例会速報 2021/09/19 Zoomによるオンラインミーティング


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授業研究:エネルギーとその利用に関する授業 櫻井さんの発表
 櫻井さんは、本年度の4月から5月にかけて10時間程度で実施した、新しいコンテンツを利用して実施した「エネルギーとその利用」に関する授業について発表した。
 現在、私たちが利用する電気などのエネルギー・環境に関する学習は、中学校では第一分野の「科学技術と人間」に、高校では物理基礎の「エネルギーとその利用」に含まれている。純粋な基礎物理学から外れた単元であるためか、指導要領における重みも小さく、入試でもあまり問われず、教科書における扱いも軽い。実際には、これから社会の中で生きる全ての中学生・高校生が直面するであろう問題である。それをを取り扱うのに、この程度の扱いでは軽すぎるのではないかというのが、櫻井さんの持っている印象だ。
 

 ところで、2021年の2月に、経済産業省が未来の教室プロジェクトが「STEAMライブラリーVer.1」をリリースし、現在も公開されている。この中に「知ろう!作ろう!未来のエネルギー」という東京理科大学によるコンテンツが収録されているのだが、これが「エネルギーとその利用」に関する学習を補い、より進んだ学習につなげるのに適している。櫻井さんはこれを利用して、10時間程度の授業案に組み立てて実施した。
 その授業では、各種電球のスペクトルを簡易分光器で見ることや、ゼネコンを使った各種実験、スターリングエンジンの演示、自転車発電の体験、校舎を使った水力発電の演示などの実験を挟みながら、電気エネルギーの利用、スマートシティ、各種発電の構造と利点・欠点(火力・原子力・水力・再生可能エネルギー)・エネルギー行政とエネルギー基本計画について、45分×8時間の学習を実施した。
 

 その後に、「あなたが最適と考えるエネルギーミックスと、その実現に向けた政策を説明した5分以内の動画を作成しなさい」という最終課題に取り組ませ、最終授業で互いの動画を閲覧し、動画内容にどれだけ納得できたかを中心に相互評価させた。このような課題を設定したのは、実際に政策を作って実施する側が感じる「答えのない問いだが、答えを出さなければいけない」というジレンマに直面する機会を与えたかったとのこと。
 事前・事後に実施した生徒アンケートの結果で印象的だったのは、「とにかく動画を作る課題が重かった」というものだった。ChromebookとGoogleプレゼンテーションを用いた説明動画の作り方を説明する動画を作ってGoogleClassroomから閲覧できるようにしていたため、全く分からずできなかったという生徒は出なかったが(最終提出数124/126)、次からはもっと負担感を軽減させる工夫が必要だと櫻井さんは感じた。
 

 例会参加者からは、「それは物理なのだろうか」「学習指導要領にあるように興味を惹起しているから学習内容として妥当だろう」「コンテンツに参加する立場の人が、政府関係者や研究者、電力会社の人であると、どうしても内容が偏ってしまい、両論採り上げたとは言えない」「この授業の前に1時間でも時間を作って、エネルギーの概念について、既習事項の確認も兼ねて学んだほうが効果的であろう」など、様々な意見が出た。
 櫻井さんは「こういった学習についてもお話できて、議論して頂けるYPCは本当にありがたい。私の中になかった多くのご意見を頂きました。ありがとうございます。」とのコメントを寄せている。
 STEAMライブラリーVer.1の「知ろう!作ろう!エネルギー」は、翌年度のVer.2発表に向けた改修が採択されている。さらに使いやすくなり、生徒の自律学習にも向いた作りになる予定なので、当該範囲の授業やその準備、資料作りなどに役立ててほしい。
 

信号機 いろいろ 喜多さんの発表
  喜多さんは、日頃、朝夜に散歩をしている。綱島街道沿いを散歩していたとき、何故か車両用信号機が気になった。左図の信号機は自宅から徒歩15分以内のところにあるものだ。

 日吉から元住吉方向に進む途中に、仲の谷の交差点がある(左下)。この信号の変化を表したものが右の図だ12時の位置から時計回りに変化する。喜多さんが一番気になったのは、信号左上の青の信号である。これが一度も点かないのだ。二段目に、左折のみ、直進のみ、右折のみの三つがあるタイプのものは、左上の青の信号が点かないことと理解している。
 

 左下の図は湯島天神近くの三差路に設置されている信号機である。右斜め上向きの印を見て思わず撮影したという。
 ところで、PPTで例会向けの資料を作るため、信号機を作画をしよう考え、ネットで信号機イラストの検索をしていた喜多さんは、フリー素材、無料素材サイト Digipot を知った。右の図は、PPT向けのもので、パーツにも分解でき、自分なりに加工することもできる。この手の作図をしようとするときは一度見る価値がありそうだ。 https://www.digipot.net/
 

