペンで、写真のように紙などに回路を書いて使うことができる。中学校の回路の実験などで使おうと思って購入した。インクに粘性があるので、簡単な導線なら接着(半田の代わり)することもできて便利。乾くのに時間がかかることと、一本6ユーロ(現在だと800円強)と少し高いのが難点。
パスカル電線 市原さんの紹介
市原さんは京都パスカルの杉原さんの運営する「午後の理科室(http://www.eonet.ne.jp/~sugicon/index.html)」で、パスカル電線を知り、研究用見本としてパスカル電線(S-cable)を分けていただいた。HPから注文すると、丁寧な説明書と実験例等がついた資料と共に、写真のケーブルが送料のみの負担で送っていただける。スピーカーもセットになっていて、一本の電線で多数の実験ができる。
構造や解説は上記ののHPに詳細が載っているが、単純に言うと10巻きコイルに電流を流し、それら10本を1本の大電流とみなす仕組みだ。たとえば3アンペアの電流が30アンペア相当のはたらきをすることになる。適当な鋼材に巻き付けると電磁石ができる様子がダイナミックに演示できる。また、ゼムクリップを使ってコイル状に巻いた内側での磁場の観察も可能である。
ブーメラン紙飛行機 鈴木さんの紹介
YPCのメンバーも何人も参加した、夏の「物理合宿研究会」(東京物理サークル主催)での収穫の紹介。東京都立産業技術高専の吉田喜一さんの設計による、「ブーメラン紙飛行機」です。型紙にある通りに切って工作し、先端におもりの一円玉をはさむ。
写真のようにまっすぐ上に投げ上げると、そこからくるりと円を描き、手元に戻ってくる。
この型紙に合う質量の紙「特厚口・A4」で作る必要がある。詳しくは吉田さんご自身か、代理発表した鈴木健夫さん(sutaypcアットマークw3.dion.ne.jp)にご連絡を。
気柱共鳴の音を聞く 市原さんの発表
10月の例会で西村さんが発表した「気柱共鳴に至るまでの授業展開」の中で行われたのと同じ生徒実験の紹介。気柱共鳴装置の水位を共鳴状態にしておき、その中にガイドを付けたシリコンチューブを入れ、他端を聴診器のように耳に当てて内部の音を聞く。チューブの先端の位置を変えていくと、次第に音量が変化していき、定常波の節と腹を体感できる。気柱の中にできる定常波を意識させるのには良い教材だと考える。大切なことは、節では音が大きく、腹では小さく聞こえることだ。音の強弱は変位ではなく圧力変化の大小を反映していることになる。
石川さんの「電磁蛍」の映像化 武捨さんの発表
2013年10月の例会で石川幸一さ ん(岐阜物理サークル)が発表された「電磁蛍」の器具の一部をお借りすることができたので、石川さんの了解のもと、その構造や動作を映像化した。
撮影に当たった武捨さんのコメント「撮影しながら、ひとりで色々といじっ てみましたが、見れば見るほど良く出来ています!映像化はしましたが、実物を触ったほうが感動します(当たり前か)。」
フレミングの左手用図 水上さんの発表
フレミング左手の法則を利用する問題解答の説明文は「フレミング左手の法則より力の向きは**である。」だけだったが、これに左手の図を添えるとぐっと分かりやすくなる。水上さんは、このために左側写真のような図を『花子』で作成した。右側写真のように左手を撮影してその上から『自由曲線』の機能でなぞって描いたそうである。電流(中指)の向きと磁場(人差し指)の向きをx軸、y軸、z軸に合わせるすべての組み合わせ、24通りの図が描かれている。また、『花子』ユーザーでなくても利用できるように、これらの図を『MS
Office描画オブジェクト』(編集可能)と『Windowsメタファイル』(編集できない)の形で貼りつけたWordファイルも未完成だが紹介された。12月の例会ではWordの完成版を披露してくれるとのことだ。
真空中のサイフォン論議 鈴木さんによる川田さんの代理発表
仮説社から「サイフォンの科学史」という本が出版された。その中で紹介されているサイフォンの原理を説明する「鎖説」に関し、おかしいのではないかと疑問を持った、愛知物理サークルの川田秀雄さんから、その概略を連絡していただいた。
今回の例会では、川田さんが愛知物理サークルで発表した資料を紹介したが、その後もっとわかりやすくかつ『理科教室』などで発表できるように表現を改めた原稿が鈴木さんの手元に届いた。次回例会で再度紹介したいとのこと。
小さな科学館 竹内さんの発表
竹内さんは体験型の実験器具や錯視の展示物を各地の小学校などに出前して展示する小さな移動科学館の取組を続けている。例会ではケーブルテレビで放送されたある小学校での公開の様子が紹介された。11月の電通大の学園祭でも公開された。
ドラマ「ミス・パイロット」より 車田さんの番組紹介
ドラマ「ミス・パイロット」の第1話に、ANAの操縦士採用試験のグループワークで紙飛行機を作成し距離を競う一コマがあった。8月例会で「カタパルトを作って紙飛行機を飛ばそう」舩田さんの発表ネタである。ドラマでも紙飛行機を飛ばす方法に制限はなかったようだ。ゴムの弾性力を利用すると紙飛行機は手で投げるより、はるかに遠くによく飛ぶ。番組では、アイデア提供は「紙飛行機協会」とテロップが出ていた。作成方法はYPC例会アルバム2013年8月例会を参照のこと。
日本は再生可能エネルギー大国になりうるか 竹内さんの書籍紹介
福島原発事故の民間事故調査委員会の委員長を務めた北澤宏一氏の著書の紹介。 ディスカヴァー・トゥエンティワン(新書)ISBN: 978-4-7993-1169-1、価格:税込み 1,260円。
二次会 六本木駅前「たん丸」にて
20人が参加してカンパーイ!。東洋英和が会場の時はいつもお世話になっているお店を借り切って盛り上がる。六本木でもちょっと裏通りになると、こんな落ち着いたお店があるのだ。お味もよく、お値段もリーズナブル。YPCは常連さんになりつつある。
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