例会速報 2017/02/12 東洋英和女学院中学部高等部


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授業研究:チュートリアル「光と影」の実践報告 長舩さんの発表
 長舩さんは、以前勝田さん・武捨さんの実践報告(2014年7月例会)で紹介のあったワシントン大のテキスト、Tutorials in Introductory Physics(通称「チュートリアル」)(写真左)の「光と影」の課題を授業で実践してみた。中1、40人クラスで4人を1班にして、「課題提示->予想->議論->実験->振返り」を繰り返していき、生徒の主体的学びを促進していくように進行していく。予想の議論や実験結果をB4白紙に書かせ、黒板や書画カメラで写して共有し、振返りを発言させる。通常授業の中で実施したので本来のチュートリアルとは少し違う形式で進むが、班ごとの活動を誘導していき、互いに気づき、教え合い、学び合うことを手助けしていく展開を優先した。


 大きな課題は10個用意し、50分授業で2~3個の小課題をやるため9時間(定期試験を含む)を費やした。先行実施例にもあるように、課題を厳選すればもう少し短時間での実施も可能である。定期試験にはチュートリアルの問題を4割程度出題し、ポストテストのようにして効果をはかった。
 課題4の直線電球を使ったところから生徒たちは様々な予想を考え、すぐに結果を受け入れられずに驚いていた。結果からなぜそうなるのかと原因を考えさせると、班同士の議論も盛り上がった。さらに、影の単元ではこれまでの予想を裏切られるので、ここでまた生徒たちは葛藤して悩んでいる姿は興味深かった。


 参加者からは、達成目標の1歩手前の課題レベルで展開するほうがよいのではないか。中1ということを考えればもっと日常で観察できる影に着目させて、光の直進性を認識させてはどうか。課題もマスクの穴を通過する光より、影の課題から展開するほうが自然ではないかという案も出された。
 なお、実験で長舩さんが使った直線フィラメント電球は以下の通り。東芝:白熱電球 ミニクリX(45W)、ナリカ:直線電球 6V (光学用水そうRT-100用)。前者は使っているうちにフィラメントが曲がるのが難点、後者はややお高い。


デジタル容量計によるコンデンサーの生徒実験 山本による宮田さんの代理発表
 宮田さんは秋月電子のデジタル容量計CM-7115A(中国製:1270円)を使って、コンデンサーの電気容量の式(C=εS/d)を確認する定量的生徒実験を開発した。安いので班の数だけそろえることができる。容量専用の測定器だが、計測レンジが広く、測定値もそこそこ正確なようで、予備実験の結果は上々である。


 生徒実験は、キッチン用アルミフォイルを両電極とし、誘電体としてOHP用のトラペンシート(厚さ0.1mm)を用いる。まず、dへの依存性は、トラペンシート6枚を重ねて電極間にはさんだ状態から一枚ずつ減らしていく。次いで、Sへの依存性は上側のアルミ電極をずらして重なりを減らしていく(写真左)。そのままだとアルミ電極が浮いてdの誤差になるので、物理の教科書(A5サイズ)を1~2冊上に乗せて「おもし」にするとよい(写真右)。写真のサイズの平行平板コンデンサーで1nF前後の容量になるので、この容量計なら余裕で測定できる。データの直線性は非常によく、生徒実験としては十分な精度が出せる。宮田さん提供の生徒用実験テキスト及び予備実験データ(PDFファイル466KB)はここ


コードレスハンダごて 高橋さんの発表
 コードレスタイプのハンダこて。ガスカートリッジを使うものもあるが、これは単3電池×4本。ボタンを押している間だけ通電され、手を離せば比較的はやく冷めるので安全。そのまま置いてもこて先が下につかない形状なのでスタンドも不要。ボタンを押して7~10秒で使用可能な温度になると説明書に書いてあり実際殆ど待たされる感じはないとのこと。
 使用可能時間はアルカリ電池で連続約30分。短いようだが、通電してる時間は短いので結構長く使えそうだ。めったにはんだ付けをしない高橋さんにぴったりとのことだが、コードの煩わしさがないのはパワーユーザーにも嬉しいかもしれない。
 商品名:「RELIEF 87000 電池式コードレス半田ごて」、価格は1700~2200円程度。同じく電池式で他にも、エンジニアの「充電流コテのすけ SKB-01」、白光の「HAKKO FX901」などがある。