3Dプリンタ作品「玉ころがし」 上橋さんの発表
  「智恵の楽しい実験」ブログで次々と作品を公開している上橋さんの新作披露。
 Facebookで見つけた楽しそうな装置を参考に、3Dプリンターで「玉ころがし」(1連・2連・4連)を作成してみた。上橋さんの作品の動画はここ

 1連は割と簡単に作ることができたが、2連・4連バージョンは斜めに移動させるところが難しく、写真のように溝をつけたり、玉があたるところの壁に液体ゴムを塗ることで問題を解決したとのこと。また内部と外部の隙間調整も苦労をした点で、小さすぎると摩擦抵抗が大きくて持ち上がらず、大きすぎると斜めに持ち上がって玉が思い通りに転がらず、何度もやり直したそうだ。

 下は4連バージョンのパーツ。交差点の所の微妙な削り込みに苦労の跡がうかがえる。

 さらに上原さんは、オリジナルの電動バージョン(2連)に挑戦。スライダークランク方式で外枠を持ち上げることにした。一箇所だけ持ち上げると不安定になるので、2連装置の側面の両側にそれぞれスライダークランクのコンロッドを取り付け、二箇所で持ち上げる仕組みとした。この二箇所が同期して上下するように、1つのモーターにギアを取り付け、その両側にクランクとつながったギアを配置している。
 上原さんオリジナルの、電動バージョンの動画はここ。感動的な動きだ。

Winペイントとペンタブレットでできるオンライン授業 天野さんの発表
 緊急事態宣言中、高校がオンライン授業となったため、天野さんは学校の実験室をスタジオにして授業を配信した(写真左)。使用しているWebカメラは以前は2000円していたものが、今はなんと466円(写真右)。画角が広すぎないのでかえって使い勝手がよい。これでディスプレイを写しておいて、実物も写し込める。プレゼン用には通信用とは別のPCを用意する。

 板書の代わりに、Windowsアクセサリの「ペイント」を画面に表示して、ペンタブレットで図や文字を描く。使用しているのは「veikk ペンタブレット s640」3320円。そんなにお金をかけなくても、手軽にオンライン授業はできるという実践報告だった。

10年後の被災地 越さんの発表
 越さんは、2011年の3月下旬、震災後の福島沿岸を訪れた時の様子を2011年4月例会で報告した。あれから10年、今回は再び東北地方太平洋沿岸を南下した時の様子を報告してくれた。
 延々と続く防潮堤、震災祈念館、点在する震災遺構、...威圧感のある防潮堤や立派な震災祈念館に対して、地元の方々はどのような想いで受け止めているのだろうか?左は陸前高田の東日本大震災津波伝承館、右は双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館。
 

 また、震災遺構の宮城県中浜小学校では、当時の映像と、関係者のお話を伺うことができた。隣接する広大な更地は一面のひまわり畑になっていて、ほっとさせられた。
 左は震災遺構の宮城県中浜小学校、右は中浜小学校に隣接するひまわり畑。
 

「2030未来への分岐点」から 環境問題について 越さんの発表
 今年1月に放送されたNHKスペシャル「2030未来への分岐点 第1回 暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦」 の内容の紹介。産業革命以降、世界の平均気温は、既に1.2℃上昇しているが、臨界点(Tipping Point)の+1.5℃を超えると温暖化が止められなくなってしまうという(Hot house Earth 理論)。それを防ぐためには2030年CO2排出-50%、2050年CO2排出実質0を目指さねばならない。その為にはあと4年の内にCO2排出減少に転じなければならない。今年度改正される経産省エネルギー基本計画に注目する必要がある。
 関連した動画「20分でわかる!じゃあ、どうしたらいいの?地球温暖化のリアル圧縮版③」は、国立環境研究所 江守正多氏の解説でわかりやすい。また、CO2削減のために個人ですぐできることとして、
・電気を変える。手続きは簡単、書類1枚書くだけで電気代はそのまま!パルシステム電力、みんな電力、Green Peoples Powerなどの自然エネルギー中心の市民電力会社がある。
・食を変える。肉を減らす。
・消費を減らす。
・ゴミを減らす。(簡単コンポスト 燃えるゴミ激減!)
などがある。
 現在、気候危機に対して若い世代の動きも活発である。
 ・Fridays For Future Japan、グレタ・トゥーンベリ
 ・Green Tea、小野りりあん(インスタ)
多くの優れた若者たちが、伝えやすいように、しなやかに、行動し始めている。
さらに、環境問題の根本的解決のヒントにもなる「人新生の資本論」斎藤幸平著も現在話題になっている。
 

二次会Zoomによるオンライン二次会
 例会本体には32名、二次会には14名の参加があった。 越さんが購入したというデジタル望遠鏡の話や、天野さんが9/5にBS11ディスカバリー特選で見た「ブレーメンにあるZARM微小重力実験設備、Fallturm(落下塔)」の話、コロナ禍で今年も打ち上げ中止になった「秩父龍勢祭」の話題など、尽きることなく話は続き、気づけば23時。情報交換と、懇親と、ストレス解消を兼ねた二次会は今夜も好評だった。


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