例会速報 2017/12/17 株式会社ナリカ


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IHの利用 小河原さんの発表
 普段は授業研究の発表をしてから各発表に移るのだが、今回は諸般の事情により、2人だけ先行発表があった。
 小河原さんは、電磁調理器を分解してコイルを取り出し、消費電力の計算をしてみた。まず、抵抗を測定すると、(当たり前かもしれないが)かなり小さい。授業で演示したテスターでは、テスターのコードを直結して抵抗を測定すると0.1Ω、その後コイルを測定しても0.1Ωという表示だった。

次に、LCRメーターでコイルの自己インダクタンスLを測定すると、0.05mHと表示された。IH調理器裏面には、定格電力1300Wと書かれており、100Vでの使用で電流実効値は13Aと計算できる。コイルに13Aが流れるとき、蓄えられる磁場のエネルギーはU=(1/2)LI^2より0.004Jと計算できるが、お湯を沸かすにはいかにも小さい。皆さんは、いかがお考えになるだろうか?
(小河原さんは個人的には、以下のように考えた。下を読む前に、ぜひ予想をお楽しみいただきたい。)
 

 IH調理器に、鍋とともに一巻きコイル(単なるミノムシコード)をのせてオシロに入力し波形を観察すると、20,000Hz程度の誘導起電力が観察される。つまり、1秒に4万回ほど0Aから18Aへと電流が変化しているということになる。その18Aの瞬間にコイルが蓄えているエネルギーを0.008Jと計算すると、1秒間に4万回鍋に渡せば324Jとなる。しかし、それでも1300Wには届かない。
 あれこれ考えながらいろいろと試しているうちに、IHは鍋を載せて使うわけだからということで、コイルに鍋を近づけてみたところ、Lの測定値が5倍以上大きくなることに気づいた。増大したLの値で計算すると、1秒間に1300Jを超えるコイルの磁場エネルギーの大きさとなる。

 小河原さんからは次のようなメッセージが届いている。
 「以上のように考えてみましたが、いかがでしょうか。何かお気づきの点などありましたら、ぜひお知らせください。」

ピンポン球を電子模型に 土肥さんの発表
 広島からやってきた土肥さんは、種子島を訪問したときに地球形のマグネットをお土産に入手した。それを参考に、ピンポン球に磁石を入れて電子のモデルを作った。ピンポン球に1cm程度の切り込みを入れて中に磁石を入れるだけ。材料は100円ショップで入手でき簡単に作成できる。これを原子模型の電子配置などに使えば、自由に動かせる演示教具となる。土肥さん曰く、立体になることで少しだけ生徒の注目度も上がった気がするとのこと。
 

ろうそくの声を聞く 土肥さんの発表
 太陽電池にアンプ付きスピーカーをつなげると、太陽電池が受け取った信号をスピーカーから出すことができる。その光源として、100均のLEDキャンドルを使用するとピポピポと面白い音が出る。ロウソクのゆらぎが起こす明滅がデジタル信号のようになっているのだろう。授業ではギターアンプを使っているようだが、今回は持ち運びの簡易なアンプ&スピーカーで実演してくれた。動画(movファイル3.2MB)はここ。 ハイスピードで撮影したろうそくのゆらぎ(movファイル1.5MB)はここ
 

ドライヤーでトスバッティングマシン 土肥さんの発表
 広島カープはリーグ優勝をしたものの、CSで横浜に敗れてしまった。その無念を胸に秘め、夜の物理教室で作ったのが、トスバッティングマシン。ピンポン球がレールに沿って運ばれて、ドライヤーの吹き出し口に入るように設計されている。ペットボトルや紙筒での工作だが、安定してボールを射出できる。先端のアダプターを変えれば、「ボールが止まって見える!」状態も再現できるすぐれもの。動画(movファイル4.0MB)はここ
 

綿菓子器と金網のワク 土肥さんの発表
 100円ショップの泡立て器と栄養ドリンクの容器を使って、綿菓子製造機を作製した。キャップに開ける穴をやや大きめにしておくと、あそびができて缶が安定して回転する。泡立て器と缶が滑っている状態の方が良いのだろう。周囲には金網のワクを用意すれば、周りからも中の様子が見えるようになる。横方向への綿の飛び出しは十分おさえられる。ただし上方向へは、温められた上昇気流のせいもあってか、細かい綿菓子が飛んで行ってしまうが、それをキャッチするのも面白いだろう。コストをかけずに楽しむことができる。動画(movファイル2.6MB)はここ
 

