例会速報 2020/09/20 Zoomによるオンラインミーティング


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授業研究:生徒実験・電気回路の電位の可視化 吉岡さんの発表
 吉岡さんは、高1物理基礎の電気回路の授業を進める中で、回路上の電位のアップダウンを生徒は認識できていないと感じてきた。そこで、2013年3月の市原さんの発表と、理科教室2020年3月号の川島さんの記事を参考に、デジタルテスターで回路の電位を測定させ、可視化する実験を行った。
 新型コロナ感染症対策のため実験器具の貸し借りが禁じられていたので、埼玉の湯口さんの実践を参考に生徒の手も借りて全員分の器具を作成した(写真)。
 中2のときに班実験で電気回路を組ませてはいたが、予想以上に回路を組めないことが個別実験にしたことであらわになった。それでも生徒は相談しながら予想したり回路を組んだりし、例年以上に電位と電位差のちがいや電位差に従って電流が流れていることなどの理解は進んだように思われる。


 例会では、アース線を引いて接続させるのも教育的、マイナス電位が生じるような位置に無理にアース点を取らない方がよい、などのアドバイスがあった。また、この単元を扱う目的は何か?という質問もあった。たしかに物理基礎ではなく物理の先取りであり、理系の生徒向けの、しかも入試を意識した授業になっていたようだ。物理基礎なので、文系に進む生徒でも意義があるように目的から再検討したいと、吉岡さんは考えている。
 以下、例会後の吉岡さん自身のコメント。「発表させていただいたことで、自分自身のあいまいだった点がはっきりし、本当にためになりました。ありがとうございました!」
 吉岡さんの授業プリント(PDFファイル310KB)はここ


仕事とエネルギー 再考 西尾さんの発表
 教員作成の教材や教科書などでの仕事とエネルギーの扱い方には、疑問を感じる場面が多い。
 西尾さんは、薬学系の大学で物理を教えているが、大学の薬学物理の「標準的教科書」には、仕事と力学的エネルギーを同一視するような記述(下左の例)や、化学変化を引き起こす仕事などの「力学的仕事ではない仕事」が、詳しい説明なしに登場する。エネルギーの種類を、力学的や電気などではなく、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーに大別するというあまり見かけない説明もある(下右の例)。しかもポテンシャルエネルギーについては、「静止物体がもつエネルギー」なのである。運動物体はポテンシャルエネルギーをもたないとでも言うのだろうか。


 下の図の2例も、「教科書」に載っている表現である。物理プロパーの人なら首をかしげたくなるだろう。


 高校物理の教科書でも、エネルギーの種類は力学的エネルギー以外はほとんど定義・説明がない。たしかに物理学としての厳密な定義はないのだから仕方がないとは言えるが、説明すらしないのでは正しい概念形成はできないだろう。おなじみのエネルギー変換の図(左図)も、変換前後のエネルギーは恣意的に選ばれ、「元になるエネルギー」と「変換過程で現れるエネルギー」の区別が曖昧である。たとえば、火力発電は、しばしば 化学⇒熱⇒力学的⇒電気 と変換されるように説明されるが、熱機関が仕事をして発電する過程で、タービンの運動エネルギーを入れる必要はあるのか。エネルギー変換図で、同様に仕事と力学的エネルギーを同一視しているように見える他の例としては、火起こし器がある。

ニュートンの冷却の法則 北岡さんの発表
 カップに入ったお湯を室内に置いておくと、お湯はやがて冷め。常温の水になる。北岡さんは、温度センサを用いてお湯が冷める様子を自動記録し、温度-時間グラフを作ってみた。参考文献(1)によると、お湯の冷め方はニュートンの冷却の法則によって説明することができる。そこで、測定したデータをニュートンの冷却の法則の式を用いて近似した。
〇参考文献:太田敏之「お湯の冷める実験」(参照日2020年9月2日)


 例会では、お湯の冷却には熱伝導だけではなく、蒸発熱としての散逸や、質量の減少も関係しているのではないかといったコメントや対数グラフによる評価の手法などの提案があった。北岡さんは「自分では思いつかなかったことをいろいろと教えていただき、大変参考になりました。」との感想を寄せてくれた。
 北岡さんのレポート(PDFファイル536KB)はここ


電磁気の基礎実験と対応するテスト図 森谷さんの発表
 電磁気では磁場、電流、力の向きが3次元的であるので、実験では「手指を使った求め方」を学習するが、3次元の実験図をわかりやすいイラストで表現して、練習やテストに使うことが効果的であるこ森谷さんはとを示した。イラストは、Adobe社のIllustratorを使用したとのことで、ご覧のようになかなかのハイクオリティである。

