2010年2月7日(土)菊里高校での臨時例会の記録です。

 オーストラリアのフリンダース大学理工学部科学担当コミュニケーションズオフィサー ブレント・バンハムさんが来名されました。
 ( Brent Banham :Flinders university )
 ブレントさんは、物理サークルのような草の根の教育研究が、オーストラリアの学校でもできないだろうかと考えています。そのため、サークルの運営方法や新しい実験のアイデアの検討方法などについて聞きたいとのことでした。
 もとより、特別な方法や技術などあるはずもないので、普段のサークルの様子を感じてもらおうと、ミニ例会を行いました。
 
 前列左は、通訳をしていただいた平野さんです。おかげで密度の濃い交流ができました。感謝します。


 自己紹介 (ブレントさん  
 ブレントさんは現在アデレードにすんでいます。アデレードは人口約100万ほど。
 東西20km、南北120kmほどの細長い市です。
 パプアニューギニア、オマーン、ブルネイ、USAなどの国々で科学教育をした経験を持っています。
  今は、地元の中学高校の先生方に科学教育について指導しています。授業の改善や研究について新しい方法を模索中です。
 
 

 飯田さん・川田さん  
 飯田さんが、3原色とその影の色について見せてくれました。

 <参考>  新3原色装置
 川田さんは大型自作レンズでの像のでき方について見せてくれました。

<参考>  手づくり大型レンズ

 電荷がわかる箔検電器 (林さん  
  帯電体を近づけると、片方の箔だけが開くはく検電器です。
 秘密は、検電器に貼り付けた電極。ここに約1000Vの高電圧をかけます。このため、近づけた帯電体と同じ電荷が箔にたまり、検電器内にできている電場によって片方だけが動くというわけです。

 高電圧は、ブロッキング発振回路とトランスで昇圧し、コッククロフトウォルトン回路で直流高電圧にしています。電源は乾電池3Vです。
 検電器自体を自作したタイプもあります。
 
 直流高電圧発生装置を1つ用意すると、既存の箔検電器を電荷の種類を判別できる検電器にバージョンアップすることができますね。


 人力高圧発生装置 (林さん  
 なべとアルミ板、そして塩ビパイプで作った「人力高圧発生装置」です。
 
 塩ビパイプを2,3度往復させるだけで電気が結構たまります。アースにつないだ金属を胴に近づけるとパチッと放電します。軽く往復するだけでこんなに溜まっているとは驚きです。

 なべ2つとアルミ板で胴(ビヤ樽のような容器)を作ります。内部には金網が入っており、塩ビパイプに生じた摩擦電気を胴部分に集積します。バンデグラフ発電機と同じ原理です。

    青い部分は不織布

 アース線を近づけると、胴部分にたまった電荷がパチッと放電します。
 500回ほどまいたコイルを通して放電すると、流れる電流により鉄を磁化することができます。電流は少ないような気がしますが、結構磁化できるものですね。
  
 磁化していない鉄のやすり           コイルの中にやする置き、放電します。

  2,3度放電するとやすりの先端が磁石になっていました。
 これは、先の装置をやや小型化したもの。構造がはっきり見えます。
 アルミ板と塩ビパイプと不織布、金網のみ。

 不織布を手で持って塩ビパイプを動かして摩擦します。
 貼り付けたティッシュがたちあがります。
 

  

  アース電極を近づけると、ティッシュがたちあがります。

 物理クイズ (山岡さん  
 オーストラリアの物理学者に挑戦。物理サークルが集めた叡智(?)と英知の勝負(?)です。
 (1)コンデンサの問題
 (2)引っ込み思案

 <参考> コンデンサの問題
        引っ込み思案 (飯田さん)

 
 短い時間で解を出すのは難しいので、(1)はひきわけ。
 引っ込み思案の仕組みはすぐ見破られてしまいました。
 さすがですね。

 磁石とリードスイッチを使った止まらない独楽は不思議に思われたようです。リードスイッチがおなじみではなかったのかもしれません。

 <参考> とまらないこま(船橋さん)
 

