例会速報 2020/08/16 Zoomによるオンラインミーティング


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授業研究:休校中に行った音声配信の授業(3年物理) 小沢さんの発表
 小沢さんは休校期間中に行ったオンライン授業について報告した。Zoomや動画配信をする先生が多い中、あえて「音声配信」を選んだ。ラジオにはテレビよりも想像力が掻き立てられる一面があるし、適度に不親切な方が頭を使うと思ったからだ。
 高校3年生の物理は、本来週4時間だが、休校期間中は週2回、音声ファイルといっしょにプリントもPDFで配信して、要点を絞った課題を与え、Google Classroomで回収する。1回の配信は、前編(PART-Ⅰ)と後編(PART-Ⅱ)に分けて、取り組みやすくした。長短に差があるが、各編が10分程度のmp3音声ファイルになるようにした。例会では、例として、単振動の導入の部分を聞いた。音声ファイル(mp3形式:3.0MB)はここ。プリントのファイル(pdfファイル:206KB)はここ
 この授業ではまず、「安定なつり合い」と「不安定なつり合い」を取り上げ、振動には「安定なつり合い」が必要であることを説明。横にした卵が揺れる音を聞かせる。

 

 次に、水平ばね振り子の実験。これも音だけである。参加者からは、ふだんは気づかなかったけれど、音だけを聞くと、端で速度がゼロになっている様子がよくわかる(音がしない)という感想が聞かれた。

 

 最後に単振り子の実験である。動画を使わずに、音声配信でどうやるのかという疑問を当然もつが、小沢さんは感光器(明るさによって発する音の高さが変わる装置:写真右)を使って、振り子の揺れを聞かせ、質量を変えても周期が変わらないことを示した。
 小沢さんが参考にしたのは視覚特別支援学校の実践だそうだ。『手で見るいのち』(岩波書店)という本の中で、大学の理系学部に進学した全盲の学生さんの話に関連して、「科学は原子や分子など目に見えないものを扱っている。水だって酸素と水素が結合しているが、それが直接は目で見えるわけではないのに、私たちは原子同士の結合角までわかっている。」と書かれた箇所を読んでひらめいたそうである。目に見えない「概念」を、実験の事実をもとに論理の目で見ていくことが「物理」である。小沢さんのオンライン授業は、それを生徒に伝えたいという思いが込められている。この話には例会参加者一同感動した。
 『手で見るいのち』amazonリンク:https://www.amazon.co.jp/dp/4000240595

 

ポテトチップスの袋に画びょうで穴をあけたときの断面構造 永田さんの発表
 永田さんの、SEM(走査型電子顕微鏡)による観察シリーズ第3弾。
 前々回の例会で、「ポテトチップスの袋に画びょうを刺して導通をチェックしたところ、高い抵抗しか得られなかった。その理由が分からない。」という質問があった。そこで前回永田さんは、ポテトチップスの袋の断面をSEMで観察したところ、約1.5μm厚さのアルミ膜が樹脂の中央に含まれていることが分かった。
 さらに、画びょうの穴の断面ようすを知りたいという要望があったので、今回はその観察を試みた。下の図は 画びょうを袋に刺したようす。


 下の図はその結果できた穴のようす。針は抜いてある。画びょうの穴はほぼ0.3mmくらいだった。その断面をナイフで切り出しSEMで観察した。


 下左の図はナイフで切り出した断面の光学顕微鏡像。右の図は左図の右側の穴の断面のSEM像である。


 左は上の図と同じ穴の先端部の拡大。右は先端部のアルミ層と画びょうを刺した様子を加筆図示したもの。このように、画びょうを刺しても、アルミ層は上下の樹脂に覆われて画びょう面との接触が難しく、導通が難しいことが分かった。
 身近なちょっとした謎がSEMによって一目瞭然に解決されるのは快感である。例会参加者からは絶賛の声が上がった。


CD/DVDの干渉模様 天野さんの発表
 前回7月例会の発表の続編。CD/DVDにレーザ光を当てたときに見える、新たな干渉縞の観察をしやすくするために、CD/DVDを厚紙にテープで固定し、なおかつレーザ光を当てる場所をテープを目印にして特定するようにした。

