例会速報 2014/02/16 東大附属中等教育学校


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授業研究:中学2年の「音」 武捨さんの発表
 中高一貫校の中学2年の「音」の授業の報告。「学び合い高め合う中学理科の授業」(大月書店)のプランをもとに展開した。
 1時間目は「音源」。ギターの実物やハイスピード映像、紙テープをつけたスピーカーなどを演示し、音源が振動していることを確かめさせた。おんさも実際に触らせた上で、ハイスピードカメラでも撮影し、振動していることを確かめさせた。例会では、首を手で振れながら声を出して声帯の振動を確かめさせる実験は、簡単で効果が高いというアドバイスがあった。
 

 2時間目は「媒質」。真空中では音が伝わらないこと(写真左)、音源を水に沈める実験などで、媒質が液体や固体でも音は伝わることを確かめさせた。媒質が固体の例として、糸電話の実験をさせた。例会では、他の例として鉄棒や線路のレール、バネ電話はどうかという意見があった。右の写真は糸電話の一端に小さなスピーカーを付けて振動を伝える実験。
 

 3時間目は「音速」。生徒5、6人を廊下に並ばせて、音が聞こえたら手を挙げる、という定番の実験をやらせてみた。脇で見ていてよく分からなかった生徒もいたようだが、その場でハイスピードカメラで撮影しておき、教室で再生すると確かに音源から遠いほど遅れて 手が挙がる様子が分かる(写真左)。その後、イージーセンスの音センサーを使って音速を求めた(写真右)。(参考http://www.easysense.jp/easysense2/es2_set_phys.html)音源にはエアキャップ(プチプチ)を使った。
 

 4時間目は「音の三要素」。イージーセンスを使い、発振器から出した音や声の波形を観察した。右の写真は市原さんに教えてもらったストロー笛で口の形を変えることで音色が変わることを示す実験。「あいうえお」がなんとなくききとれる。
 

反磁性磁気浮上Part2 海後さんの発表
 海後さんは本業の樹脂加工技術を利用して、超伝導リニアの実験模型を真似て、反磁性磁気浮上用のトラックをアクリルで作ってみた。4mm角のキュービック・ネオジム磁石をNS市松にして、84個×2列に配置している。もちろん、超伝導とは違ってピン止め効果はないので、壁を高くして飛び出さないようにしているが、磁石の幅に対してのグラファイトの幅の比率を微調整すると、飛び出さずに周回するようにできるかもしれない。

 下は磁石から0.5mmほど浮き上がってグラファイトシートがなめらかに運動するようす。舟形のものはわずかに反りを加えて安定性を増している。

 

二重反転ジャイロゴマ 海後さんの発表
 今年の「おおた工業フェア」に出展していた「チーム職人魂」のブースに一品製作の巨大な地球ゴマが展示されていた。なん同軸にベアリングでフリーに支持された二枚の円盤があり、上下独立に回転させることができる。グラインダーに手作りの反転アタッチメントを装着したスターターで毎分1万回転前後の高速で互いに反転回転させている。数軒の町工場が協力しあって試作したとのこと。例会では動画が披露された。
 等速で互いに反転回転させると、お互いの角運動量が打ち消しあってゼロになり、ジャイロ効果が働かないので倒れるが、一方の円盤の回転を親指で止めるとジャイロ効果が復活して、コマのように立つ。高速回転しているのに円盤が逆転するだけでジャイロ効果が無くなるのはとても不思議な感じだ。
 コマのジャイロ効果については、EMANの物理学サイトの「コマはなぜ立っていられる?」という記事が詳しいが、この記事の中で作者が、現実には分かりやすい現象が起きていても、ベクトル表現によって私たちの目を塞いでしまっているという指摘には、耳が痛い人も多いと思う。
 

コマ大戦大田区場所報告 海後さんの発表
 海後さんは昨年2月に1回戦負けした大田区場所ユニーク部門に今年も参戦したが、いきなり1回戦で昨年優勝したチームカジミツと対戦してまたもや1回戦敗退。しかし、コロンブスのタマゴマも少しずつ完成度が高まってきているのを感じたので、来年の大田区場所でのリベンジを果たすべく、再度設計を変更して挑戦するつもりでいる。
 今年のユニーク部門では、重さ4グラムの吹きコマタイプが決勝に残ったほか、モーターで回転させてコマを分離してからそのモーターが土俵上を振動しながら移動して相手のコマの回転を妨害するとか、ベアリングで支持されたカバーをつまんでコマ本体を袖に押し当てながら数回すべらせて回転数を上げてから土俵に置くタイプなど、町工場の職人の発想の豊かさが発揮されていて、とても楽しくて興味が尽きない大会だった。
 

