例会速報 2014/01/19 神奈川学園


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授業研究:ピア・インストラクション型物理授業の改善 西村さんの発表
 西村さんは、現在修士論文として取り組んでいる「ピア・インストラクション(PI)型物理授業の改善に関する実践研究」を発表した。発表内容は、講義とPIを繰り返す従来のPI型授業の改善を目的として、メタ認知の促進のための「振り返り」と、先行オーガナイザーを与えるための「予習」を新たに導入した授業の実践に関するものである。
 

 西村さんはさらに、「振り返り」と「予習」の評価方法を考案し、それを用いて授業を定量的・多角的に分析することも試みた。
 


 例会では、「予習」を行うことの意義、「振り返り」の実施方法、学校、生徒の実態の応じた授業展開の工夫、概念調査に見られる文化の差等について議論が行われた。


 西村さんは「YPCの皆様から頂いた意見を生かし、来年以降もPI型授業を実施し、生徒の実態の応じた教材作りや授業展開の工夫を重ね、より良い授業作りに取り組んでいきたい。またPI型授業の詳しい授業展開やPI問題についても議論の時間を頂ければありがたい。」と語る。
 


0.5mmのコマ 海後さんの発表
 海後さんが12月例会で紹介してくれたマイスター社のコマの実物が回覧された。本当に小さく、ルーペでやっとその形が観察できる。ノギスで実測したら実際は0.8mmだったそうだが、それでも真似できない極小サイズだ。10個譲ってもらったそうだがすでに3個紛失。考えた末に、海後さんはグローブボックスのような両手だけ入れて作業できる透明の箱を制作中で、完成したら改めて指回しに挑戦して成功したら報告してくれる予定だ。
 

磁石で遊ぶ 海後さんの発表
 写真左はグランドイリュージョン社のHPで販売されている「インバーターマグネット」を参考にして作ったもの。小さい磁石が2個接着されている磁石を動かすともう一方の磁石が付かず離れずに一定の距離を保って付いてくるのが面白い。動画(movファイル3.3MB)はここ。ダイソーのネオジム磁石で安価に作れる。
 写真右は「自重を垂直に吸い上げる最長距離を持つ磁石」ダイソーで4個セットで売られているネオジム磁石は非常に強力なので、どの位の高さまで
同じ磁石を吸い上げられるか実験してみたところ、内側の距離で33mmもあった。缶コーヒーのオマケのプラケースを利用するとちょうどギリギリの高さになり、ほぼ宙に浮く寸前のふらふらした状態を観察できる。その状態でケースに少し振動を与えるだけで上の磁石に吸い上げられるのが面白い。動画(movファイル3.5MB)はここ
 

反磁性磁気浮揚 海後さんの発表
 角型のネオジム磁石上にシャーペンの芯が浮くという事を知って、海後さんは試行錯誤を繰り返し、たまたまコンビニで購入したパイロットの高純度グラファイト(黒鉛)芯が高く浮くことを発見した。6mmの樹脂板に角穴を開けて、5㎜の磁石をNS極が市松模様になるように配置している。確かに浮いていることを示すには横からマグライトの光を当てると見やすい。動画(movファイル2.9MB)はここ
 

 芯を浮かせるだけでは発展性があまりないので厚さ0.12mmのグラファイトシートを購入。好きなな大きさ・形状に簡単にカットできる上に、少し曲げると浮上中の安定性に違いが出るのが興味深い。磁石の石畳の上に魔法のじゅうたんのように浮かび、滑るように自由に動く。感動的である。(movファイル1.6MB)はここ
 

 また、浮上中のグラファイトに光を当てると動かせるという研究を見つけたので、早速に例会発表時に持参したレーザーポインターで実験してみたが残念ながら動かなかった。光熱変換には何か条件があるようだ。
 反磁性の磁化率はビスマスが最大であるとのことで探したところ、釣り具のオモリに、鉛に比べて生物に無害なビスマス金属が代用として使われていることを知り、試しに購入して(写真右)、薄くナイフで削って実験したところ、浮かばず。別な金属との合金かもしれないとも考えたが、グラファイトに比べてはるかに比重が大きいことに気が付いたそうだ。海後さんの徹底した探求心にはいつも感心させられる。
 

サウンドマグネット 海後さんの発表
 以前からYPC例会でもたびたび紹介されているサウンドマグネットと同じように空中に投げると音が鳴るネオジム磁石を昨年12月ナリカ例会のガレージセールで入手した。調べたらスティッキーストーンという名前で販売されているものだった。これを強力なボンドで2個を繋ぐようにゴムひもを接着する。そうすると空中に投げて失敗してバラバラに落ちてきてもキャッチし易くて床に落とさない。さらに両手でゴム紐を持ち磁石をぶら下げ、引っ張るようにしながら磁石をぶつけると反発振動音が長時間続く。
 

渦電流による引力と斥力 海後さんの発表
 スタンドから一円玉や10円玉をぶら下げてネオジム磁石を急速に近づけたり、くっ付けた状態から急に離したりして発生した渦電流による引力や斥力を観察できる実験器具の提案。特徴は、コインを二本の紐でぶら下げてコインが安定して振れるようにしたこと。数種類のコインを繋いでおくことで、連続して実験できる。

発熱実験キット 車田さんの発表
 ミズノの発熱性繊維「ブレスサーモ」の発熱実験キットを例会で実際に試してみた。体から発汗によって出る水蒸気が繊維表面に吸着されるときに、吸着熱が発生して温まるという仕組みだ。 水をしみこませると、確かに3-4度温度が上昇し、手のひらで握ってみると確かに暖かく感じる。


 車田さんによると、2004年に日本科学未来館で、特別展「疾走するファイバー展」でミズノが同じもののサンプルを配布して発熱実験をしていたそうだ。それが2012年に商品化されたとするとずいぶん時間がかかったと思う。


力は時間と一緒にはたらく? 長舩さんの問題提起
 2013/07/21・鎌倉学園での例会で案内、紹介があったDVD付書籍である。この例会のときに重大な問題点がすでに指摘されていた。長舩さんはこの度仮説社から出版されたものを購入し、中身を確認してみた。
 DVDは製作の苦労が感じられ、よくできている部分もあるが、解説ナレーションや力の矢印の図示、アニメーション表示には大きな疑問が残る状態である。(写真の赤矢印は花瓶を引く力を表しているというのだが…。)
 本はDVDの内容を解説しているが、疑問箇所の主な例を挙げると「力は時間と一緒にはたらく」、「前向きの力がはたらいていない」、「勢い=スピード」、『「速さ=力×時間」の法則』、「ものが動く速さは力の大きさと力をかけ続ける時間の掛け算で決まる」などなど・・・。
 長舩さんが後日仮説社に訪問して確認したところ、少なくとも板倉先生の目は通過していないとのこと。出版内容の意図は物理の入門向け、生活感覚を活かすところにあるという説明を受けたが、そういう意図なればこそ正しく表現していく必要があると感じる。
 

二次会 横浜駅前「えん・ジョイナス店」にて
 18人が参加してカンパーイ!今回も発表内容が充実していて一つ一つに時間がかかり、設定された時間内にエントリー項目をこなしきれなかった。YPCではよくあることだが、せっかく準備してきたのに発表できなかった方々ごめんなさい。それにしても、毎回発表テーマが尽きないというのはすごいことだ。


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