例会速報 2003/08/31 鎌倉学園中学校・高等学校


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ガラスの浮沈子製作実習 市江さんの実習指導
 例会に先立って、YPCで大ブレイクしたガラスの浮沈子を、市江さんの指導で、みんなで製作した。材料は軟質ガラスの直径10mmのガラス管1本(1m¥250程度)、使う道具はガスバーナー、るつぼバサミ、乳鉢(受け皿として)。ガラスを溶かして思い通りに曲げたり、伸ばしたりするのは、ちょっとした職人芸だが、2時間程度練習すれば、コツがつかめるという。
 先を吹いてふくらませ、反対側を細く引いて螺旋状に曲げる。ここがむずかしい。市江さんは素人でも作りやすい簡易製作法を伝授してくれた。
 

 ふだんガラス細工をやっていないメンバーはなかなか苦戦していたようだが、化学専門の高杉さんは、見事なガラス細工を見せてくれた。失敗しないためのポイントはかなり強めの炎でガラスを十分溶かしてから、炎から出して冷めないうちに素早く変形させるところだ。
 

無重力フライトと宇宙メダカ 車田さんの紹介
 日本科学未来館のスタッフが名古屋にあるダイヤモンド・エア・サービス社の無重量実験航空機にモニターとして搭乗した時のビデオ。素人集団ながら無重量体験の模様をしっかりビデオに記録している。右は同乗した宇宙メダカ入りのPETボトルだが、残念ながら手持ちでビデオを撮っていたため飛行の状態がわからず、インパクトがイマイチ。わかりやすい画面構成がいかに難しいかがうかがえる。メダカが逆さに泳いだり様子がおかしい場面が無重量状態なのだろう。普通メダカと差が出るのだろうか。
 

大きい水中シャボン玉の作り方 車田さんの発表
 水中シャボン玉の大きさは、使用するストローの径でだいたい決まるので径の大きいストローを使ってみたところ、ストローの径が大きいとシャボン液を取込めず流れてしまった。そこでストローの口に網を付けると、太いストローでもうまくシャボン液を取込め、ひと回り大きな水中シャボン玉を作ることができた。また、径の小さいストローでもシャボン液をゆっくりとたらすことで大きな水中シャボン玉を作ることができる。水中シャボン玉ができるメカニズムを説き明かすヒントになるかもしれない。

プルフリッヒ効果 水野さんの発表
  一定方向に動いていくテレビ等の画像を、片目だけ黒っぽいフィルターをして両目で見る。すると見ているものが立体的に見える。これをプルフリッヒ効果という。その原理は、フィルターを通した目の方の反応時間が遅れる結果、時間的に遅れた像を見ることで、左右の目で見る像の位置がずれ、その視差によって像の動きが立体的に見えるというもの。

 以前に、2000年11月の例会で小沢さんが紹介してくれた、単振り子が円錐振り子に見える現象とおなじものだが、平面の動画に奥行きをつけるというのは面白い。いろいろな応用が考えられそうだ。

 夏の全国私学研修大会で入手した話題だそうだ。

大気球のポリエチレンシート 大谷さんの発表
  大谷さんは、宇宙科学研究所の一般公開(7/26(土))を見学した時、観測用の大気球グループのブースで「科学観測用プラスチック気球」用のポリエチレンシートを入手し、YPC用にとたくさんもらってきてくれた。

 この気球用フィルムは、厚みが3.3μmという薄さ。ポリエチレン製で、感触はふにゃふにゃという柔らかい感じ。こんな薄いもので、重い観測機器をぶらさげて浮くというのは不思議な気がする。気球を高く上げるために、薄い材料の開発を行っていて、現在、厚さ3.0μmまで製作されているという。気球にはヘリウムをつめて打ち上げる。気球の大きさは、1000m3位〜東京ドーム位までいろいろ、打ち上げ高度も観測目的により、300m〜53km位までさまざま。打上げは主に岩手県大船渡の三陸大気球観測所で行うが、超新星爆発の観測のためブラジルに出かけたり、オーロラ観測のため南極に遠征したこともあるそうだ。用途は太陽フレアのX線観測など「天体・宇宙線観測」、再突入用カプセルの耐熱試験などの「工学実験」、「地球の高層大気などの調査」など多岐にわたる。

 今回分けていただいた気球用フィルムは、幅1m、長さは数10m以上。布地のように巻いてあったが、実は筒状になっている。実際に、気球をつくる時は、筒を切り開き、地球儀の経線に沿って切ったような形にして、大型熱接着機を使ってはり付けるのだそうだ。例会では筒の片側を結んで袋状にし、反対側から熱風をいれて実験してみた。ガスバーナーの炎で軽く温めるだけでみごとに浮く。右はポリエチレンシートの「山分け風景」。