ウエーブマシンを使った長さと共鳴の実験 加藤さんの発表
 会場校の物理室の備品、3連のウエーブマシンの紹介があった。腕の長さが違う(従って振動の周期が異なり、波の速さが異なる)二台のウエーブマシンを、テーパになった連結部分で接続してインピーダンスマッチングをとり、波の反射が生じにくいようにしている。波の速さの違う媒質に波が進入するときの様子を観察することができる。動画(movファイル3.7MB)はここ。テーパの部分をはずすと媒質の境で反射が生じる。動画(movファイル4.0MB)はここ
 

 加藤さんの授業では、この装置を気柱共鳴の説明の際に使っている。振動数によって、共鳴する長さが違う(長さが合わないと共鳴しない)ことの説明である。ウエーブマシンの端ではなく中途半端な所の棒を振動させることで、入力振動数は同じでも左右の長さが異なるので、片方だけが共鳴していて(大きな定常波ができている)、もう一方はほとんど振動しないようなモードを作ることができる。この装置では二つのウエーブマシンで波長の違う定常波が接続した状態を作ることもできる(写真右)。動画(movファイル2.1MB)はここ
 

 さらに、この製品の優れているところは格納性である。それぞれのパーツは台の部分を広げるようにして平たくつぶすことができ、コンパクトに収納できる。例会出席者には大変好評だった。

フレミングの左手のプリント用図 水上さんの発表
 水上さんは、磁場の中の電流がうける力の向きの説明に用いるためにフレミングの左手の図を描き、ワードファイルに貼り付けた。電流と磁場をx,y,z軸に当てはめるすべての組み合わせ24通りがそろっている。自分の左手を撮影してその輪郭を描画ソフト「花子」でなぞって描き、誰でも使えるようにワードに貼り付けた(写真左)。授業でもいちいち左手の絵を板書するのは大変なので、授業プリントを投影し、その場で適切な図を貼り付けながら説明している(写真右)。
 

 電流と磁場の関係(右手親指の関係)を示す右手も描いた。ワードへの貼りつけは現在作業中とのこと。乞うご期待。

ユンケルのCM 武捨さんの発表
 イチローが登場する佐藤製薬のユンケル黄帝液のCM。慣性の話題として、だるま落としのかわりにどうだろう。新聞での紹介記事には「…下に加わる重さを強めにするなど、工夫を凝らしましたが、それ以外に仕掛けはありません…」とある。箱の中身の重心を下げてあるということだろうか。製品そのものではなさそうだ。
 

iPhoneを授業でちょっと使う 三宅さんの発表
 普通教室ではなかなかICT機器がそろいにくいが、三宅さんは気軽に使用できるiphoneを使って頻繁に授業を行っている。紹介してくれたソフトは3つ。
・slide shark(クラウドに上げておけば編集はできないがパワーポイントが使用できる)
・Touch the video (mpeg4などの動画形式をコマ送りできる)
・カメラ(iphoneにあるカメラをそのまま書画カメラにし、そのまま投影。また生徒のノート、プリントなどを撮影すれば気軽に記録がとれる)
 

 右下の写真にあるパワーポイントのスライドはエネルギーをイメージしたもの。重力による位置エネルギー、重力のする仕事、運動エネルギーはすべて同じ値、同じ単位となることを1万円で例えたという。
 

デジカメで惑星撮影 益田さんの発表
 SONYのミラーレス一眼カメラNEX7に200mmの望遠レンズをつけて(左)天体を撮影したところ、月はクレーターがはっきり写り、木星の撮影ではガリレオ衛星を確認することができた(写真下)。三脚を使用し、セルフタイマーで振動を抑えての撮影。画素数が大きく分解能が高いことと合わせて、かなり暗い天体でも固定で写せる感度があるということだ。天体が望遠鏡なしで撮影できるようになったことはすごいことだと思う。右下の写真では木星の本体は露出オーバーで飛んでいるが、露出の調整次第では、大赤斑や縞模様も期待できそうな分解能である。


 

