太陽高度測定器の製作 NHK「やってみようなんでも実験」用実験器具の設計と実際 (PDF版301KB)
神奈川県立湘南台高等学校 山本明利
NHK「やってみようなんでも実験」の出演依頼を受け、スタジオ収録までわずか3週間という強行日程の中で、太陽高度測定器を設計製作し、「エラトステネスの方法」により、南北2地点(栃木県立足利高校と神奈川県立湘南台高校)で太陽の南中高度を測定し、地球の大きさを推定することに成功した。
設計のポイント
◎足利と湘南台の緯度差は約1度しかないため、有効数字2桁を保証するために、0.1度の精度で太陽高度が測定できること。
◎太陽を直視するのは危険で教育的でないため、影を利用して測定できる構造とすること。
◎薄曇りで影が落ちない場合でも測定できるように、直視法もサポートした構造であること。
◎装置の方位出し、水平出しが短時間に必要な精度で確実に行える機構を備えていること。
◎テレビ画面を通してでも、原理が一目でわかる単純明快な構造であること。
◎生徒にも工作できる程度の構造で、木工を主としたものであること。
◎足利やスタジオへの輸送に支障のない大きさであること。
以上の条件を満たすべく、下図のような測定器を2台製作し、うち一台を同時観測のため足利高校に輸送した。
太陽高度の測定手順
【1】晴天で影ができる場合
(1)太陽が見える場所に「太陽高度測定器」を置く。下はコンクリートかアスファルトなど固いところが望ましい。
(2)指針(先のとがった長さ8cmの木の丸棒)を測定器の前方上部の穴にとりつけ、三角定規で直角を確認する。指針ができるだけ板に垂直になるように調整する。
(3)測定器の上辺に照準棒(長さ30cmの木の丸棒)をさしこむ。
(4)測定器を太陽の方に向け、照準棒の影が、測定器の上辺上に落ちるようにする。
(5)下げ振りに注目し、測定器下前方二箇所の六角ボルトを回転して左右の水平を出す。
(6)同様に、測定器下後方の六角ボルトを操作して前後の水平を出す。下げ振りの糸が下のヒートンに触れていなければ水平とみなす。
(7)日周運動する太陽を追尾しながら(4)〜(6)の操作を繰り返し、測定に備える。
(8)携帯電話で連絡を取り合いながら、目盛り板上に落ちた指針の影の先の目盛りを読み、同時測定を実施する。
(9)測定結果を時刻と共に記録する。
【2】薄曇りで太陽が見える場合
(1)〜(3)上に同じ
(4)測定器上辺後方のヒートンからのぞいて、雲間の太陽が照準棒に隠れるように測定器の向きを調節する。
(5)〜(7)上に同じ
(8)目盛板の裏から雲間の太陽をのぞき、指針の先端が太陽に一致するような位置に目を移動する。目の位置が決まったら、マーカーをその位置につける。マーカーの矢印先 端と指針の先端が、共に太陽をさしている状態になる。
(9)携帯電話で連絡を取り合いながら、マーカーの位置の目盛りを読み、同時測定を実施する。
(10)測定結果を時刻と共に記録する。
測定時刻の目標
湘南台と足利を通る子午線上での太陽南中時刻(地方時正午)を中心とする時間帯に数回の測定を実施する。
◎9/23(水)11:35を中心として11:20〜50の間。
◎9/25(土)11:34を中心として11:19〜49の間。
雲行きを見て、両地点で同時観測が可能なタイミングを携帯電話連絡で決定する。
測定結果(99/09/25に実施)
時刻 | 湘南台高校 | 足利高校 | 差(緯度差) |
11:22 | 53.9 | 53.0 | 0.9 |
11:30 | 54.1 | 52.9 | 1.2 |
11:34 | 54.1 | 53.0 | 1.1 |
11:37 | 54.1 | 53.0 | 1.1 |
11:40 | 54.0 | 53.0 | 1.0 |
11:45 | 53.9 | 52.9 | 1.0 |
平均 | 1.05 |
湘南台高校と足利高校の地表距離 約106km
地球全周=106km×360/1.05=3.63×104km (真値との差 9.3%)
【1999/11/04 YPCニュースNo.140掲載】(PDF版301KB)
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