 森谷さんは、実験条件が異なるイラストを描き貯めたので、先生や生徒が自由に使えるようにウェブサイトにおよそ200の図を公開した。

実験例、イラスト、実験ビデオ、テスト例は、https://www.tmoritani.com/Science/Tohei'sPhysClass/20927_Electromagnetsim.html
イラスト図案集は、https://www.tmoritani.com/Science/Tohei'sPhysClass/20927_MagnetismFigs.htm
から自由にダウンロードできる。


全反射二重コップを準備0で 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんは、2004年8月例会に、科教協全国大会で広島の土肥健次さんから教えていただいた「全反射二重コップ」を紹介・発表した。鈴木さんの土肥案からの発展的工夫は、タックシールで「水を入れると消える?」と書いた文字を紙コップの内側に貼り、プラコップの外側に「消えない?」と逆さ文字で書いて、それを組み合わせて、全反射で「消えない?」という文字だけ消してみせる、という点だった。
 今年は、新型コロナ感染症対策のため、一人1セット用意して、事前消毒もしないでできるもの、と思ってさがしたところ、キャンドゥで「プリントプラカップ」というものを見つけた。写真のような図柄が(おそらく外側から)印刷されている。


 これを二つ重ねて、水を注ぐだけ。買ってきたものを授業時に開封して一人2個ずつ配るだけなので、消毒の手間もなく、演示効果も大きく、重宝したという。水を入れると外側のコップに印刷された文字が見事に消える。
 なお、鈴木さんは例会後、ダイソーでも同じような商品を発見したと報告してくれた(写真右)。


青空偏光板の環境指標を目指して 寺田さんの発表
 寺田さんは小学生の子供サイエンス教室での教具の開発をしてきた。これまで偏光板活用は次のように進めてきた。前回の例会ではミツバチ偏光板を提案した。
① 2枚の偏光板にセロテープを挟み込んだ偏光板アート
② 1枚の偏光板と青空偏光帯に挟んだ偏光板アート
③ 太陽コンパスとしてのミツバチ偏光板
 鮮やかな青空偏光色が良好な大気の環境指標になるとの研究報告がある。白黒のミツバチ偏光板より、色鮮やかで美しい偏光色がみられる青空偏光板は環境指標としてこどもに適している。寺田さんは今後、偏光板が環境指標グッズとして使えないかをいっそう深めてみたいと考えている。


 寺田さんのYouTube動画は以下で見られる。
太陽☀️から90度の青空は、偏光色が見事です‼️ https://youtu.be/5i_ESG8MhMw
ミツバチ偏光板🐝の観察中❣️  https://youtu.be/so1oB-danpk

 寺田さん紹介の参考資料はこちら↓
静岡大学工学部の浜松RAIN房「青空偏光とセロハン色偏光アート教室」


最近発見した便利グッズの紹介 古谷さんの発表
 古谷さんが紹介してくれたのは、「LVSUN電源ACアダプタ」。以前購入し、最近偶然再発見したイッピンとのこと。数種類のノートPCを時々起動してメンテナンスをしたりするときに大変重宝しているそうだ。11種類の変換プラグが附属していて、たいていのノートPCに接続でき、これがひとつあれば個々のPC専用のアダプターを探し出さなくてもすむというわけだ。
主な仕様:1)デュアルUSBポート:5V 2.1AのUSB出力口2個 2)AC100から240Vに対応 3)充電保護システムにより、過充電、過放電、過熱またはショートを避け、充電器自体とデバイスを保護 4)東芝dynabook 19V、hp 19.5V、dell 19.5V、lenovo 20V、sony 19.5V、 Asus 10.5、VersaPro acer 富士通 19V、Samsung 19V などに対応

 例会では「電源電圧が個々のPCに合っているのか?」「電圧が一致しないと、バッテリーを劣化させる恐れがある。」などの懸念の声が上がった。サイト情報を確認すると、主としてDC18~20Vで90W以下の機種を想定しているようだが、10.5Vの機種への対応もあるようだ。よく見ると中継コネクタは3端子なので、高低二つの出力を持っていて変換プラグで選択しているのかも。(テスターであたってみればすぐわかることだが。)回路側で機種を自動判別して電圧を調節している様子はない。

 サイトには「※多数ブランド商品のノートパソコンに対応できるが、すべてブランド商品のノートPCに適用ではありません、ご了承ください。」との注意書きもあるので、あくまでも自己責任での使用としていただきたい。

