例会速報 2010/08/28 カシオ計算機湯河原保養センター
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保養センターからの眺め
今日の会場は湯河原駅裏の丘の上にある保養所。眼下に湯河原の町を一望し、相模湾の青い海原に真鶴半島と三ツ石が遠望できる絶好のロケーションである。もちろん温泉付き。
ハイスピードカメラ・関数電卓講習会
本日の特別プログラムは本家カシオさんによるハイスピードカメラEX-FC150と教育用関数電卓FX510AZの講習会。ハイスピードカメラの原理や、撮影のコツなどを教わった後、宙返りパンダのおもちゃを「パスト連写」する撮影会。シャッターボタンを押しきる前の数秒を記憶していて、さかのぼって撮影する。撮影者の反射時間やカメラ側の処理時間によるタイムラグをカバーし、シャッターチャンスを逃さない。多機能だが使いこなすのは大変。ひたすら練習あるのみ。
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教育用関数電卓FX510AZは「教科書通り入力可能」が売り文句。分数もちゃんと上下に線で区切られて教科書通りに表示され、カーソルキーを使ってそのイメージ通りに入力できる。もちろん指数は小さな文字で右肩に表示される。0.3333333333←→1/3のような小数と分数の表示切り替えもワンタッチ。微積分や複素数・ベクトル計算も数式通りこなす。
工業高校などでの需要を見込んで開発したとのことだが、5千円程度でこの機能が手にはいるというのは驚異的なことだ。
このページの一番下で成見さんが紹介している「元祖・電卓」と見比べると、技術革新の速さがよくわかる。
HEX BUG nano 越さんの発表
タカラトミーアーツより、HEX BUG nano が発売された。長さ4cmの小型振動歩行ロボ。製品のホームページの動画を見ると、まさにゴキブリをイメージしたおもちゃのようである。 写真右は本体2個と専用のコース。
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写真左は本体下面。ネオジム磁石使用のマイクロ振動モーターとボタン電池の組み合わせでコンパクトにまとまっている。写真右のように、細めの糸に吊るして糸の他端を持ち長さを調整すれば、簡単に定常波の実験ができる。
TUMBLING WALL BUGS 越さんの発表
葉っぱの形をしたランチャーから窓ガラス等に投げつけると、3点支持を保ちながらぺたぺたと平面を降りてくる。足先の粘着部はTPR樹脂でピタミンと同じ。購入情報はここ。
ジュール・スクイーザー 越さんの紹介
茨城の根本先生が科学の祭典全国大会で発表されていたもの。古くなった乾電池1本を用いてコイルの自己誘導により昇圧し、白色ダイオードを点灯させるという回路。子どもたちが作り易いように部品数を減らし、ハンダ付けもなしにするなど、とてもよく工夫されている。回路について詳しい資料はここ。
コンデンサーの直列接続 田代さんの発表
愛知物理サークル2005年2月12日例会で山岡さんが電球で、また岐阜物理サークル2005年2月17日例会で小川さんがモーターでやった実験を受けて、今回田代さんはデジタルテスターの電流計と電圧計で追試した。
(操作1)1Fのコンデンサーを3個直列にして、3Vでフル充電し
(操作2)図のようにBCに電流計をつなぎ(短絡)、電流が流れきるのを待つ。
(操作3)その結線をはずし、ADに電流計をつなぎ(短絡)、電流が流れきるのを待つ。
(操作4)その結線をはずし、再びBCに電流計をつなぐと電流は流れるか?
これが課題である。高校の物理では、電荷保存とキルヒホッフの第2法則で解くが、実際に実験して測定で確かめようというわけだ。
下の写真は、(操作1)で直列のままフル充電直後のコンデンサー。1個あたり1V、3個直列で3Vになっている。
左の写真は(操作2)を実行、中央のコンデンサーの両極を短絡し放電したあとの状態。両端のコンデンサーにはそれぞれ1Cの電荷が残っている。電圧は順に1V、0V、1Vで3個直列で2Vになっている。
この状態でテスターを電流計に切り替え、両端(赤と緑のクリップ)を短絡する。これが(操作3)である。
直観的には+−が相殺されて電荷が無くなると思ってしまいがちだが、ちゃんと解けばさにあらず。最初の写真の図でBの領域には−1Cの電荷が、Cの領域には+1Cの電荷が残って孤立しているのだからこれらの電荷が保存するように再分配されなければならない。