 スクリーン(鉛直面)に対してCD/DVDの面が水平になるように配置し、斜め上から中心の穴の横のあたりをめがけてレーザ光を照射する。下の画像では右側がCD、左側がDVDである。スクリーンには、トラックピッチによる明るく間隔の広い(CDで24゜、DVDで62゜)点列も水平方向に現れるが(右側の画像で横に並んでいる明るい点)、それとは別に縦方向に、もっと細かい点列が現れる。左の二枚はその部分を拡大した画像である。

 画像だけでははっきりしないので、天野さんは手書きで輪郭を示してくれた。点列の間隔や明るさはCDとDVDでそう大きく変わらないように見える。トラックピッチは倍以上違うのに、である。
 点列の間隔はトラックピッチによる干渉縞の間隔の1/10以下である。しかも直角方向。これはどんな構造に由来する干渉縞だろうか。探究はさらに宿題となった。

シャボン膜への第三成分の注入 夏目さんの発表
 シャボン玉など界面活性剤(洗剤)による薄膜は光の干渉実験などへ多くの教材を提供してきた。界面活性剤を構成している両親媒性分子が親水基(下の手書きの図では青丸の端)を内側(水の方)に向け、疎水基(親油基、図では赤棒の端)を外側に向けて薄膜状態を維持している。水の持つ表面張力も重要な寄与をしている。最も簡単なのは、口が円形のコップを洗剤につけて持ち上げ、口に薄膜を作る実験(写真)である。これはよく知られている演示である。

 ところで、この膜へ水と洗剤以外の第3成分を注入するのは難しいと思われてきた。注入部分にかなり精密な装置を作る必要があると思われたからである。ところが、寺田勉さん(元防府市青少年科学館)が偶然にもその実験をしていた。それは、円形の口として、ガムテープの芯枠を使った実験である(下左の写真)。
 当初、寺田さんの実験で現れる不思議なパターン現象は原因がわからなかった。そこで、夏目さんは、さらにガムテープの芯枠を使って実験を重ね、サイエンスカフェ(なつめサイエンスカフェ2020Zoom)で検討したところ、それは芯枠から溶け出している成分(おそらく接着剤からの油性成分)であることがわかった。
 実際、動画で検討すると、下右のスナップショットのように、ある時点から出始め、点状になりつつ様々な色を示している。また、第3成分によって膜が壊されることはないように見える。実際、膜が壊れるのは紫外線領域の干渉である黒い斑点領域の拡大によって起こっている。

 この安定した油性成分の注入現象について、そのメカニズムは未だわかっていない。夏目さんは当初、石けん膜の外側が凸に湾曲していて、そこは両親媒性分子の親油基が並んでいるので油性成分は「油滴」となってその面を流れてくると考えた。左の図がそのモデルの模式図である。
 それに対して高杉強さん〈桜美林高校)からは、油性成分は界面活性剤によって親油墓に囲まれ、外側が親水墓であるミセル(おそらく球状)が形成され、それが薄膜の水の層に入ってくるというモデルが提案された。その模式図を右の図に示す(夏目さんの想像も含まれている)。
 この実験ぼガムテープの芯枠を使った偶然性のある試みなので、ごごからどのモデルが適切かを検証することは難しい。この興味深いテーマを理論的あるいは実験的に精密化をしていただける方がおられたら、その解決を委ねたいと夏目さんは考えている。

アプリ紹介:audials One 2020 古谷さんの紹介
 古谷さんは、パソコンで再生した音を高音質で保存できないだろうか?そのためには何が必要か?と模索するうち、自分のPCのタスクバー上にプリインストールされていたアプリを「発見」した。それまで気づかずにいたが、「何これ?」といじっているとなんと、「凄い機能」が満載の録音・録画アプリだった、という報告。
 それが標題の「audials One 2020」(ライフボート)である。合法的に画面表示・音声再生できるコンテンツならばファイル化でき、ファイルタイプの変換機能や、ファイル管理機能もある。ベクターの第34回プロレジ大賞の動画部門賞を受賞している。古谷さんによると、音質も上々だという。
 「audials One 2020」はコピープロテクトを解除するアプリではないので、このファイル化自体は違法ではない。
 Audials 製品の利用と法的情報:https://audials.jp/support/legal-information