Zoomを対面での会議の中に導入する場合の問題点 古谷さんの質問
 古谷さんは、近々に対面での会合を予定していた。参加者数は10名程度。当日都合はつかないがZoomでの参加は可能という人もいるようなので、対面の会合の中でZoomを併用して会議の参加者を増やせないものか?と考えた。古谷さんは、過去には同じようなケース(ただし、参加人数は数名)でZoomのホストとして参加した経験もあるが、今回の場合は 1)会場が広い 2)出席者の間隔が広い 3)会場でのWi-Fi環境はあまり期待できない というきびしい条件がある。
 そこで、古谷さんは「機材の工夫によってなんとかできないか、みなさんのお知恵を拝借したい」という質問をした。個人的に準備できるものは、ノートPC,単一指向性のマイク、それをPCに接続するミキサー、場合によってはスマホのテザリング接続の用意も。
 例会参加者からのアドバイスとして、「プロジェクター(大型スクリーン)は必要」というのがあったが、今回は残念ながら会合の責任者から利用の可否については返答がなかったという。
 例会後の古谷さんからの報告は、「Zoom利用の結果は誠に芳しくなく、皆さんからの参考意見を生かす事が出来ずに終わり、残念です。会場内で会議に集中することと機材の操作との両立の難しさを体感した次第です。」とのことだった。


mmhmmの紹介 宮﨑さんの発表
 コロナの影響で例会がリモート(WEB会議)になって久しい。YPC例会の参加者の殆どがすぐにZoom会議に対応できたのはさすがである。
 WEB会議では互いの顔を見ながら話ができるので、声だけよりも相手の反応が見え、コミュニケーションが容易になる。ただ、画面共有の機能を使うと、当然ながら共有画面が大きくなり、発表者は小さな窓表示になってしまう。
 ここで紹介する「mmhmm」(ンーフー)を用いると、実際のプレゼンの際のようにスクリーンの脇に発表者が顔出しをして、スクリーン内の強調ポイントを指したり、表情や顔出し位置を変えて注意を引いたりし、より効果的なプレゼンが行える。mmhmmはEvernoteの創業者であるPhil Libinが開発したアプリで、Zoom,Google Meet,TeamsなどのWEB会議で活用できる。
 左はmmhmm ベータ版の紹介ビデオ(日本語字幕あり):https://youtu.be/c8KhKBLoSMk

 ここではZoom での使用例を紹介する。Zoom の「カメラ選択」で、「FaceTime HDカメラ」でなく「mmhmm Camera」を選択すると、mmhmm のバーチャル背景も使用できる。グリーンスクリーンがなくてもOKだ。さらにこの背景の上にバーチャルスクリーンを設置して、プレゼンのスライドを見せることができる。スライド画面を背景として自分の姿をかぶせることができるわけだ。
 宮﨑さんが今回使用してみたところ、PCの性能(MacBook Pro 2.6GHz デュアルコアIntel Core i5 メモリ:8GB)のせいかスライドの解像度が悪かった。ただ、まだベータ版であり、現在も改良が進んでいるとのことなので期待したい。また現在はMac 用のみだが、Windows 版も鋭意開発中とのこと。
 ベータ版の試用は招待制で Web での登録が必要。登録はこちらから→https://www.mmhmm.app/invite
 例会発表のあとに判明したことだが、Zoom(バージョン 5.2.0)からPowerPointまたはKeynoteをバーチャル背景として共有できるようになったそうだ。ただ、まだベータ版で、このオプションはZoomの[画面の共有]の下にある。

エイムズの部屋 越さんの発表
 コロナの影響で多くの高校で文化祭が中止になる中、越さんの勤務校では、感染症対策を充分に行い、校内発表のみ、飲食なし、密を避ける、基本的にクラス発表は展示と動画発表のみ、などの制約の中で文化祭を開催した。
 クラス企画では市江さんから頂いた資料を参考にし、「エイムズの部屋」を製作した。左側の奥行きが約2.7m、右側の奥行きが約1.4m、ある視点から片目で見ると、右側に移動するにつれ、体が大きくなったように見え、動画や写真を撮ると面白い。
 床の傾きは約13°で右側の方が床が高くなっている。これはちょうど「傾きの部屋」と同じくらいの角度で、実は以前製作した「傾きの部屋(2013年9月例会)」の為に作った床下の土台を流用した。他に、「動く錯視」、「マジカルアイ」、「ありえない立体」、「エッシャー」(だまし絵的な作品で有名な版画家)、「安野光雅」(「不思議な絵」などの絵本で知られる元数学教師の画家)をテーマに教室内の各コーナーに展示した。

二次会Zoomによるオンライン二次会
 例会本体には35名、20時からの二次会にも15名が参加した。2次会では、越さんの例会発表に関連して、越さんが文化祭でも使用した「錯視カーペット」が話題になった(写真)。例会後、ずいぶん売り上げが伸びたのではないだろうか。


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