授業研究:熱の授業実践報告 武捨さんの発表
 高2必修物理基礎で行った熱の単元7時間の報告。
 直前に運動量の学習をしているので、「はねるボールとはねないボールを落とすと、温度の変わり方に違いはあるか」という問いからはじめた。
 

 確かめの実験として、それぞれのボールを半分に切って板にはりつけたものを金槌で50回ずつ叩く。デジタル温度計で温度を測ると、はねるボールは1~2℃程度、はねないボールは10℃程度上昇したことがわかった。デジタル温度計には応答性の良いテープ形温度センサを用いた。
(たとえばhttps://www.anritsu-meter.co.jp/instrument/sensor/m503m505m540/index.html
 

 その際、感温部に手で直接触れないように、センサを発泡スチロールなどに取り付けるとよい。
 

 慶應高校では今年度、サーモグラフィーカメラを導入した。2つのボールの温度変化の違いも一目瞭然(写真左)。さらにマクロな温度変化とミクロな粒の運動との関係を説明する演示実験のひとつとして、分子運動台車を見せた(写真右)。弾性衝突と非弾性衝突でのおもりの揺れ方の違いがもう少しはっきり分かるとよい。コツや良い方法をご存知の方がいたら情報提供願いたい。
 

 熱平衡については、「高温の水と常温の油を接触させると、それぞれの温度はどうなるか」という問いで、温度変化のグラフを予想させた。確かめの実験は、温度センサを用いて、リアルタイムに測定して演示した。スチロール板やプラカップを用いてセンサの位置を固定することで、以前より乱れのないグラフが得られるようになった。
 授業プランの詳細については、YPCニュースを参照のこと。
 

超小型Wi-Fi付CCDカメラ 高橋さんの発表
 ケーブルの先端で撮影した画像をライターくらいの大きさの本体からWi-Fi経由でスマホに飛ばせる。実は高橋さんはファイバースコープだと思って買ったのだが、実際にはCCDカメラが先端についているだけでケーブルは電線のみと思われる(最近高橋さんはこういう勘違いが多い)。 Wi-Fi接続なので、スマホから離して高いところを見たり、動くものから撮ることもできる。価格は40ドルだったが、同じ製品は販売中止とのこと。類似製品は「Wi-Fi 内視鏡 iphone」などで検索すると見つかる。
 

どこからでもとめられるホッチキス 高橋さんの文具紹介
 冊子の「中とじ」など、ふつうのホッチキスでは届かない場所をとめるには、「タテヨコ」などの商品があった。今回高橋さんが紹介してくれたのは、本体と台座が完全分離していて、磁石でくっつけて位置決めする方式なので端からいくら離れていてもとめられる。針はふつうの10号ではなく一回り大きい3号を使用する。ダイソーの200円商品。
 

風独楽 舩田さんの発表
 内田洋行の教育支援通販カタログ「理科UCHIDAS2017」に「風ゴマ」が紹介されている。50年以上前に作った風ゴマは長方形タイプだったが、科学の祭典では十字形にし、メタリックテープをつけ重くし、浮く高さを50cm以下に調整している。羽根の折り方には少し工夫が必要で、高く飛ばすには試行錯誤が必要だ。コツは、やさしく長く、フーっと吹いた時にその場にとどまるように回転することと、その後に勢いよく短く、フッ と強く吹くことだ。熱中しすぎて頭が痛くならないように注意が必要。動画(movファイル1.6MB)はここ
 

折板構造mini 加藤さんの発表
 加藤さんは、1年前の2016年12月ナリカ例会で、A3のケント紙を折って本を載せる実験を紹介した。今回は、そのミニチュア版である。折り目が印刷されたA5のコピー用紙を折って橋を作り、上に本を載せる。前回のケント紙製の大きいものよりかなり弱いが、それでも文庫本2〜3冊程度ならなんとか耐えられる。例会では残念ながら3冊目で崩れてしまった。
 イベント出展の際に配布するための実験キットの1つとして作ったそうだが、まだまだ改良の余地があるとのことで、今回は「β版」として例会で配布された。
 

