2014年5月17日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

   

 慣性の法則と落下運動 (石川さん)  

 石川さんが運動中での落下運動を見せるための装置を自作し、紹介してくれました。まずは打ち上げ式の装置です。

 この装置は水平な床での実験用で、スイッチを切ったのち、伸びたばねが縮まり、少しすると物体を打ち上げられます。

 スイッチはコンデンサーに蓄えられていた電気がなくなり、少し時間が経つと電磁石が切れ、ばねが開放される仕組みです。
    
 台車まで作ってしまう飛騨の匠、石川さんです。
 そのため、適当な時間をかせげるように、電気容量の適当なコンデンサーを探しました。

 また、電磁石は十分な磁力を得られるよう、コイル中の鉄心を閉回路となるようにしてあります。
 適当な時間が稼げるようにコンデンサーの容量を調整しました。
 斜面の運動には、右の落下式の物を使います。水平面で等速運動をしている台車から落下させると真下のカップに入りますが、 これを斜面で行うとどうなるでしょうか?
(ア) カップの前に落ちる  (イ) カップの後ろに落ちる  (ウ) カップの中に入る






 結果は(ウ)です。これはどういうことでしょうか。
 
 斜面での落下する場合は?
  斜面がなめらかで傾きがθとすると、斜面に静止した観測者からみるたとき、物体は自由落下、台車は斜面を等加速度運動します。

 水平面での台から固定された物体までの高さをhとすると、自由落下にかかる時間tは、h/sinθ=1/2gsinθt2。ここから求まるtを台車が斜面を滑る距離L=1/2at2 に代入すると、L=htanθとなります。
 この事から、物体を落とす高さや、斜面の角度によらず(0°<θ≦90°)コップに入ることが分かります。

 観測者を加速度系である台車におき、慣性力を使ってこの運動を見ることもできます。いずれにせよ、高校生にはかなり難解な内容ですが...  
 最後に、落下にかかる時間とその軌道を直径とした円の弧の一点から落下地点までの斜面を下るのにかかる時間は等しいことを説明してくれました。
実際に大き目のビー玉を2球同時に転がすと、落下地点で衝突します。様々な要素を無視するため大き目の球を使うことがデモンストレーションのポイントです。

 これは、アインシュタインンの等価原理と呼ばれるものです。

 運動の本質をつき、視覚的にも魅力的な実験ですね。  
 落下の軌跡を円の直径とすると斜面を滑るのにかかる時間は?


 電場で変化する炎のおもちゃ(藤田さん)  

 以前の例会でロウソクの炎は電場から力を受けるという実験を紹介してくれた藤田さん。この現象は、炎が熱電離により正に帯電するため起こります。
 この現象を、堅い物理実験としてでなく、皆が親しみやすいように仕上げられないかと考えていたところ、いくつかのアイデアが湧いてきたので、実際に作ってみました。

 1つ目は電気振り子と組み合わせ、振り子の振動に同期して変動する電場をロウソクにかけることを試みました。

 
 振り子が金属電極に当たると澄んだ綺麗な音が鳴ります。
 すると、振り子の電位が+または−となった瞬間に、電極の電位が炎の電荷により中和され、炎は元の位置に、形に戻ってしまいました。

 そこで、振り子の駆動部分と電位切り替えスイッチ部分を分離し、問題を解決しました。

 また、アルコールランプを並列につなぎ、電場をかけたときの炎のゆらめきを3次元で起こるようにしました。

 電気振り子に電荷をあたえると、金属電極に振り子が当たり、澄んだチャイムのような音が聞こえ、同時にアルコールランプの炎が踊りだします。

 聴覚だけでなく、視覚にもうったえてくる素敵なおもちゃの完成です。  
 回路の概略図です。
 もう1つは、ドイツのエルツ地方の伝統工芸品でもあるクリスマスピラミッドを参考にした、上昇気流によって回転する灯篭に高電圧をかけたおもちゃです。
 もう科学というよりアートです。

 板の12時と6時の炎の内側にマイナスの高電圧、3時と9時の炎の内側にプラスの高電圧の電極が固定されています。
 一方、羽根板とともに90°ごとに4つ置かれた電極は羽根板とともに回転するようになっています。
 外側の向かい合った羽根板とともに電極は回転していきます。
  1対のアース電位の電極が3時と9時の方向に来たとき、その位置の炎のみが外向きの電場で力を受け、左右の炎のみが外側に傾きます。

 羽根車が回って、アース電位の電極が12時と6時の方向に来ると、12時と6時方向にある炎のみがたなびきます。今度は電場の向きが逆になるため、内側に炎が傾くわけです。

 科学的な事は抜きにしても、羽根が回転し、炎の揺れめく様子に見とれてしまいました。
 揺れめく炎にしばし時を忘れてしまいました。


 生徒実験「風船の質量」 (林ひろさん

 過去に紹介した膨らませた巨大風船を使い風船の質量を求める実験をアレンジし、風船の質量から風船内の空気の質量を求める実験を奥村さんが総合学習で実施しました。

 風船の質量(2005年5月14日例会)