結果は下の写真の通り。理論上はコンデンサーの電荷は左から順に、+0.33C、−0.66C、+0.33Cとなる。真ん中が逆充電されるのが意外な感じがする。もちろん(操作4)を実行すれば逆向きに電流が流れる。
この方法のすぐれているところは1Fコンデンサーを用いているので、テスターが示す電圧の値がそのまま電気量の数値になっていることだ。コンデンサーの極板上の見えない電荷を符号も含めて見ていることになる。なお、安い小型の1Fコンデンサーは内部抵抗が大きく、充放電に時間がかかる。お値段ははるが大型で内部抵抗の小さなものなら、コンデンサーの問題らしく、瞬時の電荷移動が可能である。
うなりの振動数30Hzはおかしい? 水上さんの発表
写真のプリントの「440Hzと410Hzの音をオシロスコープソフトで観察すると写真のような波形が得られる。うなりの周期は・・・」という記述に関して、水上さんは某大会や物理教師の集まりで「30Hzはうなりとは言えない」と言われた。うなりは「ワ〜ン,ワ〜ン」とゆっくりでなければいけないというのだ。水上さんは納得がいかずYPCで意見を求めた。
「うなり」は英語でbeat、振動数(周波数)が少し異なる2つの波が干渉して、振幅が周期的に変化する合成波を生じる現象である。差が何Hz以下であるとか、振幅の変調が耳で聞き取れるかどうかはうなりの定義には関係ないというのが例会出席者の大方の意見だった。音波以外の波や振動現象にもbeatという言葉は使われる。
手描きホログラム 市江さんの発表
市江さんは、2009年9月例会で車田さんが紹介した手描きホログラムを今年の科学の祭典で出展した。写真左は韓国の科学の祭典でも行われていた平面版手描きホログラム。デバイダーの半径を固定し、支点で文字を5mm間隔でなぞりながら、円弧の傷をつけていくとできる。光源が1つなら像が2つ対になってできるはずであるが、写真では像が3つできている。白っぽい「光」の像はカメラのフラッシュによるものと思われる。
写真右は手描きホログラムの工作に便利なツール。本来は円切りカッター兼デバイダーであるが、付属のカッター刃を別途用意したコンパスの替え針(2.0Φ×25mm)に付け替えている。商品名ドラパス「スケールカッター・コンパス」市価\400程度。これがあれば便利だが、割り箸にダルマ画鋲を2本刺したものでも十分代用でき、プラ板も硬質カードケースから切り出せば、材料、道具のすべてが100円ショップでそろう。光源は点光源にこだわる必要はあまりないが、ある程度の光量が必要なので、直射日光が一番良い。室内ではスポットライトのような光源が必要となる。いずれにしても子供には強い光で目を痛めないよう配慮が必要である。
針をプラ板に垂直に立て、ガリガリ音をたてながら傷をつけると、1つ1つの傷の溝が白く乱反射してしまう。きれいに光らせるコツは、針をプラ板に対しやや斜めに倒しながら、ささくれ立たないようになめらかに傷をつけることである。
左は立体版の手描きホログラム。半径を同じにした平面版では、もとの図や文字がほぼ平行移動するだけだが、立体版では、大きく動かして見せたい光点ではデバイダーの半径を大きく、小さく動かして見せたい光点ではデバイダーの半径を小さくして傷をつけている。こうすると光点の動きに差が生まれ、像が立体的に動いているように見える。詳細はYPCニュースNo.269の記事をご覧いただきたい。動画はここ(サイズ注意、22.8MB)。市江さん提供のわかりやすい動画はこちら。
手動発電2LEDライト 山本の発表
近頃100円ショップ・ダイソーの店頭で見かけるようになった「手動発電2LEDライト」。名前の通り高輝度白色LEDを2灯搭載し、内蔵ボタン電池のほか、グリップ式の手動発電機も内蔵していて、レバーを握ると光る。
分解してみると下の写真のようなシンプルな構造であるが、遠心力でフリップが広がることを利用した逆転防止機構や、フライホイールを兼ねた8極着磁のフェライト磁石を内蔵した小型発電機など非常によく工夫されている。これだけのものを105円で販売できることに驚きを禁じ得ない。部品代だけでも軽く百円を超えそうだが・・・。もちろんMADE
in CHINA。
最密格子 加藤さんの発表
加藤さんは体験授業の準備をしていて気付いた。ナリカの『サイボックス100型』に100mLビーカを普通に入れると4個ずつ6列に並び、24個を収納できる。ところが、4個・3個と交互に並べていくと25個のビーカを収納できる。科教協では自作の箱にビー玉を詰めて演示しておられる人を見たが、この方法は理科室にありそうな物で演示できるのがよいと思う。結晶の最密構造などの説明にいかが?