ゴム動力コプター 天野さんの発表
 毎回改良を重ねている天野さんのゴム動力トンボ改め「ゴム動力コプター」。3回目の今回の発表でまとめとするはずだったが、本番ではうまく飛ばず、残念!原因は材料の変更による重量超過などが考えられると、ご本人は分析。それはそれとして、材料を紹介しよう。
 まず、動力源のゴム。1回目の発表では、1mm角10mの模型飛行機専用糸ゴムを使用、非常に成績がよかったが正価で1000円もするので量産には不向きと判断。2回目は、動力をダイソーの輪ゴムとしたがうまく飛ばなかった。今回3回目は、動力にゴムバンド#660(厚さ1mm幅3mm全長26cm)を3本使用した。
 機体のストローはダイソーのタピオカストロー(写真右)が軽くてよい。ハンズのタピオカストローは、丈夫で見た目には美しかったが、重くて×だった。


 自宅での試作時は飛んだが、量産する時プロペラに重たい厚紙を使用したのが敗因と天野さんは考えている。ゴムもパワーを求めて太くすると重くなるというジレンマを背負っている。チョイスが難しいところだ。天野さんは、別のゴムも調達済みで「次回の例会には、飛ぶゴム動力コブターを、発表できる予定です。」といっている。期待しよう。
 最後にゴムを巻く道具も紹介しておこう。60代以上の昔模型少年だった方にはおなじみかもしれない。ユニオン・ホビーパーツ(株式会社スタジオミド)の「ワインダー」(1200円)である。回転比は1:4。ハンドルを1回転させるとゴムは4回転分巻かれる。


熱と温度 菅原さんの発表
 初参加の菅原さんからは、最近若者に人気というパイロットの「フリクション」ボールペンを授業で取り上げたという報告があった。ゲルインクのボールペンだが、ペンのおしりのところの消しゴム状「専用ラバー」で強くこすると色が消える。消しゴムと違って減らないし、したがって消しクズも出ない。もちろん消した上には再び字を書くことができる。
 文字が消える仕組みは、パイロットが情報提供する「インクの秘密PDF」および「もっと知りたい!フリクション」にゆずるが、要するにロイコ染料配合の温度によって色が変わるマイクロカプセル顔料を使っている。ラバーによる摩擦熱で65℃以上になると透明になるという。そして、実は冷凍庫やコールドスプレーで-10~20℃に冷やすと消えた色が復活する。したがってこのインクは証明用には使えない。


 菅原さんは、熱と温度の単元の導入にこのボールペンを使った実験を取り入れて生徒の興味づけをねらった。例会会場でも、さっそくドライヤーを持ち出して、みんなで検証実験が始まった。

牛乳にイソジンうがい薬をたらして作るパターン 夏目さんの発表
 夏目さん曰く「たぶん世界初」の化学物理実験。キーワードは「撥水・液相-液相分離系・表面張力・マランゴニ効果」だ。物理学会の2014年秋大会で発表済み。
 準備するものは、牛乳、イソジンうがい液と金属トレイまたは瀬戸物の平らな皿。トレイに牛乳を注ぎ(写真左)、薄く広げた中央部に、イソジン液の原液を注ぐ(写真右)。すると、それまでトレイを濡らしていた牛乳がさっと周囲に退き、イソジン液に場を譲る。そしてイソジン液のまわりを囲むように牛乳の白いリングができるが、複雑に動きながらゆっくり広がっていく。。動画(movファイル9.0MB)はここ


 夏目さんは、現象の原理を詳しく説明してくれた。表面張力の差によって生じる「マランゴニ流」がその主役だが、イソジンうがい液の酸により牛乳のカゼインがミセル化して粘性が増し、「乱流抑制」が起こっていると分析する。外に向かう牛乳の流れは渋滞して盛り上がり、白いリング状のパターンを形成しているのだという。
 水だと乱流のすばやい変化となり、このようなパターンはできない。一方、無水エタノールでは牛乳の粘性を増さないので単純なパターンのまますばやく広がり、牛乳のリングはできないのだそうだ。身近な材料で追試できるので、どうぞお試しを。