 ただし、著作権法上、こうしてファイル化したものはあくまでも私的利用にとどめなければならない。そのファイルをネットにアップロードしたり、再配布・共有したりすることは明らかに違法である。改正著作権法では、「違法なコンテンツと知りつつダウンロードする行為」も刑事罰の対象になる。教育利用の範囲であってもすべてが著作権フリーで利用できるわけではないことにも注意が必要だ。

ボイスメモで落下時間測定(米田さん発案)の改良 鈴木健夫さんの発表
 昨年夏の科教協福岡大会で、石川県の米田雅人さん(今はYPCZoom例会に毎月参加)が発表していた実験の改良を、鈴木さんは2019年10月例会で紹介した。iPhone,iPadの「ボイスメモ」を使って、1mの高さからボールを落とすときの時間を、落としはじめの音と机に落ちた「トン」という音で測る。ネックは、落とし始める時間をどう拾うか(つまりその音をどうするか)という点にあった。昨年10月例会ではボールを紙に挟んで離すときの「ガサッ」という音を拾うやり方を取ったが、どうも良いデータが取れない。
 そこで鈴木さんは今回、100円ショップで3個セットで売っているプラスチックのカラーボール(ゴムボールではないもの)を使うことを思いついた。少し強めに握ってへこませておき、パッと離すと、「ポコッ」と音がする。これを「ボイスメモ」で拾えば、落下開始の記録として使えそうだ。

 実際に鈴木さんが授業で演示実験として行ったときの「ボイスメモ」の画面をスクリーンショットしたものが左の画像である。それぞれ、音が最大になっているところに青い線を合わせているのでピークが隠れているが、3.96秒から4.40秒までだということがわかる。したがって落下時間は0.44秒となる。理論値は0.45秒なので、かなり良いデータである。

webサイトの紹介:数学教材の倉庫 西村さんの紹介
 西村さんは,GeoGebraのシミュレーションが,高校数学の科目ごとにまとめられているWebサイトを紹介してくれた。
 GeoGebraはMac用のアプリケーションだが,Windowsでもブラウザ上で動かすことができ,直感的に操作できて使いやすい。今後,授業で実際に使用して,また報告したいと言っていた。

 こちらのリンクからどうぞ→https://sites.google.com/site/shuxuejiaocaigongyousaito/

右ねじとフレミングの教育困難 西尾さんの発表
 ソレノイドに流れる電流がつくる磁場の向きを求める「右ねじの法則」とローレンツ力の向きを求める「フレミングの左手の法則」を授業の課題として扱うと、法則の使い方を説明して類題をくり返しても、1~3割ほどの生徒・学生はなかなかできるようにならない。その原因はいろいろで、人によっては複合しているように見え、その後の復習レポート作成を経ても理解して活用するのが困難なケースがあった。


 西尾さんは、学生のレポートや誤答者からの個別の聞き取りなどから、誤答パターンを分析し、彼らがどのような思考過程の元に誤答に至るのかを追跡した。フレミングの左手の法則をうまく使えない例では、指の形を本来のものと異なる形(人差し指を曲げ、中指をまっすぐにする)にしていた予想外のケースもあった。



 右手と左手を取り違えたり、コイルの電流の向きの認識が誤っていたり、いろいろな誤答パターンがあったが、多くの誤答者は三次元の空間把握に課題を抱えているようである。
 例会では、これらの法則を使うのに必要な空間把握が苦手な生徒は一定程度いるという共感や、こういう教え方をしてうまくいっているなどのコメントが多くの参加者から寄せられた。ただ、学生に対して個別指導をくり返した西尾さんの経験では、一斉授業の教室での教え方を工夫するだけでは、救えない生徒・学生は残るように思える、とのことである。