ニホニウム模型 加藤さんの発表
 『理科教育ニュース』2017年4月8日号「作ってみよう ニホニウムの原子核模型」で紹介した内容の解説。アイロンビーズで113番元素「ニホニウム」の原子核模型を作る。
 

 陽子(赤:113個)と中性子(黄:165個)に見立てた2色のビーズをプレートに並べ、アイロンをかけて表面を融かす。パーツが冷めたら球状に組み立てれば完成。ニホニウムの原子核がいかに巨大なであるかを実感することができる。
 もともとは、和光市にある理化学研究所 仁科加速器研究センターの広報の方が考案されたものを教わって紙面にしたとのこと。理研(和光地区)の一般公開等では子ども向けのワークショップが開催されているそうだ。
 

続・セロハンの花 加藤さんの発表
 加藤さんが2014年12月例会で紹介してくれた「セロハンの花」の別バージョンである。前回は、花びらの形に切ったセロハンで花を作ったが、今回はより簡単にして、細長く切ったセロハン数枚の真ん中を糊でつけて花を作った。手のひらに載せると丸まって花のような形になる。動画(movファイル1.4MB)はここ
 

宮崎さんの依頼に答えて 夏目さんの発表
 11月例会の宮崎さんの発表で、高校レベルで教えて欲しいという声があった、筑波大学の小泉裕康准教授の『ファラデーの電磁誘導とローレンツ力はなぜ同じ起電力を与えるのか』 について、夏目さんが解説してくれた。
 電磁誘導の法則が指す「閉回路に生じる誘導起電力の大きさは、回路を貫く磁束の時間変化率に等しい」という内容は、回路を貫く磁束が変化する要因が、磁場そのものが変化することによるものと、回路の面積が変化することによるものの、そのどちらかもしくは両方に起因しても構わない。しかし高校現場では、回路が変化せずに磁場が変化する場合ではローレンツ力ははたらかず、ローレンツ力による説明は不可能になる。
 そこで、直線電流が作る磁場にしぼって考えると、コイルが電流に近づく場合と電流がコイルに近づく場合では、相対的に考えれば同じ現象を言っているので、同じ結果になるのはおかしなことではない。これより踏み込んだ説明はゲージ変換を使わないと苦しくなるとのことだったが、夏目さんはゲージ変換を使わないでできる説明を試みてみるとのことだった。夏目さんの解説資料(PDFファイル853KB)はここ
 

中学理科電流による発熱 宮田さんの発表
 2016年12月例会で発表したものの改良版。電源に秋月電子の5VACアダプタを、温度計に同じく秋月電子のデジタル温度計を、発熱体にナリカの赤、黄色、白の発熱体を使用すると実験は必ず成功するとのこと。おしいのは、抵抗値とカラーコードの数字が対応していないこと。資料(PDFファイル1.5MB)はここ

デジタル容量計を用いたコンデンサーの容量測定実験 宮田さんの発表
 2017年2月例会で紹介があった実験の改良版。空気の抜けをよくするため、極板の縦を9cmと短くして、さらに、極板を軽く指でなぞって空気をあらかた追い出してからおもりの本を載せるように実験方法を修正。こうすると実験値の収束時間が短くなる。会場からは、アルミ箔ではなくアルミ板で同様の実験をやっている、との声もあった。板だと曲げに弱いが精度がでることなどを考えて、生徒の実情に合わせて、選択していきたい。資料(PDFファイル2.2MB)はここ
 

デジタル容量計とデジタル電圧計を用いた
コンデンサーの直列・並列実験
宮田さんの発表
 よくあるコンデンサーの直列・並列実験だが、上の実験と同じ秋月電子のデジタル容量計CM-7115A(中国製:1270円)でコンデンサーの容量を実測してから実験に入るので、計算通りの実験結果になり生徒が納得しやすい。資料はここ
 

クーロンメーターの集電板 喜多さんの発表
 クーロンメータに付属の小さな集電板を外し、大きな金属板につなぐ(写真左)。その上にアルミの防虫網を円筒状にしたものを乗せる(写真右)。こうすると大きな帯電体の帯電量を測るのに都合がよい。
 