 大気球観測などについての質問には、今回お世話くださった宇宙科学研究所三陸大気球観測所助手の斎藤芳隆さんが応じてくださるそうだ。

 

学研かがくのガチャガチャ 益田さんの発表
 おもちゃのカプセル販売機(通称:ガチャガチャ)に「学研かがくの付録シリーズ」が登場した。写真は顕微鏡と宝石セット。カプセルに入るサイズだから、科学の付録そのものではなく、ミニチュア化したものだが、ちょっとコレクションしてみたくなる。

運動解析ソフト 宮崎さんの発表
 科教協東京大会で新潟大学の小林昭三先生が「ITを活用した力学授業法」についてレポートされた。そこで紹介していただいた動画解析ソフト「運動くん」(新潟大学グループが開発したフリーソフト)を、宮崎さんはさっそく追試。例会の席でその使い方の実際を披露してくれた。

 デジカメのムービーモードやデジタルビデオカメラで撮影(写真左上)した物体の運動の動画をパソコンに取り込み(写真左下)、決まったフレーム数ずつ送りながら着目物体の位置を画面上でマウスクリックする。これだけの簡単な操作で、物体の位置や速さの時間変化を瞬時にグラフ表示できる(写真右下)。画像のファイル形式は現在、AVI、motionJPEG(AVI形式)、MPEGに対応している。機能アップをめざしてさらに改良が続いているという。

 フリーソフト「運動くん」は新潟大学のサイトのほか、ベクターのサイトからもダウンロードできる。


 

「実験でたどる原子・原子核の世界」 喜多さんの紹介
  製作・著作:科学技術振興事業団、 監修:戸田一郎、竹下徹(信州大学物理学科高エネルギー物理学研究室)のデジタルコンテンツである。原子・原子核の分野は教科書の最後に収録されているため、時間切れなどで簡単に扱う傾向があり、残念ながら学校での実験はあまり行われていない。学生時代にその実験を見た人も少ないだろう。物理の教員でもこの単元の実践事例はきわめて少ないのが実情である。これは原子・原子核分野を扱う教師にとっては垂涎のコンテンツである。 
 写真はミリカンの実験の一コマである。 ミリカンの実験装置を持っていても、取り扱いが難しいためなかなか生徒に見せる機会がないものだ。その実験が見事に映像化されている。おそらく世界中探してもなかなか手に入らない映像だろう。せひ授業で活用したいものだ。これ以外にも教師にとっても教材研究の上で、非常に参考になる映像が沢山収録されている。「理科ねっとわーく」に登録すれば、このコンテンツは無料でダウンロードできる。使用または閲覧して戸田先生にコメントを送ろう。
 

実用的なCDの処分法 山本の発表
 古いCD、ことに機密性の高いデータを記録したCD-Rを、安全に処分したいと考える人は多いだろう。学校は特に廃棄に慎重を期すべきデータが多い。CDやCD-Rは物理的に破壊するのが最も安全なのだが、ポリカーボネートの優れた弾性のため、機械的に割るのはかなり骨が折れる。ノコギリで切断したり、加熱変形させたりと、けっこう大げさな処理になる。
 ところが、エタノールやジエチルエーテルをたっぷりしみこませたティッシュペーパーなどを中心の穴の付近にあてがって、両親指でこれを押すようにして曲げると、あれほど変形に強かったCDがいとも簡単に真っ二つに割れる。圧縮成型時の細かなクラックに有機溶媒がしみこんで、結合を切るためではないかと思うが、驚くほど小さな力で破壊できる。
 CD-Rにマジックで書いた文字を消そうとして、偶然発見した現象である。

紫外線LED 山本の発表
 紫外線を発する発光ダイオード、UV−LEDが手にはいるようになった。可視領域の紫から、UV−Aの近紫外あたりに分布した光を発する。肉眼で見るとそれほど明るくない紫色に見えるが、紫外にピークがあるから、決して正面から肉眼で見つめてはいけない。動作電圧は約4V。マンガン電池3本直列ぐらいが電源としてはちょうどよい。
 下左は蛍光マーカーで描いた線が光る様子。右は蓄光ゴムシートにこのLEDの光をあてて描いた文字。郵便物のバーコードや、紙幣の蛍光インクの観察もできる。可視部の光だけをうまく遮断できれば、小型のブラックライトとして活用できそうだ。
 まだ一個¥290円と高めだが、秋葉原の千石通商で入手できる。


 

殺菌ライト 山本の発表
 タニタのキッチン用「殺菌ライト」。科教協東京大会でも一部で話題になっていた。コンパクトなデザインでU字形のミニ水銀灯を内蔵し、単4電池を電源として、ボタンを押すと紫外線を発して食器や調理器具などを殺菌できるという。定価は\3800だが、売れなかったのかもはや製造中止とのことで、ネット上でバッタ販売されている。
 