 すると、奥村さんの実験方法を考える授業で鍛えられた生徒たちの中に、風船の落下運動を運動方程式で解くというグループが出てきたそうです。その事に感激し、ひろさんが報告をしてくれました。
 風船を膨らませた状態で、質量を求めるには...
 考え方は、落下する質量M=風船の質量凾香{空気の質量m、はたらく力=重力凾高とし、空気の質量は無視できるという考え方です。


 実際に、風船を落下させて加速度を計測してみました。
ひろさんの合図で、10pの高さと40cmの高さから落としてみました。しかし、ストップウォッチを押すタイミングで誤差が大きすぎて、何を測っているのかさっぱり分かりませんでした。  
 この考え方なら、単純な運動方程式になります。
 そこで、空気抵抗も考慮し、少し距離を伸ばし、25cmと100pの高さから落としてみることにしたところ、25cmからの落下時間は0.50秒ほど、100pは1.08秒というそこそこ等加速度運動らしい結果が出ました。

 ちなみに、この結果から空気の質量を求めると実際の値より随分大きくなります。ひろさんによると、これは風船のにまとわりつく空気の慣性質量が関係するからだそうです。

 このような良質の課題を扱う探究的な実験では講義的な授業ではやる気のない生徒が大活躍することがあります。
 時間に追われ教科書を全て教えることにとらわれ過ぎず、本質的な科学する体験を味わう機会も是非設けたいものです。
 少ない知識しかない生徒の方が頭が柔らかいことも多いですね。

 テスラコイルで音楽再生2 (前田さん  

 前回、紹介したテスラコイルの仕組みについて説明してくれました。

 写真のように、700Hzの音が入力された場合、1秒当たり700回パルス波が生じるようになっています。より振動数が小さければ、時間あたりのパルス波ぼ数が減り、より大きければ増えます。
 つまり、1秒あたりに放電により発生するノイズの数が放電時の発生する音の振動数を決めるわけです。
 音楽再生の仕組みを説明してくれました。
 次に、テスラコイルのような高電圧に電球を近づける実験を見せてくれました。
 藤田さんによると、これはコロナウインドと同じ原理ではないかということです。  
 電球からの放電が見られます。

 重ね合わせの原理 (前田さん  
 物理基礎で重ね合わせの原理を説明していたところ、生徒から「どこが重なっているのか見えない!」との声が...

 前田さんはその声に答えるため、説明用の教具を製作しました。

 問題にあったパルス波である、三角形の形状を2つ作り、片方は枠以外は透明にしました。
 こうすれば、重なった部分が隠れないため、見やすくなります。  
 重なっている部分が見やすいように、片方は枠以外は透明にしました。

  波の合成については、重なった図形を鉛直方向に折り返して対応します。うん、分かりやすい。

 そして、少し時間が経過して右の写真の時には、前田さんが、重なった部分と形の異なるマグネットを足し合わせると、ざわめきが... 「同じ面積」のを付けてと説明しても、皆納得しません。

 やはり、重ね合わせの原理は、それぞれの位置での変位を足し合わせるという基本を大切にすべきという意見に収まりました。  
 視線を集める効果は絶大ですが...

 色収差 (川田さん  
 センター試験の問題にもなっていた色収差を簡単に見る方法を紹介してくれました。

 フレネルレンズの端を残して、円形の紙等で光を遮るようにします。そして、強力なスポットライトで照らすと、紙でつくったスクリーンに七色の環が映し出されます。

 このとき、赤の内側に青が見えます。
  円形の虹が投影されます。
 つぎに、光源からレンズまでの距離を保ったまま、スクリーンを近づけると、今度は赤の外側に青がきます。

 なぜ、位置関係が逆転するのでしょうか?
  スクリーンまでの距離を変えると色の並びが反転します。
 これは色収差が原因です。屈折率は光の波長により異なるので、白色光に含まれる赤色と青色では図のように屈折後の進行方向が異なります。

 そのため、スクリーンを動かすと図の破線より遠くにスクリーンを置けば、スクリーンには青色が赤色より外側に表れます。  
  この図で説明されると納得ですね。

 針穴カメラ (川田さん  

 針で開けたような小さな穴を開けるたものを通して景色を撮影するカメラは針穴カメラ(ピンホールカメラ)と呼ばれます。

 このピンホールに筒を付けて、ピンホールをスクリーンから遠くにすると撮影する範囲はどのように変化するでしょうか?

(ア) 広くなる (イ) 変わらない (ウ) 狭くなる

 ピンホールカメラについての発表でした。
 答えは(ウ)です。

 写真中の黒板の図では下側がスクリーンです。穴がスクリーンに近いときと比べると、穴がスクリーンから遠くにあるとき、狭い範囲の景色を拡大することになります。
 筒を使いと、穴をスクリーン上には景色が...

     [次ページヘ]