 下左の写真は、発泡スチロールの小球がプラスに帯電して、マイナスのバンデグラーフに強く引かれている様子である。手順は、先ずバンデグラーフ起電機をちょっと動かして帯電させて止める。次に、発泡スチロールの小球に墨を塗ったものを糸で塩ビパイプに吊るす。静電誘導で少し引かれるのが分かるところまで近づて静止させ、発泡スチロール球の下側に指を触れる。触れた途端、小球の負電荷が逃げるので、小球は大きくバンデに引かれるようになる。指を触れる前の小球の帯電量がゼロであることを集電カップの中に入れて確認し、指を触れた後の小球の帯電量を調べると、プラスに帯電していることが確認できる。
 上記の大きな板、大きな防虫網を乗せたものを使用するとき、近くにバンデグラーフ起電機があると静電誘導の効果が大きくクーロンメータが大きな数字を表示する(写真右)。ここで、放電叉でバンデグラーフの帯電量をゼロにするとクーロンメータの値もゼロになる。
 

ストロー空気鉄砲 天野さんの発表
 昔は「紙玉鉄砲」と言えば、ちり紙や新聞紙を口に入れて噛んで丸めて、竹筒につめて飛ばしたものだ。天野さんは、「簡単、安価、安全、衛生的」と4拍子そろった現代版「ストロー空気鉄砲」を開発した。
 ストローは普通のものでよい。スケルトンのものだと、中が見えさらによい。そのストローにちょうどはまる太さの割り箸を用意する。弾丸は発泡スチロール球がお手軽。ダイソーの「発泡しっかりビーズ」は108円で使い切れないぐらいたくさん入っている。手にはいらないときは、コルクボーラーで発泡スチロールをくりぬいて作る。
 遊び方は紙玉鉄砲と同じ(写真右)。圧縮空気の圧力でストローの先の弾丸が「ポン!」と音を立てて飛び出す。
 

タブレット拡大鏡 天野さんの発表
 2017年1月例会で紹介したものの再紹介。ダイソーのズームライトのレンズ部分を利用し、スマホやタブレットで利用できる顕微鏡となる。
 

 スマホやタブレットの普及に伴って、誰もがカメラレンズを持ち歩いている時代になった。こういったレンズを持ち歩くと自然観察が容易になるので、ぜひ活用してもらいたい。

水晶の目と偏光板 天野さんの発表
 水晶玉とガラス玉は見た目では区別しにくい。しかし、偏光板(たとえば東急ハンズ「偏光フィルム」BSP100 12cm×12cm 160円)が二枚あれば比較的簡単に判別できる。二枚の偏光板を偏光軸が直交する(暗くなる)ように重ね、その間に入れてみればよい。
 ただのガラス玉の場合、左の写真のように玉をどの向きに置いても、黒い十字が見えるだけである。水晶玉の場合、水晶玉をいろんな向きに回して見ると、ある特定の方向で右の写真のような同心円状の「目」と、それから放射状に伸びる4本の黒い筋(アイソジャイヤー)が見える。「特定の方向」は水晶の結晶軸方向にあたり、「目」は水晶の旋光能の波長依存性による干渉縞である。ガラスは結晶軸も旋光能も持たないので「目」は見えない。
 天野さんが見せてくれた天然水晶球φ3cmは、御徒町のガード下にある石などを扱う店で400円くらいで購入、人工水晶球φ5cmは15年前忍野八海の露天で1000円で購入したとのこと。高ければ本物というものではない。
 

力学のケーキ 成見さんの発表
 物体にはたらく力を指導するときに、四角く描いた物体を重ねた図をよく使うが、成見さんにはあるときその絵が2段重ねのケーキの断面に見えた。 女子生徒が興味のあるもの、実感をもてるもので力学を捉えられるようにと工夫をこらして、本物そっくりの2段ケーキの演示物を作って持って来てくれた。
 

 中を割ると、マグネットの矢印を貼ることができるすぐれもの。その発想から実物を作り上げてしまうところが成見さんの真骨頂である。 いつもながらデザインセンスが光る。
 

二次会御徒町駅前「まつうら」にて
 21人が参加して、忘年会を兼ねてカンパーイ!今年もナリカ例会は大盛況だった。例会本体は50人を越え、年に一度、ナリカ例会だけに参加される方も少なくない。発表数も多く、時間が足りずに次回以降に回したものもある。ここまで若手からベテランまで集まる会はそうそうないのではないだろうか。敷居はなく活気にあふれるYPCは、来年も盛り上がることだろう。


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