ミツバチ偏光板 寺田さんの発表
 寺田さんは、子どもサイエンス教室のテーマに偏光板を取り上げてみたいと、「ミツバチ偏光板」を作ることにした。ミツバチは青空の偏光を見分ける目を持っていて、方向を知る手がかりにしているのだという。
 レイリー散乱では、太陽と90度の角度をなす方向からの散乱光は完全偏光になる。青空に円盤状に強い偏光状態をたどることができる(写真左)。青空が帯状に強く偏光されていることがわかった。偏光コンパス(右の写真)を活用すると偏光帯を想定しやすい。



 この青空の偏光帯と偏光板の間にCDケースをはさむと虹模様がみえた。青空を「偏光源」として用いることができるわけだ。ミツバチは目に偏光板を持っていて、これを識別できるのだそうだ。
 課題として、偏光板を通過する電磁波をモデル的に表すすだれ模様の表し方(偏光板の結晶配列方向と光の振動面の関係)が2種類あるようで、寺田さんはサイエンス教室での使い方を迷っている。
 寺田さんのYouTube動画を以下のリンクから見ることができる。
 https://youtu.be/9g7RLp7M7hI
 https://youtu.be/nTP7yVKRo0M
 https://youtu.be/-eSC7RXbmGw

ハッピーセットのおもちゃ 市原さんの発表
 小学館の図鑑NEOシリーズで、「新版 科学の実験」が7月に発売された。それに合わせて、マクドナルドのハッピーセットのおもちゃが「ドラえもんのわくわくサイエンス」シリーズになっている。ちなみに旧版の「科学の実験」は2009年の発売。どちらもガリレオ工房監修。実験が「図鑑」になる時代なのだ。
 さて、市原さんはおもちゃに釣られ、こどもをダシにして久しぶりにハッピーセットを購入してみた。第1弾4種類のうち、とりあえず、「かおが変わる!ドラえもん」(左)と「まとをねらって!空気砲」(右)をゲット。他のアイテムも近々手に入れると意気込んでいる。


 どちらもかなりしっかりした作りになっていて、少々乱暴に扱っても大丈夫そうに見える。ギアなどの内部構造が見えるよう、スケルトンになっていることは教育的だと思う。例会に参加していたメンバーからも、「うちも買いました」とか「この後買いに行きます」などの声があった。


合成速度・相対速度に使える?動画 市原さんの紹介
 市原さんは、相対速度や合成速度の参考資料として使えそうなものを探していた。調べていくうちに、自動車や船舶・航空機関係の用語に「コリジョンコース現象」というものがあることを知った。コリジョンは衝突。お互いに運動しているのに、相手が止まって見えるときは、相手の相対速度ベクトルがまっすぐ自分に向いていると言うこと、つまり「衝突コース」なのだ。動いて見えないものは発見しにくい。死角に入り込んでしまうこともあるので、危険な現象だ。
 相対速度の例として、教科書や問題集にもありそうなパターンの手頃な動画として市原さんが紹介してくれたのがこれ。
・コリジョンコース現象 https://www.youtube.com/watch?v=Z0el5pXJJrU
 一方、合成速度の例としては、授業に使うかどうかは別として、ちょっとネタに走ったものが見つかった。
・4匹の犬が歩く https://www.youtube.com/watch?v=LAO6-rkpYCY
・JamiroquaiのPV https://www.youtube.com/watch?v=4JkIs37a2JE
 最近は、エスカレーターは歩いてはいけません、と言われるので他の例の方が良さそうである。何か妙例があれば教えて欲しい。とのこと

二次会Zoomによるオンライン二次会
 20:30からの二次会にも19人が集まった。阿部さんはこのわずかの間に、市原さんの発表にあった「ドラえもんのわくわくサイエンス」シリーズ第1弾の残りの2アイテムもしっかりゲットしてきていた。左が「ディスクが回る!タイムマシン」、右が「回してみよう!タケコプター」である。やはりスケルトンで、ギアやカムのはたらきがよくわかるようになっている。二次会はいつものようにドリンク持参も可で、各自勝手に飲み食いしながら「科学的・教育的世間話」に花が咲く。ときには愚痴も出るが、離れていても心の絆で結ばれているから、寄り添い、支え合えるのである。コロナ禍、がんばって乗り切ろ~!



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