 空気に重さはある (伊藤さん  
 空気の重さを感じるために開発した実験です。以前はゴム風船で行っていましたが、容積の変わらない容器のほうが意味がはっきりするのではないかと考えました。
 空気入れで片方に空気をたくさん入れます。
 入れた分の空気の分だけ重くなっているので、天秤が傾きます。


 <参考> 風船天秤はどうなる?
 ところで、この空気入れ「フィズキーパー」というのだそうです。 飲みかけの炭酸飲料の炭酸抜けを防ぐ,ペットボトル用のポンプ式キャップです。ボトル内に空気を入れ,内部の圧力を高くできます。
 うまく使うと、簡単な圧力実験に重宝しそうですね。

 種の舞 (伊藤さん  
 



 垂直風洞での種の舞です。
 風力を加減することで種が空中で回りながら静止します。

 <参考> 垂直風洞と竜巻

  写真では止まっていますが(当然!)実物は回転しています。

  ハナノキの種

  大変興味深かったようです。

 ストレイキャッツ楽団 (杉本さん・川田さん  
 
 ブレントさんから、「Stray Cats」の名は音楽グループから採ったのかという質問がありました。アメリカにこの名前の音楽グループがあり、ブレントさんはこのグループのファンのようです。私たちは初耳で、驚きました。Stray Catsの名前の由来を手短に説明しました。ブレントさんは音楽のファイルを持っているということなので、早速その音楽を聞かせてもらいました。  
 お返しにジャパニーズストレイキャッツ楽団の音楽を披露しました。
 
 いい音を出すにはコークのボトルがよいようです。ふたに自転車の空気入れ部分を取り付け中の圧を調整します。容器をたたいていろいろな高さの音を出すことができます。

 <参考> 
 ペットボトル楽器
  (杉本さん)
 川田さんの竹笛とフィルムケースオカリナです。生徒に作らせて合奏したそうです。

<参考>
 簡単オカリナ
 (伊藤 昇さん)



 ウィルバーホース振り子 (川田さん  
 川田さん手作りのウィルバーホース振り子。
 自分で作ろうとすると横回転の周期と上下運動の周期をうまくあわせるのが難しい。
 よくできた作品をブレントさんにプレゼントしました。 
 

 新型電波検出器 (杉本さん  
 前に発表したときは、電波の受信はコイルで行っていましたが、これはダイポール型のアンテナが受信しています。
 受信した電波による電流をオペアンプで増幅して、電流計で電波の強度を見ることができるようにしてあります。
 電波源は電子レンジ。
 のぞき窓から1m程度離れたところに反射板としてアルミの板をおきます。電波源と反射板の間にアンテナを置きます。
 レンジを稼動させた状態で、反射板を前後に動かして、受信電波の強度を測ります。
 極大の位置を記録すると、極大間隔は約6cmで、電子レンジの電磁波(2.45GHz)の半波長に一致します。
 
 電子レンジの稼働中は、もちろん中に水を入れて空焚きを防いでいますよ。
  
 のぞき窓の前をアルミテープで遮蔽し、2点波源になるようにして、干渉を調べてみます。
 
 スリットから離れるとあまりクリアーに出ませんが、50cmぐらいのところでアンテナを動かすと、角度による変化を確認できました。
 ブレントさん、電子レンジから電磁波が漏れていることを見て驚いていました。
 この電子レンジは安物だから・・・と説明しましたが、高級品は大丈夫かな???

 <参考> 電波検出器

 サイエンスはマジックで (ブレントさん  



 トランプマジックを披露してくれました。
 トランプをシャッフルし、観客に任意の一枚とってもらい、その札をみんなに見せてもらいます。
 まっすぐな針金(実は形状記憶合金)をライターで加熱していくと、なんと針金がハートの8の形になりました。先にとったトランプは、もちろんハートの8でした。!!

 形状記憶合金はあらかじめハートと8の形をとるようにしてあるはずです。とすると、観客にどうやってハートの8を取らせるかということがテクニックになるようですね。

 入り口はいろいろ。形状記憶合金がどうしてハートの8の形になるのかに興味を持ってもらえば、物理の話に入れるわけです。
 オーストラリアでも私たちと同じ思いで工夫している方がいるのですね。

   ハートが見えます。

  ハートと8が見えます。