電気のフライパンと電気クラゲ 越さんの発表
 2014年8月の例会でも紹介があった電気のフライパンだが、今回は帯電ボード(起電盆)として+に帯電させたアクリル板を用いた。この場合、アルミ皿はーに帯電する。そこで、スズランテープ(ポリエチレンやポリプロピレン製)で作った電気クラゲをアルミ皿に置いておくと、電気クラゲもーに帯電し、これを浮揚させることができる。また、水風船も同様に浮揚させることができる。
 以前紹介された実験では帯電ボードとしてーに帯電させた塩ビ版やサランラップを用い、ティッシュペーパーで作った一反木綿などを浮揚させた(写真左)。この場合には、アルミ皿は+に帯電するので、-に帯電しやすい電気クラゲや水風船を-に帯電させ、浮揚させる事はできなかった。
 なお、今回の電気のフライパンでは、絶縁体の柄の部分に直径10mmのタピオカストローを用いた。
 例会中、帯電ボードの帯電が足りないとみるや、ドライヤーやアルコールがどこからともなくすぐに用意されるのは、達人揃いのYPCらしい光景だった。


腕時計 シチズン・カンパノラ・コスモサイン 益田さんの発表
 星座盤が組み込まれている腕時計(写真右側)。4.8等星以上の恒星、星雲、星団が印刷され時刻に合わせて動く。益田さんがずっと探していた時計で、昨年末に再販された。非常に細かい印刷で、その精密さは息をのむが、肉眼では確認できない。ルーペが必須だ。以前、益田さんが紹介してくれたこともある地球をイメージした腕時計「Wn-1ThinkEarth」(写真左側)とならべると面白い。
 これだけ細かい細工なので、値段もなかなか。例会では益田さんからうかがったが、ここにはあえて書かない。興味があったら調べてみてほしい。


FR-10の活用 古谷さんの発表
 古谷さんは、昨年10月例会での佐々木さんの発表に刺激され、カシオEXILIM EX-FR-10を購入した(メーカー再生品で12700円)。上位製品のFR-100 は33000円、FR-200は41799円で手が出なかったため、再生品を最大限有効利用しようと試みた。
 この製品の一番の良さはカメラ部とコントローラー部が分離でき、しかも無線で繋がっているために対象物を手元で確認しながら撮影ができることだ。


 先ずは、流氷見物のチャンスにどう活かすか?自撮り棒との組み合わせで氷の世界のリアルな撮影を第一とし、第二に高画質な自分撮り(画素数1400万)とした。結果、①船上から流氷を背景(映像が鮮明)にした自分撮りができた。(写真右)②船尾の甲板から、船首付近で流氷が押しのけられ、回転しながら流れてくる様を動画で撮影できた。
 後日、製品の付属品を調べたところ、様々な部品の販売が確認されたが、古谷さんは手持ちの部品を使い、格安に仕上げ、活用できたことに一応満足している。今後は、上手く回転体に取り付け、リアルタイムで普段容易に体験できない世界を楽しみたい、と古谷さんは語る。


授業研究2:ブラックボックス 市原さんの発表
 市原さんはナリカのブラックボックスセットを、班の数だけ手に入れたので、それを利用した授業をやってみた。その実践報告。
 A〜Dの4種類の内部構造を持つブラックボックスを用意し、その箱についている4つの端子に豆電球を接続して、その明るさを比べ、内部構造を推定するというもの。中には電池2個を入れてあり、生徒はその「電池2個」という条件を元にどのように配線されているのかを考える。
 現状は、やや共同学習のような行動をするも、この手のことに長けた生徒がパズル的に解いてしまい、あまり学習として深まっていないようにも見受けられる。


 生徒の感想は、大体は楽しかった、普段使わない脳を使った、などと好評なのだが、もう少し議論の余地がある工夫などができないかとも感じた。例会出席者からは、測定端子にダイオードをつけて電池の正負を特定させてはどうかとか、回路を(一意に決まるように)考えさせて、互いに当てさせるようにしてはどうか、などという意見が出た。写真右はブラックボックスのふたをあけたところ。回路は若干組み替えができ、授業では4種類用意した。


二次会六本木駅前「たん丸」にて
 17人が参加してカンパーイ!お休みのところをわざわざYPCのためにお店を開けていただいた。六本木で貸し切りってすごい、と思うが、お値段は大変リーズナブル。珍しいタン料理もいただける。東洋英和での例会の時はみんなこの店での二次会も楽しみにしているのだ。二次会だけ参加という人もいた。
 


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