 紫外線が放射されているのは事実で、箔検電器に亜鉛板を乗せて負に帯電させ、殺菌ライトの光を当てると光電効果で箔が閉じていく。オゾン臭もするし、UVチェックカードにあてると、右の写真のように確かに感光するから、UV−B、Cがかなりの強度で出ているのは間違いない。説明書にも書いてあるとおり、発光部を肉眼で見つめることはきわめて危険である。上の紫外線LEDよりさらに短波長で強力なお手軽紫外線源として、物理教材としては有効である。紫外線を遮断すれば水銀のスペクトル光源としても利用できる。
 

殺菌灯を安全に使う 山本の発表
 紫外線ついでに、もう一つ。こちらは以前にも紹介したことのある4Wの殺菌灯。水銀灯で253.7nmの強力紫外線を発する。見つめることはもとより、至近距離で皮膚に照射することも危険だ。筆者もこれで「日焼け」した経験がある。

 ところでこの有害UV−Cはガラスや化学樹脂で効率よく吸収される。そこで、ポリカーボネート(PC)の管を切断して作ったシェードをかぶせると、かなり安全な光源とすることができる。下はUVチェックカードで紫外線量チェックをしているところ。PCをかぶせない方(左)は感光するが、シェードをつけた方では長時間当てても感光しない(右)。光電効果も左だと起こるが、右だと起こらない。こうしてPCシェードをうまく活用すると、殺菌灯もかなり安全に取り扱える。

 とはいえ過信は禁物。観察はできるだけ短時間で、十分に距離をとって行うに越したことはない。


 

相対速度の効果的演示法 右近さんの発表
 静岡の電磁気学討論会の帰りに滝川さんから教えてもらったという、相対速度の演示法である。2台のおもちゃの自動車を模造紙の上で走らせ、一方が机に対して静止するように模造紙を引きます。すると、その自動車に対する他の自動車の相対速度がよくわかる、というものだ。非常に単純な原理で、視覚的にもわかりやすい。
 ただ、例会での演示は自動車のおもちゃがはずみ車動力だったため、うまく速度の調節ができなかったのが残念。モーター等で、ゆっくりと走る模型が適しているようだ。

スターリングエンジン製作会から 越さんの発表
 越さんは7月30日にに行われた土浦工業高校理科研究部「夏休みスターリング講座」に参加した。写真はそこで製作した「リングボム式フリーピストンエンジン・クランク式」。アルミ板やアングル材の加工も意外と簡単で(カッターや金鋸で切れました)、3時間ほどで完成したそうだ。うまく調整すれば10m位は走るという。詳しくは土浦工業高校理科研究部のHPを見てください。
 

宇宙研・NASDAグッズ 大谷さんのお土産配布
 大谷さんが夏休み中に宇宙研やNASDAからもらってきたリーフレット、ペーパークラフト、ポスター類を分けてくれた。実験室のアクセサリーにどうぞ。

コミケ・科学工作の本 車田さんの紹介
 車田さんは今年のコミケで「科学工作の本」2冊を見つけてきた。内容は紙工作を中心としたもので「科学工作の本1」はブーメラン、不思議な壁、紙笛、ベンハムのこま、運動残像、簡易分光器「科学工作の本2」はカメラオブスキュラ、フェナキスティスコープ、アナモルフォーシスと紙工作キットの本でレンズや偏光板など材料がついている。また、本の内容すべてのPDFのCDがついている。筆者は元物理教師の原田智也さん。

液体信号 市江さんの発表
 市江さんたち鎌倉学園グループが、今夏科学の祭典に出展した実験をみんなで追試した。ペットボトルに入ったうすい水酸化ナトリウム水溶液(水125mlに対してNaOH2.5g)にブドウ糖1.5gとイジゴカルミンをごく少量(0.025g)を加えると、インジゴカルミンの酸化還元によって緑→赤→黄と三色に変化する。この場合、ブドウ糖は還元剤としてはたらき、緑色のインジゴカルミンを赤→黄色に変化させる。ペットボトルをシェイクすると、再び黄→赤→緑に変化し、この反応は数回くり返すことができる。化学ではお馴染みの実験だが、イベント等で手軽にできるように、あらかじめ混合したブドウ糖とインジゴカルミンをフィルムケースで配布するといった工夫をしている。
 

二次会 大船駅前「甘太郎」にて
 12名が参加してカンパーイ。今回は益田さんの取材。夏と秋が逆転してしまったような今年の陽気。夏休み中はずいぶん涼しかったが、9月は暑くなりそうだ。明日から2学期、気合いを入れてガンバロー。


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