アルコールロケット 加藤さんの発表
左の写真は、よく演示実験されるアルコールロケット。空き缶に充填したアルコール蒸気に、下に開けた穴から火を付けて爆発させ、上に乗った紙コップをロケットのように飛ばす。
ところで、この空き缶の上にチップスターの筒をはめて打ち出すと(写真下)、大きな音と共に紙コップは天井まで勢いよく飛び上がる。筒をつけるだけでこれだけの威力になるのがすごい。おなじみの「吹き矢」の実験と同様、力を受けている時間を長くすると力積が稼げるのだ。スローモーション動画はここ(サイズ注意17.5MB)。
加藤さんは同僚の化学の先生に教えて貰ったという。その先生は科教協全国大会で聞いてきたそうだ。
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力の学習〜抗力を弾性で説明しない 鈴木さんの発表
鈴木さんは、8月はじめに行われた科教協兵庫大会の物理分科会に提案したレポートとそのときの議論を報告した。YPCの例会では何回か報告しているが、YPCでの反応と分科会での反応はやはり違うと、鈴木さんは語る。
結局、どこまで許せるかという立場の違いになると思う。間違いだとわかっていてもモデルとして使うのはやむを得ないと考えるべきか、使うべきでないのか。ただ、抗力を弾性で説明する論法が問題を持つということは意識すべきだし、その点の指摘は引き続き強調していきたいと思う。
浮き振り子 水上さんの発表
水上さんはおもりを入れた試験管を水に浮かべて単振動させる「浮き振り子」の動画を撮影した。問題演習では、状況が思い浮かばないのか食いつきが悪かった。今年の授業は、問題を読む→動画の映像を提示→問題解答→コマ送りで周期を測定→答と比較の順に進めたところ、生徒の反応を実感できたという。左側写真の赤テープは試験管が静かに浮かんでいるときの水面の位置である。
等速円運動 水上さんの発表
YPCの小沢さんに紹介された、円運動する物体の運動方向が動径と垂直であることを端的に示すことができる演示実験である。水平面上にプラレールで4分の3円を作り、内周に沿って球を転がす。レールが切れるとボールは接線方向に転がっていく。この運動を真上からデジカメで動画撮影した。進行方向を認識しやすいように方眼黒板を用いた。
映像を詳しく分析すると二つの事実が分かった。(1)レールから離れた後の速さは円運動中より小さい。(2)(写真右)直線レールを加えると直線部分に沿って転がずに内側に切れ込んでしまう。これらの理由については例会の席上議論されたがまだ未解明である。
はやぶさ帰還記念祝酒「虎之児」 山本の発表
JAXA宇宙科学研究本部の前身、宇宙科学研究所(ISAS)では人工衛星・探査機の打上げのたびに、「性能計算書」の表紙にタバコやお酒のラベルをもじったパロディ版を掲載する慣習があった。
小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」の打上げ時の表紙に選ばれたのが佐賀県井出酒造の清酒「虎之児(とらのこ)」。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」、「虎は千里往って千里還る」の諺にちなんでの選択で、的川泰宣名誉教授が愛する詩人・種田山頭火の日記にも登場する酒だとか。
パロディ版はラベルの文字という文字が徹底的にはやぶさ由来の文字や数字に書き替えられている。
これを喜んだ井出酒造が、本年6/13のはやぶさの帰還を記念し、このパロディ版のラベルを採用した限定版祝酒(写真)を先頃販売したところ、瞬く間に完売したという。この宿泊例会で1本賞味することにした。もっともラベルは「限定版」でも中味は同じだが。
資料:ISASニュース310号(P.24を参照)
サイエンスキャンプから 越さんの発表
越さんはアドバイザーとしてJAXAつくば宇宙センターのサイエンスキャンプに初参加した。折しも「はやぶさのカプセル一般公開」と重なり、一般の見学者も多かったが、比較的ゆっくりとカプセルの見学もできた。
JAXAの教育担当の方々などスタッフの尽力により、大変充実した内容になっていた。実際に参加した生徒の中から、将来、宇宙飛行士やJAXAに就職することを目指す生徒も出てくることだろう。また、午後の講義の最中、サプライズで帰国中の野口宇宙飛行士もいらしたという。
アドバイザーとして、1日目の夜のミーティングを任されていた越さんは、以前YPCで話題になった事を中心に宇宙関係のキーワードを連ねた写真のようなアンケートを配布した。内容としては、宇宙をテーマにした映画(遠い空の向こうに、ライトスタッフ、宇宙(そら)へ、など)、プラネタリウムや宇宙関係の展示が充実した科学館(日本科学未来館、千葉市科学館、はまぎんこども科学館、コスモアイル羽咋(はくい)など)など。多くの参加者が、知らない項目が多いけれど、興味はあると答えてくれた。
また、サイエンスキャンプに参加したきっかけを聞いたところ、校内に掲示されていたポスター、先生からのアドバイス、と答えた参加者が多数を占めた。日常的に目につくところに掲示されたポスターなどは、意外と有効であることが分かった。
元祖・カシオ電卓 成見さんの発表
成見さんが子供の頃から自宅にあって親が使っていたというカシオの「電子式卓上計算機」を披露してくれた。奥行き30cm以上と存在感がある。ロール紙プリンター付きで今も健在の完動品。マイナスの数値はちゃんと「赤字」で印字するスグレモノ。
ただし、当時は「加算機」が主流だったので、1+2=3という計算は、1+2+と操作する。今となっては意味不明のキーも。
二次会 湯河原保養センターの食堂にて
カシオのスタッフの皆さんも含め、19人が参加してカンパーイ!。記念祝酒「虎之児」の封を切って「はやぶさ」の帰還も祝う。おりしも夜10時からNHKのはやぶさ特集番組の放送があり、宇宙談義、デジカメ談義に花を咲かせながら湯河原の夜は更けていった。
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