アンドレアモザイク 越さんの発表
 越さんは、2013年9月の文化祭でクラス発表の一部として作成したモザイク写真を紹介した。「アンドレアモザイク」というフリーソフトを用いると、写真のようなモザイク写真が簡単に作成できる。詳しくはここ。なお、越さんは同じく2013年9月のYPC例会でも、文化祭の様子を報告している。
 下の写真左は1000ピースからなる有名なアインシュタインの「人間味」という写真のモザイク写真。写真右は500ピースからなるドラマや映画「ガリレオ」シリーズの「ゆかわくん」というキャラクターの絵のモザイク。何れもすべてのピースは修学旅行や文化祭などでの生徒の写真である。写真の2枚はA4版にプリントするために作ったもの。文化祭ではみんなで協力して、実際に小さく(3×4cm位)プリントした写真をピースとし、1枚1枚並べて貼り付け、およそ1m四方の大きさの「ゆかわくん」を製作した。大きなジグソーパズルを作っているようで、生徒たちは楽しみながら作っていた。
 

直角プリズムを使った光の屈折の実験 加藤さんの発表
 ガラスブロックと虫ピンを利用した屈折の実験の応用である。加藤さんの授業では、台形ガラス(直方体)で屈折の実験を1時間、その解説を1時間行った次の時間に行っている。直角プリズムの中の光の進み方を予測させる課題である。右の写真の生徒レポートで、図1、図4は入射角45°、図2は入射角0°、図3直角三角形の斜辺に当たる部分がぎりぎり全反射にならない角度で設定している。実際の授業では、入射角0°でも、屈折させてしまう解答や、入射角45°でも直進させてしまう解答が続出し、生徒の理解が浅いことを思い知らされた。加藤さんは、この生徒実験のレポートを提出させた後、授業でレーザー光を用いて正解を確認するようにしている。
 

プリズムの定規 益田さんの発表
 益田さんが美術館の売店で購入したという定規。100円とお安いが、透明な正三角柱なので、プリズムのように使える。屈折、全反射なども確認できた。断面をのぞき込むと万華鏡のような世界が広がっていた(写真右)。教材に使えるかもしれない。
 

QBiC 佐々木さんの発表
 以前に佐々木さんが例会で紹介した、エルモ社のウェアラブルカメラ「QBiC」が、リニューアル。小さく、スタイリッシュになりながら、3段階切り替え式の超広角レンズ、F2.2の高感度レンズ、20㎜まで迫れる接写性能など、クラスNo.1の機能も有する。スマホとWifi接続してモニター兼リモコンとして使用するため、自由なアングルで撮影可能。防滴仕様なので、フィールドでも手軽にフルHD動画撮影やインターバル撮影に使える。このタイプのカメラでは、米国GoPro社が圧倒的シェアを握っているが、理科教育分野で手軽に使うなら、エルモ社「QBiC」もおすすめ。
 

撮影用小物 佐々木さんの発表
 ガラス越しの撮影の際の反射、カメラ自身の映り込みを防ぐアイデア商品。水族館等の展示物の撮影に威力を発揮する。黒い布の真ん中にある「穴」にカメラのレンズ部分をセットし、ガラスに近づいて撮影すればよい。「穴」は伸縮する素材でできており、一眼からコンデジまで、様々なレンズ口径のカメラにフィットする構造。裏面は白色で、簡易レフ板としても使用可能で、たためばコンパクトに収納できる。
 

ハコビジョン 佐々木さんの発表
 プロジェクションマッピングを模した食玩。東京駅の半立体フィギュアにスマホから動画を投影する仕組みになっていて、指定のURLにアクセスすると、東京駅で実際に行われたイベントと同様のプログラムを手のひらサイズで楽しめる。
 

 左は箱の上にスマホをのせた様子。透明板がハーフミラーの役割をして、後ろの半立体東京駅模型に映像を重ねてみることができる。暗い部屋で見るとリアリティが増す。このほか、東京国立博物館のモデルもあり、次回はガンダムで2種類が予定されている。人気商品で今は品薄のようだが、取扱いは食品スーパーのお菓子売り場がメイン。
 

燃料電池 古谷さんの発表
 古谷さんから燃料電池実験器が放出された。ナリカのガレージセールで入手したものだそうだが、ほしい人にあげるということで目黒さんが譲り受けた。左右からそれぞれ水素と酸素を供給してやれば起電力を生じるというものだが、たとえ壊れていても実物を授業で見せることは重要である。分解して構造を見るだけでも勉強になる。

二次会 幡ヶ谷駅前「呑兵衛幡ヶ谷店」にて
 14人が参加してカンパーイ!新たな学生メンバーも加わって、賑やかに交流会を行った。2/14の大雪の直後なので、まだ道ばたには大量の雪が残る中での例会となった。この大雪は東京では45年ぶりだとか。そういえば自分の高校入試のころ、たびたび大雪が降ったが、それがどうも45年前の出来事らしい。歳がバレるが、YPCメンバーは年齢層が幅広いので、その頃はまだ生まれていなかった人が半数以上いる。


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